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私以外、みんな幸せ
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「あの、みんな聞いて……」
「そうとも、お母さんも薫も、よく聞きなさい。由比さんは本気だ。その証拠に、トップシークレットを明かしてくれたのだ」
(えっ……?)
父がリモコンを手に取り、テレビをつけた。画面に映し出された『WooTube』の文字を見て、私は息が止まりそうになる。
まさか、まさか……
「本人が来てから説明するつもりだったが、もういいだろう。なあ、奈々子も承知してるよな?」
「ええっ!?」
ということは、父も承知している?
由比さんの正体を?
「お、お父さん。まさか」
「ああ、ちゃんと知ってるぞ。まあ、さすがに初めは驚いたし、正直まったく理解できんが、事業には関係のない、単なる趣味だろうからな」
「しゅ……趣味!?」
「ちょっと、二人とも。何の話をしてんの?」
姉が割り込み、父と私を睨んだ。母はといえば、落ち着き払った態度で笑みを浮かべている。
「えっ、もしかして、お母さんも知って……?」
「ええ、お父様から聞いています。お見合いが済んでから、由比さんがお電話をくださったでしょ? その時に、えっと……チャンネル? を、教えられたのよ」
「……!」
なんてことだろう。
由比さんは、既に根回しを終えていたのだ。
「私にも、よく理解できない世界でしたけど……まあ、あれだけ素晴らしい方で、お金持ちなのだから、少しくらい変わった趣味をお持ちでも、不思議じゃないわ。奈々子だって、承知しているわよね?」
微笑む母に、私は必死で首を横に振る。
「おほほ、照れなくてもいいのよ。それに見方を変えれば、意外性に満ちたユニークな人とも言えるわ」
無理がある。母は、自分が結婚するわけじゃないから、気楽な解釈ができるのだ。そもそも、あの動画を見て、よくそんなことが言える。信じられない。
「ちょっと、なんなのよ。トップシークレットとかチャンネルとか。由比さんが配信でもしてるって言うの?」
「お姉ちゃん!」
私は姉に縋った。姉なら、キングを認めないだろう。いつものようにボロクソに貶して、化け猿との結婚を反対してくれる。
「お願い、お姉ちゃん。お願い」
「ど、どうしたのよ、あんたらしくもない。わけわかんないって」
珍しくしがみつく私に、姉が狼狽えている。こんなふうに彼女にくっつくのは、何年ぶりだろう。
「とにかく、見てみろ。ほら、由比さんが奈々子と出会った日に作成したという動画だ」
父がリモコンを操作し、例の動画を再生する。それを見る姉の顔を、私が見守る。嫌悪と怒りを露わにするのを、期待して。
だけど、彼女の反応は、意外なものだった。
「へえ、なかなかいいカラダしてるじゃない。王子様にしては、上出来ね」
「……お、お姉ちゃん?」
「やわなお坊ちゃんより、ずっとマシよ。ていうか、あんた、マジで大当たりを引いたわ。宝くじで億万長者になるより確率の低い、最高の男を手に入れたの、わかる?」
「え……え?」
姉は大真面目だ。皮肉でも冗談でもなく、心からの言葉を私に伝えている。姉妹だから、それがよく分かる。
だけど、なぜなのかは分からない。
なぜ、変態ウーチューバーの化け猿を、最高の男だなんて、意味不明なことを言うのか。
「お姉ちゃん、でも」
なおも頼ろうとすると、姉が怖い顔になる。私は言葉を呑み込み、蛇に睨まれたカエルのように、縮こまった。
「あんたをバカにして酷い目に合わせたやつらを、見返してやりな。これが最後のチャンスと思って、腹を決めるのよ。もし、いつもみたいにグズグズして逃したりしたら、縁を切るからね」
「あ……」
しがみついている私の手を、姉が一瞬ぎゅっと握り、パッと振り払った。
横を向いて、もうこちらを見ない。
「お姉ちゃん……?」
姉の態度がおかしい。
私が戸惑っていると、父が膝を叩いて仕切り直した。
「ともかく、由比さんがどんな趣味を持っていようと、我々は構わん。トップシークレットと言われたら、絶対に口外しない。ノープロブレム。奈々子は好きな男と結婚し、会社もレベルアップして、家族もみんな幸せ。いやあ、本当に良かった、良かった!」
皆がいっせいに拍手して、私は呆然。
結局、由比さんの言ったとおりになったのを、目の当たりにする。
ーー君が『うん』と言えば、誰もが幸せになれる
腹を括るほかない。
力なく認めた時、来客を告げるインターフォンが鳴った。
「そうとも、お母さんも薫も、よく聞きなさい。由比さんは本気だ。その証拠に、トップシークレットを明かしてくれたのだ」
(えっ……?)
父がリモコンを手に取り、テレビをつけた。画面に映し出された『WooTube』の文字を見て、私は息が止まりそうになる。
まさか、まさか……
「本人が来てから説明するつもりだったが、もういいだろう。なあ、奈々子も承知してるよな?」
「ええっ!?」
ということは、父も承知している?
由比さんの正体を?
「お、お父さん。まさか」
「ああ、ちゃんと知ってるぞ。まあ、さすがに初めは驚いたし、正直まったく理解できんが、事業には関係のない、単なる趣味だろうからな」
「しゅ……趣味!?」
「ちょっと、二人とも。何の話をしてんの?」
姉が割り込み、父と私を睨んだ。母はといえば、落ち着き払った態度で笑みを浮かべている。
「えっ、もしかして、お母さんも知って……?」
「ええ、お父様から聞いています。お見合いが済んでから、由比さんがお電話をくださったでしょ? その時に、えっと……チャンネル? を、教えられたのよ」
「……!」
なんてことだろう。
由比さんは、既に根回しを終えていたのだ。
「私にも、よく理解できない世界でしたけど……まあ、あれだけ素晴らしい方で、お金持ちなのだから、少しくらい変わった趣味をお持ちでも、不思議じゃないわ。奈々子だって、承知しているわよね?」
微笑む母に、私は必死で首を横に振る。
「おほほ、照れなくてもいいのよ。それに見方を変えれば、意外性に満ちたユニークな人とも言えるわ」
無理がある。母は、自分が結婚するわけじゃないから、気楽な解釈ができるのだ。そもそも、あの動画を見て、よくそんなことが言える。信じられない。
「ちょっと、なんなのよ。トップシークレットとかチャンネルとか。由比さんが配信でもしてるって言うの?」
「お姉ちゃん!」
私は姉に縋った。姉なら、キングを認めないだろう。いつものようにボロクソに貶して、化け猿との結婚を反対してくれる。
「お願い、お姉ちゃん。お願い」
「ど、どうしたのよ、あんたらしくもない。わけわかんないって」
珍しくしがみつく私に、姉が狼狽えている。こんなふうに彼女にくっつくのは、何年ぶりだろう。
「とにかく、見てみろ。ほら、由比さんが奈々子と出会った日に作成したという動画だ」
父がリモコンを操作し、例の動画を再生する。それを見る姉の顔を、私が見守る。嫌悪と怒りを露わにするのを、期待して。
だけど、彼女の反応は、意外なものだった。
「へえ、なかなかいいカラダしてるじゃない。王子様にしては、上出来ね」
「……お、お姉ちゃん?」
「やわなお坊ちゃんより、ずっとマシよ。ていうか、あんた、マジで大当たりを引いたわ。宝くじで億万長者になるより確率の低い、最高の男を手に入れたの、わかる?」
「え……え?」
姉は大真面目だ。皮肉でも冗談でもなく、心からの言葉を私に伝えている。姉妹だから、それがよく分かる。
だけど、なぜなのかは分からない。
なぜ、変態ウーチューバーの化け猿を、最高の男だなんて、意味不明なことを言うのか。
「お姉ちゃん、でも」
なおも頼ろうとすると、姉が怖い顔になる。私は言葉を呑み込み、蛇に睨まれたカエルのように、縮こまった。
「あんたをバカにして酷い目に合わせたやつらを、見返してやりな。これが最後のチャンスと思って、腹を決めるのよ。もし、いつもみたいにグズグズして逃したりしたら、縁を切るからね」
「あ……」
しがみついている私の手を、姉が一瞬ぎゅっと握り、パッと振り払った。
横を向いて、もうこちらを見ない。
「お姉ちゃん……?」
姉の態度がおかしい。
私が戸惑っていると、父が膝を叩いて仕切り直した。
「ともかく、由比さんがどんな趣味を持っていようと、我々は構わん。トップシークレットと言われたら、絶対に口外しない。ノープロブレム。奈々子は好きな男と結婚し、会社もレベルアップして、家族もみんな幸せ。いやあ、本当に良かった、良かった!」
皆がいっせいに拍手して、私は呆然。
結局、由比さんの言ったとおりになったのを、目の当たりにする。
ーー君が『うん』と言えば、誰もが幸せになれる
腹を括るほかない。
力なく認めた時、来客を告げるインターフォンが鳴った。
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