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90 愛の力で王を救えっ! ①
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◆愛の力で王を救えっ!
ぼくがバミネと対峙した件で、陛下が『なんでそんな無茶を…』とつぶやいたとき。
寝室にシオンが入ってきた。
つか、今まで、陛下と話をしていて気づかなかったけど、ここはどこですか?
なんか、ベッドがすっごく大きくて。前世でも、こんな立派なベッド、見たことないんだけどぉ?
「ここからの説明は、ぼくも加わらせていただきますよ、陛下」
シオンの後ろには、アイリスと、騎士様、ラヴェル、アルフレドという、アイキンの主要メンバー勢ぞろいだ。
ひえぇぇ、みなさんキラキラぁで、モブの立場なし。場違い感が半端ないぃ。
でも、とりあえず。ぼくはシオンに手を伸ばし。弟の無事を確かめて、喜んだ。
「あぁ、シオン。良かった、無事で。呪いもちゃんと、解けているな?」
島に上がった辺りから、意識が朦朧として、すべてが夢の中のような感じだったけど。
ここまで僕を連れて来てくれたのが、シオンだということは。なんとなくわかっていた。
シオンがいなかったら。
ぼく、ひとりだったら。
きっと、王城までたどり着けなかった。まず、城門が開けられなかったと思うしぃ。
シオンは、ぼくの伸ばした手の中に体を入れて、慣れた、兄弟のハグを受け入れる。
「はい。兄上がペンダントを取り戻し、封印されたバジリスクの魔力を解放したおかげで、昼間は猫になる月影の呪いを、ぼくも打ち破り、普通の人間に戻ることができました」
なにやら、説明臭いのだが? 弟よ。
でも、たぶん、陛下やみんなに、わかりやすく言ったのだろうな? うん。
「猫になると、リセットしてしまうぼくの魔力も、兄上の魔力の恩恵で、一度しっかりと満たされて。呪いを払ったそのあとは、呪いに魔力を食われることもなく。常に湧き上がる魔力を溜めておけるようになっています。だから、ぼくはもう大丈夫ですよ」
「そうなのか? そうか、やったな? シオン」
くせ毛の、柔らかい髪を、ポンポンと手で撫でると。
シオンは。エロエロボンバーな魅惑的な笑みを浮かべた。
だから、たかが兄に、そういう極上の笑みを垂れ流すのはやめなさい。もったいない。
しかし、あの可愛らしい子猫姿を、もう、見られないのは…。
とても残念である。
もちろん、シオンが人並みの生活を出来るようになることが、一番だけど?
あぁ、でも、もう一度。ナデナデモフモフクンカクンカしておくべきだったな。
「それで? おまえら兄弟は、なにを企んでいたんだ? そもそも、陛下にバジリスクであることを、なぜ報告しなかったんだ?」
蛍光の赤い髪を光らせて、セドリックは太い腕を体の前で組んで、ぼくらを睨み下ろす。
シオンは寝台に腰かけ、上半身を起こしているぼくに、べったりくっついていて。
陛下は、ぼくが楽な姿勢を取れるように、背中側に枕をいっぱい詰めてくれた。
陛下のお手をわずらわせて、すみませんんん。
「たくらみ、なんて。なにも。ただ、陛下に、ぼくがバジリスクであることを言えなかったのは…最初は、あまり意識がなかったというか。ぼくもシオンも、エイデンとして暮らしていた期間の方が、長いものですから」
そうして、ぼくは。家に迎えられる前に、バミネにその地位を横取りされたことを話した。
「もちろん、ぼくらは、バジリスクの血脈ではありますが。ついさっきまで、魔力もない有様で、実感なかったし。十年間、平民だったわけで。だから、この島に来た当初は、ぼくの出自など些末なことだと思っていたのです。でも、陛下に。バジリスクの水魔法をバミネにおさえられていることで、この島から動けないと聞き。これはなんとしても、魔力を取り戻さないとならないなと思ったわけです」
「それを知ったあとは、なぜ、黙っていたのだ?」
ちょっと、怒りで目が吊り上がっていたけれど。陛下は、出来る限り優しげに、ぼくに聞いてくれた。
うぅ、やっぱり、怒っていますよね?
「陛下が、ぼくがバジリスクだと知ったら。今、バジリスクを名乗っているバミネと、確執があるって。気づくでしょう? そうしたら、陛下はぼくを島から出さなかったはず。陛下はお優しいから、ぼくを心配して、王命を下したかも。城に監禁したかも。でも、ネックレスを取り戻すのに、ぼくはどうしても、一度はバミネと対峙しなければならなかったのです」
ぼくに寄り添うシオンが、それで大丈夫だと。はげますように、肩に手を回して、ギュッと力を込める。そして、ぼくの説明に、シオンが補足をした。
「バミネは、ぼくが死んだと思っているのです。だから兄上は、ぼくを切り札だと言い。自分が死んでも、バジリスクの魔力で、陛下を救えと、ぼくに命じた。バミネは、ぼくらの地位に居座っているわけだから、本物の公爵子息が生きていたら、都合が悪い。兄上を生かしておく気など、なかっただろう。でも兄上は、命を懸けて、ネックレスをバミネから取り戻すと決めたんだ」
いやぁ、別に、そんな命懸けなつもりはなかったんだけどなぁ?
「それを承知で、クロウはバミネと対峙したというのか…」
「僕は、陛下をお救いしたかっただけなのです。この島に閉じ込められて、なにもかも、自分の生までも、あきらめてしまった陛下に。生きてもらいたかっただけなのです」
「馬鹿者っ」
陛下は雷を落とすみたいな、轟音で、怒って。
そして、ぼくの肩に置かれたシオンの手をペイッと引っぺがすと、ぼくのことはゆるりと腕の中に抱き締めた。
「馬鹿者。なんて、危ない真似をするのだっ? しかし、そうさせたのは、我なのだな? すまない、クロウ。もう、なにもあきらめたりしない。クロウと、ともに、どこまでも行こう」
「はい。生きましょう。イアン様」
陛下に、怒られてしまいました。
でもそれは。陛下がぼくを心配して、心配しすぎて、それで爆発しちゃったんだって、わかっているから。
嬉しい気持ちが、先に立ってしまう。
怒られているのに、ニヘラっと、笑ってしまった。
ぼくは、誇らしげで、晴れやかな気持ちだった。
この先も、陛下のおそばにいられる。ただそれだけで、幸せだ。
陛下っ、好きぃぃ。
陛下とぼくが、ヒシッと抱き合っていると。部屋の中にいる人物がみんなで、エヘンエヘンと空咳をする。
あ、はい。話の途中でしたね?
ぼくはベッドヘッドに積まれた枕に、身を戻した。
右手に陛下、左手にシオンが、寝台の横側にいて。他のみんなは足元の方にいて、話を進めていく。
「では、陛下。みんなでこの島を脱出するってことで、よろしいですね? よっしゃぁ、ようやくこのときが来たなっ!」
腕まくりをする勢いで、セドリックが言う。
満面の笑顔だから、本当に、ずっと、陛下が立ち上がるその日を、待っていたのだな?
「しかし、島を出るには。船を奪わなければ。明日にも、バミネが攻勢をかけてくるかもしれないのだが?」
冷静に、シヴァーディが分析し。
それは、陛下の火炎魔法で殲滅して、なんてセドリックが言う。
「もう、騎士団は全滅でいいんじゃね? 陛下に仇成すものは、成敗してしまえばいい」
セドリックは、今までの抑圧からか、だいぶ極論に走っている。
まぁ、わからないでもないけど。
陛下の魔法を使ったら、船も全部燃えてしまいますけど?
