【完結】君を上手に振る方法

社菘

文字の大きさ
40 / 41
4.冬

10

しおりを挟む


 クリスマスの翌日、リビングで寝ていた僕たちは志鶴先輩の「朝ですよ、お二人さーーーん!」という大きな声で目が覚めた。

「うわぁっ!? おおおおはようございます、志鶴先輩!」
「はよ。会って早々お泊まりとか随分積極的だな宇佐美ぃ?」
「いえ、あの、そういうんじゃなくて!」
「“そういうんじゃなくて”? てめぇ、高1のくせにあわよくばとか考えてたんじゃねーだろうな?」
「違います違います、本当に何もしてませんからッ!」

 目を開けると般若のような顔をした志鶴先輩が僕を覗き込んでいて、朝からゾッとした。寒気を感じて体が震えたのか悪寒だと思ったけれど、寒いのも納得したのは外が一面銀世界だったからだ。

「自分の家で兄が男と寝てる生々しい現場、見るの嫌だったんだけど……」
「千冬さん! 昨日会えなかったので言えてなかったですが、カフェで待てと言ってくれてありがとうございました」
「しかも礼儀正しいし……は~、憎めないじゃん」

 げんなりした顔をしている千冬さんに頭を下げると、なぜか更にげんなりされた。なぜそんな顔をされるのか分からなくてキョトンとしていると、志鶴先輩から「総じてお前が悪い」と言われながらデコピンをされて完全に目が覚めた。

「い……ッ!」
「んん……ちょっと、しづる……いじめないで……」
「ったく、無防備なんだよお前も。なんかされたらどーすんだよ。男は全員狼なんだぞ」
「じゃあ俺も狼だから、宇佐美くんに手出したかもね……」
「……春陽のそういう話、まじで聞きたくない」

 耳を塞いでいる千冬さんにくすくす笑いながら、春陽先輩は眠そうにあくびをして起き上がる。とろんとしている目を擦った先輩は僕の顔を覗き込んで「おはよお、うさみくん」と、舌足らずな声で呟いた。

 寝起きの春陽先輩は夏休み中も見たけれど、一日経って世界が一変してから見ると破壊力が違う。夏休み中よりも攻撃力が上がって、僕の心臓はぎゅっと締め付けられたまま壊れてしまうかと思ったくらいだ。

「二人とも、昨日はありがとね」
「……とりあえず、解決したってことでいいの?」
「そうなる、かな」
「お騒がせしてすみませんでした」

 寒いからと春陽先輩がホットミルクを作ってくれた。それをリビングで飲みながら、志鶴先輩と千冬さんから謎の事情聴取が始まった。

「宇佐美先輩と会った時から薄々気づいてたけど、君……恵くんと春陽は恋人同士ってこと?」
「友達以上恋人未満的な感じ?」
「えっ、友達以上恋人未満なんですか!?」
「……お前ら一体、一晩なにしてたわけ?」

 志鶴先輩が呆れたように溜め息をつく。ただ、先輩の言うことはもっともだ。

 昨夜のことをよく思い出してみると、僕は告白しようとしたのだけれどそれを春陽先輩に止められた。僕たちの関係は『恋人のフリ』から始まったので、お互いのことをもう少し知ってからでも『告白』は遅くないと言われたのだ。

 そこまで思い出して納得する。確かに今の関係は春陽先輩の言うように『友達以上恋人未満』というものかもしれない。

「もしかしたら卒業する頃に宇佐美くんから振られるかもしれないし」
「はぁ? もし本当に春陽のこと振るつもりならぶっ飛ばす」
「そんなことしませんよッ!」
「俺が泣かないように、上手に振る方法考えておいてね?」
「だから、そんなことしませんってば!」

 春陽先輩を上手に振る方法、なんて絶対に、1ミリも考えたくない。そんなことを考える暇があったら先輩とのデートのプランを考えるか、先輩が卒業した後の関係の続け方を考えたい。

 そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、春陽先輩はおかしそうに笑いながら「ごめんね」と言うので、僕は結局振り回される。惚れたほうが負け、とはよく言ったものである。

「まぁ、お前たち二人が納得してるなら俺は何も言わないよ。でも、文化祭の時みたいなことがまたあって春陽を泣かせるようならぶっ飛ばす」
「もう、志鶴は暴力で解決しようとしないでよ。あの時は仕方ないって……俺もどうしたらいいのか分からなくて焦っちゃったのも悪かった」
「文化祭って、恵くんのストーカーが春陽との写真をばら撒いたってやつ?」
「ストーカーというか……ただ熱心な子だったというか」
「同じでしょ。僕ならそいつをぶん殴る」
「千冬は志鶴の背中見て育っちゃったなぁ」

 あちゃ~と言いながら春陽先輩は肩をすくめているけれど、大して気にしていなさそうだった。文化祭の後はきちんとお断りをしたから、ちゃんと分かってくれたのだと思う。これでまだ付き纏われていたのなら、千冬さんの言うように拳で解決していたかもしれないけれど。

「とりあえず……後悔しないようにしなよ、二人とも。お互いの気持ち分かってんのに、変にすれ違うのやめな」
「ん……ありがとう、志鶴」
「千冬さんも、本当にありがとうございました」
「別に……春陽の相手は大変だと思うけど、頑張れば」

 僕の気持ちはいつ日の目を見るだろうか。

 ただきっと、いつかは報われるだろうと変な自信がある。

 たった二文字の言葉を春陽先輩に言える日が、今から待ち遠しかった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~

夕凪ゆな
BL
「来週の木曜日、少しだけ僕に時間をくれないか」  学園の太陽と慕われるセオドリックは、副会長レイモンドに告げた。  というのも、来たる木曜日はレイモンドの誕生日。セオドリックは、密かに、彼を祝うサプライズを画策していたのだ。  しかし、レイモンドはあっさりと断る。 「……木曜は、予定がある」  レイモンドをどうしても祝いたいセオドリックと、独りで過ごしたいレイモンド。  果たして、セオドリックのサプライズは成功するのか――? 【オムニバス形式の作品です】 ※小説家になろう、エブリスタでも連載中 ※全28話完結済み

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

「呪いを解くには毎日可愛いと言ってください」と嘘をついたら、氷の聖騎士様が本気で口説きにかかってきました

たら昆布
BL
間違って呪われた青年と呪いを解除したい騎士の話 番外編はその友達たちの話

とあるΩ達の試練

如月圭
BL
 吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。  この話はフィクションです。更新は、不定期です。

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

君の1番にならせて‼︎

小麦
BL
【ツンデレ一途微執着年下攻め×無意識翻弄鈍感年上受けの幼馴染BL】  高2の夏希には学校に憧れであり推しの男子がいる。その男子の恋路を応援したものの、推しが幼馴染と付き合い始めたのを見て夏希はショックを受ける。  そんな夏希は、推しの彼女の弟であるもう1人の幼馴染・晴に話を聞いてもらうことにする。1つ歳下でツンデレ気味な晴が不機嫌ながらに夏希に告げた言葉は──?

腐男子ですが何か?

みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。 ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。 そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。 幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。 そしてついに高校入試の試験。 見事特待生と首席をもぎとったのだ。 「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ! って。え? 首席って…めっちゃ目立つくねぇ?! やっちまったぁ!!」 この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。

【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; ) ――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ―― “隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け” 音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。 イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――

処理中です...