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悪役令嬢、バックハグを体験する
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さて、どうしたものか…。
パイ生地を棒で伸ばしながら、私はぐる
ぐる考えていた。
昨日、馬車で王宮に向かっている時には
まさかこんなことになるとは思いもしな
かった。
夕食に招待されただけのはずが、なぜか
自分の部屋まで用意されていたのだ。
これって、このままここに住みなさいっ
てことだよね…。
学院に執着してはいないので、もう行か
なくていいと言われれば、それに従うのは
構わない。
けれど、さすがにアイリスには直接会って
別れを伝えたい。
一度学院に戻りたいと言ったら殿下は許し
てくれるだろうか。
そんなことを考えていると、突然厨房の扉
が開き、声をかけられた。
「セセリア、おはよう!よく眠れた?」
殿下のことを考えている真っ最中に、本人
に声をかけられ、私は飛び上がりそうにな
った。
「で、殿下!お、おはようございます!」
「本当はね、朝食を一緒にとりたかったん
だけど、あまりしつこくすると嫌われるぞ
って兄上に脅かされちゃってさ。だから
今朝は我慢したんだ。」
アンセル殿下グッジョブです!
ぽっちゃりからイケメンにキャラチェンジ
した殿下に、私はまだ慣れていないため
長い時間一緒にいるとメンタルゲージが削
られてしまうのだ。
それでも、そんな風に人懐っこく言われる
のは嬉しいものだ。
「では昼食はご一緒しましょう。アップル
パイももうすぐ出来上がりますからね。」
「ああ、セセリアのアップルパイ楽しみだ
なぁ。」
カイン殿下の満面の笑顔に、ずっと楽しみ
にしていてくれたことが滲み出ている。
今の上機嫌な殿下なら、お願いを聞いてく
れるだろうか。
「あの、殿下、一度学院に戻りたいのです
が…。」
私は思い切って聞いてみた。
「セセリアの荷物なら、王宮に運ぶように
手配してあるから心配いらないよ。」
う~ん…やはり殿下は私を学院に行かせ
たくないのか。
でもここで引くわけにはいかない。
「私、お世話になった先生方にご挨拶をし
たいのです。」
殿下の機嫌を損ねたくなかった私は敢えて
アイリスの名前は出さなかった。
「……。」
殿下は少し黙って考えていたが、納得した
ように言った。
「…うん。そうだよね。わかった。じゃぁ
明日、一緒に学院へ行こう。」
え!?一緒に!?
それはちょっと計算外なんですが!!
とはいえ、拒否するわけにもいかない。
これが学院に行ける最後のチャンスかも
しれないのだ。
「僕が一緒じゃない方がいい?」
私の表情を察したのか、少し寂しそうに
殿下が言った。
「いえ、そんなことはありません!ぜひ
一緒に行ってください!」
私はあわてて否定した。
「セセリア、僕はね、留学中ずっと君の
ことばかり考えていたんだ。僕のいない
学院生活を、君がどんな風に過ごしている
のか。他に誰か好きな人が出来たりして
いないだろうかって。ずっと心配だった
んだ。」
そう言いながら殿下は私を見つめた。
その瞳があまりにも綺麗なので、私は目を
反らすことが出来なかった。
「殿下、それは私も同じです。私だって
ずっと不安でした。殿下の気持ちが私から
離れてしまうのではないかって。」
「本当に…?」
「本当です!」
「良かった!」
そう言って、殿下は私を後ろから抱きしめ
た。
!?
これって少女漫画でよく見るバックハグって
やつでは!?
中身がゲームオタクの私は、こんなことされ
た経験はない。
後はオーブンに入れるだけのアップルパイを
前に、私の心臓は爆発寸前になっていた。
パイ生地を棒で伸ばしながら、私はぐる
ぐる考えていた。
昨日、馬車で王宮に向かっている時には
まさかこんなことになるとは思いもしな
かった。
夕食に招待されただけのはずが、なぜか
自分の部屋まで用意されていたのだ。
これって、このままここに住みなさいっ
てことだよね…。
学院に執着してはいないので、もう行か
なくていいと言われれば、それに従うのは
構わない。
けれど、さすがにアイリスには直接会って
別れを伝えたい。
一度学院に戻りたいと言ったら殿下は許し
てくれるだろうか。
そんなことを考えていると、突然厨房の扉
が開き、声をかけられた。
「セセリア、おはよう!よく眠れた?」
殿下のことを考えている真っ最中に、本人
に声をかけられ、私は飛び上がりそうにな
った。
「で、殿下!お、おはようございます!」
「本当はね、朝食を一緒にとりたかったん
だけど、あまりしつこくすると嫌われるぞ
って兄上に脅かされちゃってさ。だから
今朝は我慢したんだ。」
アンセル殿下グッジョブです!
ぽっちゃりからイケメンにキャラチェンジ
した殿下に、私はまだ慣れていないため
長い時間一緒にいるとメンタルゲージが削
られてしまうのだ。
それでも、そんな風に人懐っこく言われる
のは嬉しいものだ。
「では昼食はご一緒しましょう。アップル
パイももうすぐ出来上がりますからね。」
「ああ、セセリアのアップルパイ楽しみだ
なぁ。」
カイン殿下の満面の笑顔に、ずっと楽しみ
にしていてくれたことが滲み出ている。
今の上機嫌な殿下なら、お願いを聞いてく
れるだろうか。
「あの、殿下、一度学院に戻りたいのです
が…。」
私は思い切って聞いてみた。
「セセリアの荷物なら、王宮に運ぶように
手配してあるから心配いらないよ。」
う~ん…やはり殿下は私を学院に行かせ
たくないのか。
でもここで引くわけにはいかない。
「私、お世話になった先生方にご挨拶をし
たいのです。」
殿下の機嫌を損ねたくなかった私は敢えて
アイリスの名前は出さなかった。
「……。」
殿下は少し黙って考えていたが、納得した
ように言った。
「…うん。そうだよね。わかった。じゃぁ
明日、一緒に学院へ行こう。」
え!?一緒に!?
それはちょっと計算外なんですが!!
とはいえ、拒否するわけにもいかない。
これが学院に行ける最後のチャンスかも
しれないのだ。
「僕が一緒じゃない方がいい?」
私の表情を察したのか、少し寂しそうに
殿下が言った。
「いえ、そんなことはありません!ぜひ
一緒に行ってください!」
私はあわてて否定した。
「セセリア、僕はね、留学中ずっと君の
ことばかり考えていたんだ。僕のいない
学院生活を、君がどんな風に過ごしている
のか。他に誰か好きな人が出来たりして
いないだろうかって。ずっと心配だった
んだ。」
そう言いながら殿下は私を見つめた。
その瞳があまりにも綺麗なので、私は目を
反らすことが出来なかった。
「殿下、それは私も同じです。私だって
ずっと不安でした。殿下の気持ちが私から
離れてしまうのではないかって。」
「本当に…?」
「本当です!」
「良かった!」
そう言って、殿下は私を後ろから抱きしめ
た。
!?
これって少女漫画でよく見るバックハグって
やつでは!?
中身がゲームオタクの私は、こんなことされ
た経験はない。
後はオーブンに入れるだけのアップルパイを
前に、私の心臓は爆発寸前になっていた。
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