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24話
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4日後。
仕事を終えてホテルでシャワーを済ませた明樹は、ソファに寝転んで優成にカトクを打っていた。
『今部屋いる。805号室』
送信してから、カードキーの予備を交換しているので部屋番号は必要なかったと明樹は気付きながら、雑にドライヤーした髪をいじる。ブリーチすると本当に髪が乾かない、と思っているうちに返信が来た。
『もう行きます』
普段連絡無精の優成がすぐ返信してくれる恋人という立場に優越感を感じて間もなく、チャイムが鳴って部屋着の優成が入ってくる。
「瞬間移動並みの早さだ」
「俺の部屋、目の前なの忘れたんですか」
起き上がってソファに座ると、優成は笑いながらすぐ隣に腰かけた。優成から香るシャンプーの甘さは、彼が風呂に入ったことを明樹に知らせる。
優成と同じ香りをまとう明樹は、スマホをマイクのようにして優成の口元に向けた。
「さて、今日はなんの日ですか?優成さん」
「俺と明樹さんが付き合い始めて3か月です」
「正解!ということで3か月記念日おめでと~」
わかりきった答えに拍手を送って、明樹は優成の肩を抱き寄せた。スマホのインカメを構えれば、優成は明樹に頬をくっつけてウィンクをする。記念のツーショットをおさめ終わって明樹が満足げに頷くと、優成が頭を下げた。
「これからもよろしくお願いします」
「あはは、固い挨拶。よろしくね」
髪をわしゃわしゃと撫でて、明樹は優成に顔を近づける。何も言わずとも唇が重なって、柔らかさを味わうためについばんだ。明樹が顔を離すと、優成の表情が一瞬複雑──複数の感情が混ざったような何か──に見えたが、明樹が瞬きする間に優成はいつもの笑顔になっていた。
「せっかくの記念日だけど、一緒に仕事した以外なんにもできてないですね」
通常運転で忙殺的だった仕事を揶揄する優成に、「仕事が記念日の思い出だよ」と明樹も揶揄しながら寄りかかる。
「あ、そういえば楽屋にあったドーナツ食べました?明樹さんが好きなそうな味だったんだけど」
「え!食べてない。うわー食べればよかった」
「空港に店あるらしいですよ。明日買いに行きますか」
「行く、絶対行く。約束」
明樹が小指を出すと優成も小指を出して指切りをしてくれる。絡んだ指をそのままに手を引き寄せて明樹は優成に笑いかけた。
「優成、風呂もう入った?」
香りで風呂上がりなのはわかっていたが、明樹はこの後の展開のため確認を入れる。
「はい。明樹さんは入ったばっかりみたいですね」
まだ少し湿り気の残る髪を優成に撫でられながら、明樹は優成の腰に両腕を回した。
「じゃ今日このまま、一緒に寝よ」
横から抱き締めて、肩に顎を乗せて顔を見る。
優成は甘くて苦い何かを食べたような顔をした後、「もちろん」と答えた。さっきキスの後にも同じような顔をしていたことが思い当たり、仁の言っていた『見ればわかる』というのはこの表情のことかと明樹は察した。
(これ、我慢してる顔だったのか)
思い返せば添い寝で抱きついたりした時も、優成はこんな顔になっていた。
「もう寝ます?」
我慢の色を隠した優成が、もう1度明樹の髪を撫でる。
「んー、ベッドで寝ながら喋りたい」
言いながら明樹は優成の腕を引いて、立ち上がった。
ツインルームのためベッドは2つあったが、一緒に寝るというのは同じベッドを使用することを意味する。明樹と優成は半ば重なるようにして、ベッドに収まった。
間近にある優成の体温を愛しく思いながら、明樹は『喋りたい』と思っていたことを頭に浮かべて隣を見た。
「あのさ。男同士のやり方とか調べたんだけどね」
「ゲホッ!なに、いきなりどうしたんですか」
明樹の唐突な話題に、優成は咳き込みながら上体を起こした。目を泳がせる恋人に構わず明樹は寝返りを打って、優成と向き合う。
「俺、優成に抱かれるのはいいんだけど」
「は、はい」
手を口元に添えたまま、優成は咳で掠れた声を出した。
役割分担については以前優成に告げた通り、本当にどちらでもいいと明樹は思っている。同時に、おそらく自分が優成を受け入れる側になるだろうと目星をつけていた。
「男と経験ないからさ。ましてやいわゆるネコってやつ?なんて、未知の領域っていうか」
男に穴が1つしかないのはわかっていても、そこは挿れる穴じゃないという長年の常識が明樹に二の足を踏ませた。
「調べれば調べるほど、マジでって思っちゃって」
正直に所感を伝えると、優成は明樹と目線を合わせるようにゆっくり横になる。
「明樹さんが無理してまで頑張らなくていいですよ。俺は明樹さんとこうしてるだけでも、幸せだし」
「でも我慢してんでしょ?」
「え」
明樹の頭を撫でようとしたであろう右手を止めた優成は、再び目を泳がせた。
「なんで、そんな顔に出てますか俺」
「みんなにバレてるくらいには出てるっぽいよ」
さっきまで俺は気付いてなかったけど、と明樹は内心付け足した。
恥ずかしそうに額をかいた優成は「カッコつかないな……」と小さく呟いてから、今度こそ明樹の頭を撫でた。
「正直、明樹さんと触れ合いたいとは思ってます。でも、無理にセックスしたいわけじゃないのは本当です」
一息に言って、優成は目を細める。
「……俺は何より明樹さんが大切なんで」
そっと微笑んで、優成は指の背で頬を撫でた。大切に思われているのが指先から、表情から伝わってくる。
(ほんと、好きだな。大好き)
自然とわき上がる気持ちに後押しされて、明樹は言うべき言葉を準備して少しはにかんだ。
「そう、それなんだけど」
「え、どれですか」
頬から指を離した優成は、明樹の不思議な指事語に目を瞬く。
「挿入なしのカップルも結構いるってネットに書いてあったんだよ。だから、まずは優成が言ったみたいに触れ合いから始めてみたい」
「ああ、なるほど」
優成は頷いて、仰向けに寝直る。そのまま黙って天井を見た優成は、直後ベッドが揺れる勢いで起き上がると明樹の肩を掴んだ。
「それ、今していいってことですか!?」
仕事を終えてホテルでシャワーを済ませた明樹は、ソファに寝転んで優成にカトクを打っていた。
『今部屋いる。805号室』
送信してから、カードキーの予備を交換しているので部屋番号は必要なかったと明樹は気付きながら、雑にドライヤーした髪をいじる。ブリーチすると本当に髪が乾かない、と思っているうちに返信が来た。
『もう行きます』
普段連絡無精の優成がすぐ返信してくれる恋人という立場に優越感を感じて間もなく、チャイムが鳴って部屋着の優成が入ってくる。
「瞬間移動並みの早さだ」
「俺の部屋、目の前なの忘れたんですか」
起き上がってソファに座ると、優成は笑いながらすぐ隣に腰かけた。優成から香るシャンプーの甘さは、彼が風呂に入ったことを明樹に知らせる。
優成と同じ香りをまとう明樹は、スマホをマイクのようにして優成の口元に向けた。
「さて、今日はなんの日ですか?優成さん」
「俺と明樹さんが付き合い始めて3か月です」
「正解!ということで3か月記念日おめでと~」
わかりきった答えに拍手を送って、明樹は優成の肩を抱き寄せた。スマホのインカメを構えれば、優成は明樹に頬をくっつけてウィンクをする。記念のツーショットをおさめ終わって明樹が満足げに頷くと、優成が頭を下げた。
「これからもよろしくお願いします」
「あはは、固い挨拶。よろしくね」
髪をわしゃわしゃと撫でて、明樹は優成に顔を近づける。何も言わずとも唇が重なって、柔らかさを味わうためについばんだ。明樹が顔を離すと、優成の表情が一瞬複雑──複数の感情が混ざったような何か──に見えたが、明樹が瞬きする間に優成はいつもの笑顔になっていた。
「せっかくの記念日だけど、一緒に仕事した以外なんにもできてないですね」
通常運転で忙殺的だった仕事を揶揄する優成に、「仕事が記念日の思い出だよ」と明樹も揶揄しながら寄りかかる。
「あ、そういえば楽屋にあったドーナツ食べました?明樹さんが好きなそうな味だったんだけど」
「え!食べてない。うわー食べればよかった」
「空港に店あるらしいですよ。明日買いに行きますか」
「行く、絶対行く。約束」
明樹が小指を出すと優成も小指を出して指切りをしてくれる。絡んだ指をそのままに手を引き寄せて明樹は優成に笑いかけた。
「優成、風呂もう入った?」
香りで風呂上がりなのはわかっていたが、明樹はこの後の展開のため確認を入れる。
「はい。明樹さんは入ったばっかりみたいですね」
まだ少し湿り気の残る髪を優成に撫でられながら、明樹は優成の腰に両腕を回した。
「じゃ今日このまま、一緒に寝よ」
横から抱き締めて、肩に顎を乗せて顔を見る。
優成は甘くて苦い何かを食べたような顔をした後、「もちろん」と答えた。さっきキスの後にも同じような顔をしていたことが思い当たり、仁の言っていた『見ればわかる』というのはこの表情のことかと明樹は察した。
(これ、我慢してる顔だったのか)
思い返せば添い寝で抱きついたりした時も、優成はこんな顔になっていた。
「もう寝ます?」
我慢の色を隠した優成が、もう1度明樹の髪を撫でる。
「んー、ベッドで寝ながら喋りたい」
言いながら明樹は優成の腕を引いて、立ち上がった。
ツインルームのためベッドは2つあったが、一緒に寝るというのは同じベッドを使用することを意味する。明樹と優成は半ば重なるようにして、ベッドに収まった。
間近にある優成の体温を愛しく思いながら、明樹は『喋りたい』と思っていたことを頭に浮かべて隣を見た。
「あのさ。男同士のやり方とか調べたんだけどね」
「ゲホッ!なに、いきなりどうしたんですか」
明樹の唐突な話題に、優成は咳き込みながら上体を起こした。目を泳がせる恋人に構わず明樹は寝返りを打って、優成と向き合う。
「俺、優成に抱かれるのはいいんだけど」
「は、はい」
手を口元に添えたまま、優成は咳で掠れた声を出した。
役割分担については以前優成に告げた通り、本当にどちらでもいいと明樹は思っている。同時に、おそらく自分が優成を受け入れる側になるだろうと目星をつけていた。
「男と経験ないからさ。ましてやいわゆるネコってやつ?なんて、未知の領域っていうか」
男に穴が1つしかないのはわかっていても、そこは挿れる穴じゃないという長年の常識が明樹に二の足を踏ませた。
「調べれば調べるほど、マジでって思っちゃって」
正直に所感を伝えると、優成は明樹と目線を合わせるようにゆっくり横になる。
「明樹さんが無理してまで頑張らなくていいですよ。俺は明樹さんとこうしてるだけでも、幸せだし」
「でも我慢してんでしょ?」
「え」
明樹の頭を撫でようとしたであろう右手を止めた優成は、再び目を泳がせた。
「なんで、そんな顔に出てますか俺」
「みんなにバレてるくらいには出てるっぽいよ」
さっきまで俺は気付いてなかったけど、と明樹は内心付け足した。
恥ずかしそうに額をかいた優成は「カッコつかないな……」と小さく呟いてから、今度こそ明樹の頭を撫でた。
「正直、明樹さんと触れ合いたいとは思ってます。でも、無理にセックスしたいわけじゃないのは本当です」
一息に言って、優成は目を細める。
「……俺は何より明樹さんが大切なんで」
そっと微笑んで、優成は指の背で頬を撫でた。大切に思われているのが指先から、表情から伝わってくる。
(ほんと、好きだな。大好き)
自然とわき上がる気持ちに後押しされて、明樹は言うべき言葉を準備して少しはにかんだ。
「そう、それなんだけど」
「え、どれですか」
頬から指を離した優成は、明樹の不思議な指事語に目を瞬く。
「挿入なしのカップルも結構いるってネットに書いてあったんだよ。だから、まずは優成が言ったみたいに触れ合いから始めてみたい」
「ああ、なるほど」
優成は頷いて、仰向けに寝直る。そのまま黙って天井を見た優成は、直後ベッドが揺れる勢いで起き上がると明樹の肩を掴んだ。
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