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49 おまえは我の死神だから(イアンside)
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◆おまえは我の死神だから(イアンside)
胸に抱かれながら。クロウは、つぶらな瞳で我を見上げたまま、告げた。
「イアン様、僕をずっと、そばに置いていただけませんか?」
そ、それって、どういう意味だ?
結婚か? プ、プロポーズか? 我の伴侶になるということか?
いや、それはまだ早いんじゃないか?
しかし、家族に紹介をしたし、早くもないのか?
いやいや、そもそも男同士だし。なに飛躍した馬鹿なことを考えているのだっ。
などと。激しく動揺して。目を丸くした。
「ずっと? 納品したあとも、ずっと、この城にいるということか? 我の、そばに?」
思わず確認してしまう。クロウの真意がわからなくて。
「お許しを、いただけるなら」
するとクロウは、我からそっと身を離し。その場で、地に膝をついた。
あの、印象的なマントが、ふわりと空気を含んで、クロウを中心にして、黒く丸い円を描く。
初対面のときも、そのように広がったマントに。彼の美しさに、目を奪われたのだと。思い出した。
「陛下に、永遠の忠誠を誓います。僕が陛下を、バミネから守ります。必ず、イアン様を自由の身にしてみせます」
あぁ、忠誠かと思い。ちょっと、がっかりしてしまった。
いや、忠誠も。
己の人生を捧げるという、重いものだから。人によっては結婚よりも、厳格な意味を持つのだが。
そのときはなんとなく、恋の告白かと思ってしまったから。
なんというか、肩透かしのような。なんというか…。
「おまえが、我を守るのか?」
というか、この小さい黒丸が、我を守るとか。どういう思考で、こういうことを言い出したのか。不思議で。
つい口先で笑ってしまった。
いけない。彼は真剣なのだから。ちゃんと考えなければ。
「ちっぽけな、この身でございます。強力な助けの手には、なれないでしょう。でも、僕の力の限りに。陛下のおそばに置いていただければ…盾ぐらいには…なれるかと…」
盾? クロウが我の盾になって、我の目の前で死ぬのか?
そんなことはさせない。
瞬時に怒りがメラリと湧き起る。
バミネの剣に、クロウが斬られる。そんな場面が、リアルに想像できて。
だが、クロウがそばにいれば。
バミネを殺すことはできないが。クロウを守ることはできる、かも。
相手がバミネでなければ。ちゃんと守ってやれるしな。
あぁ、なんて。情けない王なのだろう。
この国の頂点に立っているはずなのに、クロウひとり、思いのままに守ってやることができないなんて…。
自分が権威のある王だったなら、なんとしてでもバミネの脅威から、クロウを守ってやる。
しかし、己は死にゆく身。
苦しみを胸に秘めつつ。我は…望みという名の、許しを口にした。
「いいだろう。そばにいろ」
お許しが出た、と思ったのか。彼は喜々として顔を上げた。
木漏れ日の光が、クロウの黒い瞳に映り込み、夜空に星を散らしたように輝いている。綺麗な目だな。
我は、一生忘れない。
「おまえは我の死神だから。我が死ぬとき、我のそばにいるのは、おまえでなければならない」
バミネはもう、我の殺害を決意している。
死に装束を作るということは、処刑準備の最たるものだ。
あとは、ただ、タイミングを待っているだけ。
我の尊厳を、落として、嘆きのどん底へ突き落してから、殺す。
悪趣味にもバミネは、クロウが死に装束を作っている間、我が脅え、恐怖していると思って。その姿を想像し、楽しんでいるのだ。
もしくは、死へのカウントダウンに恐れおののいていると、嘲っているのか。
とにかく。我に残されているのは、クロウが衣装を仕立て上げるまでの、ほんの短い時間にすぎない。
猶予など、ない。ならば。
我がそばにいて心地よいと思える者を、そばに置くくらい、良いだろう?
死ぬときに、クロウを目に映して、死んでも。良いだろう?
「本当に? あ、ありがとうございます。僕、頑張ります」
クロウは、いかにも嬉しそうに。晴れやかに笑った。
年老いて死ぬ、その長い時間、一緒にいられると…そういうふうに勘違いしたかな?
でも、すまない、クロウ。
おまえが我を守っても。それほど長い時間、一緒にはいられないだろう。
安心させるように、ささやかながら、口角を上げて、笑みを浮かべた。
クロウに手を差し伸べて、我は彼を引っ張り上げ。再びギュッと抱き締める。
彼が音を上げない程度に、力加減をして。
クロウは可愛い猫だから。優しく、そっと、抱き締めるのだ。
自分よりも華奢な体を腕に抱き。この小さき者を守りたい。自分の手で守ってやりたいと、切実に思った。
塔の上でも、そう思ったが…よく考えてみれば。
それは、叶えられないことであった。
もうすぐバミネに殺害されるのだろうから。
今、腕の中にいる者ひとりさえ、守ることができないなんて。
クロウは、自分のことをちっぽけだと評したが。
我こそ、ちっぽけで、なんの力もない王なのだと。自嘲した。
だが。我の命がある限りは、おまえを守るよ。クロウ…。
胸に抱かれながら。クロウは、つぶらな瞳で我を見上げたまま、告げた。
「イアン様、僕をずっと、そばに置いていただけませんか?」
そ、それって、どういう意味だ?
結婚か? プ、プロポーズか? 我の伴侶になるということか?
いや、それはまだ早いんじゃないか?
しかし、家族に紹介をしたし、早くもないのか?
いやいや、そもそも男同士だし。なに飛躍した馬鹿なことを考えているのだっ。
などと。激しく動揺して。目を丸くした。
「ずっと? 納品したあとも、ずっと、この城にいるということか? 我の、そばに?」
思わず確認してしまう。クロウの真意がわからなくて。
「お許しを、いただけるなら」
するとクロウは、我からそっと身を離し。その場で、地に膝をついた。
あの、印象的なマントが、ふわりと空気を含んで、クロウを中心にして、黒く丸い円を描く。
初対面のときも、そのように広がったマントに。彼の美しさに、目を奪われたのだと。思い出した。
「陛下に、永遠の忠誠を誓います。僕が陛下を、バミネから守ります。必ず、イアン様を自由の身にしてみせます」
あぁ、忠誠かと思い。ちょっと、がっかりしてしまった。
いや、忠誠も。
己の人生を捧げるという、重いものだから。人によっては結婚よりも、厳格な意味を持つのだが。
そのときはなんとなく、恋の告白かと思ってしまったから。
なんというか、肩透かしのような。なんというか…。
「おまえが、我を守るのか?」
というか、この小さい黒丸が、我を守るとか。どういう思考で、こういうことを言い出したのか。不思議で。
つい口先で笑ってしまった。
いけない。彼は真剣なのだから。ちゃんと考えなければ。
「ちっぽけな、この身でございます。強力な助けの手には、なれないでしょう。でも、僕の力の限りに。陛下のおそばに置いていただければ…盾ぐらいには…なれるかと…」
盾? クロウが我の盾になって、我の目の前で死ぬのか?
そんなことはさせない。
瞬時に怒りがメラリと湧き起る。
バミネの剣に、クロウが斬られる。そんな場面が、リアルに想像できて。
だが、クロウがそばにいれば。
バミネを殺すことはできないが。クロウを守ることはできる、かも。
相手がバミネでなければ。ちゃんと守ってやれるしな。
あぁ、なんて。情けない王なのだろう。
この国の頂点に立っているはずなのに、クロウひとり、思いのままに守ってやることができないなんて…。
自分が権威のある王だったなら、なんとしてでもバミネの脅威から、クロウを守ってやる。
しかし、己は死にゆく身。
苦しみを胸に秘めつつ。我は…望みという名の、許しを口にした。
「いいだろう。そばにいろ」
お許しが出た、と思ったのか。彼は喜々として顔を上げた。
木漏れ日の光が、クロウの黒い瞳に映り込み、夜空に星を散らしたように輝いている。綺麗な目だな。
我は、一生忘れない。
「おまえは我の死神だから。我が死ぬとき、我のそばにいるのは、おまえでなければならない」
バミネはもう、我の殺害を決意している。
死に装束を作るということは、処刑準備の最たるものだ。
あとは、ただ、タイミングを待っているだけ。
我の尊厳を、落として、嘆きのどん底へ突き落してから、殺す。
悪趣味にもバミネは、クロウが死に装束を作っている間、我が脅え、恐怖していると思って。その姿を想像し、楽しんでいるのだ。
もしくは、死へのカウントダウンに恐れおののいていると、嘲っているのか。
とにかく。我に残されているのは、クロウが衣装を仕立て上げるまでの、ほんの短い時間にすぎない。
猶予など、ない。ならば。
我がそばにいて心地よいと思える者を、そばに置くくらい、良いだろう?
死ぬときに、クロウを目に映して、死んでも。良いだろう?
「本当に? あ、ありがとうございます。僕、頑張ります」
クロウは、いかにも嬉しそうに。晴れやかに笑った。
年老いて死ぬ、その長い時間、一緒にいられると…そういうふうに勘違いしたかな?
でも、すまない、クロウ。
おまえが我を守っても。それほど長い時間、一緒にはいられないだろう。
安心させるように、ささやかながら、口角を上げて、笑みを浮かべた。
クロウに手を差し伸べて、我は彼を引っ張り上げ。再びギュッと抱き締める。
彼が音を上げない程度に、力加減をして。
クロウは可愛い猫だから。優しく、そっと、抱き締めるのだ。
自分よりも華奢な体を腕に抱き。この小さき者を守りたい。自分の手で守ってやりたいと、切実に思った。
塔の上でも、そう思ったが…よく考えてみれば。
それは、叶えられないことであった。
もうすぐバミネに殺害されるのだろうから。
今、腕の中にいる者ひとりさえ、守ることができないなんて。
クロウは、自分のことをちっぽけだと評したが。
我こそ、ちっぽけで、なんの力もない王なのだと。自嘲した。
だが。我の命がある限りは、おまえを守るよ。クロウ…。
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