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17話
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今まで恋愛で悩んでいる人を見ても「無理なら見切って切り替えたらいいのに」と思っていた。
しかし今、それがいかに見当違いの考えか痛いほど身に沁みている。
全然見切れない。見切れるわけがない。
だって好きだから。
「好きなんだよなぁ~……」
「明樹への想い、口から出てる」
3つ並んだグラスにビールをついだ仁が真顔でため息を吐く。
「どうせまたキスしたんだろ。毎度同じ顔で床見つめ出すからバレバレよ」
誰よりも早くビールをあおった高嶺が、仁と同じくため息を吐いた。
ここが自室ではなくリーダーに呼び出されてやってきた高級個室居酒屋であることも忘れて、思春期のような独り言を呟いた優成は年上につがせたビールをあおってから1番大きくため息を吐いた。
「仰る通りしましたけど、ここ最近のは全部俺から仕掛けたわけじゃないですからね」
「『好きだってわかったらキスどころか目もまともに見れない!どうしよう~!』って俺に泣きついてたのが懐かしいくらい貫禄があるな」
仁のモノマネに悪意はあれど正直否定もできない出来なので、優成は黙ってビールをつぎ直した。
明樹のことを好きだと自覚してから、早2ヶ月。
自覚したばかりの頃は、それまで半ば当たり前のように明樹としていたキスが、好きだからこそ一切できなくなった。その一方で明樹は以前と同等のスキンシップ──要するにキス──を求めてきて、優成の感情は整理のしようもなくごちゃごちゃになった。ごちゃごちゃになって、告白まがいのことをしでかして、結局付き合うもフラれるもなく、再び明樹とキスする関係に戻っていた。
「だいたいが、明樹とキスはOKみたいになってるけど、本当は付き合ってからするべきだからな。これ、ORCAの総意だぞ」
改めて己の恋とその状況がメンバー全員に知れ渡っていることに居心地の悪さを感じながら、優成は空にしたグラスをテーブルに置いた。
「じゃ高嶺さんは好きな人とキスできる状況で、付き合ってないからって我慢できるんですか」
「俺はファンが恋人なので、そういった状況にはなりえませんね」
急にアイドル面をし出すリーダーを軽く睨むと、肩をすくめられる。「ま、気持ちはわかるよ」と仁がビールをついできて、優成はすぐにグラスを飲み干した。
「俺は、明樹さんに告白しかけたんですよ。なんでそんなことしてきた男とキスできるんですか?もう仲良しスキンシップとはワケが違うじゃないですか。やっぱり俺はキープなんですか」
「落ち着きなさいよ。圧がすごい」
「つーか優成がちゃんと告白しないから、また話がややこしくなってるんじゃん」
仁は高嶺がつまんだポテトを横取りしてから、優成を指差す。
「明樹は告白されるのには超慣れてるけど、正式な告白以外の匂わせには超疎いよ。察してもらえると思ってるなら甘いね」
「好意を向けられるのが当たり前の人間は、好きとも言われてないのに察してたらキリがないってわけよ。気持ちわかるわ~」
「高嶺さんって、ほんとカッコいいのに非モテキャラ出すのめっちゃうまいですよね」
「めっちゃバカにするじゃん」
「いや、処世術を誉めてます」
話が逸れ始めた年上たちの意識を戻すために、優成はテーブルに拳を落とした。
「そうだとして、でも男から告白まがいのことをされたら普通もっと意識しませんか?」
「あいつ男と付き合ったことなくても、男に言い寄られてたことはあるからなぁ」
あっさりとした断言。
優成は自分よりずっと明樹に詳しい仁がだんだん妬ましくなってきて、唇を噛んだ。
「明樹の恋愛遍歴を全部知ってる親友の俺が羨ましいか~?ん~?」
「仁さん、無駄に優成を煽らないで」
「可愛い末っ子を可愛がってるんですよ」
前髪をぐしゃぐしゃと弄られ、優成は犬のように頭を振って抗議する。
「じゃあ可愛い俺に明樹さんの恋愛遍歴全部教えてくださいよ!」
「やだよ、俺が口軽いやつになるだろ。男と付き合ったことないって教えてあげただけ感謝してほしいなぁ~?」
肩をいからせる優成と優越感を抑えようともしない仁に呆れつつ、高嶺は両者の皿に手羽先を取り分けた。「一旦食え」と言うと、すぐにふたりとも大人しく手羽先を手に取る。
「いいか、優成。『俺は明樹さんのことが好きです。だから付き合ってほしいです』この2文を言えば、すべてが丸く収まる。ほら、俺のあとから復唱してみ?」
リーダーの優しい手引きを受けた優成は、鶏肉を噛みちぎりながらリーダーを見返した。
「イヤです。告白の言葉は明樹さんだけに聞いてほしいんで」
「これが自力じゃ恋の自覚すら得られなかった男の発言か?」
「そんでもって告白しかけたのに、ひよって止めた男でもありますからね」
「やめてください。オーバーキルです」
優成は手羽先の骨を皿に投げて項垂れる。
「どうせ俺は意気地無しっすよ……」
酒が回ってきたのか情緒がブレている優成を見て、高嶺と仁は顔を見合わせた。
「まぁ現状を打開する策がないこともない。よな?仁」
「はい。というか策を打たないと、これ以上明樹はどうにもならないと思います」
ふたりの言葉に優成が顔を上げると、ポンと仁の手が頭に置かれた。
「次の音楽番組、女性アイドルも多いだろ。休憩中は仲いい子といつもより絡め」
「え、なんでですか」
「もっと明樹に意識してほしいんでしょ?だからさせるんだよ」
高嶺と仁が揃って笑顔を浮かべた。
しかし今、それがいかに見当違いの考えか痛いほど身に沁みている。
全然見切れない。見切れるわけがない。
だって好きだから。
「好きなんだよなぁ~……」
「明樹への想い、口から出てる」
3つ並んだグラスにビールをついだ仁が真顔でため息を吐く。
「どうせまたキスしたんだろ。毎度同じ顔で床見つめ出すからバレバレよ」
誰よりも早くビールをあおった高嶺が、仁と同じくため息を吐いた。
ここが自室ではなくリーダーに呼び出されてやってきた高級個室居酒屋であることも忘れて、思春期のような独り言を呟いた優成は年上につがせたビールをあおってから1番大きくため息を吐いた。
「仰る通りしましたけど、ここ最近のは全部俺から仕掛けたわけじゃないですからね」
「『好きだってわかったらキスどころか目もまともに見れない!どうしよう~!』って俺に泣きついてたのが懐かしいくらい貫禄があるな」
仁のモノマネに悪意はあれど正直否定もできない出来なので、優成は黙ってビールをつぎ直した。
明樹のことを好きだと自覚してから、早2ヶ月。
自覚したばかりの頃は、それまで半ば当たり前のように明樹としていたキスが、好きだからこそ一切できなくなった。その一方で明樹は以前と同等のスキンシップ──要するにキス──を求めてきて、優成の感情は整理のしようもなくごちゃごちゃになった。ごちゃごちゃになって、告白まがいのことをしでかして、結局付き合うもフラれるもなく、再び明樹とキスする関係に戻っていた。
「だいたいが、明樹とキスはOKみたいになってるけど、本当は付き合ってからするべきだからな。これ、ORCAの総意だぞ」
改めて己の恋とその状況がメンバー全員に知れ渡っていることに居心地の悪さを感じながら、優成は空にしたグラスをテーブルに置いた。
「じゃ高嶺さんは好きな人とキスできる状況で、付き合ってないからって我慢できるんですか」
「俺はファンが恋人なので、そういった状況にはなりえませんね」
急にアイドル面をし出すリーダーを軽く睨むと、肩をすくめられる。「ま、気持ちはわかるよ」と仁がビールをついできて、優成はすぐにグラスを飲み干した。
「俺は、明樹さんに告白しかけたんですよ。なんでそんなことしてきた男とキスできるんですか?もう仲良しスキンシップとはワケが違うじゃないですか。やっぱり俺はキープなんですか」
「落ち着きなさいよ。圧がすごい」
「つーか優成がちゃんと告白しないから、また話がややこしくなってるんじゃん」
仁は高嶺がつまんだポテトを横取りしてから、優成を指差す。
「明樹は告白されるのには超慣れてるけど、正式な告白以外の匂わせには超疎いよ。察してもらえると思ってるなら甘いね」
「好意を向けられるのが当たり前の人間は、好きとも言われてないのに察してたらキリがないってわけよ。気持ちわかるわ~」
「高嶺さんって、ほんとカッコいいのに非モテキャラ出すのめっちゃうまいですよね」
「めっちゃバカにするじゃん」
「いや、処世術を誉めてます」
話が逸れ始めた年上たちの意識を戻すために、優成はテーブルに拳を落とした。
「そうだとして、でも男から告白まがいのことをされたら普通もっと意識しませんか?」
「あいつ男と付き合ったことなくても、男に言い寄られてたことはあるからなぁ」
あっさりとした断言。
優成は自分よりずっと明樹に詳しい仁がだんだん妬ましくなってきて、唇を噛んだ。
「明樹の恋愛遍歴を全部知ってる親友の俺が羨ましいか~?ん~?」
「仁さん、無駄に優成を煽らないで」
「可愛い末っ子を可愛がってるんですよ」
前髪をぐしゃぐしゃと弄られ、優成は犬のように頭を振って抗議する。
「じゃあ可愛い俺に明樹さんの恋愛遍歴全部教えてくださいよ!」
「やだよ、俺が口軽いやつになるだろ。男と付き合ったことないって教えてあげただけ感謝してほしいなぁ~?」
肩をいからせる優成と優越感を抑えようともしない仁に呆れつつ、高嶺は両者の皿に手羽先を取り分けた。「一旦食え」と言うと、すぐにふたりとも大人しく手羽先を手に取る。
「いいか、優成。『俺は明樹さんのことが好きです。だから付き合ってほしいです』この2文を言えば、すべてが丸く収まる。ほら、俺のあとから復唱してみ?」
リーダーの優しい手引きを受けた優成は、鶏肉を噛みちぎりながらリーダーを見返した。
「イヤです。告白の言葉は明樹さんだけに聞いてほしいんで」
「これが自力じゃ恋の自覚すら得られなかった男の発言か?」
「そんでもって告白しかけたのに、ひよって止めた男でもありますからね」
「やめてください。オーバーキルです」
優成は手羽先の骨を皿に投げて項垂れる。
「どうせ俺は意気地無しっすよ……」
酒が回ってきたのか情緒がブレている優成を見て、高嶺と仁は顔を見合わせた。
「まぁ現状を打開する策がないこともない。よな?仁」
「はい。というか策を打たないと、これ以上明樹はどうにもならないと思います」
ふたりの言葉に優成が顔を上げると、ポンと仁の手が頭に置かれた。
「次の音楽番組、女性アイドルも多いだろ。休憩中は仲いい子といつもより絡め」
「え、なんでですか」
「もっと明樹に意識してほしいんでしょ?だからさせるんだよ」
高嶺と仁が揃って笑顔を浮かべた。
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