月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛

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◆.アレキサンドライトの指輪

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「少なくとも、副社長は今のところ抜群の好感度を保っています。切れ者でありながら穏やかで、適度に厳しい。女性受けは特によくモテモテ。ところがなぜか突然結婚し突然離婚した。結婚だけなら受け入れてもらえるでしょう。ですが――」

 相変わらず春海には、口では敵わない。
「わかった。任せる」

「はい。承知しました。あ、そうそう、奥様になられる方は、もしかして昨日副社長のご自宅にいらした方ですか?」

 弥衣が来たあの時間、急な確認事項ができて書類を持ってマンションに来た春海と、弥衣は出くわしている。

 あの時、弥衣は見るからに緊張した様子で少し青ざめていた。

 夕べは男とのデートでめかしこみ、まるっきり別人になっていたが、その変身した姿を春海は見ていない。

 春海が見たのは、葬儀屋の営業かよと突っ込みたくなるような地味で暗い雰囲気を漂わせた弥衣だ。
 間違っても、結婚を控える恋人には見えなかっただろう。

「ああ。そうだが?」

 少しくらい驚くかと思ったが、春海は顔色ひとつ変えず「そうですか」と答えただけで、失礼しますと頭を下げて扉の向こうに消えた。


 まぁいいさ。

 とにかく月城の指輪さえ手に入ればあとはどうとでもなる。本物じゃなくたっていい。うりふたつのレプリカさえ作ってしまえば、いつ離婚したってかまわない。

 ったく、弥衣のやつ。
 これ見よがしに憂鬱そうな顔をしやがって、だから見せるだけでいいと言っているのに。強情な。

 まさか口の中に入れるとは思わなかった。なんなんだあいつ。

 あの調子では、俺に見つからないように必死にどこかに隠すだろう。隠し金庫にでも預けるつもりかもしれない。

 それでもまぁ、一緒に暮らしていればそのうち指輪を見る機会もあるはずだ。その機会を逃さず、あらゆる角度から写真をとって宝石商にレプリカの作成を頼めばいい。

 とにかく指輪を手に入れて、祖母さえ安心させてあげられればいいのだから。
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