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80 宣戦布告
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「お姉様!」
高い声で呼ぶアリアンヌの姿をみてルドヴィカはため息をついた。
ドレスがぼろぼろになり、涙をこぼす彼女はとても可哀そうにみえる。
だが、それが作為的なものである可能性を考えるとルドヴィカは同情を抱くことはなかった。
「お姉様がここまで苦しんでいたなんて知らなかったわ。でも、罪は罪……どうか、大人しくお認めになってください。そうすればお姉様の身の安全だけは保障しますから」
「何を言っているのです。私が何をしたの」
震える声でようやくルドヴィカは質問した。
「そんな、私の口からは」
「アンジェロ大公夫妻が献上した首飾りにヒ素を塗り込んでいた。あなたは大公の皇后への懸想に嫉妬して犯したのであろう!」
めまいのするシナリオである。よくもまぁここまで作成できるものだ。
その献上した品には毒など塗った覚えはない。それもヒ素と考えるとビアンカ公女へ渡したクッキーにひそませていた毒を思い出す。
せめて息子の誕生を祝う場くらい大人しくできないのだろうか。
「どうして私がそんなことをしなきゃいけないの」
ルドヴィカは疑問をぶつけた。
「そんな、私は……陛下」
アリアンヌは甘えるように後からやってきたカリスト皇帝に視線を向けた。
「大公が皇后にまだ未練を残していたようで、彼女へ襲い掛かったのだ」
ドレスがぼろぼろなのはその後だという。
ジャンルイジ大公はそのまま捕らえられて、騎士たちに押さえつけられたという。
「どうしてあなたたちは……」
ルドヴィカは拳を強く握りしめた。
ジャンルイジ大公がアリアンヌにそのような真似をするわけがない。
アリアンヌに男として、人として侮辱され精神を追い詰められた彼に何という侮辱であろう。
このように陥れた皇帝家が許せなかった。
「さぁ、大人しく捕縛されろ。アリアンヌの願いもあり死罪にならないように力は尽くしてやろう」
恩着せがましい発言に怒りがおしよせてくる。
しかし、ここで自分が拒否すればここにいるガヴァス卿の身が危うい。
彼だけでもせめて無事に外へ出すことを優先させたい。
「大公妃様、大丈夫です」
ルドヴィカを庇うように前へ出たガヴァス卿は落ち着かせるように声をかけた。
安心させるための発言であるが、ここをどうにかするには厳しい。
ガァッと遠くから獣の咆哮が聞こえた。
風を切る音とともに何かが近づいてくる。いや、何かが落ちて来るという方が正しいかもしれない。
どすんと落ちたものの衝撃音、地が揺れ宮殿騎士たちは態勢を崩した。
「ふふ、ふ……」
落下物から不敵な女性の声が聞こえてくる。
とても聞き覚えのある声である。
ジャンルイジ大公が聞けば頭を痛めたという仕草でこめかみに手を触れたであろう。
「何者だ! 宮殿でこのような狼藉、ただですむと思うのか」
カリスト皇帝から出る陳腐な台詞に、女性は名乗りだした。
同時に女性は自分が載っていた霊獣のヒポグリフに人参を投げつけた。
ヒポグリフが人参を美味しそうに頬張る中名乗る美女の姿はとてもシュールである。
「ヒポグリフに乗った麗しの聖女・フランチェスカよ!」
「きゃあーーーー!」
自分で麗しとつけるかなと思ったが、つけたかったのだろう。
確か、最後に出会った時は時代劇にはまっていて、主人公の典型的な自己紹介に胸がどきどきしたと言っていたのを思い出した。
そして聖女と名乗りから無事に聖女叙任式を終えたのだろう。
ルドヴィカのツッコミが出るより前にアリアンヌの空気を割く程の悲鳴が響いた。
「皇后陛下。どうしました」