「でも、ブタ…バミネの船を近づけさせるのは、危険だわ? 王妃様たち、丸腰の使用人たちにも、被害が出るかもしれませんよ?」
アイリスも、作戦に参加して、不安要素をあげる。
この城にいるのは、三十人程度だが、戦闘要員は、十人もいない。
騎士様たちは、一騎当千だけど。それでも、全員を守りながら、戦ったり移動したりするのは、大変だよね?
なんて、話し合いを見守っていたら。アイリスが、爆弾発言した。
「だから、クロウ様に海を割ってもらいましょう?」
『は?』
その部屋にいた全員が、アイリスを見やった。
「クロウ様の…公爵家の水魔法は、海を割り、本土への道を作るって。どこかのなにかの本で見たことがあるわ?」
ええぇぇ? それ、絶対、アイキンの知識でしょ? アイキンで見たんでしょ?
そう思っていたら。陛下もなにやら、納得顔でうなずいている。
「そうか、あの王幾道は、引き潮によるものではなく、公爵家の水魔法によって開かれていたのかもしれないな? ならば、バジリスクが王城へ現れなくなった十年間、一度も、王幾道が現れなかったことにも、説明がつく」
ええぇぇ? そうですかぁ?
いやいや、そんな簡単に納得したら、駄目です。それに…。
「あの、でもでも、ぼくは、魔法を使ったことがなくて、ですね。陛下の炎を消せるか、父の王都洪水を阻止できるか、そして海を割れるか、わからないんですけどぉ?」
不安要素しかないぼくは、オロオロとして、震える声を出す。
でも陛下は、満足げな顔でうむうむと、うなずいていた。
いや、うむ、ではなくてですね?
「それは、先ほど大丈夫だと言っただろう? だが、心配なようなら、明日の朝、魔法が使えるか試してから、海を渡ればよい。じゃあ、みんな。明日は皆で、海を渡って本土へ向かおう。アナベラもバミネもブッ倒し、王宮を我の手に取り戻すっ!」
陛下が宣言すると、みんなは明日の用意をするべく、ワタワタと動き出した。
だ、だ、だ、大丈夫、ですか? ぬか喜びにならなければいいのですが。
「クロウは腹ごしらえだ。昼食抜きだったんだってな? ちゃんと食べないから、いつまでも小さいんだっ。しかし陛下の寝台で食事をするなんて、王妃特権でうらやましいことだな?」
は、は、は、とアルフレドは笑いながら、小さな台をぼくの太ももの上に置いた。
白い陶器でできた、猫足の小さなテーブルに。サンドイッチとスープと果物がたくさん載っている。
寝台の上で食事なんて、なんだか病弱なお姫様みたいですね?
いや、王妃様だけど。
いや、それもかなり実感ないんですけど。
つか、アルフレドの言葉の中に、重要情報がてんこ盛りなんですけど?
ここは陛下のお部屋で、陛下の寝台なのですか?
気、気づきませんで、普通に寝ちゃってて、すみませんんん。
てか、陛下の寝台で食事しちゃって、いいんですか?
陛下を見ると、うなずいているから。いいんですね?
食べてから成敗は受け付けませんからね?
しかし、あぁぁ、こぼさないように超絶注意しなければっ。
あと、小さいのは、食べないからではありません。もう成人したから、これ以上大きくならないだけですぅ。
とはいえ、お腹はすきましたね。朝から泳ぎっぱなしだったからな。
ぼくは遠慮なく、サンドイッチを口にした。
それを見て、陛下もシオンも、安堵の表情だ。
心配かけて、ごめん。ぼくを見守ってくれて、ありがとう。
そんな気持ちで、ふたりに笑いかけた。
つか、アイリスぅ、海を割れるとかいう情報は、もっと早く言ってよぉ?
