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強引なお誘い
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「あの、どういうことでしょう。CEOと食事するのでは……」
「申しわけございません。黙っているようにと命じられまして」
なにを言っているのだろう。
私はオロオロしながら、こちらに歩いてくる男性をあらためて見直す。予想と違いすぎるビジュアルが目の前に迫ってくる。
私を夕食に招いたのは、三保コンフォートのCEOで、父親と同世代のおじさんのはず。
それなのに――
「はじめまして、大月奈々子さん。私は三保コンフォートの代表取締役兼CEOの、由比織人と申します」
「え……あの、は、はじめまして……」
しどろもどろに挨拶する私に、彼が微笑んだ。とても満足そうに。
(この人が、三保コンフォートのCEO……!?)
すらりと背が高く、それでいて頼もしい体躯。整った顔立ちにライトブラウンの髪が映えて、まるで王子様のよう。
そう、精悍な王子様。
チェックインの時にラウンジで見かけた、あの男性だった。
「お待ちしていましたよ。さあどうぞ、こちらへ」
「は、はい」
CEOーー由比さんは私をテーブルへといざない、自ら椅子を引いてくれた。
関根さんを見ると、困ったような、あきらめたような、複雑な表情で後ろに控えている。食事会場に案内するまでが彼女の役割であり、この先はフォローも口出しもできないのだ。
テーブルを挟んで正面に彼が座った。
(あ……)
まともに向き合い、心臓が跳ね上がる。
本当に、王子様。夢のように魅力的な男性だ。
アイドルとか俳優とか、いわゆるスターと呼ばれるイケメン男性を凌ぐほどの美しさとかっこよさ。神々しいくらいのオーラを放っている。
(ど、どうしよう。なんでこんなにドキドキするの?)
強引なタイプは苦手のはずが、私ときたら圧倒的オーラに不安も恐れも吹き飛ばされてしまった。
自分でも戸惑うくらいのときめき。というか、これは不可抗力だ。彼を前にすれば大抵の女性……いや、男性だって魅了されるに違いない。
(若くして一流企業のトップに立つくらいだもの。容姿だけでなく、特別な才能に恵まれた人なんだ、きっと。たとえば、ロマンス小説に登場するヒーローみたいに……)
「大月さん? どうかされましたか」
「えっ? いえ、すみません」
つい見入ってしまった。
私は熱くなる頬を隠すようにうつむき、ふと、ラウンジで考えてしまったことを思い出す。
――『一生に一度、ロマンス小説のような恋愛ができたら』
――『例えば、彼のような人と。一夜限りでもいいから、忘れられない経験をこの身に刻んで』
私らしくもなく大胆かつ大それた望み。
だけどもちろん、本気で考えたのではない。
なぜなら、王子様と運命的に出会い恋愛する――なんて、私の人生には絶対にありえないストーリーだから。
でも……
こんな風に食事をともにするなんて想像もできなかった。ひょっとしたら、望まぬ結婚をする私を憐れみ、神様がチャンスをくださったのかも。
一生に一度の思い出を作りなさい、と。
「申しわけございません。黙っているようにと命じられまして」
なにを言っているのだろう。
私はオロオロしながら、こちらに歩いてくる男性をあらためて見直す。予想と違いすぎるビジュアルが目の前に迫ってくる。
私を夕食に招いたのは、三保コンフォートのCEOで、父親と同世代のおじさんのはず。
それなのに――
「はじめまして、大月奈々子さん。私は三保コンフォートの代表取締役兼CEOの、由比織人と申します」
「え……あの、は、はじめまして……」
しどろもどろに挨拶する私に、彼が微笑んだ。とても満足そうに。
(この人が、三保コンフォートのCEO……!?)
すらりと背が高く、それでいて頼もしい体躯。整った顔立ちにライトブラウンの髪が映えて、まるで王子様のよう。
そう、精悍な王子様。
チェックインの時にラウンジで見かけた、あの男性だった。
「お待ちしていましたよ。さあどうぞ、こちらへ」
「は、はい」
CEOーー由比さんは私をテーブルへといざない、自ら椅子を引いてくれた。
関根さんを見ると、困ったような、あきらめたような、複雑な表情で後ろに控えている。食事会場に案内するまでが彼女の役割であり、この先はフォローも口出しもできないのだ。
テーブルを挟んで正面に彼が座った。
(あ……)
まともに向き合い、心臓が跳ね上がる。
本当に、王子様。夢のように魅力的な男性だ。
アイドルとか俳優とか、いわゆるスターと呼ばれるイケメン男性を凌ぐほどの美しさとかっこよさ。神々しいくらいのオーラを放っている。
(ど、どうしよう。なんでこんなにドキドキするの?)
強引なタイプは苦手のはずが、私ときたら圧倒的オーラに不安も恐れも吹き飛ばされてしまった。
自分でも戸惑うくらいのときめき。というか、これは不可抗力だ。彼を前にすれば大抵の女性……いや、男性だって魅了されるに違いない。
(若くして一流企業のトップに立つくらいだもの。容姿だけでなく、特別な才能に恵まれた人なんだ、きっと。たとえば、ロマンス小説に登場するヒーローみたいに……)
「大月さん? どうかされましたか」
「えっ? いえ、すみません」
つい見入ってしまった。
私は熱くなる頬を隠すようにうつむき、ふと、ラウンジで考えてしまったことを思い出す。
――『一生に一度、ロマンス小説のような恋愛ができたら』
――『例えば、彼のような人と。一夜限りでもいいから、忘れられない経験をこの身に刻んで』
私らしくもなく大胆かつ大それた望み。
だけどもちろん、本気で考えたのではない。
なぜなら、王子様と運命的に出会い恋愛する――なんて、私の人生には絶対にありえないストーリーだから。
でも……
こんな風に食事をともにするなんて想像もできなかった。ひょっとしたら、望まぬ結婚をする私を憐れみ、神様がチャンスをくださったのかも。
一生に一度の思い出を作りなさい、と。
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