124 / 305
仲直りって大事だね。 3
しおりを挟む私が前世で原作を読んでから、死んでここに来るまでの時間的な問題や、色々な歪みが存在しているが、私がこの世界に記憶を持ったまま、渡ってきた以上は、もしかすると、この世界を観測した人がいて、その人が作者となって、前世の世界で本を出したという説だ。
そう考えると、この世界は、前世で都市伝説なんかとしてよく、面白がられていた、パラレルワールドの世界なんかでは無いかと考えられる。
つまりは作者の意思など関係ない。私たちを操る大きな力などない。
どちらが正解かは、分からないけれど、前者であるならば、ララに関わるということは、危険を伴う。
けれど、ここまで、自分も手を出して関わってしまっている以上、違うかもしれないと、まずはそう思ってララと関わるべきだろう。でもこの関わらなければならない状況自体が逆に、大きな力に動かされているような気もしなくもない。
考え出すとやっぱりキリがなくて、思考を打ち止める。
……まぁ、いいか。ララの退屈なんか、正直今は、どうでもいいはずだ。アナが学園から居なくなるのだろう。その話をしに来たはずだ、私がクラリスだろうがクレアだろうが私だろうが、ララはそんなに気にしないだろう。そして復讐なんかもする必要性がとにかくない。
「まぁ、いいけど、とにかく私はクラリスで今はクレア、私は私、それだけ。復讐する気もなければ、ララを楽しませるつもりもないから」
「…………そう、退屈ね」
「うんうん、それで?アナと昼に喧嘩していた事でしょ?」
「そうだけど?」
「相談するんじゃないの?」
「するわよ」
「はいはい、どーぞ」
私が言えばララは、またふくれっ面になって、それからぽつりぽつりと話し出す。
「私の、魔法学校時代よりずっと前からの……グローヴにいた時からの親友が、学園を辞めるって言い出したの」
グローヴは、ララの出身地方だ。どこかの貴族の領地だと思われるが、そういった領主のような人物は原作には登場していない。
「……はぁ、…………すまない。やはり俺は君の話を聞きたくない、帰らせてもらう」
突然、サディアスは少し乱暴に立ち上がった。彼がこういったことをあまり面識の少ない相手にするのが珍しくて、私は呆然と見ていたが、ララはサディアスの手を引いた。
「どうして!?……まだ、話し始めたばかりなのに」
「すまない。場の雰囲気を悪くして悪いとは思うが、失礼する」
ばっとその手を振り払ってサディアスは部屋を出ていく。私は彼の目に宿った怒りの色が少し怖くて驚いた。あんな風に怒ることもあるのだと。
「…………私、彼に何か、してしまったのかしら」
「……」
唖然とするララの問いかけに、私も、事情が分からずに、何も答えることはできなかった。
ふとヴィンスが立ち上がり、サディアスのお茶を下げて、全員分新しいものを淹れ直す。その作業中にヴィンスは口を開いた。
「……私は、サディアス様とララ様の折り合いが悪い理由に検討が着きますが、どうしようもない事です。いずれ時が来れば露見する事実ですので、今はお二人で、アナ様の事をお話してはいかがですか?」
……え?今聞きたい。私はララのことより、どちらかと言うとサディアスの方が心配で知りたいのだが。そう思ってヴィンスを見るけれど、言われたララは「そうね」と頷く。彼女はあまり気にならないらしい。
せっかく話出したのに、これ以上、遮るのもなんだか可哀想に思えて、口を噤んだ。
「彼女はアナと言って、昔から、自己主張のあまり強い子じゃないのよ。それでも、魔法使いになりたいっていう、私と同じ夢があって……」
ララは表情を曇らせたまま続ける。
「やっとここまで来たのよ。それなのに、アナったら模擬戦の結果が悪かったっていうだけで、諦めようとするなんて……そんなの私は納得行かない」
大方、やはり、アナから聞いていた事であり、それをただララの口から直接聞いただけなのだが、ララの言い方に少し引っかかる。
「納得行かないって言ってもさ、アナが決めた事なんでしょ?ララが口出しするようなことでもないと思うけど」
「……違うのよ、あの子は、本当は学園を辞めたいなんて思ってないはずだわ!」
「思ってるって、喧嘩のあと、アナと話したけど言ってたよ」
私が言うとララは「え……」と消え入りそうな声を出す。
「勘違いしているって、アナも言ってた。……私も、自分の道は自分で選べる歳だと思うし、友達の進路に寂しいからって口出しするのはあまりいい事じゃないと思うよ」
思った事をそのまま口に出すと、ララはグッと眉間に皺を寄せる。それからお茶を飲んで、ティーカップを両手でぎゅっと握る。
「違うの、そういう事じゃなくて……」
「じゃあどういうこと……?」
「ただ、アナは、私が言ってあげないと、人に気を使って上手く話ができない事も多いし。だから今回の事だって……アナは」
