国外追放されたくないので第二王子の胃袋を掴んだら溺愛されました!

和栗かのこ

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悪役令嬢、知らないところで話が進んでいた

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アリーナは、シフォンケーキを持ったまま
アンセル殿下の部屋へと急いでいた。

惚れ薬はこれが最後なんだから、無駄には
できないし、この際相手はカインじゃなく
てもいいわ。

カイン用に作ったケーキがアンセルに効く
かわからないけど、試してみる価値はある
わね。

アンセルの部屋は2階の奥だったと思った
けど、違ったかしら…。

アリーナが迷っていると、前からブロンド
の髪の少女がこちらへ歩いて来るのが見え
た。

「ちょっとあなた、アンセル殿下のお部屋
はどこかしら?」

声をかけられた少女は即答せず、アリーナ
の手にあるシフォンケーキを見ながら口を
開いた。

「どちら様でしょうか?」

アリーナは、その少女が自分の質問に答え
なかっただけでなく、涼やかに微笑んでい
ることが、無性に気にくわなかった。

「私はシュタイン王国の第三王女、アリー
ナよ!あなたこそ誰なのよ!早くアンセル
殿下の部屋の場所を教えなさい!」

少女の立ち振る舞いが、自分を見下してい
るように感じたアリーナは、思わず声を荒
げた。

「騒がしいけどどうしたの?」

廊下の一番奥の扉が開き、アンセル殿下が
顔を出した。

「ああ殿下、今殿下の部屋を探していたと
ころなん…。」

そこまで言いかけてアリーナは気づいた。

ちょっと!この子、もしかしてアンセルの
部屋から出てきたんじゃない…!?

見覚えのある顔だけど、一体何者なの!?

ブロンドの髪の少女を、アリーナが訝しげ
に見ていると、アンセル殿下が2人の間に
割って入った。

「アリーナ、紹介するよ。こちらは我が国
の聖女、アイリスだよ。」

「はじめまして、アリーナ王女。アイリス
と申します。」

「聖女…!?」

アリーナは思い出した。

フランス人形のように輝くブロンドの髪、
青い瞳、整った顔立ち。

まさしく彼女は聖女にしてゲームのヒロイ
ン、アイリスだ。

「それでアリーナ、僕になにか用?」

アンセル殿下に言われて、アリーナは本来
の目的を思い出した。

「私、シフォンケーキを焼いたので、殿下
に食べて頂きたくて…。」

つい先ほどカイン殿下に拒否された、惚れ
薬入りのシフォンケーキをアンセル殿下に
見せた。

「あら、残念ですが、アンセル殿下はセセ
リア様の作ったケーキしか召し上がりませ
んわ。」

返事をしたのはアンセル殿下ではなく、ア
イリスだった。

「ちょっとあなた、私は殿下に話している
のよ!いくら聖女だからって、失礼じゃな
い?」

ここでまたセセリアの名前が出たことが、
アリーナの怒りを増長させた。

「申し訳ありません、アリーナ様。でも私
は聖女として、殿下のお体をお守りしなけ
ればなりませんので。」

「…どういうこと?セセリアの作ったケー
キは安全で、私の作ったケーキは危険だっ
て言いたいの?」

「そうですねぇ。毒ではないけど、なにか
入ってますよね、薬が。」

図星を指されたアリーナは、言い返すこと
ができない。

聖女に嘘をついても無駄だということを、
アリーナは知っていた。

「ふ、不愉快だわ!私、国に帰ります!」

そう言うと、アリーナは足早に去って行っ
た。

アンセル殿下は、アリーナが見えなくなる
のを待ってから口を開いた。

「アイリス、ありがとう。君のおかげで助
かったよ。」

「いいえ、アリーナ王女は殿下の従妹です
もの。断りにくいですよね?それに婚約者
の体を心配するのは当然のことですわ。」

「僕の婚約者は頼もしいな。」

そう言いながら、アンセル殿下はアイリス
の手にキスをした。
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