16 / 71
休日
14話 冷凍食パン
しおりを挟む
目が冴えてしまった私は、起き上がりトイレに行ってから水を飲んだ。水道水をそのまま飲めるのは田舎の特権。
それからタバコに火を付けて、スパスパ吸いながらスマホをいじっていた。すると綾目がひょっこり私の顔を覗き込む。
「ん?どうしたの綾目」
「花雫。朝ごはん食べないの?食パン昨日買ってたよね」
「あー…あるんだけどさ…。冷凍してあるから…」
「してあるから?」
「解凍するのめんどくさい」
「うわぁ…」
「解凍。解凍とはそんなに手間のかかることなのかい?綾目」
私たちの会話を聞いていた薄雪が会話に入ってきた。綾目はジトっとした目で首を振る。わるいことをした子を言いつけるように、私を指さして主人に言いつけた。
「いいえ。トースターでチンするだけです。それをめんどくさがってます花雫は」
「トースターでチン。どうするんだい?」
「え?」
「方法を教えてくれるかな、綾目」
「は、はい」
綾目は立ち上がり、薄雪とキッチン(廊下についてるせっまいキッチン)へ行き、冷凍庫から食パンを一枚取り出した。カッチカチの食パンをぽいっとトースターへ突っ込む。
「ここに食パンを入れて、このチョボをクルっとするだけです」
「ふむ。それなら私もできそうだね」
「あ…え…?薄雪さまが…あの薄雪さまが…トースターでチン、するんですか…?」
「ええ。それで花雫が喜ぶのなら」
戸惑っている綾目を気にする様子もなく、薄雪は慣れない手つきでつまみを回した。
「あっ、薄雪さま。少し回しすぎです。回しすぎるとパンが焦げてしまいます」
「ほう。奥深い」
「奥深くはないです全く」
徐々に赤くなっているトースターの中に「おお」と感嘆の声をあげている。どうなっているのか気になり、蓋を開けてヒーターに触れようとしたので慌てて綾目が止めていた。
チンと音が鳴るまで、薄雪はトースターの中をずっと覗き込んでいた。だんだんとパンに焦げ目がついていくのを見て、「おお、パンに焦げ目が」とはしゃいでいる。
彼らのやりとりがかわいすぎて、私はソシャゲをすることも忘れてずっとガン見していた。
「はい花雫。できたよ。お食べ」
綾目が用意したお皿にトースターを乗せ、私に差し出す薄雪はどこか得意げだった。食パンを焼いてドヤ顔をする同居人はなかなかいいぞ。なんだか私がめちゃくちゃ料理ができる人になったみたいだ。
あまりにかわいい薄雪に、私は思わず彼の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「わーーーーー!花雫!!薄雪さまになんて無礼なことをぉぉっ!!」
「あっ!ごめんなさい!」
「綾目」
「ひっ!?」
「かまわないから」
「し、しかしぃ…」
「私も頭を撫でられた。これでおあいこだよ、綾目」
薄雪は私に撫でられた部分を手櫛で梳きながら、綾目に向かってフフンと笑った。
「あ、あれぇ…?そっちですか…?」
「さっきからなにを綾目と張り合ってるんですか薄雪…」
「それより花雫。はやく食パンを食べてください。冷めてしまいます。せっかくの私がチョボをクルっとした食パンが」
「あ、うん。いただきます。ありがとうございます、薄雪」
「はい」
いつもはマーガリンとかジャムを塗って食べるけど、そんなことを言える雰囲気ではなかったので、私はそのままトースターをかじった。はじめてチョボを回したにしては程よい焼き加減で、なかなかおいしかった(?)。
私が食パンをたべるところを薄雪は嬉しそうに眺めていた。食べているだけでこんな幸せそうな顔をしてもらえるなんて初めてだったから、なんだか照れる。
「ちょ、ちょっと。あんまり見ないでください」
「いいではありませんか。あなたは今、ひとりのあやかしをしあわせにしているのですから」
「やめれぇっ…。あ、あなたたちも食パン食べてくださいっ。私だけむしゃむしゃ食べてるの恥ずかしいし」
「そうですか。ではいただきましょう。綾目。君の分も私がチョボをクルッとしてあげよう」
「チョボ回し、楽しかったんですね」
薄雪はまたトースターの前で動かなくなった。二枚同時に焼けるからチョボ回しは一回でいいですよと綾目に言われて、少し残念そうだった。
それからタバコに火を付けて、スパスパ吸いながらスマホをいじっていた。すると綾目がひょっこり私の顔を覗き込む。
「ん?どうしたの綾目」
「花雫。朝ごはん食べないの?食パン昨日買ってたよね」
「あー…あるんだけどさ…。冷凍してあるから…」
