どうも、卵から生まれた魔人です。

べす

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10、様子がおかしいです

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それから何故か大人しくなっていた王子を護衛に押し付け部屋から締め出すと、僕はラルをベッドに寝かせる。
こちらも静かだったが、僕は怪我のせいだろうと思い慣れない手つきで残った血を拭いたり、着替えを用意したりした。

「…何でこんな急にデカくなるかな…。」

両腕で顔を覆いハァ~ッと大きく溜息を吐いたラルは、腕の隙間からチラリと僕を見た。

「しかも背中に翼?鳥じゃなくて聖書に出て来る天使じゃん。お前の兄貴下半身蛇だったよな?それで何で兄弟な訳?」

「僕達は卵から産まれるからね。魔人の子供は両親の種に影響を受けずに完全な個として産まれてくるんだ。ちなみに普通の魔人は人型と獣型の二形態なんだけど、力の強い魔人は人型と、半人型と、獣型と三形態ある。で、今の僕は半人型。この姿が一番楽で力も発揮しやすいんだよね。」

「…お前、さっきまであのデブ鳥だったとは思えない位ベラベラ喋るな…。」

僕達は人間と違い、その細胞にはしっかりと魔人としての常識が定着した状態で産まれてくる。
それはたぶん、弱肉強食の魔人の中で少しでも生き残る為だと思うんだけど。

そこで僕はラルがじっと僕の事を見つめている事に気付き、少しだけ微笑んで首を傾げる。
すると明らかに動揺したラルは僕のセンター分けだった前髪をグシャグシャと掻き乱すと、目が合わない様瞳を隠した。

「ちょ…何するの。これじゃ何も見えないじゃない…。」

「そんな目で見るからだろ。大体お前、さっきまで兄貴にはあんなツンケンしてた癖に、なんで俺にはそんな態度なんだよ。」

そんな態度とは…?

言っている意味が分からず再び首を傾げる僕に、ラルは「あーもう!」と起き上がる。

「あ、ちょっと。まだ寝てないと…」

「さっきの薬で傷は治ってる。それに、やる事もあるしな。お前だって一旦魔の国に帰るんだろ?」

すっかり忘れていたが、兄さんとイザードにそう約束したんだった。
行きたく無いと言う思いが顔に出ていたのか、ラルは呆れながら僕を見る。

「早めに行っとけ。でないとあの兄貴がまた押し掛けてきそうだからな。…で、ちゃんと戻って来るんだろ?」

どこか自身の無さそうな声でそう尋ねて来るラルに、僕は迷い無く頷いた。

「当たり前じゃない。何で疑問形なの?」

「別に意味はねぇよ。なら用が済んだらとっとと帰ってこいよ。こっちは忙しいんだ。その成りなら色々仕事も手伝えんだろ。」

何を手伝わされるんだろう…と思いながらも、何故か僕を早く魔の国に行かせようと急かすラルに「分かったから。じゃあ行ってくるね。」と手を振る。

転移する時、一瞬ラルの耳が赤かったような気がしたが、僕はそのまま魔の国へと転移した。
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