「何であの女がいるの? 魔法棟は、教会は何をしていたの!」
宮殿騎士たちの心配の声を無視してアリアンヌは震えていた。
「あら、アリアンヌ嬢。皇后陛下だったわね。この前はお祝いに派遣した人たち、ありがとう。全員ボコボコにして牢屋の中に放り込んだわ」
帝都の教会、魔法棟から送られた暗殺者の対策はばっちりで、無事返り討ちにしたようである。
「くそ枢機卿も巻き込んでくれたようで、おかげ様で彼の悪事を暴くのが非常に楽だったわ。ありがとう!」
そういえば、フランチェスカが聖女叙任式が保留となった件の枢機卿は帝国出身だった。ばりばりの鼠色の髪への差別者の。
おかげですっきり爽快、晴れやかなフランチェスカの笑顔を見ることができた。
このような形で見るとは思わなかったけど。
「さぁさぁ、大公妃様をピックアップして大公領へ帰還としましょうか」
聖女叙任式を終えて、大公領へ帰る途中のお迎えのような発言である。
ヒポポはくちばしでルドヴィカをつまみあげて、背中へぽいっと放り込んだ。ガヴァス卿も同様である。
「ちょっと待って。ジジが」
「大丈夫よ」
このまま逃亡するのを否とするルドヴィカにフランチェスカは心配ないと笑った。何か確証があるようでガヴァス卿がルドヴィカの肩を掴み、騎乗の姿勢が崩れないようにする。
ばさぁっと風のなぐ音がする。人参を食べ終えたヒポポは大きく翼を広げ空へ駆けあがろうとしていた。
「ええい、無礼だぞ。皇帝である私に対して礼をとらず、罪人を逃がすとは。せっかく聖女になったというのにお前も罪人になりたいようだな」
「まず礼を尽くされるような皇帝になってから発言してください」
「無礼者!」
フランチェスカに対してアリアンヌは責めた。
「あ、アリアンヌ皇后。あなたも身の振り方を考えた方がいいですよ。あなたが大公領でしでかしたこと、いつでも拡散できちゃうのですから」
「あ、そんなことできるわけ」
「私がどれだけ色んな国、地方を巡礼したと思っているのです。いつでも私がスクロール発動させれば各国に置いていたスクロールであなたがしでかしたことを大暴露しちゃいますよ」
「何て卑怯な」
「そうですね。私としてはこんな回りくどい真似よりも、一発その頬をはったたく方がお互いすっきりしていいと思うのですが」
フランチェスカとしても不服そうだった。多分例のスクロールを開発したのはルフィーノで、この計画を考えたのはジャンルイジ大公であろう。
ヒポポが大空へ飛び立つ頃に皇帝は必死に命じた。
「急いであのヒポグリフを打ち落とせ!」
攻撃魔法ができるものは呪文を唱え、ヒポポめがけて攻撃をしかけた。
弓ができるものは弓を。
「何であたらないんだぁ」
これだけ一斉射撃したというのにヒポポは無傷であった。
「あらら、宮殿騎士って大したことないのね。ま、前線や危険地帯はいつでもはしっこの騎士がやっていたから実戦経験なしのポンコツはしょうがないかぁ」
無傷なのはフランチェスカの神聖魔法、防御魔法によるものである。
それなのにフランチェスカはなおも煽る。
こんなに楽しそうな彼女をみると止めた方がいいのではと思ってしまう。
宮殿から去る時に悔し気な皇帝の声が聞こえて来た。
威厳も何もあったものではない。
「それよりもフラン。たいへんなの。ジジが」
「ええ、知っているわ。私がここに来たのもジジのスクロール発動のおかげだから」
幽閉された後にジャンルイジ大公は礼服に縫い付けてあったスクロールを破り、フランチェスカに緊急信号を送ったのだ。
これで何があろうとルドヴィカを優先して救出するように。
事前に打ち合わせていた。
「そんな……ジジは」
「大丈夫よ。この時の為に逃避用スクロールがあって、帝都の外へ脱出できているから」
ちなみにホテル待機させていた使用人たちも同様であった。
いつ何が起きても良いように、本日荷造りを済ませていたそうだ。
緊急信号を受け取った使用人、待機騎士たちは集合して逃避用スクロールを発動させた。
大人数、荷物、馬車ごとの逃避魔法なのでかなりの魔力が必要になっただろう。
いくらスクロールがあったとしても。
この時の為に魔力が一定数高い魔法使いを数人使用人の中に潜り込ませていたそうだ。
すでにホテル内はもぬけの殻である。
ここまで用意周到であることに脱帽した。
「そんな、知らなかったのは私だけ」
さすがに面白くないとルドヴィカは頬を膨らませた。
信用されていないということでは。
「色々あったとはいえ、ルカの実家や故郷を疑うようなことをするというのは何か感じが悪いじゃない。何もなければそれでよしだったのよ」
「そんなこと気にしなくても……」
ヒポポはこのまま大公領の境界まで飛んでくれた。
先に大公城へ戻るように勧められたが、ルドヴィカは安心できずジャンルイジ大公の帰りを待つ。
帝都までは1週間以上はかかる道のりだった。休みなく向かったとしても数日はかかるだろう。
「ルカ、どうして」
3日後に馬を駆けさせたジャンルイジ大公が到着してルドヴィカは彼の元へ駆け寄った。
「心配しました!」
ルドヴィカはぽんぽんとジャンルイジ大公の胸を叩いた。
昔と違う弾力のある筋肉の感触であったが今はそんなことどうでもいい。
「心配かけたな」
「これからどうなるのです?」
「ここまで侮辱されれば仕方ない。アンジェロ大公家は皇帝家に背く……交流を断じ、徹底交戦だ」
アンジェロ大公として領民の為に戦争は避けたかったのだがとジャンルイジ大公は苦く笑った。
「お前も故郷と離れ離れになって心苦しいだろう」
「いえ、良いのです」
もう帝都には未練はない。先日決めたのである。何があろうとルドヴィカはジャンルイジ大公の味方となると。
高い声で呼ぶアリアンヌの姿をみてルドヴィカはため息をついた。
ドレスがぼろぼろになり、涙をこぼす彼女はとても可哀そうにみえる。
だが、それが作為的なものである可能性を考えるとルドヴィカは同情を抱くことはなかった。
「お姉様がここまで苦しんでいたなんて知らなかったわ。でも、罪は罪……どうか、大人しくお認めになってください。そうすればお姉様の身の安全だけは保障しますから」
「何を言っているのです。私が何をしたの」
震える声でようやくルドヴィカは質問した。
「そんな、私の口からは」
「アンジェロ大公夫妻が献上した首飾りにヒ素を塗り込んでいた。あなたは大公の皇后への懸想に嫉妬して犯したのであろう!」
めまいのするシナリオである。よくもまぁここまで作成できるものだ。
その献上した品には毒など塗った覚えはない。それもヒ素と考えるとビアンカ公女へ渡したクッキーにひそませていた毒を思い出す。
せめて息子の誕生を祝う場くらい大人しくできないのだろうか。
「どうして私がそんなことをしなきゃいけないの」
ルドヴィカは疑問をぶつけた。
「そんな、私は……陛下」
アリアンヌは甘えるように後からやってきたカリスト皇帝に視線を向けた。
「大公が皇后にまだ未練を残していたようで、彼女へ襲い掛かったのだ」
ドレスがぼろぼろなのはその後だという。
ジャンルイジ大公はそのまま捕らえられて、騎士たちに押さえつけられたという。
「どうしてあなたたちは……」
ルドヴィカは拳を強く握りしめた。
ジャンルイジ大公がアリアンヌにそのような真似をするわけがない。
アリアンヌに男として、人として侮辱され精神を追い詰められた彼に何という侮辱であろう。
このように陥れた皇帝家が許せなかった。
「さぁ、大人しく捕縛されろ。アリアンヌの願いもあり死罪にならないように力は尽くしてやろう」
