13 / 25
第十三章
「突き落としたのは……? 」
しおりを挟む
寒い、冷たい……。
体が重い、沈んでいく……。
誰か……助けて……。
「っ……!? 」
突然現実に引き戻された体に、激しい痛みが走る。
辺りを見渡せば、視界に映るのは心電図と白い天井、ベッド横にある点滴だった。
「……え? 」
良は、今の状況を理解出来ずにいた。
思わず間の抜けた声が出る。
そこへちょうど入ってきたのは悠だった。
「良っ! 良かった! 気がついたんだな! 」
涙ながらに近寄ってくる悠を良は驚いて見ていた。
「良、覚えてるか? お前川に落ちて……」
思い出したくもない、と言った様子で話す悠に、良も頷いて言う。
「うん、覚えてる……」
洋介と川の付近まで行ったこと、洋介に突き飛ばされ、車椅子から川に落ちたこと、担任の浅間に助けられたが再び意識を失ったこと……。
しかし、良は洋介に突き飛ばされた事実を伏せた。川に落ちてしまった良を見ていた洋介の表情に、決して良を川に落とそうとして落とした訳ではないことに気がついていた。
どうやら、洋介が良や柊真を嫌うのには理由がありそうだと、落ちる前の洋介との会話で思った。
しかし、その理由がわからない。
洋介の性格からして、聞いて素直に話すほど簡単にはいかないだろう。
「……なぁ、良」
言いにくそうに口を開きかけた悠は、一度聞くかどうか迷ったように顔を歪め、俯いてからやはり聞こうと口を開く。
「……誰が、お前を川に落としたんだ? 」
悠の問いも最もだろう。一人ではどうやったって川に落ちようがない。誰かに突き飛ばされるかしなければ。
「……それだけは、よく覚えていないんだ……」
我ながら都合の良いものだと思ったが、薄らと困ったように笑えば、悠は眉根を寄せて「そうか……」と言って俯いた。どうやらそれ以上聞いても無理だろうと思ったのだろう。そんな悠に、良は心の中で謝った。
良が意識を取り戻してすぐ、両親も病室へ駆けつけ、医師から一週間の入院を知らされた。良としては内心面倒だとも思ったが、両親や悠のあまりの心配ぶりに、大人しく了承した。
そして、入院して三日が経った頃、浅間が柊真を連れて見舞いに訪れた。
「やぁ。思っていたより元気そうだね。体調の方はどうだい? 」
浅間に問われ、良は苦笑いで答える。
「はい、順調に回復していってると聞きました。それほど辛くはありません」
「そうか……良かった。ん? 柊真君、そんなとこにいては良君が顔を見られないよ。おいで」
浅間の振り返ったほうを見れば、柊真が仕切り用のカーテンからこちらを心配そうにうかがっているのが見えた。
「柊真、来てくれてありがとう」
入りづらそうにしていた柊真に笑いかければ、柊真はゆっくりと良の傍まで来て、涙を目の端に浮かべながら何度も頷く。その様子に、良は心底驚いた。確かに自分たちは友達だ。しかし、柊真が学校の中の誰よりも自分を心配してくれていたことがわかった。
「……ありがとう。柊真……」
良は、そんな柊真に改めて心からの礼を言った。
第十三章 終
体が重い、沈んでいく……。
誰か……助けて……。
「っ……!? 」
突然現実に引き戻された体に、激しい痛みが走る。
辺りを見渡せば、視界に映るのは心電図と白い天井、ベッド横にある点滴だった。
「……え? 」
良は、今の状況を理解出来ずにいた。
思わず間の抜けた声が出る。
そこへちょうど入ってきたのは悠だった。
「良っ! 良かった! 気がついたんだな! 」
涙ながらに近寄ってくる悠を良は驚いて見ていた。
「良、覚えてるか? お前川に落ちて……」
思い出したくもない、と言った様子で話す悠に、良も頷いて言う。
「うん、覚えてる……」
洋介と川の付近まで行ったこと、洋介に突き飛ばされ、車椅子から川に落ちたこと、担任の浅間に助けられたが再び意識を失ったこと……。
しかし、良は洋介に突き飛ばされた事実を伏せた。川に落ちてしまった良を見ていた洋介の表情に、決して良を川に落とそうとして落とした訳ではないことに気がついていた。
どうやら、洋介が良や柊真を嫌うのには理由がありそうだと、落ちる前の洋介との会話で思った。
しかし、その理由がわからない。
洋介の性格からして、聞いて素直に話すほど簡単にはいかないだろう。
「……なぁ、良」
言いにくそうに口を開きかけた悠は、一度聞くかどうか迷ったように顔を歪め、俯いてからやはり聞こうと口を開く。
「……誰が、お前を川に落としたんだ? 」
悠の問いも最もだろう。一人ではどうやったって川に落ちようがない。誰かに突き飛ばされるかしなければ。
「……それだけは、よく覚えていないんだ……」
我ながら都合の良いものだと思ったが、薄らと困ったように笑えば、悠は眉根を寄せて「そうか……」と言って俯いた。どうやらそれ以上聞いても無理だろうと思ったのだろう。そんな悠に、良は心の中で謝った。
良が意識を取り戻してすぐ、両親も病室へ駆けつけ、医師から一週間の入院を知らされた。良としては内心面倒だとも思ったが、両親や悠のあまりの心配ぶりに、大人しく了承した。
そして、入院して三日が経った頃、浅間が柊真を連れて見舞いに訪れた。
「やぁ。思っていたより元気そうだね。体調の方はどうだい? 」
浅間に問われ、良は苦笑いで答える。
「はい、順調に回復していってると聞きました。それほど辛くはありません」
「そうか……良かった。ん? 柊真君、そんなとこにいては良君が顔を見られないよ。おいで」
浅間の振り返ったほうを見れば、柊真が仕切り用のカーテンからこちらを心配そうにうかがっているのが見えた。
「柊真、来てくれてありがとう」
入りづらそうにしていた柊真に笑いかければ、柊真はゆっくりと良の傍まで来て、涙を目の端に浮かべながら何度も頷く。その様子に、良は心底驚いた。確かに自分たちは友達だ。しかし、柊真が学校の中の誰よりも自分を心配してくれていたことがわかった。
「……ありがとう。柊真……」
良は、そんな柊真に改めて心からの礼を言った。
第十三章 終
0
あなたにおすすめの小説
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる