どうも、卵から生まれた魔人です。

べす

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8、ピンチです

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「これが、魔人だと…?」

ラルの使っていない深皿を拝借し水浴びをする僕を見て、お久しぶりのこの国の王子が眉を顰める。

「えぇ、しかも、魔の国の王子だそうです…。」

言いながらラルも未だ信じられないのか、僕の頭にジョウロで水を掛けながらこっそり胡散臭そうな目でこちらを見ていた。

ラルの報告はすぐに国の上層部に伝えられ、僕を召喚した張本人である王子はそれを聞き付け慌てて神殿に駆け込んできた。
しかし今更王子が出て来ようがどうにかなる問題でもない。
よく知らないが僕の兄さんはとんでもなく強くて残忍だそうなので、僕がラルの側から離れれば確実に報復と銘打ってこの国を滅ぼすだろう。

そうならない為には僕はラルの側に居なければならないのだが…。

プカプカと水の上に仰向けで浮いている僕を見下ろし、二人は黙って僕を凝視する。
そして何を思いついたのか、王子が僕を指差しラルの方を見た。

「…これがこちらに居なければこの国が危ないのならば、取り敢えず檻に入れるべきだ。」

「檻に入れるのは止めたほうが宜しいかと思います。どこで魔人が見ているか分かりませんし…。」

あの不気味な人形を思い出したのか、ラルが苦い顔をする。

「では、どうすればいい。私の使い魔として召し上げれば良いのか?役に立つとは思えんし、出来れば使い魔などにしたくはないが。」

こっちもお断りだし、それは逆効果だろう。

ラルも同じ事を思ったのかそう口に出そうとして、何処からか「では、わたくしが処分しましょう。」と女の声が響く。

全員で声のした方を向くと、どこから現れたのか真っ赤な口紅で口角を上げる黒髪の女が立っていた。

「何者だ!何処から入った?」

「あらやだ。人間の住居など、転移の使える魔人にとっては屋外となんら変わりなくてよ。それより、その丸々太った鳥の処分に困っているのでしょう?わたくしが引取って上げるからこちらへ寄越しなさい。」

女はそう言うと真っ赤な爪の付いた手のひらを上に向けこちらに腕を出す。
しかしそれを見た王子は視線を鋭くした。

「…断る。得体のしれない者の言う事など信用できぬからな。おまけに魔人だと?ますます渡す訳にいかぬ。」

意外な事に、王子は僕を魔人に丸投げする気は無いらしい。
てっきりすぐ渡されると思っていたのに…と驚いていると、女は困った様に頬に片手を添え首を傾げた。

「あら、案外そのデブ鳥に情でも移ったのかしら?ふふ、どちらにせよ人間がどう言おうが関係無いわ。素直に渡さないなら殺して奪うだけ。」

女の纏う気配が変わった瞬間、ゴッと何かがぶつかる様な音がして、ラルが王子の前に出て女の長く伸びた爪を腕で受け止めている。
腕には深々と女の爪が刺さっており、ボタボタと血が滴った。

「殿下、お逃げ下さい!」

「ラル…!」

「あら、案外やるわね?私の爪を受け止めたご褒美に、次は首を跳ねてあげましょう。」

そう言って女がもう片方の手を構えた瞬間、僕の身体から真珠色の煙が昇る。

次の瞬間には女は部屋の壁にめり込んでいて、僕は大きくなった自分の首の関節をボキボキと鳴らした。

「…あぁ、急に成長したから関節がおかしいな。…で、お前。よくも僕のものに手を出したね…?生きてここから出られると思うなよ。」

煙の引いた中から現れた僕は、背中に大きな真珠色の翼を付けた青年姿へと変わっていた。
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