一億円の花嫁

藤谷 郁

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バトル!

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「あとな、お前が上手くいかないのは奈々子さんのせいじゃない。八つ当たりしてんじゃねーよ。分かってるんだろ?」
「は……?」
「すべての元凶は、お前というモンスターを作った父親だ」
「……!」

 綾華の顔色が変わった。

「西野家の一人娘だったお前は、蝶よ花よと甘やかされて、大事な跡取りとして育てられた。なのに、弟が生まれたとたん父親の態度が激変。冷遇されて、今となっては政略結婚の道具扱いってところか」
「……」

 綾華は黙っている。
 さっきまでの怒りの表情が消えて、生気のない顔。
 まるで幽霊のよう。

「間違ってるか? なあ、クソ女」
「……そうよ。だから、復讐してやるの」

 コートのポケットに手を入れた。
 キングが私を後ろに下がらせ、警戒する。

「終わらせてやる。ニシノ製薬も、西野家の血統も、財産も、すべて。悪いのはぜんぶパパなんだから。そうよ、謝らないわ、絶対に。何が人間性よ、バカバカしい。奈々子なんかに負けてたまるもんですか!」

 まるで呪いだ。
 綾華は呪われていると、本気で思う。
 これまでのどんな彼女より不気味で、そして、ゾッとするほど醜かった。

「どうする気だ。何を隠し持ってる」

 キングが見下ろすのは、綾華の右手。ポケットの中で、何かを握っている。

「関係ないわよ。知る必要もない。だって、あんたたちは、これから死ぬんだもの」
「……!?」

 ゴゴゴゴゴ……と、地鳴りのような音が聞こえた。コンクリートの床が振動し、建物全体がガタガタと揺れる。
 綾華が、「ほら、やって来たわ」と言って倉庫の扉を指さす。

「奈々子さん、こっちへ」

 キングに抱き寄せられ、音がするほうを見た。それはだんだん近づいてきて、窓に光が走り……

「きゃああ!!」

 爆音とともに扉が破壊された。
 強い衝撃により壁一面がガラガラと砕れ落ち、瓦礫と埃の中乗り込んできた怪物が、ワンボックスとランクルに追突する。

「ひいいっ」
「うおおっ、なんだこりゃあ!」

 エミさんとニット帽が、転がるように逃げた。剛田がよろよろと立ち上がり、「あっ」と叫び声を上げる。

「おい、冗談だろ……」

 信じられないというキングのつぶやき。
 飛び込んできた怪物は、巨大なダンプカーだった。
 
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