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78 オタク臭いっ
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◆オタク臭いっ
モチベーションを取り戻したぼくらは。前世仲間ということで、砕けた調子で話を続けた。
「でも、これからどうするの? この島から出なければならないのでしょう? もちろん、クロウ様が不在の間は、私たちが懸命に、陛下をお守りするつもりだけど。なにか、手立てがクロウ様にはあるのかしら?」
島を出てどうするのか、というアイリスの質問は、もっともだ。
なにもなければ、ただ、バミネに連れて行かれるというだけだからな。
無論、なにもしないわけはない。
「バミネからネックレスを奪い返すんだ。それがあったら、僕の魔力が戻るかもしれないから。そうしたら、きっと陛下のお役に立てるはずだ、と思って…」
できれば、陛下の炎魔法を消火できるくらいの水魔法が欲しい。
そうすれば、陛下が遺憾なく力を発揮できる。
島から出て、バミネと対峙できるのだ。
ただ、どれだけの魔力がぼくの中に眠っているのかは、わからないから。断言できないのがつらいところだな。
アイリスは、桃色の目を真ん丸にして、ぼくを指差した。
「魔力、今はないの? それは重要よ。絶対に取り戻した方が良いわ。クロウフィーバーでは、クロウ様の水魔法と、私の聖魔法と陛下の炎魔法で、敵をやっつけるのだもの。普通のルートでも、モブのクロウに優しくすると、水魔法で加勢してくれるのよ?」
「ふーん、クロウって、お邪魔するだけのキャラじゃないんだ?」
ゲームのクロウは、いつも陛下と主人公ちゃんの恋路を邪魔していたから。
ぼくは、ただのウゼェキャラだと思っていたよ。
今回は、ぼくがクロウだから。絶対に邪魔をしないように、気遣っていたのだけど。
現在進行形で魔法なしの、今のぼくより。モブのクロウは、使いどころがあるキャラだったんだな?
なんて、感心していたら。アイリスはケラケラっと笑った。
「クロウ様はクロウ様なのに、他人事みたいでおかしいわっ? そうだ、さっきアイキン初心者って言っていたけど、本当? クロウ様、よく成敗地獄をくぐり抜けたわよね? クロウフィーバーは、普通のアイキンのルートより難易度が鬼モードなのよ? 進む道筋を間違えるとか、余計な部屋に寄ったりするだけで、すぐ成敗されちゃうの。私も攻略本から目を離せなくて、やっと攻略できたのよぉ?」
道筋間違えたら成敗と聞いて、ぼくは身を震わせる。
それって、廊下のど真ん中歩いていたら成敗とか? そういうこと?
こっえーっ。どんだけクソゲーなんだ、アイキンっ。
つか、もう、アイキンのこと全然知らない素人を、ゲーム世界に送り込むのは、やめてくださいぃ。
でも、陛下と恋愛できたことは…嬉しいことでしたが。照れ。
最中は、すべてお任せする感じで、陛下にずっとしがみついていたのですが。
甘さと爽やかさがまじる、とにかく良い香りで。
背中に回した、手に触れる汗さえもフローラルなのです。すっごく夢心地になりました。
あ、唐突に、陛下とのアレコレを思い出して、顔を赤くしている場合ではなかった。
「アイリス様は、聖魔法に、もう目覚めているの?」
「えぇ。おかげで、陛下とクロウ様の、悲哀に満ちたラストダンスシーンを、かぶりつきで見られたわぁ。気配を消せる隠密ハイパーモードが使えるの」
えぇ? 聖魔法って、そんなんだっけ?
もっと、光がぱぁっとする感じで。死者を蘇生したり、汚泥を浄化したり、病を癒したり、魔物が嫌がったりするんじゃなかったっけ?
「どんなに遠く離れていても、ズーム機能で、すぐそこで見られるようになるし。耳をすませば、声も聞こえるわぁ? なんでもできる聖魔法、ありがたし」
そう言って、アイリスは両手を合わせてナムナムする。
オタク臭いっ。
それに、聖魔法はなんとなく、発揮すべき点が違うような気がするのは。気のせいだろうか?
ぼくと陛下をかぶりつきで見ていても、なにも起こらないと思いますが?
「それで、クロウ様。私、今から一番大事なことを聞くけど…」
すごい真剣モードで、丸いメガネがキラリと光ったから。
攻略に対してのこととか、この先のアドバイス的なことかと思って、ぼくはゴクリと息をのんだ。
「さすがに、寝室をのぞくのは、いけないわ、アイリスッって思って。すっごく我慢したのよ。だから、わからないのだけど。クロウ様、お尻は大丈夫なのですか?」
ぼくは。
ぼくは…声を失い。開いた口が塞がらなかった。
本当に、呆れがマックスになると、開いた口が塞がらなくなるのだな?
「だって、陛下の陛下は、想像だけど、すっごい陛下でしょう? そうしたら細身のクロウ様が壊れちゃうって…」
主人公オーラを漂わせて、大きな瞳をパチパチまばたきして、すっごい可愛らしく言っているけど。
話の内容が、腐っていますよ?
可愛さのオブラートでは、腐の匂いは誤魔化せませんよ、アイリス?
「い、言いませんよ? そ、想像にお任せします、というか、想像もしないでください。つか、アイリス様は腐っているのですか? あ、さっき腐女子のキモオタって、言ってたかぁ…」
ガクリと、頭を項垂れて言う。
確定ですね。巴と静と同じ人種なのですね、アイリス。
うすうす、そうなのかなと思っていましたが、やっぱり。
でも、姉たちは女王様気質オタクだったが。
アイリスは若干、挙動不審系オタクかな?
普通、聖魔法が使えるようになってさ、隠密スキルは磨かないんじゃね? 隠れたい気質が垣間見えている。
「クロウ様は、腐男子ですよね? 陛下とラブなのだから」
「腐っているほどでは、なかったのです。姉たちが腐女子で、BLも同人誌も、家に転がっていたのを、読んだくらいで。でも、アニメとか格好いいキャラは、男でも惚れたりして…だから、男同士の恋愛に免疫はありましたし。抵抗もないですよ? まぁ、リアルでこうなったのは、もちろん初めてで。戸惑いはしましたが…」
アイリスの質問に、ぼくはドギマギと告げる。
自分のパーソナルな部分をさらすのは、ちょっと怖いんです。
前世では、アニメ漫画好きは、キモオタ扱いで。リア充に冷たい目で見られることが、あるようなないような感じでしたから。
みんながそうではないけど、たまにきっついのに当たることが、あるでしょ?
傷つくのは怖いから、自然、臆病になるわけで。
でも、アイリスは腐女子だと暴露したんだから、ぼくも少しはさらさないとね?
「でも、アイリス様は腐っているのに、なぜアイキンを、クロウフィーバーするくらい周回したのですか? あれは乙女ゲームでしょう?」
「新感覚、乙女ゲームよ。クロウ様はアイキンのサブタイトルをご存知?」
サブタイトルなんかあったっけ? と思って、首をひねると。
アイリスは教えてくれた。
「シークレット、ボンバーラブよ。直訳すると、秘密のラブ爆弾、とか。すっごい愛が隠れているよ、みたいな? でも腐女子が曲解するとBLが隠れてるよ、になるのっ。発見したとき、腐女子界隈がざわざわしたものよっ」
「うそでしょーっ」
曲解過ぎて、引きます。
そんな小さなところまで見逃さない腐女子界隈って、何者?
「実際、クロウルートがあるわけだし。セドリックとシヴァーディのラブも、鉄板ネタでしょう? アイキンには確実にBとLが仕込まれているのよ」
じゃあ、ぼくは。知らず知らずに、クロウルートの主人公だったわけぇ?
モブだと思って、十年ほど生きてきたというのに、どういうことぉ?
「つか、弟に隠れBLゲームをやらせる、姉たちの鬼畜具合が半端ねぇ。あいつら、絶対わかっていて、僕に刷り込んでいたに決まってる」
ぼくは、グヌヌと、奥歯をかみしめて、つぶやく。なにを刷り込んだかって…BLの種をだ。ぼくの体にひそやかに種を埋め込んで、陰でフフフッと笑っていたんだ。巴と静のやつぅ…。
「あらぁ、良い環境で育ったのですね? 御姉様たち、グッジョブですわぁ?」
良い環境…腐の物がそこかしこに転がっている環境を、そう言っていいものか?