そうしたら、溺れなくて済んだかもしれないのにぃ。
★★★★★
別枠の『幽モブ アダルトルート』にて、90.5話、春の嵐の夜はいちゃいちゃ、があります。
Rー18です。読まなくても本編に影響はありませんが。より、作品をお楽しみいただけます。Rが大丈夫な方は、よろしければ、ご覧ください。
ぼくがバミネと対峙した件で、陛下が『なんでそんな無茶を…』とつぶやいたとき。
寝室にシオンが入ってきた。
つか、今まで、陛下と話をしていて気づかなかったけど、ここはどこですか?
なんか、ベッドがすっごく大きくて。前世でも、こんな立派なベッド、見たことないんだけどぉ?
「ここからの説明は、ぼくも加わらせていただきますよ、陛下」
シオンの後ろには、アイリスと、騎士様、ラヴェル、アルフレドという、アイキンの主要メンバー勢ぞろいだ。
ひえぇぇ、みなさんキラキラぁで、モブの立場なし。場違い感が半端ないぃ。
でも、とりあえず。ぼくはシオンに手を伸ばし。弟の無事を確かめて、喜んだ。
「あぁ、シオン。良かった、無事で。呪いもちゃんと、解けているな?」
島に上がった辺りから、意識が朦朧として、すべてが夢の中のような感じだったけど。
ここまで僕を連れて来てくれたのが、シオンだということは。なんとなくわかっていた。
シオンがいなかったら。
ぼく、ひとりだったら。
きっと、王城までたどり着けなかった。まず、城門が開けられなかったと思うしぃ。
シオンは、ぼくの伸ばした手の中に体を入れて、慣れた、兄弟のハグを受け入れる。
「はい。兄上がペンダントを取り戻し、封印されたバジリスクの魔力を解放したおかげで、昼間は猫になる月影の呪いを、ぼくも打ち破り、普通の人間に戻ることができました」
なにやら、説明臭いのだが? 弟よ。
でも、たぶん、陛下やみんなに、わかりやすく言ったのだろうな? うん。
「猫になると、リセットしてしまうぼくの魔力も、兄上の魔力の恩恵で、一度しっかりと満たされて。呪いを払ったそのあとは、呪いに魔力を食われることもなく。常に湧き上がる魔力を溜めておけるようになっています。だから、ぼくはもう大丈夫ですよ」
「そうなのか? そうか、やったな? シオン」
くせ毛の、柔らかい髪を、ポンポンと手で撫でると。
シオンは。エロエロボンバーな魅惑的な笑みを浮かべた。
だから、たかが兄に、そういう極上の笑みを垂れ流すのはやめなさい。もったいない。
しかし、あの可愛らしい子猫姿を、もう、見られないのは…。
とても残念である。
もちろん、シオンが人並みの生活を出来るようになることが、一番だけど?
あぁ、でも、もう一度。ナデナデモフモフクンカクンカしておくべきだったな。
「それで? おまえら兄弟は、なにを企んでいたんだ? そもそも、陛下にバジリスクであることを、なぜ報告しなかったんだ?」
蛍光の赤い髪を光らせて、セドリックは太い腕を体の前で組んで、ぼくらを睨み下ろす。
シオンは寝台に腰かけ、上半身を起こしているぼくに、べったりくっついていて。
陛下は、ぼくが楽な姿勢を取れるように、背中側に枕をいっぱい詰めてくれた。
陛下のお手をわずらわせて、すみませんんん。
「たくらみ、なんて。なにも。ただ、陛下に、ぼくがバジリスクであることを言えなかったのは…最初は、あまり意識がなかったというか。ぼくもシオンも、エイデンとして暮らしていた期間の方が、長いものですから」
そうして、ぼくは。家に迎えられる前に、バミネにその地位を横取りされたことを話した。
「もちろん、ぼくらは、バジリスクの血脈ではありますが。ついさっきまで、魔力もない有様で、実感なかったし。十年間、平民だったわけで。だから、この島に来た当初は、ぼくの出自など些末なことだと思っていたのです。でも、陛下に。バジリスクの水魔法をバミネにおさえられていることで、この島から動けないと聞き。これはなんとしても、魔力を取り戻さないとならないなと思ったわけです」
「それを知ったあとは、なぜ、黙っていたのだ?」
ちょっと、怒りで目が吊り上がっていたけれど。陛下は、出来る限り優しげに、ぼくに聞いてくれた。
うぅ、やっぱり、怒っていますよね?
