一億円の花嫁

藤谷 郁

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三人のその後

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 姉が夏樹との会話を録音したのは、言葉だけでなく、声に表れる感情や微妙なニュアンスを、私に聞かせたかったから。
 録音を始めたのは、土下座した夏樹を立たせたあと。彼女に気づかれないよう、スマホを操作したと言う。




《録音開始》

『車田夏樹。やっぱりあなた、奈々子をいじめたやつらの一人だったのね。……それで、何しに来たの。10年前の仕打ちに今さら罪悪感を覚えて、謝罪したくなったとか?』
『あの、それは……』

 夏樹の声。
 辛い懐かしさが胸を締めつける。

『昨日、私のSNSに綾華からメッセージが来たんです。横浜のビルで、奈々子さんに偶然会ったと……あ、綾華というのは』
『知ってる。いじめグループのボスでしょ』

 姉の口調には軽蔑が滲んでいる。
 夏樹は黙ってうなずいたそうだ。

『横浜の件は奈々子から聞いたわ。あの女、もう一人の仲間が結婚するんで二次会に来いとか、ふざけたことを言ったそうね。だけど奈々子に逃げられて、あなたを使いに寄越したってわけ? 相変わらずツルんでるんだ、いじめグループで』
『違います。ツルんでなんかいません。私と綾華はもう付き合ってないし、莉央だって今は関係を絶っています!』

 衝撃的な発言に耳を疑う。
 しかし、夏樹のほとばしるような告白に嘘の響きはなかった。

『だったらなぜ、西野綾華とやり取りしてるのよ。SNSにメッセージが来たって言ったわよね』
『私は彼女をフォローしていません。でもプロフィールを公開してるからアカウントを特定されてしまって。綾華がDMを使って一方的に連絡してきたんです』
『……つまり、プライベートな連絡先は教えてないってこと?』
『はい。私は高校卒業後、海外留学を機にスマホを変えました。電話番号もアプリも一新して、綾華とは一切の関わりを絶って今に至ります。だから今回も彼女に返信などせず、すぐにブロックしました。奈々子さんを訪ねたのは私の意思です』

 まさか、夏樹と綾華が……
 想像もしなかった事態に、私はぼうぜんとする。しかも、莉央までが綾華と関係を絶ったなんて。

 信じられない。
 だったらなぜ綾華はあんなことを言ったのだろう。まるで、今も皆と付き合いがあるかのように。
 その疑問は、姉がぶつけてくれた。

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