「してあるから?」
「解凍するのめんどくさい」
「うわぁ…」
「解凍。解凍とはそんなに手間のかかることなのかい?綾目」
私たちの会話を聞いていた薄雪が会話に入ってきた。綾目はジトっとした目で首を振る。わるいことをした子を言いつけるように、私を指さして主人に言いつけた。
「いいえ。トースターでチンするだけです。それをめんどくさがってます花雫は」
「トースターでチン。どうするんだい?」
「え?」
「方法を教えてくれるかな、綾目」
「は、はい」
綾目は立ち上がり、薄雪とキッチン(廊下についてるせっまいキッチン)へ行き、冷凍庫から食パンを一枚取り出した。カッチカチの食パンをぽいっとトースターへ突っ込む。
「ここに食パンを入れて、このチョボをクルっとするだけです」
「ふむ。それなら私もできそうだね」
「あ…え…?薄雪さまが…あの薄雪さまが…トースターでチン、するんですか…?」
「ええ。それで花雫が喜ぶのなら」
戸惑っている綾目を気にする様子もなく、薄雪は慣れない手つきでつまみを回した。
「あっ、薄雪さま。少し回しすぎです。回しすぎるとパンが焦げてしまいます」
「ほう。奥深い」
「奥深くはないです全く」
徐々に赤くなっているトースターの中に「おお」と感嘆の声をあげている。どうなっているのか気になり、蓋を開けてヒーターに触れようとしたので慌てて綾目が止めていた。
チンと音が鳴るまで、薄雪はトースターの中をずっと覗き込んでいた。だんだんとパンに焦げ目がついていくのを見て、「おお、パンに焦げ目が」とはしゃいでいる。
彼らのやりとりがかわいすぎて、私はソシャゲをすることも忘れてずっとガン見していた。
「はい花雫。できたよ。お食べ」
綾目が用意したお皿にトースターを乗せ、私に差し出す薄雪はどこか得意げだった。食パンを焼いてドヤ顔をする同居人はなかなかいいぞ。なんだか私がめちゃくちゃ料理ができる人になったみたいだ。
あまりにかわいい薄雪に、私は思わず彼の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「わーーーーー!花雫!!薄雪さまになんて無礼なことをぉぉっ!!」
「あっ!ごめんなさい!」
「綾目」
「ひっ!?」
「かまわないから」
「し、しかしぃ…」
「私も頭を撫でられた。これでおあいこだよ、綾目」
薄雪は私に撫でられた部分を手櫛で梳きながら、綾目に向かってフフンと笑った。
「あ、あれぇ…?そっちですか…?」
「さっきからなにを綾目と張り合ってるんですか薄雪…」
「それより花雫。はやく食パンを食べてください。冷めてしまいます。せっかくの私がチョボをクルっとした食パンが」
「あ、うん。いただきます。ありがとうございます、薄雪」
「はい」
いつもはマーガリンとかジャムを塗って食べるけど、そんなことを言える雰囲気ではなかったので、私はそのままトースターをかじった。はじめてチョボを回したにしては程よい焼き加減で、なかなかおいしかった(?)。
私が食パンをたべるところを薄雪は嬉しそうに眺めていた。食べているだけでこんな幸せそうな顔をしてもらえるなんて初めてだったから、なんだか照れる。
「ちょ、ちょっと。あんまり見ないでください」
「いいではありませんか。あなたは今、ひとりのあやかしをしあわせにしているのですから」
「やめれぇっ…。あ、あなたたちも食パン食べてくださいっ。私だけむしゃむしゃ食べてるの恥ずかしいし」
「そうですか。ではいただきましょう。綾目。君の分も私がチョボをクルッとしてあげよう」
「チョボ回し、楽しかったんですね」
薄雪はまたトースターの前で動かなくなった。二枚同時に焼けるからチョボ回しは一回でいいですよと綾目に言われて、少し残念そうだった。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
『後宮薬師は名を持たない』
由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。
帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。
救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。
後宮が燃え、名を失ってもなお――
彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる