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17、【魔の国にて】
しおりを挟む「さ、今日もお掃除お掃除~…って、ギャアァア!!??」
箒片手に双子の日課であるレヴィウスの自室掃除にやってきたマベルは、ベッドに横たわる人物を見て悲鳴を上げた。
そこにはレヴィウス本人が俯せで上半身だけベッドに倒れており、マベルは慌てて生存確認に走る。
「レヴィウス殿下!レヴィウス殿下!どうされました!?」
「う…マベル?」
顔を横に向けうっすら目を開くレヴィウスの顔色は悪い。
それを確認したマベルは、急いでレヴィウスの靴を脱がせベッドに仰向けに寝かせ直した。
「お労しや!麗しい殿下のお顔が真っ青に…!すぐに医者を呼んで参ります!」
「医者はいいから…イザードを呼んでくれる?」
「か、畏まりました!すぐに!」
マベルは急いで自分の兄を呼びに行くと、イザードがすっ飛んで来る。
そのままレヴィウスの顔を覗いて「殿下!」と声を掛ければ、レヴィウスは再び弱々しく瞼を上げた。
「イザード…僕、我慢できなくてラルに直接聞いちゃった。そしたら、物凄く嫌われてたよ。はは。」
「あ、あれだけお止めしましたのに!本気にしてはなりませんよ!?あの男は捻くれていると申し上げたでしょう、それは本心では御座いません!」
思わずガクガクとレヴィウスを揺さぶるイザードに、レヴィウスは「うぷ…吐くからやめて。」と口元を押さえる。
「はっ、申し訳御座いません!」
「いいよ…。でも、あれは本心だったと思うな…何か遠回しに僕に気付かせたって言うか…照れてどうとかじゃないんだよ。とにかく、僕暫く立ち直れないから、ここで休んでるね…別に食事とか要らないから兄さんには内緒でそっとしといて。」
「えっ、で、殿下!」
レヴィウスはそのまますぅっと眠りに入ると、すぐに呼び掛けに応えなくなった。
「兄様…ラルとは殿下が懇意にしている神官では?そやつめが殿下をこんな目に?」
マベルの持っていた箒は砕け、顔には血管が浮き出ている。
「まぁ、そうだな…だが、神官に手を出すなよ。殿下はそれを望んでいない。むしろそんな事をすれば私達が罰せられるだろう。」
「そんな!ではこのまま見ているだけですか!?今すぐ八つ裂きにしてやりたい位なのに!」
今にも飛び出して行きそうなマベルを諭しながら、イザードは溜息を吐いた。
理由はどうであれイザードもレヴィウスを傷付けたラルは許せないが、どうにも納得出来ない。
殿下が嫌い?
有り得ない。
それならとっくに神殿から放り出している筈だ。
いつ目覚めるかは不明だが、今は殿下に何を言っても無駄だろう。
そう判断したイザードは、怒りを堪え二人を静観する事にした。
ラルの方はどうでもいいので放っておくとして、レヴィウスには自らが護衛として二十四時間張り付く。
魔人は千年単位の寿命がある為、寝食など人間が必要とする行為は数十年程度であれば行わずとも問題ない。
しかしイザード達の予想を裏切り、それから三年間、レヴィウスが目覚める事は無かった。
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