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67 ラーヴェールー(怒)
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◆ラーヴェールー(怒)
忠誠を誓ったあと、陛下に、望めばなんでも叶えられるかと問われ。
ぼくは、自信満々で答えた。
「命に代えましても」
元より、王家には、並々ならぬ忠誠心がございます。
その、頂点に立たれる陛下のお望みを叶えることは、カザレニア国民の誉でございます。
そのような気持ちで、ジジィっと、陛下をみつめる。
そうしたら。陛下がぼくの手を取り、内側の、脈とか取る方の手首に、チュッとキスして。
すっごく妖艶な流し目を向けられた。
わわわ、そのようなエロくて情熱的な目でみつめられたら、その瞳に囚われてしまいます。金縛りです。
というか、そちらの御用件ですね? わかりました。ゴクリ。
「おまえに触れたい」
躊躇しているうちに、結構ストレートに言われてしまい。
こ、これは。誤魔化せませんな。
いえいえ、ぼくはなんだって叶えてみせるのです。そちらのお誘いも、大丈夫ですよ? たぶん…。
えっと、なんだっけ。バミネが言っていたやつ。
「ま、股を開く性悪? でも、なんでもやります。それで陛下をお慰めできるのなら。と、鳥ガラの男の体では、満足できないでしょうが。出汁くらいの旨味はあるかと」
そうだ。バミネの話は、話半分でよく覚えていなかったが。股を開く性悪と、鳥ガラという強烈ワードが頭に残っていた。
いかにも鳥ガラなぼくに、鳥ガラ言いやがって。むかつく。
もっとオブラートに包んで、貧相とかみすぼらしいとか惰弱だとか…全部ダメだな。くすん。
でも鳥ガラは、スープにしたら美味いんだからな? ラーメンだって、鳥ガラがなければできないんだからな? 旨味は凝縮されているんだ。たぶん。
つか、ラーメン食べたい。
「こらっ」
頭の中で、バミネに文句をつけていたら。
陛下に唇を摘ままれた。
親指と人差し指を動かして、陛下は、ぼくの唇を摘まんだり開いたりして、ピヨピヨさせる。
「我が、好意を寄せる、クロウを、貶めるような、言葉を、使っては、ならぬ。な、ら、ぬーっ」
ぬーっ、で。激しくピヨピヨブルブルビブラートさせる、陛下。
ぼくはさながら、腹話術の人形のように、されるがままだった。
陛下。ぼくの唇で遊ばないでください。
つか、今、チョーシリアスでムーディーな場面だったではありませんか?
雰囲気が台無しです。
アイリス以上の、空気の読めなさです。
「くはっ、可愛いアヒルめっ」
そんなこと言って、とうとう吹き出しちゃいましたよ?
喉の奥で、クック言ってるけど、笑いがこらえられていません。
でも、陛下が笑っている。
とても、おつらい状況だというのに。
そういえば陛下は、ぼくの前で、よく笑っていたな?
今もこうして、笑っている。
それが嬉しくて。ぼくもつられて笑ってしまった。
「そうだ、クロウ。そうして笑っていてくれ。それが我を癒す、一番の薬だ」
ぼくだって。陛下が笑う顔が大好きです。
いえ、陛下のお顔はどんなものでも大好物ですが。特に、爆笑する顔が年相応で、好きです。
その、屈託のないお顔を…バミネなどに、奪わせてなるものかっ。
ぼくは、気持ちも新たに、力をみなぎらせる。
そうだ。この笑顔を、ぼくは守るのだ。
バミネにも。誰にも。奪わせない。
ふたりともに、笑いがおさまってくると。
陛下が真面目な顔つきになって。でも、怖がらせないように表情は柔らかくして。ぼくの顔に、顔を寄せてくる。
その気遣いに、優しさを感じて。
だから。なにも怖くなくなって。ぼくも顔を寄せていく。
やがて、唇と唇が触れあって。
ぼくは陛下とキスした。
海でしたのと同じ、触れ合わせるだけの、くちづけ。
欲しいと言われたから。ガバッときて、ブチュッとして、ぐちゃぐちゃにされるのも、覚悟していたのだが。やはり陛下は、そのような野蛮で下品なことはしないのだった。ホッ。
でも、お優しいのだが。やはりここは。耳年増のぼくが、リードして御奉仕しなければならない場面なのだろうな?
陛下はぼくより年下だし。ぼくは前世と合わせて、四十年分のエロ知識があるわけだからぁ?
ま、実戦は皆無だが。
キスしながら、そんなことを考えてしまって。
唇の隙間から、舌と舌が、かすかに触れ合っていたりしたから。思い切って、陛下の唇を舐めてみた。
そうしたら、陛下が顔を少し引いて、びっくり目でぼくを見て。
ぎゃーーっ、やっぱり、はしたなかったですね? す、すみませぇぇん。
「…御不快、でしたか?」
「いや、もう一度してくれ」
え? 怒っていない? セーーフ。良かったです。不敬で成敗も、あり得たかもしれません。
でも…も、もう一回?
無理ぃ。ぼく、結構勇気出したんです。つか、勇気は全部出し尽くしました。
勢いとかない状態で、唇舐めたりとか、できませんからぁ(泣)。
舌は出したものの、どうしようかと、戸惑っていたら。
陛下の方からぼくの舌をペロリと舐めてくれた。
お優しい…? いや、お優しい。うん。
もう、ぐったりするほど、いっぱいキスをしました。
息は、どのタイミングでするのですか?
鼻で吸うんだ、とか、漫画でよくそういう場面があったけど。
フンガフンガできないし。
やっぱり、気をつかっていると、どんどん酸欠になってくるというか。頭がぼーっとしてくる。
それは、気持ち良かったり。興奮でのぼせたり。そういうののせいでもあるんだけど。
それに、推しにキスされるなんて、こんな幸せなことってないじゃん?
もうここで死んでも悔いなしっ、とか思うじゃん?
いや、陛下を助けないと、悔いは残るんだけど。
そうじゃなくて。天にも昇る心地というか。
あっ、昇天しかけているっ、ヤバい。
だけど、陛下の手で頭を支えられているから、逃げる先なんかなくて。
ううん、逃げる気なんかないけど。
でも、陛下の分厚い舌を、いっぱいいっぱい迎え入れなくてはならず。
不慣れだから、大胆なくちづけを、受けるだけで精一杯だった。
チュッと音をさせて、陛下が、きつく結びつけていた唇をほどく。
ぼくは、そばで甘い表情でみつめてくる陛下を、ぼんやり目に映し。
もう、ただただ、そのお美しいご尊顔を、目に映し…。
そうしたら、あぁ、また、陛下のお顔が近寄ってきて。深く唇を合わせて、くちゅくちゅされて。
陛下ぁ、ぼくはもうトロトロです。
そこに、ノックが響き。サロンの扉は、いつも開いているのだけど。その入り口の、陰の方から、声がかかった。
「夕食のお時間ですが、いかがいたしますか?」
声は、ラヴェルのものだ。
いつものようにワゴンに夕食を乗せて、持ってきてくれたのだろう。
まぁ、無粋だとは思うけど。ぼくとしては、助かったぁ、という気持ちが強かった。
陛下とこうするのが嫌なのではなくて。恋愛初心者のキャパオーバーで、グルグルだったから。
陛下が求めるのなら、なんでもするけど。
でも、ゆっくり進めていただけると、バクバクフル回転しているぼくの心臓が喜びます。
「もう、そんな時間か。クロウ、ディナーは我とするか?」
陛下は、取り乱したぼくを、気にかけてくれたみたい。今まで別々にしていた、食事の席に呼んでくださった。
それは、嬉しいのだが。
シオンもいるし。他にも考えたいことがあったから。固辞させていただいた。
「恐れながら。陛下と食卓をともにするのは、胸がいっぱいになって、恥ずかしくて、食事が喉を通りそうもないので。今日は部屋で、とらせてください」
「そうか。食べられなくなるのは困るな。しかし…大丈夫か?」
そこには、ひとりにして、寂しくならないか?
また衣装を傷つける衝動に駆られないか?
という、陛下の心配りが見える。
安心してもらえるように、ぼくは笑顔を向けた。
「王命を承りました。陛下のものを、二度と傷つけたりいたしません」
「そうか。辛苦の願いをのみ込んでくれたおまえに、感謝する」
陛下はぼくの頭を、その大きな手で撫でてくれる。
陛下だって、ぼくがつらく感じるその願いを、口に出すのは、さぞかし苦しみを帯びただろうに。ぼくのことばっかり気遣って…陛下はやっぱりお優しい方だ。
「…でも。僕が衣装を作らなかったら、バミネは陛下に、手を出さないのではありませんか? むしろ、先延ばしにした方が…」
陛下は、衣装を作れと言ったが。
むしろ、作らなくていいんじゃね? なんて思っていたのだ。
すっごくシリアスムードだったから。そのまま王命を承ったけれどね。
あの空気を壊す勇気は、ぼくにはなかったのだ。
しかし、陛下はちょっと呆れた顔つきになった。
「なんだ、バミネの捨て台詞を聞いていなかったのか? 四月一日に、クロウを、この島から連れ帰ると。それまでに衣装を作り終えなければ、ネックレスは渡さないと、言っていたぞ?」
はあぁぁ? 聞いてないよっ!
つか、死に装束というワードが強烈すぎて、そのあとのバミネの話はほとんど聞こえていなかった。
覚えているのは、股を開く性悪と、鳥ガラだけだっ。
「四月一日? その日に、ぼくは。この島から出なければならないのですか?」
「…そうだ。ネックレスを取り戻さないと、な? 大事なものだろう?」
そうなのか。陛下が、衣装を切り裂こうとするぼくを、必死に止めたのは。衣装をここで失ってしまったら、ぼくがネックレスを取り戻せなくなるから、だったのだ。
どんな事情があるのかもわからない、ぼくの弟のために。
おおおお優しいぃぃぃ。
超絶、最高潮にお優しいぃぃぃ。その、お気遣いっ。また、涙出そうだよっ。
「夕食をとったら、今日は早めに休むといい。明日、元気な顔を見せてくれ? クロウ」
頬にチュッと、挨拶のキスをして。陛下はサロンを出ていった。
そして、入れ替わりに。サロンには、ワゴンを押したラヴェルが入ってくる。
「ラーヴェールー」
ぼくは、キッと、眼差しに力を入れ。顎で自室に入るよう、彼をうながした。
ぼくは、怒ですっ。
忠誠を誓ったあと、陛下に、望めばなんでも叶えられるかと問われ。
ぼくは、自信満々で答えた。
「命に代えましても」
元より、王家には、並々ならぬ忠誠心がございます。
その、頂点に立たれる陛下のお望みを叶えることは、カザレニア国民の誉でございます。
そのような気持ちで、ジジィっと、陛下をみつめる。
そうしたら。陛下がぼくの手を取り、内側の、脈とか取る方の手首に、チュッとキスして。
すっごく妖艶な流し目を向けられた。
わわわ、そのようなエロくて情熱的な目でみつめられたら、その瞳に囚われてしまいます。金縛りです。
というか、そちらの御用件ですね? わかりました。ゴクリ。
「おまえに触れたい」
躊躇しているうちに、結構ストレートに言われてしまい。
こ、これは。誤魔化せませんな。
いえいえ、ぼくはなんだって叶えてみせるのです。そちらのお誘いも、大丈夫ですよ? たぶん…。
えっと、なんだっけ。バミネが言っていたやつ。
「ま、股を開く性悪? でも、なんでもやります。それで陛下をお慰めできるのなら。と、鳥ガラの男の体では、満足できないでしょうが。出汁くらいの旨味はあるかと」
そうだ。バミネの話は、話半分でよく覚えていなかったが。股を開く性悪と、鳥ガラという強烈ワードが頭に残っていた。
いかにも鳥ガラなぼくに、鳥ガラ言いやがって。むかつく。
もっとオブラートに包んで、貧相とかみすぼらしいとか惰弱だとか…全部ダメだな。くすん。
でも鳥ガラは、スープにしたら美味いんだからな? ラーメンだって、鳥ガラがなければできないんだからな? 旨味は凝縮されているんだ。たぶん。
つか、ラーメン食べたい。
「こらっ」
頭の中で、バミネに文句をつけていたら。
陛下に唇を摘ままれた。
親指と人差し指を動かして、陛下は、ぼくの唇を摘まんだり開いたりして、ピヨピヨさせる。
「我が、好意を寄せる、クロウを、貶めるような、言葉を、使っては、ならぬ。な、ら、ぬーっ」
ぬーっ、で。激しくピヨピヨブルブルビブラートさせる、陛下。
ぼくはさながら、腹話術の人形のように、されるがままだった。
陛下。ぼくの唇で遊ばないでください。
つか、今、チョーシリアスでムーディーな場面だったではありませんか?
