【完結】花が結んだあやかしとの縁

mazecco

文字の大きさ
20 / 71
休日

18話 どっちの布団で寝るか問題

しおりを挟む
薄雪とふたりでまったりとお酒を飲んでいると、あっという間に深夜が近づいてきた。月曜日のことを考えると胃が痛くなってくる。日曜日の夜は早く寝るに限る。私はのろのろと和室に布団をふたつ敷いた。

「薄雪。布団敷いたんでここで寝てくださいね」

「ありがとうございます」

「ちょっと花雫!僕の分はぁ?!」

「え?綾目は私と一緒に寝るのよ。いつも一緒に寝てたじゃん」

「あ、そういうことか。でも花雫寝相わるいからなあ…。薄雪さまと寝ていい?」

「え?!だめだめ!!ミルちゃんが傍にいてくれないと私眠れないの知ってるでしょ?!」

「知ってるけどぉ…。花雫は僕がいなかったら月曜がいやすぎてグスグス泣き出すんだもん…。でも薄雪さまの布団でいても花雫と近いよ。隣じゃん」

「やだぁーっ!!ミルちゃんは私の布団で寝るのぉぉぉっ!!」

「僕だっていやだぁぁぁっ!!久しぶりに薄雪さまのおそばで眠りたいぃぃぃっ!!」

「そんなこと言わないでミルちゃぁぁぁぁんっ!!!」

ミルちゃんがいない一人ぼっちの布団なんて耐えられない!!寂しすぎて死んじゃうよぉぉぉっ!!薄雪のばかぁぁぁっ私からミルちゃんとらないでぇええっ!!

汚い叫び声をあげながらしがみつく私から逃れようと、綾目は私をゲシゲシと足で蹴っていた。一緒にお風呂に入って恐怖心も薄まったのか今や薄雪にべったりだ。おもしろくない。ミルちゃんはわたしのミルちゃんでしょぉ?!

恨みたっぷりの目で薄雪を睨みつけると、薄雪は「おやおや」と呟きながらクスクス笑った。

「そんなに綾目と離れたくないのですか花雫」

「わたしからミルちゃんとりやがってぇ…」

「ふむ。だったら良い案があります」

「なんでしょう」

「3人がひとつの布団で眠ればいいのですよ」

「…はい?」

「そうしたら、あなたは綾目と一緒に眠れる。綾目は私と一緒に眠れる。私は花雫と一緒に眠れます。これで全て解決でしょう」

「いや待って。どこが良い案?」

「良くないですか?」

「よくないでしょ!わたしとあなたは出会って2日ですよ?!どうして同じ布団で寝なきゃいけないの?!えっまさか元からそのつもりで…。ぎゃーーーだから男っていやなのよぉぉぉっ!!!」

「ほう。ヒトは男女が同じ布団に入ったら性行為をするという決まりがあるのですか。面白い」

「おもしろかぁないっつーの!」

「ご安心ください。私はあやかし。性行為せずとも眷属を増やすことができるので、私にそういった欲求はありません。大人の男性と同じ布団で眠ることがいやであれば、私も少年の姿になりましょうか?それとも少女っぽい姿がよろしいでしょうか」

「そ、そもそも3人でひとつの布団ってせますぎますし!」

「幼子になれば万事解決です」

「ひょ」

薄雪が扇子を広げくるりとまわる。すると綾目とおなじ背丈の少女の姿になった。薄雪と同じ髪色と瞳の色の、おかっぱ姿の女の子。その姿を見て綾目は少し嫌な顔をした。

「う…蕣(むくげ)の姿ですか…」

「か…」

「か?」

「かわいいいいーーーーー!!!」

「ん"っ」

けだるげな表情なのにくりくりした目。幼くてつやつやした肌。今にも折れそうな細い手足。少女に化けた薄雪がかわいすぎて、私は思いっきり抱きしめた。薄雪は衝撃にうめき声を上げたけど、嫌がる素振りはなくわたしの腕の中でじっとしている。

「お気に召したようですね。これなら同じ布団で眠ってもいいですか?」

「はい!!!少女かわいい!!ぜひお願いします!!ええ!!是非一緒に寝ましょう!!」

「花雫。一応言っておくね。コレは蕣っていう薄雪さまの眷属の姿なんだ。コレは女の子に見えるけど、実は男の子だよ」

「えぇ?!男の娘ってことですかぁ?!最高では?!」

「あー・・・花雫もそういうの好きなタイプ…」

「よかった。では寝ましょうか、花雫。もう深夜を過ぎてしまいました」

「え!うそ、早く寝なきゃ!」

こうして私たちはひとつの布団に潜りこんだ。誰が誰の隣で寝るかでしばらく小競り合いをした結果、わたしが真ん中で、薄雪に背中を向けて綾目を抱きしめながら眠った。薄雪は私の腰に腕を置いて、背中におでこをくっつけて寝ている。かわいい少年二人に挟まれて寝るなんてこんな幸せな時間を過ごせるなんて、いま私は人生で一番しあわせかもしれない。

◇◇◇

花雫が寝静まった頃、薄雪はこっそりと元の姿に戻った。そっと起き上がると綾目と目が合った。

「花雫は眠っているかい?」

「はい」

花雫は綾目を抱きながら穏やかな寝息を立てている。薄雪は小さく微笑み、花雫をうしろから抱きしめ再び目を瞑った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

『後宮薬師は名を持たない』

由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。 帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。 救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。 後宮が燃え、名を失ってもなお―― 彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...