18 / 21
18、妹よ
しおりを挟む「おーい、朝ですよー!いい加減起きて下さーい。」
「ん…?」
聞いたことの無い声で呼び掛けられ、僕は目を開ける。
ふっと横を見れば、僕に呼び掛けていたであろううざき耳の少女の魔人がパアッと顔を輝かせた。
「…え、誰?」
「初めまして兄様!わたくしエルルタですわ!」
兄様…兄様?
そこで僕はエルルタが自分の妹である事に思い至る。
と言う事は母さんはあれからまた卵を産んだんだな…とぼんやり考えていると、エルルタがぷぅっと頬を膨らませた。
「兄様、失恋くらいで三年も寝込むだなんて情け無い!エルルタなど、もう十三連敗もしておりますのよ!もっと強く生きねば!」
「え、十三連敗?振られ過ぎじゃない?」
エルルタの玉砕回数に驚いたものの、その少し前の言葉に気付いて思わず飛び起きる。
「え、今三年って言った?僕三年も寝てたの!?」
「今そう申しあげたではないですか。ちなみにわたくしのイザードも不眠不休で三年間兄様の護衛をしております。全く、とんだブラック主人ですわね!」
何かイザードの名前の前におかしな言葉が付いていた気がするが、それはスルーした。
「マズイ、流石に三年は無いな。今すぐラルの元へと戻らないと…。」
「あら、振られて帰ってきたんではないのですか?戻ってどうするのです?」
何で知っているのか分からないが、グサリと痛い所を突いてくる我が妹に僕は唇を歪ませる。
エルルタの言う通りだ。
戻ったってどうしようもないじゃないか。
「…一応、お別れだけ言ってくるよ。出てくる時は一時的に帰る様な事言って出て来たから、ケジメつけてくる。」
「まぁ、兄様は律儀ですのね。」
目を丸くして僕の話を聞いていたエルルタは、「そうだ、イザードに知らせて参りますわ。」と言って居なくなった。
少ししてすぐに部屋に駆け込んで来たイザードは、すっかり憔悴して目の下にくっきりと濃いクマを作っていた。
「殿下!やっとお目覚めになられたのですね!」
「うん。イザード、凄いクマだね…僕はラルの所へ行ってくるから、早くお休み。」
僕がそう言えば、エルルタが「他人事みたいに言ってますけど、兄様のせいですからね。」と突っ込みを入れる。
この僕にこんなにズバズバ言えるとはなかなかだなと感心していると、エルルタはイザードの腕に自分の腕を絡めた。
「さっ、イザード。兄様もこう言っておりますし、私と一緒に休みましょう。しっかり休んだ後は、がっつり交尾をして子作りですわよ!」
とんでも無い事を言い出したエルルタに目を剥いていると、イザードは落ち着き払った様子で腕を外させる。
「エルルタ殿下、誰とでも交尾したがるのはおやめください。だから十三連敗もされるのです。」
「だって、子作りしたいんですもの!だから、最後の希望としてイザードにお願いしてるんじゃない!」
「……エルルタ、イザードはそういうタイプが一番苦手だ。」
僕が窘めればエルルタはむくれたが、すぐに「なら、兄様がいい人を紹介してくださいませ!大兄様はわたくしを全く相手にしてくれないので、頼りにならないのです!」と愚痴った。
「うーん、考えとくよ…。」
「約束ですからね!」
僕の妹は逞しいな…。
エルルタとそんな話をしてから、僕はイザードにも同じ様に話して神殿へと戻る。
ラルは仕事か何かで席を外している様だったので、僕はそうだ、と自らを真珠色の大きな鳥の姿に変えた。
ラルは僕の事が嫌いだから、せめて鳥の姿ならまだマシかもしれない。
窓際にとまりラルを待っていると、暫くして帰って来たラルは僕の姿を見つけて呆然としていた。
20
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
魔術師さんは囲われ気味な高位貴族の愛人になりたくない
さか【傘路さか】
BL
全9話。離婚経験済みの高位貴族×貴族に研究の後援を受ける魔術師。
魔術師であるラディは、貴族であるノックスに後援を受け、安価な金属から純金を生成する研究を続けている。
ノックスは若い研究者や芸術家などを支援しては大成させ、関連事業を興しては成功させる傍ら、私生活では妻の不貞による離婚を経験しているような男だ。
ラディを懐に入れ、戯れに触れてくるノックスを、不思議と突き放さずに衣食住を担保してもらう日々を続けていた。
ある日、ノックスから「近々、君の後援を打ち切ろうと思っていてね」と告げられる。
ひと月以内に研究の成果を出すか、愛人になるか。
二択を迫る男は、これまでよりも接触を増やす、と宣言し、ラディの唇を奪うのだった。
※小説の文章をコピーして無断で使用したり、登場人物名を版権キャラクターに置き換えた二次創作小説への転用は一部分であってもお断りします。
無断使用を発見した場合には、警告をおこなった上で、悪質な場合は法的措置をとる場合があります。
自サイト:
https://sakkkkkkkkk.lsv.jp/
誤字脱字報告フォーム:
https://form1ssl.fc2.com/form/?id=fcdb8998a698847f
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。
【完】名前すら知らない、僕のつがい
325号室の住人
BL
突如、【狼(?)耳の男のつがい】になったらしい僕。
会えば深く愛される関係の僕らだけど、実はまだ、僕らは互いの名前を知らなかった。
「」日本語
『』異世界語
《》心の声(テレパシー)
☆全8話 完結済み
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる