どうも、卵から生まれた魔人です。

べす

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18、妹よ

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「おーい、朝ですよー!いい加減起きて下さーい。」

「ん…?」

聞いたことの無い声で呼び掛けられ、僕は目を開ける。
ふっと横を見れば、僕に呼び掛けていたであろううざき耳の少女の魔人がパアッと顔を輝かせた。

「…え、誰?」

「初めまして兄様!わたくしエルルタですわ!」

兄様…兄様?
そこで僕はエルルタが自分の妹である事に思い至る。
と言う事は母さんはあれからまた卵を産んだんだな…とぼんやり考えていると、エルルタがぷぅっと頬を膨らませた。

「兄様、失恋くらいで三年も寝込むだなんて情け無い!エルルタなど、もう十三連敗もしておりますのよ!もっと強く生きねば!」

「え、十三連敗?振られ過ぎじゃない?」

エルルタの玉砕回数に驚いたものの、その少し前の言葉に気付いて思わず飛び起きる。

「え、今三年って言った?僕三年も寝てたの!?」

「今そう申しあげたではないですか。ちなみにわたくしのイザードも不眠不休で三年間兄様の護衛をしております。全く、とんだブラック主人ですわね!」

何かイザードの名前の前におかしな言葉が付いていた気がするが、それはスルーした。

「マズイ、流石に三年は無いな。今すぐラルの元へと戻らないと…。」

「あら、振られて帰ってきたんではないのですか?戻ってどうするのです?」

何で知っているのか分からないが、グサリと痛い所を突いてくる我が妹に僕は唇を歪ませる。
エルルタの言う通りだ。
戻ったってどうしようもないじゃないか。

「…一応、お別れだけ言ってくるよ。出てくる時は一時的に帰る様な事言って出て来たから、ケジメつけてくる。」

「まぁ、兄様は律儀ですのね。」

目を丸くして僕の話を聞いていたエルルタは、「そうだ、イザードに知らせて参りますわ。」と言って居なくなった。
少ししてすぐに部屋に駆け込んで来たイザードは、すっかり憔悴して目の下にくっきりと濃いクマを作っていた。

「殿下!やっとお目覚めになられたのですね!」

「うん。イザード、凄いクマだね…僕はラルの所へ行ってくるから、早くお休み。」

僕がそう言えば、エルルタが「他人事みたいに言ってますけど、兄様のせいですからね。」と突っ込みを入れる。
この僕にこんなにズバズバ言えるとはなかなかだなと感心していると、エルルタはイザードの腕に自分の腕を絡めた。

「さっ、イザード。兄様もこう言っておりますし、私と一緒に休みましょう。しっかり休んだ後は、がっつり交尾をして子作りですわよ!」

とんでも無い事を言い出したエルルタに目を剥いていると、イザードは落ち着き払った様子で腕を外させる。

「エルルタ殿下、誰とでも交尾したがるのはおやめください。だから十三連敗もされるのです。」

「だって、子作りしたいんですもの!だから、最後の希望としてイザードにお願いしてるんじゃない!」

「……エルルタ、イザードはそういうタイプが一番苦手だ。」

僕が窘めればエルルタはむくれたが、すぐに「なら、兄様がいい人を紹介してくださいませ!大兄様はわたくしを全く相手にしてくれないので、頼りにならないのです!」と愚痴った。

「うーん、考えとくよ…。」

「約束ですからね!」

僕の妹は逞しいな…。

エルルタとそんな話をしてから、僕はイザードにも同じ様に話して神殿へと戻る。
ラルは仕事か何かで席を外している様だったので、僕はそうだ、と自らを真珠色の大きな鳥の姿に変えた。

ラルは僕の事が嫌いだから、せめて鳥の姿ならまだマシかもしれない。

窓際にとまりラルを待っていると、暫くして帰って来たラルは僕の姿を見つけて呆然としていた。

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