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夢の時間
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由緒ある神社や古刹。高原の展望テラス。淡水魚水族館。お洒落なカフェなどなど……
由比さんは、私が希望する観光スポットを回ってくれた。
お昼は人気のお蕎麦屋さんで、名物の手打ちそばと山葵天ぷらをご馳走になった。
観光客で混み合っていたが、いつの間にか彼が予約を入れており、待たずに済んだので驚いてしまう。
とにかく彼はそつがない。
チケットをネットで購入済みだったり、混みそうな時間帯は回避してルートを組み立てるなど、周辺の事情に詳しいとはいえ、あまりにも要領が良い。
私一人では、こんな風にスムーズに動けなかっただろう。
また、車の運転が上手なので、安心して乗っていられた。運転には性格が出ると言うが、そのとおり。穏やかでスマートな人柄が表れている。
人物が素晴らしいだけでなく、彼は教養豊かな文化人でもある。
例えば、由比さんおすすめの美術館でのこと。有名な西洋画のみならず、郷土の画家とその作品についても彼は詳しく、学芸員もたじたじの解説ぶりだった。
大企業のトップで、イケメンで、御曹司で、紳士で、教養豊か。
天は二物も三物も彼に与えたもうた。
私とは正反対の、完全無欠の人。
それなのに、細やかな心遣いと、まばゆいほどの明るさと優しさで私に接してくれる。
昨夜と同じように、私はいつしか緊張がほぐれ、心からの笑顔で彼の隣にいた。
憧れの王子様とのデート。まるで、恋をしているような気持ち。
夢の時間が、いつまでも続きますように。
本気でそう願うほどに、由比さんに惹かれる自分を止められなかった。
山の日暮れは早く、気づけば空に星が瞬いていた。
夕食はスキー場近くのビストロ『KAEDE』に案内された。夜にはホテルに戻ると思っていた私は驚くが、彼は最初からそのつもりだったようで、ここも予約が入れてあった。
「勝手に決めてしまってすみません。ご迷惑でしたか?」
「いえ、とんでもない! こちらこそ、かえって申しわけないです。こんなに良くしてもらって」
私の返事を聞いて、由比さんは嬉しそうに微笑んだ。
「あなたに喜んでいただけるなら本望です。私も、楽しいですから」
「え……?」
楽しい。由比さんも?
思いもよらぬ言葉に蕩けそうになるが、ハッと我に返る。
今日、彼がついてきてくれたのは、「お詫び」の一環。変態男の一件があったから、こうなっているだけ。
一人の男としてではなく、経営者としてお客を接待しているだけなのだ。今のはリップサービスであり、本心とは違う。
「大月さん。飲み物は何にしますか?」
「えっ? あ、ハイ」
車なので由比さんはお酒を飲まず、私もノンアルコールカクテルを選んだ。料理は彼がすすめる冬季限定のメニューを注文し、美味しくいただいた。
「『KAEDE』は東京に本店があって、学生の頃によく通ったものです。仲間とわいわいやるのに、ちょうどいい明るさと賑やかさで……」
半個室のテーブルで、由比さんの話に耳を傾ける。
学生時代の彼は、どんな青春を過ごしたのだろう。成績優秀でスポーツ万能。たくさんの友達に囲まれて、充実した日々を送る姿が目に浮かぶ。
学校が怖くて行けなくなったり、保健室が居場所だった私には別世界の光景だ。
由比さんは、私が希望する観光スポットを回ってくれた。
お昼は人気のお蕎麦屋さんで、名物の手打ちそばと山葵天ぷらをご馳走になった。
観光客で混み合っていたが、いつの間にか彼が予約を入れており、待たずに済んだので驚いてしまう。
とにかく彼はそつがない。
チケットをネットで購入済みだったり、混みそうな時間帯は回避してルートを組み立てるなど、周辺の事情に詳しいとはいえ、あまりにも要領が良い。
私一人では、こんな風にスムーズに動けなかっただろう。
また、車の運転が上手なので、安心して乗っていられた。運転には性格が出ると言うが、そのとおり。穏やかでスマートな人柄が表れている。
人物が素晴らしいだけでなく、彼は教養豊かな文化人でもある。
例えば、由比さんおすすめの美術館でのこと。有名な西洋画のみならず、郷土の画家とその作品についても彼は詳しく、学芸員もたじたじの解説ぶりだった。
大企業のトップで、イケメンで、御曹司で、紳士で、教養豊か。
天は二物も三物も彼に与えたもうた。
私とは正反対の、完全無欠の人。
それなのに、細やかな心遣いと、まばゆいほどの明るさと優しさで私に接してくれる。
昨夜と同じように、私はいつしか緊張がほぐれ、心からの笑顔で彼の隣にいた。
憧れの王子様とのデート。まるで、恋をしているような気持ち。
夢の時間が、いつまでも続きますように。
本気でそう願うほどに、由比さんに惹かれる自分を止められなかった。
山の日暮れは早く、気づけば空に星が瞬いていた。
夕食はスキー場近くのビストロ『KAEDE』に案内された。夜にはホテルに戻ると思っていた私は驚くが、彼は最初からそのつもりだったようで、ここも予約が入れてあった。
「勝手に決めてしまってすみません。ご迷惑でしたか?」
「いえ、とんでもない! こちらこそ、かえって申しわけないです。こんなに良くしてもらって」
私の返事を聞いて、由比さんは嬉しそうに微笑んだ。
「あなたに喜んでいただけるなら本望です。私も、楽しいですから」
「え……?」
楽しい。由比さんも?
思いもよらぬ言葉に蕩けそうになるが、ハッと我に返る。
今日、彼がついてきてくれたのは、「お詫び」の一環。変態男の一件があったから、こうなっているだけ。
一人の男としてではなく、経営者としてお客を接待しているだけなのだ。今のはリップサービスであり、本心とは違う。
「大月さん。飲み物は何にしますか?」
「えっ? あ、ハイ」
車なので由比さんはお酒を飲まず、私もノンアルコールカクテルを選んだ。料理は彼がすすめる冬季限定のメニューを注文し、美味しくいただいた。
「『KAEDE』は東京に本店があって、学生の頃によく通ったものです。仲間とわいわいやるのに、ちょうどいい明るさと賑やかさで……」
半個室のテーブルで、由比さんの話に耳を傾ける。
学生時代の彼は、どんな青春を過ごしたのだろう。成績優秀でスポーツ万能。たくさんの友達に囲まれて、充実した日々を送る姿が目に浮かぶ。
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