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しかし、ここで自分が拒否すればここにいるガヴァス卿の身が危うい。
彼だけでもせめて無事に外へ出すことを優先させたい。
「大公妃様、大丈夫です」
ルドヴィカを庇うように前へ出たガヴァス卿は落ち着かせるように声をかけた。
安心させるための発言であるが、ここをどうにかするには厳しい。
ガァッと遠くから獣の咆哮が聞こえた。
風を切る音とともに何かが近づいてくる。いや、何かが落ちて来るという方が正しいかもしれない。
どすんと落ちたものの衝撃音、地が揺れ宮殿騎士たちは態勢を崩した。
「ふふ、ふ……」
落下物から不敵な女性の声が聞こえてくる。
とても聞き覚えのある声である。
ジャンルイジ大公が聞けば頭を痛めたという仕草でこめかみに手を触れたであろう。
「何者だ! 宮殿でこのような狼藉、ただですむと思うのか」
カリスト皇帝から出る陳腐な台詞に、女性は名乗りだした。
同時に女性は自分が載っていた霊獣のヒポグリフに人参を投げつけた。
ヒポグリフが人参を美味しそうに頬張る中名乗る美女の姿はとてもシュールである。
「ヒポグリフに乗った麗しの聖女・フランチェスカよ!」
「きゃあーーーー!」
自分で麗しとつけるかなと思ったが、つけたかったのだろう。
確か、最後に出会った時は時代劇にはまっていて、主人公の典型的な自己紹介に胸がどきどきしたと言っていたのを思い出した。
そして聖女と名乗りから無事に聖女叙任式を終えたのだろう。
ルドヴィカのツッコミが出るより前にアリアンヌの空気を割く程の悲鳴が響いた。
「皇后陛下。どうしました」
「何であの女がいるの? 魔法棟は、教会は何をしていたの!」
宮殿騎士たちの心配の声を無視してアリアンヌは震えていた。
「あら、アリアンヌ嬢。皇后陛下だったわね。この前はお祝いに派遣した人たち、ありがとう。全員ボコボコにして牢屋の中に放り込んだわ」
帝都の教会、魔法棟から送られた暗殺者の対策はばっちりで、無事返り討ちにしたようである。
「くそ枢機卿も巻き込んでくれたようで、おかげ様で彼の悪事を暴くのが非常に楽だったわ。ありがとう!」
そういえば、フランチェスカが聖女叙任式が保留となった件の枢機卿は帝国出身だった。ばりばりの鼠色の髪への差別者の。
おかげですっきり爽快、晴れやかなフランチェスカの笑顔を見ることができた。
このような形で見るとは思わなかったけど。
「さぁさぁ、大公妃様をピックアップして大公領へ帰還としましょうか」
聖女叙任式を終えて、大公領へ帰る途中のお迎えのような発言である。
ヒポポはくちばしでルドヴィカをつまみあげて、背中へぽいっと放り込んだ。ガヴァス卿も同様である。
「ちょっと待って。ジジが」
「大丈夫よ」
このまま逃亡するのを否とするルドヴィカにフランチェスカは心配ないと笑った。何か確証があるようでガヴァス卿がルドヴィカの肩を掴み、騎乗の姿勢が崩れないようにする。
ばさぁっと風のなぐ音がする。人参を食べ終えたヒポポは大きく翼を広げ空へ駆けあがろうとしていた。
「ええい、無礼だぞ。皇帝である私に対して礼をとらず、罪人を逃がすとは。せっかく聖女になったというのにお前も罪人になりたいようだな」
「まず礼を尽くされるような皇帝になってから発言してください」
「無礼者!」
フランチェスカに対してアリアンヌは責めた。
「あ、アリアンヌ皇后。あなたも身の振り方を考えた方がいいですよ。あなたが大公領でしでかしたこと、いつでも拡散できちゃうのですから」
「あ、そんなことできるわけ」
「私がどれだけ色んな国、地方を巡礼したと思っているのです。いつでも私がスクロール発動させれば各国に置いていたスクロールであなたがしでかしたことを大暴露しちゃいますよ」