でも…。前世で、ぼくの味方は家族だけだった。
頭の上がらない姉たちではあったが。彼女たちなりに、ぼくを大事にしてくれた? ような? 気がするよ。
若干ハテナマークは浮かぶけどなっ。
「えぇ。前世でも今世でも。ぼくは友達出来なくて、対人運はないけど。家族運だけは、恵まれているのです」
にっこり笑って言うと。
アイリスは、指先でちょんと、ぼくの鼻をつついた。
「あら? 私たち、船に相乗りしたときからお友達でしょう?」
「友達? い、良いのですか?」
ぼくは。セドリックやアルフレドとかは、すごく気安い感じで接してくれて、友達っぽいとは思っていたのだけど。
ぼくの方から声をかけるときは、いつも、図々しいかな? とか。馴れ馴れしくしてキモがられないかな? とか。ネガティブに考えてしまって。
つか、友達の作り方、知らないんです。
だから、アイリスが友達と言ってくれて。嬉しい気持ちと、恐る恐るという気持ちが、半々だった。
「もちろんよ。それに今は、陛下を救うための同志でもあるわ? アルフレドも、セドリックたちも、みんなそう思っているはずよ? 私たちはこの城で、陛下をお守りしているから。クロウ様は魔力を取り戻して、必ずここへ帰ってきてね?」
「はい。頑張りますっ」
力強く返事をすると。ボォォォンと、遠くから汽笛の音が聞こえた。
バミネが乗った船が、港についた合図だ。
気づくと、窓の向こうの空は、いつの間にか白々と明けている。
アイリスといっぱいしゃべってしまったようだ。
「クロウ様、この先は、私が知っている、どのアイキンのルートにもない、未知の領域よ。慎重に行きましょう。特に、あのブタには気をつけて。クロウ様が死んでしまったら、本当の本当に、バッドエンドになっちゃうんだからね?」
「アイリス様…ブタはお下品ですよ。子爵令嬢なんですからね?」
「知ーらない。私前世でも、バミネはブタ呼びだったもの。大体、子爵令嬢って柄じゃないのですわぁ?」
フフッと笑って。アイリスはサロンを、軽やかな足取りで出て行く。
それをぼくは、呆然と見送った。
情報量過多です。
モチベーションを取り戻したぼくらは。前世仲間ということで、砕けた調子で話を続けた。
「でも、これからどうするの? この島から出なければならないのでしょう? もちろん、クロウ様が不在の間は、私たちが懸命に、陛下をお守りするつもりだけど。なにか、手立てがクロウ様にはあるのかしら?」
島を出てどうするのか、というアイリスの質問は、もっともだ。
なにもなければ、ただ、バミネに連れて行かれるというだけだからな。
無論、なにもしないわけはない。
「バミネからネックレスを奪い返すんだ。それがあったら、僕の魔力が戻るかもしれないから。そうしたら、きっと陛下のお役に立てるはずだ、と思って…」
できれば、陛下の炎魔法を消火できるくらいの水魔法が欲しい。
そうすれば、陛下が遺憾なく力を発揮できる。
島から出て、バミネと対峙できるのだ。
ただ、どれだけの魔力がぼくの中に眠っているのかは、わからないから。断言できないのがつらいところだな。
アイリスは、桃色の目を真ん丸にして、ぼくを指差した。
「魔力、今はないの? それは重要よ。絶対に取り戻した方が良いわ。クロウフィーバーでは、クロウ様の水魔法と、私の聖魔法と陛下の炎魔法で、敵をやっつけるのだもの。普通のルートでも、モブのクロウに優しくすると、水魔法で加勢してくれるのよ?」
「ふーん、クロウって、お邪魔するだけのキャラじゃないんだ?」
ゲームのクロウは、いつも陛下と主人公ちゃんの恋路を邪魔していたから。
ぼくは、ただのウゼェキャラだと思っていたよ。
今回は、ぼくがクロウだから。絶対に邪魔をしないように、気遣っていたのだけど。
現在進行形で魔法なしの、今のぼくより。モブのクロウは、使いどころがあるキャラだったんだな?
なんて、感心していたら。アイリスはケラケラっと笑った。
「クロウ様はクロウ様なのに、他人事みたいでおかしいわっ? そうだ、さっきアイキン初心者って言っていたけど、本当? クロウ様、よく成敗地獄をくぐり抜けたわよね? クロウフィーバーは、普通のアイキンのルートより難易度が鬼モードなのよ? 進む道筋を間違えるとか、余計な部屋に寄ったりするだけで、すぐ成敗されちゃうの。私も攻略本から目を離せなくて、やっと攻略できたのよぉ?」
道筋間違えたら成敗と聞いて、ぼくは身を震わせる。
それって、廊下のど真ん中歩いていたら成敗とか? そういうこと?
こっえーっ。どんだけクソゲーなんだ、アイキンっ。
つか、もう、アイキンのこと全然知らない素人を、ゲーム世界に送り込むのは、やめてくださいぃ。
でも、陛下と恋愛できたことは…嬉しいことでしたが。照れ。
最中は、すべてお任せする感じで、陛下にずっとしがみついていたのですが。
甘さと爽やかさがまじる、とにかく良い香りで。
背中に回した、手に触れる汗さえもフローラルなのです。すっごく夢心地になりました。
あ、唐突に、陛下とのアレコレを思い出して、顔を赤くしている場合ではなかった。
「アイリス様は、聖魔法に、もう目覚めているの?」
「えぇ。おかげで、陛下とクロウ様の、悲哀に満ちたラストダンスシーンを、かぶりつきで見られたわぁ。気配を消せる隠密ハイパーモードが使えるの」
えぇ? 聖魔法って、そんなんだっけ?
もっと、光がぱぁっとする感じで。死者を蘇生したり、汚泥を浄化したり、病を癒したり、魔物が嫌がったりするんじゃなかったっけ?
「どんなに遠く離れていても、ズーム機能で、すぐそこで見られるようになるし。耳をすませば、声も聞こえるわぁ? なんでもできる聖魔法、ありがたし」
そう言って、アイリスは両手を合わせてナムナムする。
オタク臭いっ。
それに、聖魔法はなんとなく、発揮すべき点が違うような気がするのは。気のせいだろうか?
ぼくと陛下をかぶりつきで見ていても、なにも起こらないと思いますが?
「それで、クロウ様。私、今から一番大事なことを聞くけど…」
すごい真剣モードで、丸いメガネがキラリと光ったから。
攻略に対してのこととか、この先のアドバイス的なことかと思って、ぼくはゴクリと息をのんだ。
「さすがに、寝室をのぞくのは、いけないわ、アイリスッって思って。すっごく我慢したのよ。だから、わからないのだけど。クロウ様、お尻は大丈夫なのですか?」
ぼくは。
ぼくは…声を失い。開いた口が塞がらなかった。
本当に、呆れがマックスになると、開いた口が塞がらなくなるのだな?
「だって、陛下の陛下は、想像だけど、すっごい陛下でしょう? そうしたら細身のクロウ様が壊れちゃうって…」
主人公オーラを漂わせて、大きな瞳をパチパチまばたきして、すっごい可愛らしく言っているけど。
話の内容が、腐っていますよ?
可愛さのオブラートでは、腐の匂いは誤魔化せませんよ、アイリス?
「い、言いませんよ? そ、想像にお任せします、というか、想像もしないでください。つか、アイリス様は腐っているのですか? あ、さっき腐女子のキモオタって、言ってたかぁ…」
ガクリと、頭を項垂れて言う。
確定ですね。巴と静と同じ人種なのですね、アイリス。
うすうす、そうなのかなと思っていましたが、やっぱり。
でも、姉たちは女王様気質オタクだったが。
アイリスは若干、挙動不審系オタクかな?
普通、聖魔法が使えるようになってさ、隠密スキルは磨かないんじゃね? 隠れたい気質が垣間見えている。
「クロウ様は、腐男子ですよね? 陛下とラブなのだから」
「腐っているほどでは、なかったのです。姉たちが腐女子で、BLも同人誌も、家に転がっていたのを、読んだくらいで。でも、アニメとか格好いいキャラは、男でも惚れたりして…だから、男同士の恋愛に免疫はありましたし。抵抗もないですよ? まぁ、リアルでこうなったのは、もちろん初めてで。戸惑いはしましたが…」
アイリスの質問に、ぼくはドギマギと告げる。
自分のパーソナルな部分をさらすのは、ちょっと怖いんです。
前世では、アニメ漫画好きは、キモオタ扱いで。リア充に冷たい目で見られることが、あるようなないような感じでしたから。
みんながそうではないけど、たまにきっついのに当たることが、あるでしょ?
