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61 嵐の前兆
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◆嵐の前兆
ぼくがこの王城に来て、二週間が過ぎました。
数々の成敗危機を回避し続け。なんとなんと、ぼくが陛下とお付き合いをすることになったのですが。
本当に、良いのでしょうか?
基本、自分に自信がないので。ぼくのような者が…という意識で、常にネガティブ思考です。
でも、陛下のそばにいて、陛下の心を癒す、その気持ちがブレなければ。
卑下する己の気持ちを無視して、陛下のそばにいられる感じです。
そう、ぼくは。とにかく与えるのです。
陛下が望む、あらゆることを。
でも、ぼくもたまには与えられたいというか。
あのぉ、ずっと、恋人ができたらやってみたいこと、というか。そういう夢みたいなものが、前世からあったんですけどぉ? 言ってもよろしいですか?
小鳥のさえずる昼下がり、陛下と手をつないで、森を散策している。
新緑の香りは、無臭のようで、でもどこかハーブのようなスッとした匂いもある。
そんな、心を透き通らせてくれるような、清々しさの中で。
ぼくは、意を決して、陛下に伝えた。
「あの、手をパーにしてもらっていいですか?」
「ぱぁ…?」
ぼくの言葉に、陛下は小首を傾げた、不思議そうな顔を、向けた。
あぁ、じゃんけんの概念はなかったっけ?
シオンには、ぼくの常識で教えたので。普通にじゃんけんしていたんだけど。
この世界的には、普及してないかもです。
ぼくは、つないでいる手を離して、手を広げて見せた。
そうしたら、陛下はそのとおりにしてくださるので。
陛下の開いた手の、指の間に指を入れ込んで、ギュッと握る。
「恋人つなぎって言うんですよ? 一度やってみたくって…い、イアン様と、こ、恋人というのは。恐縮してしまいますが」
照れくささと、卑下精神が現れて、身を縮こまらせると。
陛下は、かぶせ気味に言ってくれた。
「恋人だっ。我はちゃんと結婚も視野に入れているだろう? おまえは我の恋人として、堂々と振舞って良いのだ」
そして、陛下の方からも、手をギュッと握ってくれる。
うわぁ、勇気を出して、やってみて。良かった。
「だが、恋人というものに、おまえがオドオドしてしまう気持ちはわかる。我も、初めての感情が、次から次へと湧いてくるのだ。恋人に対する扱いが、これで良いのかと、不安にも思う」
陛下は恋人つなぎしている手を持ち上げて、ぼくの手の甲にキスした。
おおぉぅ。ガンガンに恋人っぽいです。
陛下が思う恋人イメージは、甘めですが、概ね、そのとおりかと思います。
「なにぶん初めてなので、手探りだが。おまえのそばにいたい、おまえを守りたい。おまえの存在を、近くに感じたい、と思うこの感情は。たぶん恋なのだ。だから我たちは、ちゃんと恋人で。恋人つなぎをしても…良いのだ」
少し自信のない物言いなのは。陛下が、本当に初恋で。ぼくとの距離感や接し方を、模索している最中だからなのですね?
超、超、共感します。
「クロウは、そのような気持ちではないか? 我と…恋人と、恋人つなぎをしたくはないか?」
「ぼくも、イアン様と同じです。恋をするのはイアン様が初めてなので、いろいろ戸惑ってしまいますが。ぼくは…イアン様と恋人つなぎ…したいです」
納得するように、静かにうなずいた陛下が。
ちょっと後ろを向き。ニヤニヤするんじゃない、とセドリックに釘を刺した。
騎士は、陛下の護衛なので。いつもそばにいるけれど。
セドリックはからかう感じだから。ぼくもちょっと気恥ずかしくなってしまう。
「クロウも初恋か? 本土で暮らしていたとき、恋人がいたことはないのか?」
「ありませんよ。僕のような…地味な者は、あまりモテないのです」
「そんなことはない。おまえはとても美しいぞ」
え? それ、本気で言ってないですよね? あぁ、恋人へのサービス的な?
