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第一章 国家消滅
第17話 国家消滅
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魔法中隊にも戦闘中止と降伏命令が届いた。
王国軍でも最も激しい攻撃を加えている部隊でもあり、勢い付いてしまっている。
これを止めるのは容易ではない。王国軍中央参謀部はそう考えていたが、現地司令官レイム少将はすんなりと受け入れる。隊員もレイムの言葉に対し反発を見せなかった。
「やはり、こうなってしまったか……」
レイムは前線司令部から届けられた命令文を読み、空を見上げて呟いた。
「少将、どうします?」
「戦闘中止だ。降伏する」
「残念です……」
「私もだ、少佐。此処まで順調に事が運びながら……」
運びながら、と考えていたがレイムだがこのことこそ帝国軍の謀略と作戦だったのではないかと考えた。王国側の意図を見抜き、着地点を描いた者がいるのではないか、と帝国に恐れを抱く。
「いけないね。どうしても考え込んでしまうよ」
「これから考える時間はたっぷりとあるでしょう」
「そうだといいけどね。何せ我が中隊は帝国軍に多大な犠牲を与えてしまった。その司令官がのうのうと生き残れると思うかな?」
ティーダ少佐はレイムの言葉に何も言い返せなかった。
間違いなく許されるものではないことは彼も分かっていた。
だから少しでもレイムを励まそうとしたのだが裏目に出てしまう。
帝都では真っ先に戦勝が伝えられた。
仇敵とも呼べるレイブル王国の降伏に帝国臣民は皇帝の名を叫び、万歳を唱え、夜ともなるとライトアップして今回の勝利を祝った。
「皇帝陛下! この度の勝利、おめでとうございます‼」
『おめでとうございます‼』
豪華な椅子に腰掛ける皇帝に対し、軍を代表する男が戦勝報告を行った。
「うむ。余は大変満足しておる。アーゼル、卿は見事な指導をしたな。褒美を取らす」
「ははぁー」
帝国軍の重鎮、国防軍最高司令官アーゼル・マト・レイン元帥は深々と頭を下げ、皇帝からの褒美を恭しく受け取った。当然彼以外にも褒美が与えられ、皇帝万歳の声が上がった。
皇帝の表情は頗るよい。機嫌の良さが溢れている。それも当然だ。帝国の後背と目された王国が降伏したことで、後顧の憂いがなくなった。帝国は前を向けばよくなったのだ。
「さて、余は大変満足しているが、ここで終わらせるわけではない。王国を完全に手に入れる為皆力を合わせて欲しい」
「ははぁ、陛下の思し召しに従い尽力いたします」
「うむ。差し当たり、王国には魔法についてすべてを差し出させよ。技術部に対して人を向かわせ、接収できる物は全て行え」
皇帝のみならず、帝国首脳部の面々は王国の根幹たる魔法について喉から手が出るほど欲していた。間違いなく科学技術と魔法の融合が帝国の発展を促進すると確信している。
皇帝の命令前に、降伏受諾を聞いた瞬間に部隊を編成させ、王都に向けて人を送り込んでいたのだ。
接収できるかどうかは時間の問題だ。仇敵たる帝国に王国の魔法を使わせまいとする者が関係する物を破壊し、葬り去ることは目に見えていた。
一方、降伏を宣言したレイブル王国国王マクレイは再び玉座に腰を据えていた。但し、周囲は帝国軍軍人に包囲されていたのである。
「少し落ち着かぬのだが」
「そこは我慢していただかねばなりません」
敵国のトップに対し、コール・シュルツ大佐は敬意を払いつつも必要最低限に抑えていた。
「貴様! 国王陛下に対し何たる物言いだ‼」
喰ってかかったのはレアだった。噛み付かんばかりの怒気を含んでいたが、武装解除され、すぐさまシュルツの部下に取り押さえられてしまった。
「よせ、レア。余は不快に感じておらん」
「は……」
「申し訳ありません。何分私は軍人とはいえ、貴族ではありませんので……」
「なに構わんよ。国が違えば制度も異なる。君のような優秀な人間が然るべき場所に就けるだけの柔軟さがあるということなのだろう」
この言葉にシュルツは舌を巻いた。と、同時に彼は王国の柵を感じざるを得なかった。
「さて、国王陛下。王都内は順次武装解除が続いておりますが、今少しお話を聞かせていただきたいのです」
「何かな、シュルツ大佐?」
「ご家族は如何なされました?」
シュルツは玉と言う国王の身柄は手に入れたが、もう一つ国王の家族も標的となっていた。
「それは答えられない話しだね。君の役割は家族見つけ出すことなのだろう。ならば探しなさい。私は既に降伏した身だ。現状この城は帝国の物と言ってもよい」
「探しても見つからないから聞いておるのです」
「ならば知らないね」
「国王陛下、私が聞いているうちにお答えいただきたい」
何れ陸軍主力が投降部隊を引き連れ王都に到達する。それ以前に帝都から部隊が送り込まれてくる。これはシュルツが降伏受諾を受けて本国に指示を仰いだ時に知らされた事柄である。
彼は確かに帝国軍軍人であり、軍人となったからには皇帝に対し絶対の忠誠を捧げている。それでもこれから送り込まれてくる部隊は王国を呑みこむべく手続きさせる者たちである。かなり強硬な手段に打って出る者たちとも言われている。
事実、これから行われる王国の重鎮を始めとした粛清の嵐が王都では巻き起こる。
それは王国が描いた二度と帝国に攻め込ませようという気を失わせることへの焼き写しであった。
王国は交渉の結果、独立は保たれたが事実上消滅し、帝国に呑み込まれる。
周辺諸国はその知らせを受け、言い知れぬ不安を抱き、軍備に力を入れ始める。
ある国家は複数の国家と同盟を結び、ある国家は帝国と誼を通じようとする。
それぞれ生き残りを賭けた策動が始まる。
王国軍でも最も激しい攻撃を加えている部隊でもあり、勢い付いてしまっている。
これを止めるのは容易ではない。王国軍中央参謀部はそう考えていたが、現地司令官レイム少将はすんなりと受け入れる。隊員もレイムの言葉に対し反発を見せなかった。
「やはり、こうなってしまったか……」
レイムは前線司令部から届けられた命令文を読み、空を見上げて呟いた。
「少将、どうします?」
「戦闘中止だ。降伏する」
「残念です……」
「私もだ、少佐。此処まで順調に事が運びながら……」
運びながら、と考えていたがレイムだがこのことこそ帝国軍の謀略と作戦だったのではないかと考えた。王国側の意図を見抜き、着地点を描いた者がいるのではないか、と帝国に恐れを抱く。
「いけないね。どうしても考え込んでしまうよ」
「これから考える時間はたっぷりとあるでしょう」
「そうだといいけどね。何せ我が中隊は帝国軍に多大な犠牲を与えてしまった。その司令官がのうのうと生き残れると思うかな?」
ティーダ少佐はレイムの言葉に何も言い返せなかった。
間違いなく許されるものではないことは彼も分かっていた。
だから少しでもレイムを励まそうとしたのだが裏目に出てしまう。
帝都では真っ先に戦勝が伝えられた。
仇敵とも呼べるレイブル王国の降伏に帝国臣民は皇帝の名を叫び、万歳を唱え、夜ともなるとライトアップして今回の勝利を祝った。
「皇帝陛下! この度の勝利、おめでとうございます‼」
『おめでとうございます‼』
豪華な椅子に腰掛ける皇帝に対し、軍を代表する男が戦勝報告を行った。
「うむ。余は大変満足しておる。アーゼル、卿は見事な指導をしたな。褒美を取らす」
「ははぁー」
帝国軍の重鎮、国防軍最高司令官アーゼル・マト・レイン元帥は深々と頭を下げ、皇帝からの褒美を恭しく受け取った。当然彼以外にも褒美が与えられ、皇帝万歳の声が上がった。
皇帝の表情は頗るよい。機嫌の良さが溢れている。それも当然だ。帝国の後背と目された王国が降伏したことで、後顧の憂いがなくなった。帝国は前を向けばよくなったのだ。
「さて、余は大変満足しているが、ここで終わらせるわけではない。王国を完全に手に入れる為皆力を合わせて欲しい」
「ははぁ、陛下の思し召しに従い尽力いたします」
「うむ。差し当たり、王国には魔法についてすべてを差し出させよ。技術部に対して人を向かわせ、接収できる物は全て行え」
皇帝のみならず、帝国首脳部の面々は王国の根幹たる魔法について喉から手が出るほど欲していた。間違いなく科学技術と魔法の融合が帝国の発展を促進すると確信している。
皇帝の命令前に、降伏受諾を聞いた瞬間に部隊を編成させ、王都に向けて人を送り込んでいたのだ。
接収できるかどうかは時間の問題だ。仇敵たる帝国に王国の魔法を使わせまいとする者が関係する物を破壊し、葬り去ることは目に見えていた。
一方、降伏を宣言したレイブル王国国王マクレイは再び玉座に腰を据えていた。但し、周囲は帝国軍軍人に包囲されていたのである。
「少し落ち着かぬのだが」
「そこは我慢していただかねばなりません」
敵国のトップに対し、コール・シュルツ大佐は敬意を払いつつも必要最低限に抑えていた。
「貴様! 国王陛下に対し何たる物言いだ‼」
喰ってかかったのはレアだった。噛み付かんばかりの怒気を含んでいたが、武装解除され、すぐさまシュルツの部下に取り押さえられてしまった。
「よせ、レア。余は不快に感じておらん」
「は……」
「申し訳ありません。何分私は軍人とはいえ、貴族ではありませんので……」
「なに構わんよ。国が違えば制度も異なる。君のような優秀な人間が然るべき場所に就けるだけの柔軟さがあるということなのだろう」
この言葉にシュルツは舌を巻いた。と、同時に彼は王国の柵を感じざるを得なかった。
「さて、国王陛下。王都内は順次武装解除が続いておりますが、今少しお話を聞かせていただきたいのです」
「何かな、シュルツ大佐?」
「ご家族は如何なされました?」
シュルツは玉と言う国王の身柄は手に入れたが、もう一つ国王の家族も標的となっていた。
「それは答えられない話しだね。君の役割は家族見つけ出すことなのだろう。ならば探しなさい。私は既に降伏した身だ。現状この城は帝国の物と言ってもよい」
「探しても見つからないから聞いておるのです」
「ならば知らないね」
「国王陛下、私が聞いているうちにお答えいただきたい」
何れ陸軍主力が投降部隊を引き連れ王都に到達する。それ以前に帝都から部隊が送り込まれてくる。これはシュルツが降伏受諾を受けて本国に指示を仰いだ時に知らされた事柄である。
彼は確かに帝国軍軍人であり、軍人となったからには皇帝に対し絶対の忠誠を捧げている。それでもこれから送り込まれてくる部隊は王国を呑みこむべく手続きさせる者たちである。かなり強硬な手段に打って出る者たちとも言われている。
事実、これから行われる王国の重鎮を始めとした粛清の嵐が王都では巻き起こる。
それは王国が描いた二度と帝国に攻め込ませようという気を失わせることへの焼き写しであった。
王国は交渉の結果、独立は保たれたが事実上消滅し、帝国に呑み込まれる。
周辺諸国はその知らせを受け、言い知れぬ不安を抱き、軍備に力を入れ始める。
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