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11、侍従を選びますか
しおりを挟む転移先は自分の為に用意されていた自室で、僕はガランとしたその部屋に唯一あった椅子にドカッと腰掛ける。
するとすぐにイザードがやって来て、いつも通り僕の目の前に跪いた。
「レヴィウス殿下!お待ち申し上げておりました。」
「うん。取り敢えず、兄さんの侍従を決めた奴を呼んできて。話があるから。」
「ハッ。」
僕がそう言うなりイザードはすぐに退出し、然程時間も掛けずにエンベを引き摺ってくる。
エンベはイザードから何も聞いていないのか何か文句を言っていたようだが、部屋に入るなり僕を見て慌ててイザードの様に跪いた。
「こ、これは、レヴィウス殿下…!無事のご帰還お喜び申し上げます…っ!」
「エンベだっけ。兄さんの侍従を決めたのはお前なんだって?お前が今までの決まりを無視してまであの女を侍従に選んだ理由は察してるけど、よりによってあんな無能を選ぶなんて…相談役が聞いて呆れるよ。」
僕の言葉に、エンベはガタガタと震えだす。
「お、恐れながら、私は…っ」
「誰が発言していいって言った?」
勝手に喋り出すエンベに目を細めると、僕の殺気に当てられたエンベは冷や汗を噴き出した。
「どうせ父さんや母さんは僕達に興味なんか無いだろうし、兄さんの侍従は僕が決める。お前はもう口を出すな。それと、今後兄さんに無理に子を望むのは止めろ。放っておいてもそのうち母さんはまた卵を産むだろうからね。分かったら下がれ。」
エンベは「御意。」と声を絞り出すと、這うように部屋を出て行く。
それを見送ってから僕は跪いたままのイザードにチラリと目を向けた。
「イザード、お前、兄弟は居る?」
「…双子の弟と妹が居りますが、どちらもまだ未熟者でございます。」
兄さんの侍従にしたくないのかそう答えるイザードに、僕は構わず命令する。
「取り敢えず連れてきて。従者に出来るかどうかは僕が判断する。」
「…畏まりました。」
渋々といった様子のイザードに、僕はそんなに酷いのか?と少し気になる。
しかし数分後、やって来た二人を見てその意味を痛いほど知らしめられる事になった。
「「レヴィウス殿下ッ!この度は私達を侍従にお召し下さるとお聞きし光栄の極みでございますッ!!どうかご存分にお使い下さいませ!」」
「…。」
「こ、こら!アベル、マベル!レヴィウス殿下のお許しも無く勝手に口を開くな!それと、お前達がレヴィウス殿下の侍従にして頂けるなど一言も申しておらん!レヴィウス殿下の侍従はこのイザードただ一人なのだからな!」
これは…。
目の前で誰が僕の侍従に相応しいのか言い合いを始める三人に、思わず無言になる。
何でこの兄弟はこんなに僕に夢中なんだ…と思いながらも、逆にその方が都合がいいかも知れないなと気を取り直した。
「盛り上がってる所悪いんだけど、アベルとマベルには僕では無く兄さんの侍従を務めてもらいたい。兄さんは僕の特別な人だからね。イザードの様に、主の事を一番に考えて行動出来る者に任せたいんだ。」
それを聞いたイザードは目を輝かせ、反対に双子は絶望に満ちた表情で僕を見つめる。
僕はそんな二人を見て立ち上がると自分も二人の目線に合わせて膝を着き、そっと二人の顎を撫でた。
「そんな顔をしないで。これは、僕からの期待の証なんだよ?僕は前任の侍従の様な無能な魔人に兄さんを任せたくないんだ。君達が僕の期待に応えてくれるなら、勿論僕からも褒美をあげる。」
留めに「だから、僕のお願いを聞いてくれないかな?」と笑みを浮かべ畳み掛ければ、二人は真っ赤な顔でコクコク頷く。
「「レヴィウス殿下の為なら喜んで!」」
「嬉しいな。僕にしてくれるのと同じ様に、兄さんにもしっかり尽してね。」
ついでに頭を撫でてやれば、二人はついに耐え切れなくなりバタンッと同時に倒れた。
それに呆れていると、すぐ側でイザードが憎悪の篭った視線を二人に向けていることに気付く。
「…イザード、何て顔をしてるの。お前は僕の侍従なんだから、何も羨む事なんて無いだろう。」
「くっ…それは、勿論ですが…っ!ほ、褒美と言うのは…」
僕はそんなイザードに仕方無くその場で自分の羽根を一枚抜き差し出すと、イザードは震えながらそれを受け取り双子と同じように倒れた。
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