「だから、その、憐憫漂う顔つきは、いったいなんなのだ?」
「イアン様は、とてもお優しい方です」
「答えになってないぞ」
陛下はちょっと眉根を寄せて。それからハハッと、声を上げて笑った。
「おまえは、本当にびっくり箱みたいだな? 話の脈絡がおかしいだろうが?」
しばらく、陛下はクスクスと笑っていて。
ぼくは、そんな、ほがらかな陛下を見るのが好きだった。
このような、気安い会話は。友達というか、親友みたいな気もあって。ちょっと、またまた照れてしまいます。
あれ? そういえば、前世でも今世でも。ぼく、友達も初めてかもしれない。
今世では、生きるのに精いっぱいで、友達を作る余裕がなかったし。
常に、シオンがそばにいたから。
シオンが呪われていることを、知られたくなくて。
さらに、バミネにみつかりたくもなかったから、基本店に引きこもっていたんだよな。
この王城に来て、攻略対象の面々に、案外よくされているけれど。
ラヴェルは、主従な感じが色濃いし。
騎士様やアルフレドは、顔を合わせれば話をするけれど、友達と呼んだら馴れ馴れしいかな、と。
本当は、王様に馴れ馴れしくするのが、一番恐れ知らずな所業だけどねっ。
でも、よくよく考えたら。陛下は、こ、こ、恋人なのであって、友達ではない。
ってことは。ぼくにはまだ、友達がひとりもいないってことだ。
悲報…人間的に、致命的なことに気づいてしまいました。
「クロウを見逃すとは、本土のやつらは目がないな。でも、こうして初恋同士で、クロウと出会えて。我は嬉しいぞ?」
そうして陛下は。頭のてっぺんに、チュってしてくれた。あまーい。
なんだか、つい最近までのピリピリ陛下からの、アマアマな展開のギャップが。激しすぎて。毎回、ひえぇっってなります。
「ふむ、クロウはいつまでも慣れないな」
陛下はぼくの顔をのぞき込んで、そうつぶやいた。
ぼく、絶対、顔が茹でダコ状態だよ。
この頃は、毎日陛下とお会いして、こ、こ、恋人にまでなったというのに。
この麗しいお顔に、慣れる気配など、今のところ一ミリもありません。
「だが、そのピュアなところが、可愛いぞ」
にっこり微笑まれて。
はぁぁっ、森の鳥も、射抜かれる勢いの矢が、ぼくの胸に刺さりました。
え? もしかして、陛下。ぼくを殺しにかかっているのですか?
やはり、暗殺者疑惑が拭えていなくて、精神的に抹殺ってやつですか?
それなら、ぼくは、もう降参です。
つか、これは、小説で主人公ちゃんがよくされるという、あの、噂の、で、で、溺愛というやつでしょうか?
無理ぃ…陛下に全力で溺愛されたら、明日にも溶け溶けになりますぅ。
っていうか、友達がひとりもいないようなモブなんかを、溺愛させてしまって、すみません。
なんて、頭の中でワタワタしていたら。強い風が森を吹き抜けた。
陛下の長い髪が、下から巻き上げられて。揺れる金髪が、青空から降り注ぐ陽光に反射して、きらめく。
もう、どんだけ美麗なのですかっ!
美しすぎて、理不尽な怒りが湧くレベルです。
「うわぁ、すごい風ですね?」
馬鹿みたいに、アジャコジャ考えていた割に。出た言葉は『良いお天気ですね』レベル。
ぼくの低レベルコミュニケーションスキルが、垣間見えた瞬間だった。
「あぁ、これは、嵐の前兆だ」
「嵐? こんなに晴れているのに?」
思いがけなく会話が続いたので、ぼくは空を見上げた。
確かに、風は強いけど。
昼過ぎの空は、青く澄み渡っていて。新緑の芽を太陽の光が輝かせている。
雨の気配さえも、ないように思えた。
「島は、海に囲まれているから、天候の変化は急激に起こるのだ。雨が降る前に、王城に戻った方が良いな?」
陛下がセドリックにたずねると。彼は、そのとおりだと言うように、うなずいた。
「では、帰ったら、仕事に戻りますね」
森の散策が、短い時間で終わってしまうのは、がっかりだけど。
仕事も手を抜けないからな。
陛下とお付き合いをするようになってから。ぼくのタイムスケジュールが少し変化した。
前は、朝から晩まで、ずっと仕事をしていて。たまに陛下が、顔を出すような感じだったが。
今は、午前中はしっかり仕事。
食後から午後の三時までは、陛下との顔合わせ…っていうか、デートする、みたいな?
