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それから
しおりを挟む結論を先に話すと、アリエットとアシェルの縁はそれから一年後に結ばれた。
全ての切っ掛けは彼が彼女を夜会に誘い、思い余って自分色の贈り物を贈ってしまったことから始まったけれど。その後、それは面白いくらいにトントン拍子に進んだのだ。
まず、アリエットはお返しとしてアシェルにプレゼントを贈り返した。少女はとてつもなく悩んだ。ディオルへ贈った物とは別のものにしたかったからだ。身につけるもので幼なじみで贈った事があるのは、ハンカチ、帽子、ネクタイ、辺りで宝飾品がなかったのは良かった。
「…私色の物で目立たないもの。そうねえ…」
アリエットの色はとても地味だ。黒い目に黒い髪は陽に透かせば濡れたように青味がかるが、パッと見はどう見ても黒。それが果たしてあの銀髪に水色の瞳という対照的な色味の外見に合うのだろうか。
悩みに悩み抜き、少し寝不足になるくらいに悩んだあと、アリエットは贈り物をカフスに決めた。
贈られたブルーダイヤモンドとは勿論比べ物にはならないが、銀色の留め具に石は宝石商の持ってきた黒翡翠と呼ばれる海を渡った向こう側の国の物にした。時間の無い中、ギリギリまで粘って用意したにしては上出来だわ、とアリエットは自分で自分を褒めた。
当日、アシェルより贈られたジュエリーを身につけ、母が既に用意してくれていた薄水色のドレスを身に付けた。黒髪に白い肌のアリエットにそれは思いの外馴染み、薄く化粧を施された少女は満足気に微笑んだ。
迎えに来たアシェルは何と彼女の色を纏っていた。艶やかなビロード調の黒い衣装。その腰の部分に巻いた水色のサッシュは、アリエットのドレスの色とよく似ていて、まるで最初から話し合って合わせたかのようだった。彼の淡い髪色やその研ぎ澄まされた美を持つ顔に、恐ろしいくらいに似合っていたのだけれど。
(この色ならカフスも浮かなくて済みそうだわ)
着飾ったアリエットを目にしたその時点で、挙動不審になり非常に様子がおかしかったが。
彼女が用意したプレゼントを彼に渡して中身を確認するように促し、アシェルは恐る恐る確認をして、そして突然、泣いた。
口をぎゅっと引き結んだままボロボロと涙を流す様子にアリエットは大いに慌て、父は何故か同じように泣き出し、母はその様子を優しい顔で見守っていた。何だこの空間は。
その後、涙が止まらないアシェルを何とか宥めハンカチを渡して馬車に乗り込むと夜会へと参加した。
豪奢な会場には既にリエナが居て、隣には無害そうに微笑む婚約者の青年が立っていた。聞けば侯爵家の次男らしく、ランドーソン家に入婿になるのだと言う。驚いた事に後継は嫡男のアシェルではなく、リエナであった。「だって人見知りがすごくて表立つのに向いていないんだもの」と説明された。その話を聞きながら成程この人が彼女の虫除けか、とアリエットは納得してその人に挨拶をした。
そこと離れた途端、今度は立太子したばかりの第二王子とそのお付きの者達、そう、生徒会の面々に絡まれた。ライトリィン公爵家は筆頭公爵家なので、高位貴族の面々とその子息令嬢が沢山参加していたのだ。
「アシェル~、やっと実を結んだな!良かったな!」
「気持ちが通じたのか?え?…通じてない?どういうこと?」
「付き合ってもないのに宝飾品を贈ったの君…?はあ?」
アシェルが同級生の面々に囲まれ何やら話をしている中で、王太子に話しかけられたアリエットは美しいカーテシーをするも「いいよ、いつも通りで」と言われて、素直にすぐ頭を上げた。
「アシェルは良い奴なんだ。君とくっついてくれそうで良かったよ」
「友人です」
「うん、だから希望的観測でくっついてくれそうで、ってこと。でもお互いの家の反対も無いだろうしこのままなし崩し的に婚約となるんじゃない?」
「いえ、友人になったばっかりなのです。そう言った話も一切してませんし」
サバサバと答えを返すアリエットに第二王子は苦笑を浮べた。そして、
「うん、間違ってない。アシェルには君みたいにハッキリものが言える人が似合うね」
と言われた。
(だから、付き合ってないってば!)
この一年間、アリエットの父と母は決まったようなものだ、といった顔をしていたし、メーベリナも「ツンデレの本懐が叶うってこと?!」と何故か大興奮していたけれど、アリエットは特にその話題には触れずに、ずっと色々と考えていた。
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