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4.冬
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しおりを挟む「……あのさ、とりあえずデートしない?」
「えっ?」
「お互いをよく知るためというか……それからでも、宇佐美くんがいいたい“言葉”は遅くないかなって」
「……そんなこと言って逃げようとか考えてないですよね?」
僕は今、春陽先輩に告白するつもりだった。もうそこまで出かかっていた『好きです』という言葉は先輩のキスによって飲み込まれ、もうすぐ出会ってから一年経つというのに僕たちは今更初々しくデートをするらしい。
そう言ってまた春陽先輩が逃げるつもりなんじゃないかと思ったけれど、鼻の頭をちょんちょんっとつつかれながら「深読みしないで」と言われたので信じてみることにした。
「俺たち、始まりがちょっとあれだったから……宇佐美くんが気になるなら少し遠いところに行ってもいいし、夏みたいに家でゲームするとかでもいいし。どう?」
「でも本当に、僕といることで春陽先輩が傷ついたりすること、ないですか?」
「傷つくことはあるかもしれないけど、それを今から考えても仕方ないのかなとは思う。ただ、今回みたいに逃げてばっかりなのはやめる。ちゃんと宇佐美くんと向き合って話をして……そうやって“二人”で成長していけたら嬉しい、かな」
春陽先輩は照れたように頬を赤く染めて、小さく笑った。僕がプレゼントであげた白いマフラーを巻いているのも相まって、何とも愛らしく見える。
「……なんか、やばいかもしれません」
「なにが?」
「世界がキラキラして見えるんですけど、僕、目が悪くなったのかな」
異常なほど春陽先輩やその周りが輝いて見える。まるでアニメやゲームに出てくる妖精が、光る粉を振りかけた時のように。
見間違いかと思って目を擦ってみたけれど、その輝きは相変わらず僕の目には映っていた。
「あはっ、ふははっ!」
「えっ! 何で笑うんですか?」
「だって、ふふっ。かわいいねぇ、宇佐美くんは」
「もしかして今、子供扱いされてます?」
「違う違う、そうじゃなくて……俺も世界がキラキラして見えるよって言いたかったんだよ」
これは後から調べたことだけど『恋をすると世界が違って見える』という現象らしい。例えば家族や大我なんかはいつ見ても同じようにしか見えないけれど、春陽先輩だけは輝いて見える。
つまり、好きな人だけはキラキラして特別に見えるのだ。
意味が分かっても子供っぽいなと思ったけれど、春陽先輩も同じだと言ってくれたからよしとしよう。
「宇佐美くんはさ、俺とデートするなら何したい? どこに行きたいとかでもいいけど」
「もう一回、あの海に行きたいです」
「海? 夏に行ったところ?」
「はい。寒い時期でも暑い時期でも、あの場所に先輩と行きたいです」
「冬にも線香花火って売ってるのかなぁ」
「先輩は花火がしたいですか?」
「あの時すっごく綺麗だったから。宇佐美くんとまた一緒にしたい」
「じゃあ、線香花火を探すデートも追加してください」
「それはいいね。色んなお店に行ってみよ」
隣同士で座りながら話をしていた僕らはいつの間にかリビングの床に横になっていて、春陽先輩は僕の腕を枕にして寝転がっていた。
もう忘れかけていたけれど今日はクリスマスだし春陽先輩の誕生日。
それなのにクリスマスらしいチキンや料理はないし、誕生日なのにケーキもない。あるのはお揃いのマフラーと先輩が淹れてくれたすっかり冷めた紅茶。
外ではずっと雪が降っていて、家の中は空調の音と僕たちの笑い声だけが響いている。
先輩と出会って初めてのクリスマスで誕生日なのにあまりにもぐだぐだで、でもそれがある意味僕たちらしいのかもしれない。
「来年の誕生日は、ちゃんと一日中一緒にいたいです」
僕の言葉に春陽先輩は驚いたように少し目を見開いて「来年も一緒にいてくれるの?」と小さく言葉を漏らした。
「もしかして僕、重いですか……?」
「いや、ううん、そんなことない! ただ、宇佐美くんの“これから”に俺がいることがびっくりしたというか」
「……言っておきますけど、生半可な気持ちで今日一日、先輩を待っていたわけじゃありません。春陽先輩より2歳も年下で生意気だって思うかもしれないですけど、僕はどうでもいいと思っている人と来年の話なんてしないです」
春陽先輩の瞳がきらりと光って、目元にはじわりと熱が浮かぶ。ぎゅっと抱きしめると同じように抱きしめ返してくれて、このまま一つになってしまうかと思ったくらいだ。
「……キスしたい、恵」
「あ、い、今?」
「やだ?」
「……そんなわけないじゃないですか」
細い顎を掬って口付けると、甘い熱が唇から全身へ伝わった。
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