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三人のその後
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『あの女、莉央って子が結婚するとか、久々にグループで集まるとか奈々子に言ったらしいけど。全部でまかせだったってこと?』
『グループでどうのこうのはまったくの作り話です。ただ、莉央が結婚するのは本当で、なぜ綾華が知っているのかは、それもまたSNSから得た情報でしょう。それ以外、知りようがないし』
『はあ? 綾華って女は、絶好したあなたたちのSNSをいちいちチェックしてるの?』
心底呆れたように姉が言う。
『はい、たぶん。DMが来たのは今回が初めてですが……ずっと前から監視してるんじゃないかと』
『なんなの、その執着。ホラーじゃん』
要するに綾華は、関係を絶ってからも彼女たちのSNSを覗いていた。アカウントを特定してまで。
夏樹の推測どおりなら、まさにホラーであり、執拗なストーカー行為だ。
その上、私には今も付き合いがあるかのように、しれっと嘘をついて。
完全にどうかしている。
身も心も寒々としてきた。
『まあ、いじめなんかやる奴はもともとホラーだし、そんなていどかもね。ちなみに莉央って子は今、どこでどうしてるの?』
姉がさして興味もなさそうに訊ねる。だけど私は耳を澄ました。緊張しながら。
『莉央は高校在学中に、いろいろあって……大学はあきらめて就職したんです。伊豆の温泉地にある和菓子店で、父親の伝手だと言っていました。それで、彼女の婚約者というのは後継ぎの息子さんでして、そのことはお店のSNSで報告されています』
『なるほど、西野綾華はそれを見て結婚予定を知ったわけか。ところで、あなたは莉央さんと連絡を取り合ってるの?』
『いえ、特には。高校卒業前に、私には就職先を教えてくれたので、一応、お店のSNSをフォローして、こちらのアカウントも伝えましたが、それっきりで……疎遠になっています』
『ふうん。彼女、西野綾華には就職先を教えなかったんだ』
『あ、はい。莉央も私と同じく、綾華と決別したので』
なんてことだろう。
まだよく呑み込めないし、なぜそうなったのかも分からない。
だけど、夏樹はおそらく事実を語っている。
信じられないけれど、たぶん、本当に。
姉はため息をついてから、あらためて彼女に訊ねた。
『で、西野綾華と関係を絶ったあなたが、奈々子に何の用事? 何を伝えに来たの?』
夏樹は答えない。言葉を探しているようだったと姉は言う。
やがて、声が聞こえた。
微かに震えた声が。
『奈々子さんに伝えたかったんです。綾華に気をつけてくださいと。私に言えた義理ではないと分かっていますが、どうしても。綾華の執着は、相手が怯えれば怯えるほど強くなっていきます。つまり、奈々子さんの反応が、彼女の嗜虐心を刺激した。昨日の再会について、DMに面白そうに書かれていたんです。だから、何をしでかすか分からないと考えて』
『忠告しに来た、と』
『はい』
『西野綾華……まったく、成長しないゴミ女だね』
姉の苛立った声に、夏樹の真剣な声が続いた。
『そうです、綾華は変わっていません。だから、何か仕掛けてきても反応しないようにと、奈々子さんに伝えてください。もう二度と、絶対に関わらないようにと……私は……っ』
夏樹が言葉を途切れさせ、姉も黙る。数秒が過ぎて……
『本当は、あの頃に寄り添うべきだったのに、できなかった。だから、今度こそ力になりたくて、それから……謝りたかった。奈々子に、ずっとずっと謝りたかったんです』
無言の姉。
夏樹の嗚咽だけが聞こえて、やがて途切れた。
《録音終了》
『グループでどうのこうのはまったくの作り話です。ただ、莉央が結婚するのは本当で、なぜ綾華が知っているのかは、それもまたSNSから得た情報でしょう。それ以外、知りようがないし』
『はあ? 綾華って女は、絶好したあなたたちのSNSをいちいちチェックしてるの?』
心底呆れたように姉が言う。
『はい、たぶん。DMが来たのは今回が初めてですが……ずっと前から監視してるんじゃないかと』
『なんなの、その執着。ホラーじゃん』
要するに綾華は、関係を絶ってからも彼女たちのSNSを覗いていた。アカウントを特定してまで。
夏樹の推測どおりなら、まさにホラーであり、執拗なストーカー行為だ。
その上、私には今も付き合いがあるかのように、しれっと嘘をついて。
完全にどうかしている。
身も心も寒々としてきた。
『まあ、いじめなんかやる奴はもともとホラーだし、そんなていどかもね。ちなみに莉央って子は今、どこでどうしてるの?』
姉がさして興味もなさそうに訊ねる。だけど私は耳を澄ました。緊張しながら。
『莉央は高校在学中に、いろいろあって……大学はあきらめて就職したんです。伊豆の温泉地にある和菓子店で、父親の伝手だと言っていました。それで、彼女の婚約者というのは後継ぎの息子さんでして、そのことはお店のSNSで報告されています』
『なるほど、西野綾華はそれを見て結婚予定を知ったわけか。ところで、あなたは莉央さんと連絡を取り合ってるの?』
『いえ、特には。高校卒業前に、私には就職先を教えてくれたので、一応、お店のSNSをフォローして、こちらのアカウントも伝えましたが、それっきりで……疎遠になっています』
『ふうん。彼女、西野綾華には就職先を教えなかったんだ』
『あ、はい。莉央も私と同じく、綾華と決別したので』
なんてことだろう。
まだよく呑み込めないし、なぜそうなったのかも分からない。
だけど、夏樹はおそらく事実を語っている。
信じられないけれど、たぶん、本当に。
姉はため息をついてから、あらためて彼女に訊ねた。
『で、西野綾華と関係を絶ったあなたが、奈々子に何の用事? 何を伝えに来たの?』
夏樹は答えない。言葉を探しているようだったと姉は言う。
やがて、声が聞こえた。
微かに震えた声が。
『奈々子さんに伝えたかったんです。綾華に気をつけてくださいと。私に言えた義理ではないと分かっていますが、どうしても。綾華の執着は、相手が怯えれば怯えるほど強くなっていきます。つまり、奈々子さんの反応が、彼女の嗜虐心を刺激した。昨日の再会について、DMに面白そうに書かれていたんです。だから、何をしでかすか分からないと考えて』
『忠告しに来た、と』
『はい』
『西野綾華……まったく、成長しないゴミ女だね』
姉の苛立った声に、夏樹の真剣な声が続いた。
『そうです、綾華は変わっていません。だから、何か仕掛けてきても反応しないようにと、奈々子さんに伝えてください。もう二度と、絶対に関わらないようにと……私は……っ』
夏樹が言葉を途切れさせ、姉も黙る。数秒が過ぎて……
『本当は、あの頃に寄り添うべきだったのに、できなかった。だから、今度こそ力になりたくて、それから……謝りたかった。奈々子に、ずっとずっと謝りたかったんです』
無言の姉。
夏樹の嗚咽だけが聞こえて、やがて途切れた。
《録音終了》
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