「模擬戦で足を引っ張った事は関係なく、辞めるって決めてたみたいだし、むしろ選択出来るようになったんなら喜ばしいぐらいじゃない」
「違うんだって、アナは学園で出会った今のチームメイトに遠慮してるだけで」
「遠慮しているって言ってたの?」
「それはっ……言っては無いけど」
私が、問い詰めるとララは顔を歪めて、怒っているような表情で私を見つめる。認められないんだろう。
ララとアナとの仲は知っている。いつも一緒で、アナはララの事をいつも頼りにしていて、一見アナの方がララに寄りかかっているようにも見えるが、この話を聞いていても思うが、実際は頼られることによって安心を得ているのはララの方だ。
……まぁ、歳も歳だし、自立は大事だよね。
ちらっとヴィンスを、見れば、彼はやはりさほど興味が無いのか、場違いにニコニコしたままララを見ている。
「ッ、貴方にはっ、分からないのよ!私のアナの事を大切に思っている気持ちなんて」
「ん、そうだね」
「私が、あの子を縛っているって言いたんでしょ!」
「言わないけど」
「いいえ思っているんでしょっ、だって、他の子達も、言ってたの!……ッ、アナの事、場違いだって!」
それは分からないが、そんなにヒートアップしないで欲しい。ララはすぐに手が出るのだから、自重した方がいい。今回のは完全にララの独りよがりだ。多分、正当性が自分に無いとララだって気がついている。
だからここまで怒るのかなとも思うけど。
「でも、……っ、でも、仕方ないじゃない。本当に……昔からの付き合いはあの子だけなのっ、大切な子なの!」
「……」
「クレアには分からないかもしれないけれどっ、合ってないよっ私だって、こんな有名な学校に合ってない!!」
「?」
「皆、変なのよっ!貴族のお友達なんてつまらない!!私はただっ、ただ……」
自分で話しているうちに、認めざる追えなくなってしまったらしく、ララは学園の愚痴を言い始めた。今は環境も変わって、アウガス魔法学校の知人も少なく、そんな中、メルキシスタ、アウガスの二国から貴族を中心に集まっているこの学園がララにとっては、居心地が悪いらしい。
原作でも、貴族連中と彼女の折り合いはめっぽう悪かった。その最たるものがクラリスだった訳だが。
「誰よりも強い魔法使いになりたいだけなのにっ、なんで、こんなにっ…………こんなんじゃっ……っ」
「ララ」
「っぅ……う……うぐ」
彼女はグッと唇を噛んで、ぷるぷると震えながら涙を流した。
貴族が多く、大人になるにつれて増えていくしがらみに、無邪気で我の強いララは随分と頭を悩ませていたのだろう。
ここに来て一番、信用していた子、それも、いつまでも自分のそばに居てくれると信じてやまなかった子が居なくなるとなったら、こうもなるだろう。
「ンくッ…………ひっ……ひうぅ」
本当に子供みたいな泣き方をするので、思わず立ち上がって対面に座っていたララの方へと行く。
その大きな瞳からは、大粒の涙がこぼれ落ちて、テーブルを濡らす。パタパタ音をたてて落ちる涙の雫が、宝石のように綺麗に見えて、彼女の眦を指で拭った。
それから何となく背後から抱きしめる。
20
あなたにおすすめの小説
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。
なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。
超ご都合主義のハッピーエンド。
誰も不幸にならない大団円です。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!
夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。
挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。
だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……?
酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。
※小説家になろうでも投稿しています
幽霊じゃありません!足だってありますから‼
かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。
断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど
※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ
※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる