悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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人それぞれの企みと行動……。7

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 ディックは、オスカーの怪我を冷やすために側に置いていた水桶を片付けて、それからきっちりソファに座って、膝の上でキュッと拳を握って大人しくなった。

 オスカー待ちなのか、癖で左右にゆらゆらしつつキュッと口角を上げた。オスカーはシャツのボタンを止めつつ、透明なガラスの茶器に何やらお茶を淹れて持ってくる。

「紅茶?」
「いいや……ディックの好みなんだがカモミールのハーブティだ。ミルクと砂糖入れればそんなに飲みにくい味じゃねぇえから、お前も飲め」
「うん、いただきます。……そういえば、私にハーブティくれた事もあったよね? オスカーは、ハーブティーが好きなの?」
「あぁ……メルキシスタの中でも寒い地域出身だからな、華やかで色んな種類のもん見るとつい、試してみたくなるだけな。甘いもんも、食べ物も年中ここには色々あんだろ」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ寒さには強いの?」
「……どうだろうな、たいして変わらねぇよ」
「嘘だよ、オスカー暑がりだもん。だいたい寝る時にも半裸だし」

 ディックの言葉に確かに、と思う。前にも彼は寝起きに半裸だったし、今だって私が言わなければ服着なかっただろうこの人。これだけ暑がりが顕著なら寒いのだって得意だろうな。

「……余計なこと言うなよ。お前だって、べそべそ言いながら俺にすがりついて寝てるだろ」
「あー!なんでそういう事いうんだよ!」
「ディックが、わざわざ俺の事話すからだろ?」
「でもさぁ!」

 どうやら二人とも半裸で寝ていることと、その相手に縋り付いて眠っている事は、私には知られたくなかったらしい。

 別に、その辺は人それぞれでいいじゃないかと思いつつ、私はカモミールティーに言われた通り、お砂糖とミルクをたっぷり入れて飲んでみる。

 カモミールの苦味を程よく中和してくれていて確かに飲みやすい。

「ん……美味しい」

 思わず口にすると、オスカーに絡んでいたディックは、ばっとこちらに向いて「でしょー!」と自慢げに言った。彼もミルクをたっぷり入れていて、少し温いお茶をごくごく飲む。

 オスカーは何も入れずにそのまま飲んでいて、嬉しそうなディックをさらに嬉しそうに眺めていた。

 …………コーヒー入れてくれた時、サディアスもこんな表情してたな。

 オスカーとサディアスは私から見るととてもよく似ているんだ、だから、こういった些細な表情で彼の事を思い出してしまう。

 こういう、他人が喜んでくれている事が何より嬉しいというような表情のそのオスカーにとってディックの枠に、サディアスは私を当てはめていてくれている。

 重たい愛情だ。……重たいと言うと悪い意味に聞こえるけれど、大きなと言えばいい具合によく愛されている感じがする。

 そうそう、だってサディアスは情緒不安定な時でなければ、紳士的で少し心配性な優しい人なのだ。

 あ、でも、情緒不安定じゃない時が珍しいローレンスは平常時でも別に紳士的でも優しくもない。

 ただローレンスはこう、普段から張り詰めている雰囲気がとても柔らかくなっているのがギャップというか、手を置いたらそのまま沈み込んでいきそうな闇深い心地がするというか。

「で、お前結局、殿下をどうするつもりなんだ?」
「…………あ、うん。呪いの力より、私を選んで!って、な感じだね」
「はぁ?……冗談やめろよ、多分そういう話で落とせる人じゃない」
「うーん」
 
 思考を止めつつ、適当に言うとオスカーは、眉間に皺を寄せて、ディックに向けていた表情とはうって変わって懐疑的な表情を私に向けた。

 その変わりようを面白く思いつつも、私は記憶を引っ張りだして、今まで誰にも言わなかった、ありとあらゆる全部を話し始める。

 だいぶ長い話になるのだが、この話末の私の結論を納得して貰うためには必要だと思ったからだ、そのうえで意見を聞きたい。

 ローレンスの中にだけある、一番の問題とはなんなのか。

 もっぱら困っているのはそれなのだ。当事者、それもローレンス以外に事情を詳しく知っている人に聞きたいが、それは果たして、誰になるのだろうか。そう考えながら、二人に話をした。




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