雰囲気が台無しです。
アイリス以上の、空気の読めなさです。
「くはっ、可愛いアヒルめっ」
そんなこと言って、とうとう吹き出しちゃいましたよ?
喉の奥で、クック言ってるけど、笑いがこらえられていません。
でも、陛下が笑っている。
とても、おつらい状況だというのに。
そういえば陛下は、ぼくの前で、よく笑っていたな?
今もこうして、笑っている。
それが嬉しくて。ぼくもつられて笑ってしまった。
「そうだ、クロウ。そうして笑っていてくれ。それが我を癒す、一番の薬だ」
ぼくだって。陛下が笑う顔が大好きです。
いえ、陛下のお顔はどんなものでも大好物ですが。特に、爆笑する顔が年相応で、好きです。
その、屈託のないお顔を…バミネなどに、奪わせてなるものかっ。
ぼくは、気持ちも新たに、力をみなぎらせる。
そうだ。この笑顔を、ぼくは守るのだ。
バミネにも。誰にも。奪わせない。
ふたりともに、笑いがおさまってくると。
陛下が真面目な顔つきになって。でも、怖がらせないように表情は柔らかくして。ぼくの顔に、顔を寄せてくる。
その気遣いに、優しさを感じて。
だから。なにも怖くなくなって。ぼくも顔を寄せていく。
やがて、唇と唇が触れあって。
ぼくは陛下とキスした。
海でしたのと同じ、触れ合わせるだけの、くちづけ。
欲しいと言われたから。ガバッときて、ブチュッとして、ぐちゃぐちゃにされるのも、覚悟していたのだが。やはり陛下は、そのような野蛮で下品なことはしないのだった。ホッ。
でも、お優しいのだが。やはりここは。耳年増のぼくが、リードして御奉仕しなければならない場面なのだろうな?
陛下はぼくより年下だし。ぼくは前世と合わせて、四十年分のエロ知識があるわけだからぁ?
ま、実戦は皆無だが。
キスしながら、そんなことを考えてしまって。
唇の隙間から、舌と舌が、かすかに触れ合っていたりしたから。思い切って、陛下の唇を舐めてみた。
そうしたら、陛下が顔を少し引いて、びっくり目でぼくを見て。
ぎゃーーっ、やっぱり、はしたなかったですね? す、すみませぇぇん。
「…御不快、でしたか?」
「いや、もう一度してくれ」
え? 怒っていない? セーーフ。良かったです。不敬で成敗も、あり得たかもしれません。
でも…も、もう一回?
無理ぃ。ぼく、結構勇気出したんです。つか、勇気は全部出し尽くしました。
勢いとかない状態で、唇舐めたりとか、できませんからぁ(泣)。
舌は出したものの、どうしようかと、戸惑っていたら。
陛下の方からぼくの舌をペロリと舐めてくれた。
お優しい…? いや、お優しい。うん。
もう、ぐったりするほど、いっぱいキスをしました。
息は、どのタイミングでするのですか?
鼻で吸うんだ、とか、漫画でよくそういう場面があったけど。
フンガフンガできないし。
やっぱり、気をつかっていると、どんどん酸欠になってくるというか。頭がぼーっとしてくる。
それは、気持ち良かったり。興奮でのぼせたり。そういうののせいでもあるんだけど。
それに、推しにキスされるなんて、こんな幸せなことってないじゃん?
もうここで死んでも悔いなしっ、とか思うじゃん?
