悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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お祭りなのに悪い予感……。7

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 出来る限り、平民は平民の中で情報を共有し、私達も自分の家に迷惑がかからないように立ち回らなければなりません。

「ララの事もあるから……アウガスは暫く不安定な時期が続くみたいで私も少し気をつけようと思ってるよ……サディアス様のお考えは、貴方々は何か聞いていない?」

 アウガス出身の二人は、相当に気苦労をしているようで、少しくたびれた様子で私達に話を聞きます。
 サディアスは、私達に自分の行動の説明として言ったことは一言だけでした。

「誠意だと、サディアスは仰ってましたっ、自らの土地から賊が入り込んだ事についての謝罪の意なのかもしれません!でもそれ以上の事は……」

 チェルシーが返答を返し、私と同じ解釈だったので何も付け加えずに、彼女たちを見る「誠意……ですか」と呟いてカリスタは視線を落とした。

 そんな時に、勢いよく談話室の扉が開かれました、必然的に視線を皆そちらに向ければ、そこにはララがおり、あたりを見回して私達だけしか居ないことを知って、少し嫌そうな顔をしながら去っていきます。

 それから私達は顔を見合わせて、ぽかんとしました。

「誰かを探していたのですかね?」

 私が言うと皆首を捻ります。彼女は同じ平民の身分ではありますが、私たちとはまったく違う立場に居る人です。

 ですからなんとはなしに誰も声をかける事が出来ず、ただ呆然と彼女の事を見てしまうのです。

「クレアでは無いの? 今日はブレンダに呼び出されて練習場の飾り付けに行っているでしょう?」
「そうかも! クレアはララと仲が良いもの、ね、アイリ」
「うん、それに、ララはいつも共有スペースに顔出す事ないもんね、ミア」

 皆、同意見でクレアを探していたのではないかという話になります。

 けれど、誰も彼女が練習場にいるのを教えてあげようという話にはなりません。ララは貴族の立場になる可能性がある、難しい顔をしている時にあまり深く知らない私たちが、下手に話を振って、顔を覚えられると言うのは得策だと思えません。
 
「……」
「……」

 それに今、この場にいる私達の一番近い貴族であるクリスティアン様やサディアスはララとはあまり良い関係とは言えません。

 すこしローレンス殿下と交流を持ち始めたとはいえ、まだまだ、ララ自身とは蟠りがあるはずです。

 ……そのはず、なのですけど。

 私達のチームの一番の問題児であり、トラブルメーカーであり、大切な友人の事を考えました。

 彼女はララと同じように、本来であれば、私達のような人間が関わるべきでは無い人物です。彼女自身に自覚があるのか無いのかわからないのがまた問題なのですが、クレアは、敵対する人物それぞれと仲がいいんです。

「……クレアは、本当に顔が広いですね。ローレンス王太子殿下とお話している時も、堂々としているし」

 その理由については、皆、ブロンブバッチの中では誰も直接口にはしないが、暗黙の了解として存在する噂のような事実のようなものが存在しています。

 彼女は、失恋から罪を犯した、メルキシスタの大貴族、クラリス様ではないかという仮説です。

 私達は一目だって見たことなどありませんでしたが、髪や瞳の色、たまに彼女のつかうお嬢様のような言葉遣い。それらがすべてクラリス様のものと一致していて、さらにはローレンス殿下と対等に話ができる。

「彼女はどうして、この学園にいるのか、二人はしならい?」

 私達はふるふるとかぶりを振って分からないということを伝えます。

 その事については、彼女が話をしてくれるまで待つとチェルシーとも決めていますから、聞いてもいません、ただきっとサディアスの事もありましたから、もう少しで話をしてくれると私は踏んでいます。

「そうよね。私達にとっては大きな問題だから、もし話せる場合にはいつでも呼んでください」
「ええ!そのつもりです!カリスタ」
「またお茶をしましょう。まずは、記念祭、それぞれ実りあるものであると良いですね」

 私が言えば、マリアは「がんばるよ!」とキュッと拳を握って、今日はそこで解散となりました。

 談話室から出ると、私の郵便棚に何か手紙が入っているのが見えました。チェルシーに一言言って、待ってもらい、手に持って帰ってくるとそこには、もう半年以上前に退学となった、リア・ド・アシュバートンの名前があります。

