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16話
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「優成!はい、チーズ!」
声に振り返るとインカメでスマホを構えた冬弥がいて、優成はカメラに入るよう顔を傾けた。指ハートを作る冬弥とウィンクを飛ばす優成が画面に収まる。
「お、いい写真撮れたんじゃない?背景も伝わるし」
「ほんとだ。使ってほしいですね」
今日の仕事はグッズ用の写真撮影だった。
ドラマや映画でお馴染みの有名な洋館を貸し切って、1日中衣装を変え場所を変え撮影を行う。個人ブロマイド、集合ポスター、広報用写真を撮り終え、今は特典のリーフレットに載せる自撮りを各人スマホで撮影し始めたところだった。
「ちょっと外でも撮ってくるわ~」
「俺はあと何枚かここで撮影します」
じゃまた後で、と冬弥が手を振り出ていって、洋館の応接間にいるのは優成だけになる。
改めて高級感のある建物を歩きながら見渡して、自撮り関係無しに数枚写真に収めた。自前の一眼レフも持ってくればよかったとスマホの画面に見入っていると、
「わっ!」
「っ!?」
肌が触れそうな距離でピンク髪のイケメンが顔を覗き込んできて、優成の手からスマホが滑り落ちた。
「ちょっと!びっくりさせないでくださいよ、明樹さん……!」
「あっはは!入ってきても全然気付かないんだもん」
明樹が手を叩いて笑って、落ちたスマホを取る。しかしそれを優成に返すことはなく、そのままインカメを起動して構えた。
「はい、撮るよ!」
職業病の優成が反射的に顔を作ると、愛嬌抜群の顔をした明樹とのツーショットが出来上がる。
「あとで俺にも送って」
言いながらスマホを返した明樹は少し屈んで、優成の顔を下から覗き見た。
「わかりました」
優成は何でもない風に返して、スマホを見た。明樹はそんな優成を見続け、優成は素知らぬふりを続けた。カメラのフィルターを変えるというどうでもいい作業を始めてまで、明樹をあえて見ないようにする。
しかし、明樹は優成が目を合わせない意味を察する男ではなかった。
「優成。キス」
「お手、みたいなノリで言わないでくれます?」
直球の言葉に優成がつい目を合わせると、明樹はその隙を逃さず唇を合わせた。避ける暇もない、というより優成に避ける意思が足りなかったので、ふたりは美しいキスシーンのシルエットを生み出した。
(あぁ、またしてしまった)
後悔とも違う複雑な感情が胸に広がる間に、ちゅ、と音を立てて唇が離れていく。明樹が優成の顎を撫でて、いたずらっ子のように歯を見せた。優成の心境と反比例する軽やかさで、明樹はスキップしながらドアに近づく。
「外でもツーショット撮ろう。ほら早く!」
上機嫌な明樹が応接間を出ていって、室内が静寂に包まれた。
遠ざかる足音を聞いてから、優成はその場にしゃがみこんだ。
「っあぁ~……!」
膝を抱えてくぐもった唸りを吐く。
(付き合ってもいないのに、なんでキスをしてるんだ俺たちは)
当事者の優成にわからないことは、他の誰にもわからない。優成に今わかることは、明樹とキスすると甘くて苦い感情が溢れて、キスしたいけどしたくないと思うこと。
そして、ただただ明樹のことが、
「…………好き」
この2つだけだった。
声に振り返るとインカメでスマホを構えた冬弥がいて、優成はカメラに入るよう顔を傾けた。指ハートを作る冬弥とウィンクを飛ばす優成が画面に収まる。
「お、いい写真撮れたんじゃない?背景も伝わるし」
「ほんとだ。使ってほしいですね」
今日の仕事はグッズ用の写真撮影だった。
ドラマや映画でお馴染みの有名な洋館を貸し切って、1日中衣装を変え場所を変え撮影を行う。個人ブロマイド、集合ポスター、広報用写真を撮り終え、今は特典のリーフレットに載せる自撮りを各人スマホで撮影し始めたところだった。
「ちょっと外でも撮ってくるわ~」
「俺はあと何枚かここで撮影します」
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改めて高級感のある建物を歩きながら見渡して、自撮り関係無しに数枚写真に収めた。自前の一眼レフも持ってくればよかったとスマホの画面に見入っていると、
「わっ!」
「っ!?」
肌が触れそうな距離でピンク髪のイケメンが顔を覗き込んできて、優成の手からスマホが滑り落ちた。
「ちょっと!びっくりさせないでくださいよ、明樹さん……!」
「あっはは!入ってきても全然気付かないんだもん」
明樹が手を叩いて笑って、落ちたスマホを取る。しかしそれを優成に返すことはなく、そのままインカメを起動して構えた。
「はい、撮るよ!」
職業病の優成が反射的に顔を作ると、愛嬌抜群の顔をした明樹とのツーショットが出来上がる。
「あとで俺にも送って」
言いながらスマホを返した明樹は少し屈んで、優成の顔を下から覗き見た。
「わかりました」
優成は何でもない風に返して、スマホを見た。明樹はそんな優成を見続け、優成は素知らぬふりを続けた。カメラのフィルターを変えるというどうでもいい作業を始めてまで、明樹をあえて見ないようにする。
しかし、明樹は優成が目を合わせない意味を察する男ではなかった。
「優成。キス」
「お手、みたいなノリで言わないでくれます?」
直球の言葉に優成がつい目を合わせると、明樹はその隙を逃さず唇を合わせた。避ける暇もない、というより優成に避ける意思が足りなかったので、ふたりは美しいキスシーンのシルエットを生み出した。
(あぁ、またしてしまった)
後悔とも違う複雑な感情が胸に広がる間に、ちゅ、と音を立てて唇が離れていく。明樹が優成の顎を撫でて、いたずらっ子のように歯を見せた。優成の心境と反比例する軽やかさで、明樹はスキップしながらドアに近づく。
「外でもツーショット撮ろう。ほら早く!」
上機嫌な明樹が応接間を出ていって、室内が静寂に包まれた。
遠ざかる足音を聞いてから、優成はその場にしゃがみこんだ。
「っあぁ~……!」
膝を抱えてくぐもった唸りを吐く。
(付き合ってもいないのに、なんでキスをしてるんだ俺たちは)
当事者の優成にわからないことは、他の誰にもわからない。優成に今わかることは、明樹とキスすると甘くて苦い感情が溢れて、キスしたいけどしたくないと思うこと。
そして、ただただ明樹のことが、
「…………好き」
この2つだけだった。
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