19 / 25
19話
しおりを挟む
大都会東京。
スカイツリーに東京タワー。
「優成こっち!これ見て!」
これでもかというほど東京にまみれた観光地。
そこで最高に美形な男が顔ハメ看板を見つけて大喜びしているのを、優成は非現実的な気持ちで見つめた。
(俺は本当に明樹さんと旅行に来たのか)
とある控え室で明樹が「ふたりで旅行行かない?」と優成に言った件が、今日現実となっていた。正直電車に乗るまで『ホントにふたりで旅行行くの?』と優成は半信半疑だったが、電車は当たり前に時間通りに東京の目的地に着いた。
──ブーッ
震えたスマホを見ると、仁からのLINEが表示されている。
『ベタな東京土産よろしくね!』
(ずっと東京で仕事してるのにほしい土産なんてある?)
優成はヨーロッパに行っているはずの仁に疑問を抱いた。
現在、ORCAは一律で休暇期間に入っていた。その休暇期間内でどうにか予定を合わせた優成と明樹は、ふたりで1泊2日の東京旅行にやってきている。東京なんて慣れ親しんだ生活拠点だが、土壇場で決めた旅行で遠出は難しかったし岐阜出身の明樹がちゃんとした東京観光をしたことがないと言うので、ベタな東京名所を回ることになった。
これがただの仲良しメンバーとの旅行なら、なんら杞憂なく心から楽しく過ごせたのだが、と優成が息を吐くと再びスマホが震えた。
『それから、告白絶対しろよ^^』
連投で送られてきた文を見て、優成は反射的に画面を暗転させた。
告白。
それは明樹への告白を意味する。
優成は明樹が好きだった。紆余曲折あって己の感情に気付き、また紆余曲折あって明樹と付き合ってもないのにキスだけはするという、嬉しさともどかしさと多大な煽りをうける関係が構築されてしまっていた。
仁に言われるまでもなく、優成は明樹に想いを伝えるつもりだった。もう告白するとかしないとかで悩む感情より、好きでどうしようもない感情が日に日に大きくなっていた。
「おい、優成」
告白の覚悟と共に暗い画面を睨んでいると、スマホを追いやるように明樹が目前に現れる。
「なにスマホ見てんの」
「あ、いや。なんでもないです」
「も~せっかく旅行来たんだからスマホ禁止!罰として看板でポーズ決めてきて」
怒ったふりをする明樹が可愛くて、ついさっきまで画面を睨んでいたとは思えないほど優成の目尻が下がる。ニコニコしたまま指示に従って、優成はタワーが型取られた看板の肩を抱いた。マスクを下ろしてキメ顔をすると明樹が手を叩いて笑う。
「んははっ、似合ってる!」
写真を撮った明樹が笑ったまま駆け寄ってきて、優成は無意識に抱き締めそうになったが、寸でのところで理性が手を止めた。伸ばしかけた手で不自然にマスクを引き上げて誤魔化す。
「明樹さん、あんまり騒ぐとバレますよ」
「平気平気。マスクしてるし」
目を細めてマスクをつまむ明樹は楽しそうで、優成もつられて頬を緩めた。しかし、今のところ気付かれてないだけで、優成含めふたりとも頭身がおかしいことに変わりはない。移動はタクシーだけにした方がいいかと優成が思っていると、明樹が紙袋を肩に担いだ。
「あーあ、お土産買ったら荷物すごいな」
「手当たり次第に買うからですよ。東京でそんなに土産買える方が才能ある」
「だってこれ、ここにしか売ってないやつだぞ」
東京タワーのキャラクターが描かれた大きなショッパーを見せてくる明樹は無邪気で、優成は再び頬が緩んでしまう。
「邪魔なら俺が持っときましょうか。俺、荷物少ないから」
「えーいや悪いって。あ、それなら一旦ホテル行ってチェックインしちゃうか。そうすれば買ったもの部屋に置けるし」
「あー……そう、ですね」
逡巡を含む返事をした優成を見て、「夕飯はちゃんと出直すよ?」と明樹は笑った。
別に優成は夕飯のことを気にしていたわけではない。ただ、目を背けていた大問題からついに目をそらせなくなり、緊張していた。
そう、この旅行の1番の問題はホテル。
ホテルに明樹とふたりきりで泊まることだ。
スカイツリーに東京タワー。
「優成こっち!これ見て!」
これでもかというほど東京にまみれた観光地。
そこで最高に美形な男が顔ハメ看板を見つけて大喜びしているのを、優成は非現実的な気持ちで見つめた。
(俺は本当に明樹さんと旅行に来たのか)
とある控え室で明樹が「ふたりで旅行行かない?」と優成に言った件が、今日現実となっていた。正直電車に乗るまで『ホントにふたりで旅行行くの?』と優成は半信半疑だったが、電車は当たり前に時間通りに東京の目的地に着いた。
──ブーッ
震えたスマホを見ると、仁からのLINEが表示されている。
『ベタな東京土産よろしくね!』
(ずっと東京で仕事してるのにほしい土産なんてある?)