「陛下が、ぼくがバジリスクだと知ったら。今、バジリスクを名乗っているバミネと、確執があるって。気づくでしょう? そうしたら、陛下はぼくを島から出さなかったはず。陛下はお優しいから、ぼくを心配して、王命を下したかも。城に監禁したかも。でも、ネックレスを取り戻すのに、ぼくはどうしても、一度はバミネと対峙しなければならなかったのです」
ぼくに寄り添うシオンが、それで大丈夫だと。はげますように、肩に手を回して、ギュッと力を込める。そして、ぼくの説明に、シオンが補足をした。
「バミネは、ぼくが死んだと思っているのです。だから兄上は、ぼくを切り札だと言い。自分が死んでも、バジリスクの魔力で、陛下を救えと、ぼくに命じた。バミネは、ぼくらの地位に居座っているわけだから、本物の公爵子息が生きていたら、都合が悪い。兄上を生かしておく気など、なかっただろう。でも兄上は、命を懸けて、ネックレスをバミネから取り戻すと決めたんだ」
いやぁ、別に、そんな命懸けなつもりはなかったんだけどなぁ?
「それを承知で、クロウはバミネと対峙したというのか…」
「僕は、陛下をお救いしたかっただけなのです。この島に閉じ込められて、なにもかも、自分の生までも、あきらめてしまった陛下に。生きてもらいたかっただけなのです」
「馬鹿者っ」
陛下は雷を落とすみたいな、轟音で、怒って。
そして、ぼくの肩に置かれたシオンの手をペイッと引っぺがすと、ぼくのことはゆるりと腕の中に抱き締めた。
「馬鹿者。なんて、危ない真似をするのだっ? しかし、そうさせたのは、我なのだな? すまない、クロウ。もう、なにもあきらめたりしない。クロウと、ともに、どこまでも行こう」
「はい。生きましょう。イアン様」
陛下に、怒られてしまいました。
でもそれは。陛下がぼくを心配して、心配しすぎて、それで爆発しちゃったんだって、わかっているから。
嬉しい気持ちが、先に立ってしまう。
怒られているのに、ニヘラっと、笑ってしまった。
ぼくは、誇らしげで、晴れやかな気持ちだった。
この先も、陛下のおそばにいられる。ただそれだけで、幸せだ。
陛下っ、好きぃぃ。
陛下とぼくが、ヒシッと抱き合っていると。部屋の中にいる人物がみんなで、エヘンエヘンと空咳をする。
あ、はい。話の途中でしたね?
ぼくはベッドヘッドに積まれた枕に、身を戻した。
右手に陛下、左手にシオンが、寝台の横側にいて。他のみんなは足元の方にいて、話を進めていく。
「では、陛下。みんなでこの島を脱出するってことで、よろしいですね? よっしゃぁ、ようやくこのときが来たなっ!」
腕まくりをする勢いで、セドリックが言う。
満面の笑顔だから、本当に、ずっと、陛下が立ち上がるその日を、待っていたのだな?
「しかし、島を出るには。船を奪わなければ。明日にも、バミネが攻勢をかけてくるかもしれないのだが?」
冷静に、シヴァーディが分析し。
それは、陛下の火炎魔法で殲滅して、なんてセドリックが言う。
「もう、騎士団は全滅でいいんじゃね? 陛下に仇成すものは、成敗してしまえばいい」
セドリックは、今までの抑圧からか、だいぶ極論に走っている。
まぁ、わからないでもないけど。
陛下の魔法を使ったら、船も全部燃えてしまいますけど?
「でも、ブタ…バミネの船を近づけさせるのは、危険だわ? 王妃様たち、丸腰の使用人たちにも、被害が出るかもしれませんよ?」
アイリスも、作戦に参加して、不安要素をあげる。
この城にいるのは、三十人程度だが、戦闘要員は、十人もいない。
騎士様たちは、一騎当千だけど。それでも、全員を守りながら、戦ったり移動したりするのは、大変だよね?
なんて、話し合いを見守っていたら。アイリスが、爆弾発言した。
「だから、クロウ様に海を割ってもらいましょう?」
『は?』
その部屋にいた全員が、アイリスを見やった。
「クロウ様の…公爵家の水魔法は、海を割り、本土への道を作るって。どこかのなにかの本で見たことがあるわ?」
ええぇぇ? それ、絶対、アイキンの知識でしょ? アイキンで見たんでしょ?
そう思っていたら。陛下もなにやら、納得顔でうなずいている。
「そうか、あの王幾道は、引き潮によるものではなく、公爵家の水魔法によって開かれていたのかもしれないな? ならば、バジリスクが王城へ現れなくなった十年間、一度も、王幾道が現れなかったことにも、説明がつく」
ええぇぇ? そうですかぁ?
いやいや、そんな簡単に納得したら、駄目です。それに…。
「あの、でもでも、ぼくは、魔法を使ったことがなくて、ですね。陛下の炎を消せるか、父の王都洪水を阻止できるか、そして海を割れるか、わからないんですけどぉ?」
不安要素しかないぼくは、オロオロとして、震える声を出す。
でも陛下は、満足げな顔でうむうむと、うなずいていた。
いや、うむ、ではなくてですね?
「それは、先ほど大丈夫だと言っただろう? だが、心配なようなら、明日の朝、魔法が使えるか試してから、海を渡ればよい。じゃあ、みんな。明日は皆で、海を渡って本土へ向かおう。アナベラもバミネもブッ倒し、王宮を我の手に取り戻すっ!」
陛下が宣言すると、みんなは明日の用意をするべく、ワタワタと動き出した。
だ、だ、だ、大丈夫、ですか? ぬか喜びにならなければいいのですが。
「クロウは腹ごしらえだ。昼食抜きだったんだってな? ちゃんと食べないから、いつまでも小さいんだっ。しかし陛下の寝台で食事をするなんて、王妃特権でうらやましいことだな?」
は、は、は、とアルフレドは笑いながら、小さな台をぼくの太ももの上に置いた。
白い陶器でできた、猫足の小さなテーブルに。サンドイッチとスープと果物がたくさん載っている。
寝台の上で食事なんて、なんだか病弱なお姫様みたいですね?
いや、王妃様だけど。
いや、それもかなり実感ないんですけど。
つか、アルフレドの言葉の中に、重要情報がてんこ盛りなんですけど?
ここは陛下のお部屋で、陛下の寝台なのですか?
気、気づきませんで、普通に寝ちゃってて、すみませんんん。
てか、陛下の寝台で食事しちゃって、いいんですか?
陛下を見ると、うなずいているから。いいんですね?
食べてから成敗は受け付けませんからね?
しかし、あぁぁ、こぼさないように超絶注意しなければっ。
あと、小さいのは、食べないからではありません。もう成人したから、これ以上大きくならないだけですぅ。
とはいえ、お腹はすきましたね。朝から泳ぎっぱなしだったからな。
ぼくは遠慮なく、サンドイッチを口にした。
それを見て、陛下もシオンも、安堵の表情だ。
心配かけて、ごめん。ぼくを見守ってくれて、ありがとう。
そんな気持ちで、ふたりに笑いかけた。
つか、アイリスぅ、海を割れるとかいう情報は、もっと早く言ってよぉ?
そうしたら、溺れなくて済んだかもしれないのにぃ。
★★★★★
別枠の『幽モブ アダルトルート』にて、90.5話、春の嵐の夜はいちゃいちゃ、があります。
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