傷つくのは怖いから、自然、臆病になるわけで。
でも、アイリスは腐女子だと暴露したんだから、ぼくも少しはさらさないとね?
「でも、アイリス様は腐っているのに、なぜアイキンを、クロウフィーバーするくらい周回したのですか? あれは乙女ゲームでしょう?」
「新感覚、乙女ゲームよ。クロウ様はアイキンのサブタイトルをご存知?」
サブタイトルなんかあったっけ? と思って、首をひねると。
アイリスは教えてくれた。
「シークレット、ボンバーラブよ。直訳すると、秘密のラブ爆弾、とか。すっごい愛が隠れているよ、みたいな? でも腐女子が曲解するとBLが隠れてるよ、になるのっ。発見したとき、腐女子界隈がざわざわしたものよっ」
「うそでしょーっ」
曲解過ぎて、引きます。
そんな小さなところまで見逃さない腐女子界隈って、何者?
「実際、クロウルートがあるわけだし。セドリックとシヴァーディのラブも、鉄板ネタでしょう? アイキンには確実にBとLが仕込まれているのよ」
じゃあ、ぼくは。知らず知らずに、クロウルートの主人公だったわけぇ?
モブだと思って、十年ほど生きてきたというのに、どういうことぉ?
「つか、弟に隠れBLゲームをやらせる、姉たちの鬼畜具合が半端ねぇ。あいつら、絶対わかっていて、僕に刷り込んでいたに決まってる」
ぼくは、グヌヌと、奥歯をかみしめて、つぶやく。なにを刷り込んだかって…BLの種をだ。ぼくの体にひそやかに種を埋め込んで、陰でフフフッと笑っていたんだ。巴と静のやつぅ…。
「あらぁ、良い環境で育ったのですね? 御姉様たち、グッジョブですわぁ?」
良い環境…腐の物がそこかしこに転がっている環境を、そう言っていいものか?
でも…。前世で、ぼくの味方は家族だけだった。
頭の上がらない姉たちではあったが。彼女たちなりに、ぼくを大事にしてくれた? ような? 気がするよ。
若干ハテナマークは浮かぶけどなっ。
「えぇ。前世でも今世でも。ぼくは友達出来なくて、対人運はないけど。家族運だけは、恵まれているのです」
にっこり笑って言うと。
アイリスは、指先でちょんと、ぼくの鼻をつついた。
「あら? 私たち、船に相乗りしたときからお友達でしょう?」
「友達? い、良いのですか?」
ぼくは。セドリックやアルフレドとかは、すごく気安い感じで接してくれて、友達っぽいとは思っていたのだけど。
ぼくの方から声をかけるときは、いつも、図々しいかな? とか。馴れ馴れしくしてキモがられないかな? とか。ネガティブに考えてしまって。
つか、友達の作り方、知らないんです。
だから、アイリスが友達と言ってくれて。嬉しい気持ちと、恐る恐るという気持ちが、半々だった。
「もちろんよ。それに今は、陛下を救うための同志でもあるわ? アルフレドも、セドリックたちも、みんなそう思っているはずよ? 私たちはこの城で、陛下をお守りしているから。クロウ様は魔力を取り戻して、必ずここへ帰ってきてね?」
「はい。頑張りますっ」
力強く返事をすると。ボォォォンと、遠くから汽笛の音が聞こえた。
バミネが乗った船が、港についた合図だ。
気づくと、窓の向こうの空は、いつの間にか白々と明けている。
アイリスといっぱいしゃべってしまったようだ。
「クロウ様、この先は、私が知っている、どのアイキンのルートにもない、未知の領域よ。慎重に行きましょう。特に、あのブタには気をつけて。クロウ様が死んでしまったら、本当の本当に、バッドエンドになっちゃうんだからね?」
「アイリス様…ブタはお下品ですよ。子爵令嬢なんですからね?」
「知ーらない。私前世でも、バミネはブタ呼びだったもの。大体、子爵令嬢って柄じゃないのですわぁ?」
フフッと笑って。アイリスはサロンを、軽やかな足取りで出て行く。
それをぼくは、呆然と見送った。
情報量過多です。
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