悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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タイムリミットが迫ってる……らしい。2

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 そんなサディアスを温めつつ、私は身近な猫である、クラリスを思い浮かべて凶暴……だよな。と考えたが、彼女は猫であって猫では無い。

 だがしかし、犬だってきちんと躾をすれば、凶暴さは薄れると思うのだが。

「そうですか? 私は猫よりも犬の方が好きです。だって、どれほどお世話をしても、猫は素っ気ない態度をとるじゃないですか」
「それもいい所ですっ! 私たちはお世話をさせてもらってるんですから、見返りなど要求するべきでは無いんです!」
「お世話させて……貰っている?」
「その通りです! あの愛らしい姿を毎日見るために私達は猫を監禁しているも同然なのですからっ、懐けというのは傲慢ですよ! シンシア」
「あ、新しい考え方ですね。個人的には共存関係のつもりでしたから」

 チェルシーの熱い語りにシンシアは、それほどペットに対して強い主張を持っていたわけではなかったようで、目をぱちぱちと瞬かせながら言った。

「そうですねっ、共存という生き方もあるかもしれませんっ、ただ、私はそれでいいんですっ! ただ懐いてくれなくても……そばにいてくれるだけでっ……!」
「まぁ、なんかそういうのって恋愛観にも似てるよね」

 チェルシーがどんどん熱くなって行くので、ある程度のところで別のベクトルに話をかえる。

 サディアスは眉間に皺を寄せたまま、カクンと頭を落として眠ってしまった。

 きっとサディアスのような人ほど猫を飼うべきだ、仕事ばかりしていて、眠る時間がおかしくなったりする彼には、常に面倒を見てあげる対象がいた方が安定する。
 
 ……それに、夜一緒に添い寝してくれる猫なら尚更良い、きっといい湯たんぽ代わりになってくれるだろう。

「それはっ……どういう意味ですか?」
「そのままの意味だよ。単純に、猫好きでチェルシーのように言う人は恋人にも同じように、いっぱい愛情を注ぎそうじゃん? シンシアみたいにお互いを尊重し合うのだって愛情の一種だよね。そういうペットに対する趣味というか愛し方って、人間に対しても多少は反映されるのかなって、ね」
「なるほどっ! じゃあ私はどんな男性がお似合いだと思いますかっ?」
「え?」

 思わぬ切り返しに首を捻る。どんなと言われても、所詮ペットの話しかしていないのだ、相性を聞かれても分からない。が、まぁ、さっきの話を聞く限り……。

「うーん……リスペクトできる人とか、好きになった人だと思う。チェルシーにとっての猫ちゃんみたいに、好きになれた人なら、いっぱい尽くせて幸せになれそう!」

 適当過ぎる回答だが、変な事は言っていないだろう。ようは好きになった人が相性がいいって事にしておいたのだ。

「猫ぐらい、好きな人……ですか!……参考にします!」
「ほ、程々にね」
「クレア、私はどうですか?」

 シンシアも診断してほしいとばかりに、キラキラした目でこちらを見る。私の独断と偏見しかない相性診断なだけあって心が痛いが、仕方ない。

「シンシアは……チェルシーとは逆だよね。シンシアの事好きになってくれた人と一緒にいると尊重しあえて意思疎通もきちんと取れて苦労しなさそう」

 普段のシンシアの事も考えると、そんな感じだ、彼女は割と芯が強い。落ち着いているし、あんまり恋愛にも興味が薄い、人の話を聞いている時は楽しそうだが、自分から気になった人の話などはしないので、そういうことだろう。

 それならば、無理せずともシンシアの事を好きになってくれた人とある程度の距離を保ちつつやっていった方がいい。

「シンシアは芯が強いからね。きっとそのうち惚れたって人が出てくるよ」
「そうですか? あまり想像はつきませんけど……心に留めて起きます」
「うん、そんな感じでよろしく」
「それで、クレア自身はどうなんですか?」
「……私?」
「そうですよ! どんなペットが好きなんですか?」

 シンシアとチェルシーは興味津々といった感じに聞いてくる。この流れで言うペットのことといえば私の恋愛観については質問されているのかもしれない。

 二人には三股していることとか、恋愛についてはいろいろ話をした。三股ぐらいなら貴族にはよくあるからと二人は特に引っかかっている様子はなかったものの、そんなゆるゆるな私に話せる恋愛観などない。

 ただでさえ、現在もローレンスを好きというと、色んな人に意味不明という顔をされるのだ、本人にだってされた。

 まあ、それについて直接話すと長い長い話になってしまうから、私は、もうなんでもいいかと思い、飼いたいペットについて考えた。

「猫……猫ちゃんが、好きなんだけど……でも、飼いたいかって言われると違うというか……」
「どうして違うんですかっ?」
「猫が嫌なら犬にしたらいいですよ」
「いや、犬も飼えないというか……」

 そうなのだ。そもそも具体的に考えると、私はいつも二の足を踏んでいて何かを飼った事などない。

「……私に飼われるわんちゃんも猫ちゃんも……可哀想だと思うから。あんまり構ってあげられないし、知識だってそれほど持ってないし、飼うって決心がつかないよ」
「……そうですか……それだと、クレアの恋愛はどうなってしまうのですか?」
「そうですね! それだとクレアが誰も愛せない人のようになってしまいます!」
「そ、そうなるの?」
「ええ!つまり!……つまり!ええと!」

 チェルシーはビシッと何か決めようとして、上手く決まらずに、いい淀み、それからやっと思いついたというようにニコッと微笑んで言った。

「クレアは飼う側ではなく飼われる側ということですっ!」
「……そうはならないと思いますが……」
「いいんです、シンシア! えっとこれはその、クレアはどんな愛情にも対応可能ということですからっ! 誰にでも愛されて、望む情を返せる! ということです!」

 ……そんな、オールマイティみたいに言われてもなぁ……。なんだか複雑な気分だ。

「そうですか?……まぁ、そういう意味ならクレアらしいですね」
「そうですよねっ! これ面白いですね! 今度、女性とお茶会をする機会があれば、ぜひ使ってみたいです!」
「確かに盛り上がりそうですね」

 ……新手の心理テストみたいなノリなのかな?

 解釈をどんどん自分で作れるのは楽しいだろうが、私の適当ペット診断が、あんまり普及するのは避けたい。けれど、どうにも楽しそうな二人を見ていると、口止めする気にもなれずに「いいんじゃない」と適当に口にした。

 そんなところでカラーンと予鈴の音が聞こえてくる。私達は慌ててサディアスを起こして、ポジション別クラスへと出発した。

 

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