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バトル!
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(織人さん……助けて)
綾華はたぶん、ロープではなく私の喉を切る。いや、その前にいたぶりたいはず。この女の目的は、私を苦しめ、絶望に叩き落とすこと。殺すなら、地獄を味わわせてからだ。
それにさっき、どこかに連絡していた。何か企んでいるに違いない。だからすぐには殺さないだろう。
でも、だからと言って、どうすればいいのか分からない。ブチ切れ状態の綾華を前に、為す術がなかった。
「クレイジー•L!!」
剛田とすれ違う瞬間、キングが叫んだ。
綾華がハッとして、ナイフを下げる。
「なんだと?」
剛田が立ち止まり、ゆっくりとキングに振り向く。
「どうしてお前が、その名を……」
「俺と勝負しろ。地下格闘家のクレイジー•L!」
ガチャンと音がして、見ると、ニット帽が自撮り棒を取り落とし、慌てて拾っている。
どうしたと言うのだろう。
綾華たちの反応は一体?
何が起きているのかさっぱりだった。
「なんで知ってる? 何者なんだ、お前は」
余裕のない口調で問う剛田に、キングが答えた。
「俺はアクション動画のウーチューバー。空手をはじめ、格闘技全般を扱う動画は本格的な作りで、視聴者には現役の武道家からマニアまで、専門知識を持つ者が多いんだ。最近はアンチも増えたが、実はこの前、そのアンチから気になる書き込みがあってな。どうやら表に出せない格闘家の名前を、うっかり漏らしちまった感じで、すぐに消しやがってさ」
剛田の眉がピクリと動く。
「俺はコメントを随時チェックしてるから、見つけられたんだ。削除が速かったのもあって、ずっと頭に残ってたわけよ」
「そうかい。で、なんて書いてあった」
キングは思い出す仕草をしてから、
「『お前なんか大したことねーし 最強の格闘家は地下にいるんだよ その名もクレイジー•L 連戦連勝のホンモノだぜ! 覚えとけド素人』」
すらすらと答えた。
すると剛田はうつむき、しばし黙っていたが、なぜか笑いだした。
何が可笑しいのだろう。後ろにいるニット帽のほうが、よほど青ざめている。
「なんだよ、要するに当てずっぽうか。どっかのバカの書き込みをヒントに鎌を掛け、俺はまんまと反応しちまったワケだ」
剛田の笑いは自嘲だった。しかしキングは大真面目である。
「それだけじゃねえよ。その女の『クレイジー』っつー言葉が連想させたんだ。それから『L』はLotus(蓮)のLだろ? 何よりの決め手はてめえの体つきと挙動だった。ただもんじゃねえのは感じていたぜ」
「フン、光栄だな」
笑みを残した唇で、皮肉っぽく返す。
キングはさらに詰めた。
「地下は地下でも、真っ当なリングとは思えねー。目潰し、金的、何でもありのダーティファイトか」
「……」
剛田は答えず、逆にキングをジロジロと眺め回した。
「なかなか仕上ってるじゃないか。いい暇潰しになるだろうが、あいにく今日は忙しい。ストリートファイトなら他を当たってくれ、じゃあな」
剛田は手を振り、車に乗り込もうとする。しかし、ドアを開けたところに金切り声が飛んだ。
「そんなバケモノ、今すぐやっちゃいなさいよ! あんたなら瞬殺でしょうが!!」
綾華が私から離れて剛田に迫った。
「今までいくら貢いだと思ってんの、この恩知らず! 自分だけ大金せしめて逃げようったってそうはいかないからね!!」
綾華はたぶん、ロープではなく私の喉を切る。いや、その前にいたぶりたいはず。この女の目的は、私を苦しめ、絶望に叩き落とすこと。殺すなら、地獄を味わわせてからだ。
それにさっき、どこかに連絡していた。何か企んでいるに違いない。だからすぐには殺さないだろう。
でも、だからと言って、どうすればいいのか分からない。ブチ切れ状態の綾華を前に、為す術がなかった。
「クレイジー•L!!」
剛田とすれ違う瞬間、キングが叫んだ。
綾華がハッとして、ナイフを下げる。
「なんだと?」
剛田が立ち止まり、ゆっくりとキングに振り向く。
「どうしてお前が、その名を……」
「俺と勝負しろ。地下格闘家のクレイジー•L!」
ガチャンと音がして、見ると、ニット帽が自撮り棒を取り落とし、慌てて拾っている。
どうしたと言うのだろう。
綾華たちの反応は一体?
何が起きているのかさっぱりだった。
「なんで知ってる? 何者なんだ、お前は」
余裕のない口調で問う剛田に、キングが答えた。
「俺はアクション動画のウーチューバー。空手をはじめ、格闘技全般を扱う動画は本格的な作りで、視聴者には現役の武道家からマニアまで、専門知識を持つ者が多いんだ。最近はアンチも増えたが、実はこの前、そのアンチから気になる書き込みがあってな。どうやら表に出せない格闘家の名前を、うっかり漏らしちまった感じで、すぐに消しやがってさ」
剛田の眉がピクリと動く。
「俺はコメントを随時チェックしてるから、見つけられたんだ。削除が速かったのもあって、ずっと頭に残ってたわけよ」
「そうかい。で、なんて書いてあった」
キングは思い出す仕草をしてから、
「『お前なんか大したことねーし 最強の格闘家は地下にいるんだよ その名もクレイジー•L 連戦連勝のホンモノだぜ! 覚えとけド素人』」
すらすらと答えた。
すると剛田はうつむき、しばし黙っていたが、なぜか笑いだした。
何が可笑しいのだろう。後ろにいるニット帽のほうが、よほど青ざめている。
「なんだよ、要するに当てずっぽうか。どっかのバカの書き込みをヒントに鎌を掛け、俺はまんまと反応しちまったワケだ」
剛田の笑いは自嘲だった。しかしキングは大真面目である。
「それだけじゃねえよ。その女の『クレイジー』っつー言葉が連想させたんだ。それから『L』はLotus(蓮)のLだろ? 何よりの決め手はてめえの体つきと挙動だった。ただもんじゃねえのは感じていたぜ」
「フン、光栄だな」
笑みを残した唇で、皮肉っぽく返す。
キングはさらに詰めた。
「地下は地下でも、真っ当なリングとは思えねー。目潰し、金的、何でもありのダーティファイトか」
「……」
剛田は答えず、逆にキングをジロジロと眺め回した。
「なかなか仕上ってるじゃないか。いい暇潰しになるだろうが、あいにく今日は忙しい。ストリートファイトなら他を当たってくれ、じゃあな」
剛田は手を振り、車に乗り込もうとする。しかし、ドアを開けたところに金切り声が飛んだ。
「そんなバケモノ、今すぐやっちゃいなさいよ! あんたなら瞬殺でしょうが!!」
綾華が私から離れて剛田に迫った。
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