そのあとは、また集中して仕事。このような感じになったのだ。
午前中は、陛下もお忙しいようで。このようにしたいのだが? と提案されて。もちろん了承した。
ぼくは、なんでも異議なし、なのです。
時間も、心も体も、なんでも差し上げます。という心持ちなのだが。
でも陛下は、ぼくの仕事の邪魔を、あまりしたくないみたいで。
「お互いに、やるべきことはしっかりと果たそう」
と言われれば。
恋人なら、四六時中一緒にいて、なんて考える自分が、子供っぽく思えてしまう。
いけませんね。ぼくはここに、仕事に来ているのだから。
陛下の言うように、ちゃんとやるべきことを果たさなければならないのだ。
陛下は、とても大人で。
初恋だって言うけど、ぼくよりも全然余裕で。
しっかりしていて。紳士で。スマートで…ちょっと生真面目なのだ。
でも、その真っすぐなお人柄を、尊敬いたします。
陛下の言うとおりにしていれば、間違いはない。
誠実な貴方様の後ろを、どこまでもついて行きたい。そんなふうに思えるのだ。
「いいや、三時までは。クロウには、付き合ってもらうぞ? 我の居室で、少し早めのアフタヌーンティーにしよう」
でもぼくが、がっかりという顔をしたからか。陛下はそう言ってくれた。
「はいっ」
陛下と離れたくなかった、ぼくなので。
元気いっぱいに返事をした。
そうだ。三時までは、陛下と過ごしていい時間なのだ。そういう約束でした。
果たすべきことを果たしていれば。一緒にいたいと思ったら、そうしてもいいってこと、だよね?
そのとき。遠くで、ガガーンという大きな音が響いた。雷?
「陛下、招かれざる客のようです」
セドリックが、険しい表情でそう言い。陛下は、しんなりと眉をひそめた。
ぼくがこの王城に来て、二週間が過ぎました。
数々の成敗危機を回避し続け。なんとなんと、ぼくが陛下とお付き合いをすることになったのですが。
本当に、良いのでしょうか?
基本、自分に自信がないので。ぼくのような者が…という意識で、常にネガティブ思考です。
でも、陛下のそばにいて、陛下の心を癒す、その気持ちがブレなければ。
卑下する己の気持ちを無視して、陛下のそばにいられる感じです。
そう、ぼくは。とにかく与えるのです。
陛下が望む、あらゆることを。
でも、ぼくもたまには与えられたいというか。
あのぉ、ずっと、恋人ができたらやってみたいこと、というか。そういう夢みたいなものが、前世からあったんですけどぉ? 言ってもよろしいですか?
小鳥のさえずる昼下がり、陛下と手をつないで、森を散策している。
新緑の香りは、無臭のようで、でもどこかハーブのようなスッとした匂いもある。
そんな、心を透き通らせてくれるような、清々しさの中で。
ぼくは、意を決して、陛下に伝えた。
「あの、手をパーにしてもらっていいですか?」
「ぱぁ…?」
ぼくの言葉に、陛下は小首を傾げた、不思議そうな顔を、向けた。
あぁ、じゃんけんの概念はなかったっけ?
