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勘違いではない【完結】
しおりを挟むリエナ、アシェルと正式に友人となったアリエットはランドーソン男爵家を数回訪れて家族にも挨拶をした。彼らのご両親は二人とも穏やかな人柄だった。
特に双子と同じ色の母親は、そのままリエナが成長したかのような清廉な美女だった。一番最初に会った時、二人と親しくさせて頂いてますと挨拶をしたら、
「ふふ、まさかアシェルが女の子を連れて帰ってくる日が来るなんて。嬉しくて…うっ」
と言って、泣いていた。
付き合うと決まった訳でもないのに、そんなに?とアリエットは思ったが、彼らの父親も、その後ろに佇む家令やズラリと並んだ侍女達ですらうんうんと深く頷いていたので、それなりに事件であったらしい。隣で涙ぐむアシェルを見て母親似かな、とも思った。(リエナは声を出して笑っていた)
アシェル達のお父様には『アグエル消炎薬』の話を家の父に伝えた時の話を詳しく聞いた。目をきらきらさせながら、話を理解しようとする父に好感が持て、以来友人だと思って来たのだと。良かったわね、お父様。片思いじゃなかったみたいよ。
王都の一等地に構えられた男爵家の屋敷は、やはり、というか思っていた通りティンバーランドのそれよりも遥かに大きく、まるで城のようだった。ランドーソンは領地を持たない貴族なので本邸と考えたとしても、破格の大きさだった。
そして、アリエットとアシェルはそれぞれの家や学園、一緒に出かけたりする中で少しずつ距離を縮めた。
アリエットと夜会に参加した事が公になった後も、アシェルに対し未だに秋波を送り続けている女学生もいるわけで。
アリエットを身内と既に認めてしまったリエナが、以前ナディアに行ったように威嚇をするので、彼女に直接文句を言う生徒はいなかったが、通りすがりに「どうやって取り入ったのかしら?」「大して美しくも無いくせに」などと言われ、言い返しはしなかったけれど少しだけ嫌な思いはした。
特にアシェル達と幼馴染だという侯爵令嬢(顔見知りと言うだけで親しくはないとリエナは苦虫を噛み潰したような顔をしていた)への対応は、向こうの家柄が上な分だけ苦労した。
けれど、アリエットに対して「アシェルに近づくな」や「学園を辞めろ」、「怪我をするぞ」など直接的な脅迫がどんどん増えた結果、その証拠をあっさりと掴まれた彼女はいつの間にか学園から消えていた。
まあ、顔だけでなく家柄も一等品と来れば、確かに狙う人は多いわよね、とアリエットは考えた。
どこか心の奥で面白くないわ、と思いながら。
そういえば、ディオルとリエナは結局どのような関係だったのか。随分と仲良くなった後に本人より聞いた話だと、ディオルもリエナに貢物を贈っていた人々の一人だったらしい。なんだ、一方通行だったんじゃないとアリエットは今更呆れながらも、ディオルに絡まれていた時にリエナが話しかけてきたのは態とだったのだと気がついた。
「…悪女だと思っているのに助けるなんて、貴女って良い人だったのね」
「え?あの時は違うわよ?貴女の弱みのひとつでも握れないかなと思って近づいてみたんだけど、何にも出てこないんだもの」
「前言撤回だわ。リエナの方が悪女じゃない」
アシェルと一緒にいるようになってからは、ディオルは一切こちらに絡んでこなくなった。リエナ曰く「負け戦に参加するお馬鹿さんではなかったのね」という事だった。
アリエットを介して知り合いになったメーベリナとリエナも、最初はお互いにギクシャクしていたが、推している役者が同じだったことで意気投合していた。今では、アリエットを含め三人で良く昼食やお茶をして楽しんでいる。
そして、アシェルはと言えば。
「…アシェル?何か言いたいことでも?」
「…ううん、アリエット綺麗だなあって思って見てただけ」
「…、あらそう?ありがとう…?」
生徒会で、数字の集計をしていた所、視線を感じたアリエットがそう問いかけると、蕩けるような笑みを浮かべて素直に物申すようになった。なったが。
「…おい、アシェルやめろ。仕事中だ。後にしろ」
「直球すぎるでしょ。ティンバーランド嬢が心臓発作でも起こしたらどうするの?」
「起こしませんよ」
彼の醸し出す甘い空気に、王太子含めた面々は最初のうちは面白がっていたが段々と生ぬるい視線をこちらに向けるようになっていた。(アリエットから甘い空気は出てない)
けれど、そうやって間に割って入る彼らの方へと視線を戻した途端アシェルは、普段の彼に戻る。
「どうしちゃったの、アシェルは。性格変わっちゃったじゃん」
「いえ?変わってませんが」
「うわ?!さっきまでの恍惚とした笑みどこいった?!真顔こわっ!」
「は?いつも通りですが」
「わあ…別人だ。いや元通りだ…」
(お母様やメーベリナの言っていた事の意味がようやく分かったわ)
身内や友人にすら殆ど見せない、こちらを信頼しきった幸せそうな笑顔や優しい目で見られて、好きになるなという方が無理だろう。
まだまだ、関係は始まったばかりなのにディオル相手では感じたこともなかった胸の高鳴りや幸福感が、今ですら怖いほどだった。
しばらく経った頃、その美しい空色の目に映るのが自分だけならいいのに、と何気なく思った時に、アリエットは漸く彼に恋してる事に気がついたのだ。
「アシェル。勘違いでなければ私、貴方のことが好きだと思うわ」
「…!!勘違いじゃない!」
泣きそうな顔で柔らかく笑った、初めて恋を教えてくれた人に。
アリエットは幸な満面の笑みを返したのだった。
【終わり】
拙い文章を、ここまで読んでくださってありがとうございました!(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
番外編ですが、アシェル、リエナの気持ちをそれぞれ描きます。
もし、面白かったなあと思って頂けたらいいねボタンを押して頂けると、次の作品に繋げられます( .ˬ.)"
暑い日がまだまだ続きますが、夏バテされませんように…!
4,000
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