 彼女は一番下の爵位とはいえ貴族の方です。そして私達が、クレアを退学へと追い込もうとした時に頼った人でした。

 最終的には、彼女はクレアに非道を働き、クレアの家名である、カトラス家というメルキシスタの両親の方々が学園に訴えかけ、罰として退学をさせたという事になっています。

 ただ、メルキシスタで、カトラスなどという家系を聞いたこともなければ地名も存じ上げません、ただ貴族であるリアが、退学に追い込まれたということは事実です。

 きっとクレアの背後にある大きな力が働いたのだと思うのですが、それに納得のいっていない人が大半でした。それはもちろん、リア自身もだと思います。 

「チェルシー、貴方にも連名で私たち宛に送られています」       

 宛名には、私の名前の下にチェルシーの名前もあります。

「……そうですねっお部屋で一緒に見ましょう!シンシア!」
「そうしましょう」

 二人で、私の部屋へと向かい、テーブルを挟んで、ペーパーカッターで、封を切りました。
 中には少し荒れた文字で短く、文章がつづられていました。

『記念祭の最終日、公開試合時間にこの場所に来なさい、さもなければ、全力を持って貴方達の親兄弟、友人を皆殺しにするわ』

 ゾッとする文面です。彼女の怒りが伝わってくるようで、それでもいつかこんな日が来るのではないかと思っていました。

「……っ、……」

 チェルシーは顔を青くさせて、その手紙をじっと見つめました。

 リアは、私達の事、もしくはクレアの事を恨んでいるのだと思います。だって、本来であれば私たちが、彼女にお願いしなければ、私達がきちんと自分たちだけで解決をしていれば、リアは退学をしなくて済みましたし、クレアは酷い事をされずに済んだんです。

 記念祭中は、いつもよりも人の出入りが激しく、学園街の治安が悪くなるほど、騒がしくなります。そんな最中に、学園街の外れの方へと呼び出しだなんて、嫌な予感しかしません。

「チェルシー、サディアスに心の底から謝り、対処してもらいましょう、メルキシスタにも貴族の知り合いがいるかもしれません」

 そんな呼び出しに応じては、何をしてもいいと言っているようなものです。

 今は、本当にリアが私達の家族や家に何かするのかは分かりませんが、予防策として、サディアスに相談して、いざとなった時に助けてくれる貴族と渡りを付けることを優先するべきです。

 私の言葉に、チェルシーはさらに、酷い顔をして、それから自らの両手でその顔を覆いました。

「…………、……、で、出来ませんっ!!そ、そんな、恥知らずなこと!ただでさえ、私は、周りも見えずにあんな事をして、許されない事をしたはずですっ!!」
「チェルシー!それとこれとは話が別ですよ!クレアへは、私達はそばにいて罪を償おうと決めたではありませんか!」

 私達のせいで起こった事、それはとても同じ女性である私達にとって、許せないことでした。

 私達はクレアを襲った実行犯である三人が退学して随分と後に、ミアとアイリ、それからカリスタから、前のリーダーであった女性二人が犯した罪について聞かされました。

 それまで、着実に培ってきた、クレアとの関係性が崩れて行くのをかんじるのと同時に、どうすれば許されるかという事をチェルシーと何度も話しました。

 けれど結局、許すことなんか出来ないだろうと思い、ただ、真摯に私達は私たちが出来る力を持って、クレアが必要としてくれる時まで待とうと言う結論をだしました。

「そうですっ!だから、このことだって私達の罪でしょう?!シンシア!だから、私は行くべ気だと思います!っ、他人に頼るなんて…………」

 チェルシーの言いたい事は分かります。けれどそれだけ危険なんです。

「危ない橋を渡るべきではありません、チェルシー!」
「っ、危なくなんてないですよっ、シンシア!私達は学園の生徒ですよっ!リアがこの呼び出しで満足するのなら行くべきです!」

 チェルシーや私は確かに魔法玉を持っていて、戦う事が出来る。

 ……けれど、本当にそれだけでしょうか?

 確かに負けるはずがないと、心の奥底で私も思っています。魔法玉を持っている私達が負けるはずが無いのだと。

 でも、リアはそんなに愚行をするのでしょうか、何かが引っかかっている気がしてなりません。

「もし、何かされても私達なら対処できますっ!シンシア!私はもうっ、不安になるのを、辞められるのなら辞めたいんですっ」

 ……あの話を聞いた時から、ずっと私達は、辞めた三人からの復讐を恐れていました。確かに、会いに行って終わるのなら、その方がいいのかもしれないと、思う気持ちがあります。

 涙を流しそうになりながら震えるチェルシーに、私は安心して欲しくて、肩に手を添えました。

「チェルシー……落ち着いてください、まだ公開試合の日までには時間があります、少し考えましょう?」
「…………わかり、ましたっ」

 そうは言いましたが、私達二人の中では既に、答えは決まっていたような気がします。けれど、危ないと二人ともわかっているからか、たくさん悩んだ末の一番いい結論だと思いたいからか、私達は考えているフリをして、ただただ手紙を眺めました。


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