いや、陛下を助けないと、悔いは残るんだけど。
そうじゃなくて。天にも昇る心地というか。
あっ、昇天しかけているっ、ヤバい。
だけど、陛下の手で頭を支えられているから、逃げる先なんかなくて。
ううん、逃げる気なんかないけど。
でも、陛下の分厚い舌を、いっぱいいっぱい迎え入れなくてはならず。
不慣れだから、大胆なくちづけを、受けるだけで精一杯だった。
チュッと音をさせて、陛下が、きつく結びつけていた唇をほどく。
ぼくは、そばで甘い表情でみつめてくる陛下を、ぼんやり目に映し。
もう、ただただ、そのお美しいご尊顔を、目に映し…。
そうしたら、あぁ、また、陛下のお顔が近寄ってきて。深く唇を合わせて、くちゅくちゅされて。
陛下ぁ、ぼくはもうトロトロです。
そこに、ノックが響き。サロンの扉は、いつも開いているのだけど。その入り口の、陰の方から、声がかかった。
「夕食のお時間ですが、いかがいたしますか?」
声は、ラヴェルのものだ。
いつものようにワゴンに夕食を乗せて、持ってきてくれたのだろう。
まぁ、無粋だとは思うけど。ぼくとしては、助かったぁ、という気持ちが強かった。
陛下とこうするのが嫌なのではなくて。恋愛初心者のキャパオーバーで、グルグルだったから。
陛下が求めるのなら、なんでもするけど。
でも、ゆっくり進めていただけると、バクバクフル回転しているぼくの心臓が喜びます。
「もう、そんな時間か。クロウ、ディナーは我とするか?」
陛下は、取り乱したぼくを、気にかけてくれたみたい。今まで別々にしていた、食事の席に呼んでくださった。
それは、嬉しいのだが。
シオンもいるし。他にも考えたいことがあったから。固辞させていただいた。
「恐れながら。陛下と食卓をともにするのは、胸がいっぱいになって、恥ずかしくて、食事が喉を通りそうもないので。今日は部屋で、とらせてください」
「そうか。食べられなくなるのは困るな。しかし…大丈夫か?」
そこには、ひとりにして、寂しくならないか?
また衣装を傷つける衝動に駆られないか?
という、陛下の心配りが見える。
安心してもらえるように、ぼくは笑顔を向けた。
「王命を承りました。陛下のものを、二度と傷つけたりいたしません」
「そうか。辛苦の願いをのみ込んでくれたおまえに、感謝する」
陛下はぼくの頭を、その大きな手で撫でてくれる。
陛下だって、ぼくがつらく感じるその願いを、口に出すのは、さぞかし苦しみを帯びただろうに。ぼくのことばっかり気遣って…陛下はやっぱりお優しい方だ。
「…でも。僕が衣装を作らなかったら、バミネは陛下に、手を出さないのではありませんか? むしろ、先延ばしにした方が…」
陛下は、衣装を作れと言ったが。
むしろ、作らなくていいんじゃね? なんて思っていたのだ。
すっごくシリアスムードだったから。そのまま王命を承ったけれどね。
あの空気を壊す勇気は、ぼくにはなかったのだ。
しかし、陛下はちょっと呆れた顔つきになった。
「なんだ、バミネの捨て台詞を聞いていなかったのか? 四月一日に、クロウを、この島から連れ帰ると。それまでに衣装を作り終えなければ、ネックレスは渡さないと、言っていたぞ?」
はあぁぁ? 聞いてないよっ!
つか、死に装束というワードが強烈すぎて、そのあとのバミネの話はほとんど聞こえていなかった。
覚えているのは、股を開く性悪と、鳥ガラだけだっ。
「四月一日? その日に、ぼくは。この島から出なければならないのですか?」
「…そうだ。ネックレスを取り戻さないと、な? 大事なものだろう?」
そうなのか。陛下が、衣装を切り裂こうとするぼくを、必死に止めたのは。衣装をここで失ってしまったら、ぼくがネックレスを取り戻せなくなるから、だったのだ。
どんな事情があるのかもわからない、ぼくの弟のために。
おおおお優しいぃぃぃ。
超絶、最高潮にお優しいぃぃぃ。その、お気遣いっ。また、涙出そうだよっ。
「夕食をとったら、今日は早めに休むといい。明日、元気な顔を見せてくれ? クロウ」
頬にチュッと、挨拶のキスをして。陛下はサロンを出ていった。
そして、入れ替わりに。サロンには、ワゴンを押したラヴェルが入ってくる。
「ラーヴェールー」
ぼくは、キッと、眼差しに力を入れ。顎で自室に入るよう、彼をうながした。
ぼくは、怒ですっ。
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