シオンには、ぼくの常識で教えたので。普通にじゃんけんしていたんだけど。
この世界的には、普及してないかもです。
ぼくは、つないでいる手を離して、手を広げて見せた。
そうしたら、陛下はそのとおりにしてくださるので。
陛下の開いた手の、指の間に指を入れ込んで、ギュッと握る。
「恋人つなぎって言うんですよ? 一度やってみたくって…い、イアン様と、こ、恋人というのは。恐縮してしまいますが」
照れくささと、卑下精神が現れて、身を縮こまらせると。
陛下は、かぶせ気味に言ってくれた。
「恋人だっ。我はちゃんと結婚も視野に入れているだろう? おまえは我の恋人として、堂々と振舞って良いのだ」
そして、陛下の方からも、手をギュッと握ってくれる。
うわぁ、勇気を出して、やってみて。良かった。
「だが、恋人というものに、おまえがオドオドしてしまう気持ちはわかる。我も、初めての感情が、次から次へと湧いてくるのだ。恋人に対する扱いが、これで良いのかと、不安にも思う」
陛下は恋人つなぎしている手を持ち上げて、ぼくの手の甲にキスした。
おおぉぅ。ガンガンに恋人っぽいです。
陛下が思う恋人イメージは、甘めですが、概ね、そのとおりかと思います。
「なにぶん初めてなので、手探りだが。おまえのそばにいたい、おまえを守りたい。おまえの存在を、近くに感じたい、と思うこの感情は。たぶん恋なのだ。だから我たちは、ちゃんと恋人で。恋人つなぎをしても…良いのだ」
少し自信のない物言いなのは。陛下が、本当に初恋で。ぼくとの距離感や接し方を、模索している最中だからなのですね?
超、超、共感します。
「クロウは、そのような気持ちではないか? 我と…恋人と、恋人つなぎをしたくはないか?」
「ぼくも、イアン様と同じです。恋をするのはイアン様が初めてなので、いろいろ戸惑ってしまいますが。ぼくは…イアン様と恋人つなぎ…したいです」
納得するように、静かにうなずいた陛下が。
ちょっと後ろを向き。ニヤニヤするんじゃない、とセドリックに釘を刺した。
騎士は、陛下の護衛なので。いつもそばにいるけれど。
セドリックはからかう感じだから。ぼくもちょっと気恥ずかしくなってしまう。
「クロウも初恋か? 本土で暮らしていたとき、恋人がいたことはないのか?」
「ありませんよ。僕のような…地味な者は、あまりモテないのです」
「そんなことはない。おまえはとても美しいぞ」
え? それ、本気で言ってないですよね? あぁ、恋人へのサービス的な?
「だから、その、憐憫漂う顔つきは、いったいなんなのだ?」
「イアン様は、とてもお優しい方です」
「答えになってないぞ」
陛下はちょっと眉根を寄せて。それからハハッと、声を上げて笑った。
「おまえは、本当にびっくり箱みたいだな? 話の脈絡がおかしいだろうが?」
しばらく、陛下はクスクスと笑っていて。
ぼくは、そんな、ほがらかな陛下を見るのが好きだった。
このような、気安い会話は。友達というか、親友みたいな気もあって。ちょっと、またまた照れてしまいます。
あれ? そういえば、前世でも今世でも。ぼく、友達も初めてかもしれない。
今世では、生きるのに精いっぱいで、友達を作る余裕がなかったし。
常に、シオンがそばにいたから。
シオンが呪われていることを、知られたくなくて。
さらに、バミネにみつかりたくもなかったから、基本店に引きこもっていたんだよな。
この王城に来て、攻略対象の面々に、案外よくされているけれど。
ラヴェルは、主従な感じが色濃いし。
騎士様やアルフレドは、顔を合わせれば話をするけれど、友達と呼んだら馴れ馴れしいかな、と。
本当は、王様に馴れ馴れしくするのが、一番恐れ知らずな所業だけどねっ。
でも、よくよく考えたら。陛下は、こ、こ、恋人なのであって、友達ではない。
ってことは。ぼくにはまだ、友達がひとりもいないってことだ。
悲報…人間的に、致命的なことに気づいてしまいました。
「クロウを見逃すとは、本土のやつらは目がないな。でも、こうして初恋同士で、クロウと出会えて。我は嬉しいぞ?」
そうして陛下は。頭のてっぺんに、チュってしてくれた。あまーい。
なんだか、つい最近までのピリピリ陛下からの、アマアマな展開のギャップが。激しすぎて。毎回、ひえぇっってなります。
「ふむ、クロウはいつまでも慣れないな」
陛下はぼくの顔をのぞき込んで、そうつぶやいた。
ぼく、絶対、顔が茹でダコ状態だよ。
この頃は、毎日陛下とお会いして、こ、こ、恋人にまでなったというのに。
この麗しいお顔に、慣れる気配など、今のところ一ミリもありません。
「だが、そのピュアなところが、可愛いぞ」
にっこり微笑まれて。
はぁぁっ、森の鳥も、射抜かれる勢いの矢が、ぼくの胸に刺さりました。
え? もしかして、陛下。ぼくを殺しにかかっているのですか?
やはり、暗殺者疑惑が拭えていなくて、精神的に抹殺ってやつですか?
それなら、ぼくは、もう降参です。
つか、これは、小説で主人公ちゃんがよくされるという、あの、噂の、で、で、溺愛というやつでしょうか?
無理ぃ…陛下に全力で溺愛されたら、明日にも溶け溶けになりますぅ。
っていうか、友達がひとりもいないようなモブなんかを、溺愛させてしまって、すみません。
なんて、頭の中でワタワタしていたら。強い風が森を吹き抜けた。
陛下の長い髪が、下から巻き上げられて。揺れる金髪が、青空から降り注ぐ陽光に反射して、きらめく。
もう、どんだけ美麗なのですかっ!
美しすぎて、理不尽な怒りが湧くレベルです。
「うわぁ、すごい風ですね?」
馬鹿みたいに、アジャコジャ考えていた割に。出た言葉は『良いお天気ですね』レベル。
ぼくの低レベルコミュニケーションスキルが、垣間見えた瞬間だった。
「あぁ、これは、嵐の前兆だ」
「嵐? こんなに晴れているのに?」
思いがけなく会話が続いたので、ぼくは空を見上げた。
確かに、風は強いけど。
昼過ぎの空は、青く澄み渡っていて。新緑の芽を太陽の光が輝かせている。
雨の気配さえも、ないように思えた。
「島は、海に囲まれているから、天候の変化は急激に起こるのだ。雨が降る前に、王城に戻った方が良いな?」
陛下がセドリックにたずねると。彼は、そのとおりだと言うように、うなずいた。
「では、帰ったら、仕事に戻りますね」
森の散策が、短い時間で終わってしまうのは、がっかりだけど。
仕事も手を抜けないからな。
陛下とお付き合いをするようになってから。ぼくのタイムスケジュールが少し変化した。
前は、朝から晩まで、ずっと仕事をしていて。たまに陛下が、顔を出すような感じだったが。
今は、午前中はしっかり仕事。
食後から午後の三時までは、陛下との顔合わせ…っていうか、デートする、みたいな?
そのあとは、また集中して仕事。このような感じになったのだ。
午前中は、陛下もお忙しいようで。このようにしたいのだが? と提案されて。もちろん了承した。
ぼくは、なんでも異議なし、なのです。
時間も、心も体も、なんでも差し上げます。という心持ちなのだが。
でも陛下は、ぼくの仕事の邪魔を、あまりしたくないみたいで。
「お互いに、やるべきことはしっかりと果たそう」
と言われれば。
恋人なら、四六時中一緒にいて、なんて考える自分が、子供っぽく思えてしまう。
いけませんね。ぼくはここに、仕事に来ているのだから。
陛下の言うように、ちゃんとやるべきことを果たさなければならないのだ。
陛下は、とても大人で。
初恋だって言うけど、ぼくよりも全然余裕で。
しっかりしていて。紳士で。スマートで…ちょっと生真面目なのだ。
でも、その真っすぐなお人柄を、尊敬いたします。
陛下の言うとおりにしていれば、間違いはない。
誠実な貴方様の後ろを、どこまでもついて行きたい。そんなふうに思えるのだ。
「いいや、三時までは。クロウには、付き合ってもらうぞ? 我の居室で、少し早めのアフタヌーンティーにしよう」
でもぼくが、がっかりという顔をしたからか。陛下はそう言ってくれた。
「はいっ」
陛下と離れたくなかった、ぼくなので。
元気いっぱいに返事をした。
そうだ。三時までは、陛下と過ごしていい時間なのだ。そういう約束でした。
果たすべきことを果たしていれば。一緒にいたいと思ったら、そうしてもいいってこと、だよね?
そのとき。遠くで、ガガーンという大きな音が響いた。雷?
「陛下、招かれざる客のようです」
セドリックが、険しい表情でそう言い。陛下は、しんなりと眉をひそめた。
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