優成はヨーロッパに行っているはずの仁に疑問を抱いた。
現在、ORCAは一律で休暇期間に入っていた。その休暇期間内でどうにか予定を合わせた優成と明樹は、ふたりで1泊2日の東京旅行にやってきている。東京なんて慣れ親しんだ生活拠点だが、土壇場で決めた旅行で遠出は難しかったし岐阜出身の明樹がちゃんとした東京観光をしたことがないと言うので、ベタな東京名所を回ることになった。
これがただの仲良しメンバーとの旅行なら、なんら杞憂なく心から楽しく過ごせたのだが、と優成が息を吐くと再びスマホが震えた。
『それから、告白絶対しろよ^^』
連投で送られてきた文を見て、優成は反射的に画面を暗転させた。
告白。
それは明樹への告白を意味する。
優成は明樹が好きだった。紆余曲折あって己の感情に気付き、また紆余曲折あって明樹と付き合ってもないのにキスだけはするという、嬉しさともどかしさと多大な煽りをうける関係が構築されてしまっていた。
仁に言われるまでもなく、優成は明樹に想いを伝えるつもりだった。もう告白するとかしないとかで悩む感情より、好きでどうしようもない感情が日に日に大きくなっていた。
「おい、優成」
告白の覚悟と共に暗い画面を睨んでいると、スマホを追いやるように明樹が目前に現れる。
「なにスマホ見てんの」
「あ、いや。なんでもないです」
「も~せっかく旅行来たんだからスマホ禁止!罰として看板でポーズ決めてきて」
怒ったふりをする明樹が可愛くて、ついさっきまで画面を睨んでいたとは思えないほど優成の目尻が下がる。ニコニコしたまま指示に従って、優成はタワーが型取られた看板の肩を抱いた。マスクを下ろしてキメ顔をすると明樹が手を叩いて笑う。
「んははっ、似合ってる!」
写真を撮った明樹が笑ったまま駆け寄ってきて、優成は無意識に抱き締めそうになったが、寸でのところで理性が手を止めた。伸ばしかけた手で不自然にマスクを引き上げて誤魔化す。
「明樹さん、あんまり騒ぐとバレますよ」
「平気平気。マスクしてるし」
目を細めてマスクをつまむ明樹は楽しそうで、優成もつられて頬を緩めた。しかし、今のところ気付かれてないだけで、優成含めふたりとも頭身がおかしいことに変わりはない。移動はタクシーだけにした方がいいかと優成が思っていると、明樹が紙袋を肩に担いだ。
「あーあ、お土産買ったら荷物すごいな」
「手当たり次第に買うからですよ。東京でそんなに土産買える方が才能ある」
「だってこれ、ここにしか売ってないやつだぞ」
東京タワーのキャラクターが描かれた大きなショッパーを見せてくる明樹は無邪気で、優成は再び頬が緩んでしまう。
「邪魔なら俺が持っときましょうか。俺、荷物少ないから」
「えーいや悪いって。あ、それなら一旦ホテル行ってチェックインしちゃうか。そうすれば買ったもの部屋に置けるし」
「あー……そう、ですね」
逡巡を含む返事をした優成を見て、「夕飯はちゃんと出直すよ?」と明樹は笑った。
別に優成は夕飯のことを気にしていたわけではない。ただ、目を背けていた大問題からついに目をそらせなくなり、緊張していた。
そう、この旅行の1番の問題はホテル。
ホテルに明樹とふたりきりで泊まることだ。
42
あなたにおすすめの小説
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています
大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。
冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。
※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。
染まらない花
煙々茸
BL
――六年前、突然兄弟が増えた。
その中で、四歳年上のあなたに恋をした。
戸籍上では兄だったとしても、
俺の中では赤の他人で、
好きになった人。
かわいくて、綺麗で、優しくて、
その辺にいる女より魅力的に映る。
どんなにライバルがいても、
あなたが他の色に染まることはない。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
すみっこぼっちとお日さま後輩のベタ褒め愛
虎ノ威きよひ
BL
「満点とっても、どうせ誰も褒めてくれない」
高校2年生の杉菜幸哉《すぎなゆきや》は、いつも一人で黙々と勉強している。
友だちゼロのすみっこぼっちだ。
どうせ自分なんて、と諦めて、鬱々とした日々を送っていた。
そんなある日、イケメンの後輩・椿海斗《つばきかいと》がいきなり声をかけてくる。
「幸哉先輩、いつも満点ですごいです!」
「努力してる幸哉先輩、かっこいいです!」
「俺、頑張りました! 褒めてください!」
笑顔で名前を呼ばれ、思いっきり抱きつかれ、褒められ、褒めさせられ。
最初は「何だこいつ……」としか思ってなかった幸哉だったが。
「頑張ってるね」「えらいね」と真正面から言われるたびに、心の奥がじんわり熱くなっていく。
――椿は、太陽みたいなやつだ。
お日さま後輩×すみっこぼっち先輩
褒め合いながら、恋をしていくお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる