現世ではヒモだった男が異世界で英雄へと成り上がる

今野常春

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第一章 国家消滅

第18話 戦後処理①

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 魔法中隊はレイム少将の下に集められ、彼の言葉を大人しく耳にする。すでに降伏勧告を受諾し、彼らは攻撃を止めている。
「さて、私たちは降伏した」
 周辺では落ち着きをt利戻した帝国軍が遠巻きに眺めている。不足の事態があればいつでも攻撃できる態勢は崩さず、緊張感が周囲を包み込んでいる。
「抵抗する素振りは見せないでくれよ。すれば私たちは全員が死ぬからね」
 いかに魔導鎧が有ろうともこの状況下では多勢に無勢なのだ。それが分かるからこそ誰もがレイムの言葉に反対しない。
「少将、私たちはどうなるのです!」
「捕虜だね」
 簡単な答えだった。
 降伏したとはいえ、降伏文書に調印したわけでもない。停戦しても戦争状態は継続している。
「我々の身を帝国軍に預ける。何、我々は大人しくしていれば相手は何もできないよ」
 捕虜に対する扱いは紳士協定により丁重な扱いが約束されている。だが、あくまでも紳士協定である。それでもレイムにはどこか確信に近い何かが有った。
「そろそろよろしいかな。少将殿?」
 一人の帝国軍兵士が声を掛けてくる。
「ええ、降伏いたします」
「それは結構。では、我々の指示に従っていただく」
 レイムの言葉に従い中隊各員は帝国軍の指示に素直に従った。
「これが魔法使用者のみで編成された部隊ですか……」
 レイムに話し掛けた男は帝都より送り込まれた国防軍技術開発部の主任研究技師の肩書を与えられている男だった。普段は帝国軍のために武器開発に心血を注ぎ、今回の飛行船を造り上げたのも彼有ってのことだった。
 いち早く彼がこの場に来た理由は間違いなく彼らの持つ力を調べる為である。

 中隊各員はそれぞれ武装解除されると、帝国へ向けて要された列車へと乗せられる
「私たちは王都には戻れないのですか?」
「申し訳ないが軍機につき答えられない…… 冗談です。一度言ってみたかった。その通り。帝都で魔法について調べさせてもらう」
 魔法中隊の各員は捕虜とは名ばかりに各席用意され、水食糧が与えられていた。その待遇に誰もが予想出来ず驚愕する。その中でもレイムは別格だった。
 彼は主任技師の前に座らされていた。
「それは……」
「拒否はできませんよ。これは降伏文書にも盛り込まれる予定です。それまでの間あなた方は帝都に於いて捕虜の扱いを受けていただく。それ以降は私たちに力を貸していただく」
「しかし……」
「すぐに納得する必要はありません。待遇は皇帝陛下の名に於いて補償いたしましょう。ご安心ください。おっと、申し遅れました。私は帝国軍国防軍技術開発部主任技師フェルス・マクレーンマンと申します」
「ヴェスタ・レイム少将です……」
 自己紹介された手前レイムも同様に名乗ると互いに握手を交わす。
「レイム少将は軍人らしくありませんね」
「そういう貴官こそ」
「それは当然です。私は技術畑に居る者です。軍事教練すら受けたことはありません。ほら、銃すら持っていないのです」
 マクレーンマン自らが無防備であることを示す。
「良いのですか?」
「構いません。今手を出せばどうなるのか、分からない方ではないと思っていますから」
 そう言われては何も答えられないレイムだった。
「さて、帝都まで間、ゆっくりと話しましょう」
「お手柔らかにお願いしますよ……」
 魔法中隊、八十五名が帝都向け列車に乗せられ、ゆっくりとローテルを発するのであった。





「行ってしまわれたか……」
 身を隠しつつ、元上官や戦友の乗る列車を見送るのはティーダ少佐を始めとした残された元隊員たちだった。主に若者と女性で構成される。
 魔法中隊は降伏する間際、混乱する中でレイムは的確な指示を出していた。
 それこそ彼らの身の安全である。
 帝国はおそらく女性捕虜に対し安全の保障は無いと判断し、ティーダ少佐に託したのだ。
 ならば、付け加えて将来のある若手の身も彼に預けた。
 その中にユウスケ中尉が含まれている。
「少佐、これからどうされるのですか?」
 不安げにマルが問い掛けるとティーダは首を横に振る。
「それは私が知りたいと言いたいな。だが、まずはこの場を脱しよう。少将の思いを裏切る訳にはいかない」
 ティーダの言葉にこの場に残されたものは頷いた。
 彼らは元来た方角ではなく、そのまま真っすぐ王国領を北から南へ突っ切ることを選択した。

 残された人数は八名。戦闘によって百二十名のうち二十七名が戦死していた。
 彼らは魔導鎧から魔導石を外し、周辺の村へと移動している。魔導鎧は戦闘がなければ魔導石を外す決まりとなっている。原理は説明されていないが、常時付けているとオーバーヒートしてしまう。
「この辺りに村があるはずだ……」
 城塞都市ヘレルから来る途中、帝国軍の警戒部隊が居たことから此方側にもいるだろうと警戒していたが案の定だった。
「誰もいませんね……」
「ああ、おそらくここの者は帝国に連れていかれたということだ……」
 何とか辿り着いた村は、もぬけの殻だった。村人はおろか、家畜すら存在しない。
 だが今の彼らにとってこの状況は幸運である。
「物音は出すなよ」
 まずは着ている物を如何にかしなければならない。ティーダは全員に服を入手するよう命じた。

「お邪魔しまーす……」
 俺は他人の家に入るときどうしても言わなければならなかった。
 辺境村はどこも似た様な造りで小さい頃を思い出すが、今はそれどころではない。
 何とか俺に合った服を探し出す為、この家の物を漁る。
「これしかないか……」
 王都の人間が着るような服は当然ない。それでも多少は良いものが有ってもと思ったが、望み薄だった。
「まあこんなもんだよな……」
 ティーダの言葉に従って魔導鎧の上から着込むと、多少着脹れした村人になってしまった。
「これはバレるだろ……」
 各々見付け出した服を着て集合したところ、真っ先に出た言葉がそれだった。
「我侭を言うな。今はこれで我慢しろ」
 この日はここで休むこととなった。
 俺たちは周囲に明かりが漏れないよう徹底して村長宅と思われる比較的大きな家に身を落ち着けた。
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