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悪役令嬢、後悔する
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「さぁ!作るわよ!あなたは材料を揃えて
ちょうだい。」
予想外のカイン殿下の帰還に、アリーナは
やる気満々でシフォンケーキを作りはじめ
た。
卵黄と砂糖、ひまわり油と牛乳、それから
ふるった薄力粉を混ぜ合わせ、シフォンケ
ーキのタネを作る。
そこまでは順調だったが、重要なのはメレ
ンゲ作りだ。
「あ~もう、腕が痛い!なんでこの世界に
はハンドミキサーがないの!?」
卵白の泡立てに、アリーナが音を上げはじ
めた。
「シフォンケーキ作りがこんなに大変だと
は思わなかったわ。あなた、大変なのがわ
かっててわざとこのケーキを選んだんじゃ
ないでしょうね?」
「まさか!このケーキはメレンゲさえ上手
く出来れば失敗しないから…。それより、
相手を想いながら作らないと薬の効果が発
揮できないって言ってなかった?ケーキに
集中した方がいいんじゃない?」
「わ、わかってるわよ!うるさいわね!」
文句を言いつつも、アリーナはメレンゲを
作り上げた。
あとはケーキのタネとメレンゲをまぜあわ
せるだけだ。
「じゃぁ、薬を入れるわね。」
アリーナは小瓶を取り出し、例の薬をボー
ルに数滴たらした。
「この薬、これで最後だから絶対に成功さ
せなきゃ。」
「え、そうなの?」
「そうよ!大金を払ってやっと手に入れた
貴重な薬なんだから。もう失敗は許されな
いのよ。」
この瓶の中にあった薬のほとんどは、殿下
の口に入ることなく無駄になっていたとい
うことか。
アリーナにとってはこれが最後のチャンス
なんだろうな…。
でもごめんなさい、私は成功を願ってはあ
げられない。
アリーナの企みに協力すると決めてからも
心のどこかで迷っている自分がいる。
「そろそろ焼き上ったんじゃない?」
アリーナに言われてオーブンを覗くと、綺
麗なキツネ色のシフォンケーキが目に飛び
込んだ。
オーブンを開けると、厨房中に甘い香りが
広がった。
これを殿下が食べたら、私のこと好きじゃ
なくなっちゃうんだよね…。
そう思うと胸が苦しくなった。
「早速カインのところへ運ぶわよ。」
アリーナは声を弾ませながら、切り分けた
シフォンケーキをお盆に乗せた。
「私、お茶の準備をしてから行くわ。先に
行ってて。」
「そう…。じゃぁあとは頼んだわよ。」
軽やかな足取りで厨房を出て行くアリーナ
を見送りながら、私はため息をついた。
「はぁ…。殿下があれを食べるところなん
て見たくないよ…。」
気づくと私の目からはポロポロと涙がこぼ
れ落ちていた。
ああ…やっぱり私は殿下のことが好きなん
だ。
私の作った数々のお菓子を、心から喜んで
食べてくれた殿下の顔が、走馬灯のように
瞼に浮かんでくる。
私、アリーナに協力するなんて言わなきゃ
よかった。
今更後悔したって遅いよね…。
いえ、今ならまだ間に合うかもしれない!
私はカイン殿下の部屋へと走りだした。
ちょうだい。」
予想外のカイン殿下の帰還に、アリーナは
やる気満々でシフォンケーキを作りはじめ
た。
卵黄と砂糖、ひまわり油と牛乳、それから
ふるった薄力粉を混ぜ合わせ、シフォンケ
ーキのタネを作る。
そこまでは順調だったが、重要なのはメレ
ンゲ作りだ。
「あ~もう、腕が痛い!なんでこの世界に
はハンドミキサーがないの!?」
卵白の泡立てに、アリーナが音を上げはじ
めた。
「シフォンケーキ作りがこんなに大変だと
は思わなかったわ。あなた、大変なのがわ
かっててわざとこのケーキを選んだんじゃ
ないでしょうね?」
「まさか!このケーキはメレンゲさえ上手
く出来れば失敗しないから…。それより、
相手を想いながら作らないと薬の効果が発
揮できないって言ってなかった?ケーキに
集中した方がいいんじゃない?」
「わ、わかってるわよ!うるさいわね!」
文句を言いつつも、アリーナはメレンゲを
作り上げた。
あとはケーキのタネとメレンゲをまぜあわ
せるだけだ。
「じゃぁ、薬を入れるわね。」
アリーナは小瓶を取り出し、例の薬をボー
ルに数滴たらした。
「この薬、これで最後だから絶対に成功さ
せなきゃ。」
「え、そうなの?」
「そうよ!大金を払ってやっと手に入れた
貴重な薬なんだから。もう失敗は許されな
いのよ。」
この瓶の中にあった薬のほとんどは、殿下
の口に入ることなく無駄になっていたとい
うことか。
アリーナにとってはこれが最後のチャンス
なんだろうな…。
でもごめんなさい、私は成功を願ってはあ
げられない。
アリーナの企みに協力すると決めてからも
心のどこかで迷っている自分がいる。
「そろそろ焼き上ったんじゃない?」
アリーナに言われてオーブンを覗くと、綺
麗なキツネ色のシフォンケーキが目に飛び
込んだ。
オーブンを開けると、厨房中に甘い香りが
広がった。
これを殿下が食べたら、私のこと好きじゃ
なくなっちゃうんだよね…。
そう思うと胸が苦しくなった。
「早速カインのところへ運ぶわよ。」
アリーナは声を弾ませながら、切り分けた
シフォンケーキをお盆に乗せた。
「私、お茶の準備をしてから行くわ。先に
行ってて。」
「そう…。じゃぁあとは頼んだわよ。」
軽やかな足取りで厨房を出て行くアリーナ
を見送りながら、私はため息をついた。
「はぁ…。殿下があれを食べるところなん
て見たくないよ…。」
気づくと私の目からはポロポロと涙がこぼ
れ落ちていた。
ああ…やっぱり私は殿下のことが好きなん
だ。
私の作った数々のお菓子を、心から喜んで
食べてくれた殿下の顔が、走馬灯のように
瞼に浮かんでくる。
私、アリーナに協力するなんて言わなきゃ
よかった。
今更後悔したって遅いよね…。
いえ、今ならまだ間に合うかもしれない!
私はカイン殿下の部屋へと走りだした。
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