「何て卑怯な」
「そうですね。私としてはこんな回りくどい真似よりも、一発その頬をはったたく方がお互いすっきりしていいと思うのですが」
フランチェスカとしても不服そうだった。多分例のスクロールを開発したのはルフィーノで、この計画を考えたのはジャンルイジ大公であろう。
ヒポポが大空へ飛び立つ頃に皇帝は必死に命じた。
「急いであのヒポグリフを打ち落とせ!」
攻撃魔法ができるものは呪文を唱え、ヒポポめがけて攻撃をしかけた。
弓ができるものは弓を。
「何であたらないんだぁ」
これだけ一斉射撃したというのにヒポポは無傷であった。
「あらら、宮殿騎士って大したことないのね。ま、前線や危険地帯はいつでもはしっこの騎士がやっていたから実戦経験なしのポンコツはしょうがないかぁ」
無傷なのはフランチェスカの神聖魔法、防御魔法によるものである。
それなのにフランチェスカはなおも煽る。
こんなに楽しそうな彼女をみると止めた方がいいのではと思ってしまう。
宮殿から去る時に悔し気な皇帝の声が聞こえて来た。
威厳も何もあったものではない。
「それよりもフラン。たいへんなの。ジジが」
「ええ、知っているわ。私がここに来たのもジジのスクロール発動のおかげだから」
幽閉された後にジャンルイジ大公は礼服に縫い付けてあったスクロールを破り、フランチェスカに緊急信号を送ったのだ。
これで何があろうとルドヴィカを優先して救出するように。
事前に打ち合わせていた。
「そんな……ジジは」
「大丈夫よ。この時の為に逃避用スクロールがあって、帝都の外へ脱出できているから」
ちなみにホテル待機させていた使用人たちも同様であった。
いつ何が起きても良いように、本日荷造りを済ませていたそうだ。
緊急信号を受け取った使用人、待機騎士たちは集合して逃避用スクロールを発動させた。
大人数、荷物、馬車ごとの逃避魔法なのでかなりの魔力が必要になっただろう。
いくらスクロールがあったとしても。
この時の為に魔力が一定数高い魔法使いを数人使用人の中に潜り込ませていたそうだ。
すでにホテル内はもぬけの殻である。
ここまで用意周到であることに脱帽した。
「そんな、知らなかったのは私だけ」
さすがに面白くないとルドヴィカは頬を膨らませた。
信用されていないということでは。
「色々あったとはいえ、ルカの実家や故郷を疑うようなことをするというのは何か感じが悪いじゃない。何もなければそれでよしだったのよ」
「そんなこと気にしなくても……」
ヒポポはこのまま大公領の境界まで飛んでくれた。
先に大公城へ戻るように勧められたが、ルドヴィカは安心できずジャンルイジ大公の帰りを待つ。
帝都までは1週間以上はかかる道のりだった。休みなく向かったとしても数日はかかるだろう。
「ルカ、どうして」
3日後に馬を駆けさせたジャンルイジ大公が到着してルドヴィカは彼の元へ駆け寄った。
「心配しました!」
ルドヴィカはぽんぽんとジャンルイジ大公の胸を叩いた。
昔と違う弾力のある筋肉の感触であったが今はそんなことどうでもいい。
「心配かけたな」
「これからどうなるのです?」
「ここまで侮辱されれば仕方ない。アンジェロ大公家は皇帝家に背く……交流を断じ、徹底交戦だ」
アンジェロ大公として領民の為に戦争は避けたかったのだがとジャンルイジ大公は苦く笑った。
「お前も故郷と離れ離れになって心苦しいだろう」
「いえ、良いのです」
もう帝都には未練はない。先日決めたのである。何があろうとルドヴィカはジャンルイジ大公の味方となると。
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