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平日
21話 やけくそ
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「薄雪!!お酒買ってきましたよ!!さあ一緒に飲みましょう!!あ”ーーーーー!!!」
帰るやいなや、私は薄雪に詰め寄りコンビニ袋をぐいぐいと押し付けた。襖にもたれかかって目を瞑っていた彼は、突然大声でウザ絡みされてポカンとした表情で私を見上げる。でもすぐに微笑んでゆっくりと立ち上がった。
「いいですよ。飲みましょうか」
「ひゅーーー!!」
「なんですか今日の花雫は。やけに賑やかですね」
「人生!!めんどくさい!!」
「おお。ヤケになっているのですか」
「花雫!お酒飲むのはいいけどその前にシャワー浴びよう!」
「えー、めんどくさい…。一杯飲んでから」
「絶対一杯じゃ終わらない!いつも化粧も落とさずに寝るし…」
「案外いけるよ?化粧落とさなくても」
「僕、花雫の老後が心配」
今日も私は綾目に引きずられて浴室へ放り込まれる。
「やだぁぁぁっ!!!お風呂入りたくないぃぃぃっ!!!頭洗うのいやぁぁぁっ!!」
お風呂に入りたくなさ過ぎて喚き散らしてると、綾目が大きなため息をついた。
「はぁぁぁ…っ。分かったよ。頭は僕が洗ってあげるから…」
「えっ」
「髪も僕が乾かしてあげるから!だから入って!ほら!」
無理矢理服を脱がされて浴室に連れて行かれた私の頭にシャワーをぶっかける綾目。それからシャンプーとトリートメントを丁寧にしてくれる。その間私は、自分の体をシャコシャコ洗っただけだった。
お風呂から出ると、浴室の前にはちゃんと寝間着が置かれてあった。薄雪が用意してくれたみたい。服を着てテーブルの前に座る。お酒を飲んでる間、綾目が髪を乾かしてくれた。
「え…なにこれ。なんだこれ。幸せすぎないか」
「体を清めるとさっぱりして気持ちがいいでしょ。花雫はそれよりめんどくささの方が勝っちゃって忘れがちだけど」
「うん…気持ちいいです。さっぱりしました…。体の疲れもマシになった気がする…」
「本当はゆっくりお湯に浸かった方がいいんだろうけどね。明日はお湯ためておいてあげるよ」
「綾目ぇぇっ…!!」
「ふぎゅっ」
私は綾目を思いっきり抱きしめた。綾目の心遣いや優しさが疲れた体に沁みる。仕事から持ち帰ってきたやるせない気持ちがこみ上げてきて、思わず涙がこぼれてしまった。
「うう~~…」
「…ん?花雫泣いてるの?」
「ううう…」
「おや。シゴトで心労を抱えて帰ってきたから。今までは吐き出せずにいたものが溢れてしまったようですね。よしよし」
薄雪が泣いてる私の頭を撫でる。綾目も背中をさすってくれた。理由も聞かず(心読んで知ってるからだろうけど)、ただ慰めてくれる二人。とても、あたたかい。
「花雫。カスミソウもあなたを慰めたいと」
薄雪はそう言って、私の鼻にカスミソウを近づけた。ふんわりと花の香りが私を包む。やわらかくて優しい香り。二人と一本は、私が泣き止むまでそっと慰め続けてくれた。
泣き止んだ私に、薄雪がグラスを差し出した。
「花雫。飲みましょう。疲れ、枯れた体は好きなもので満たさねば」
「…うん」
私は赤くなった目で笑った。注いでもらったビールを一気飲みして、昨日の残りのごはんを食べる。くだらない愚痴を薄雪と綾目に聞いてもらったおかげですっきりした。二人はヒトの難しい人間関係や複雑な感情は理解できないようだったけど、正論ソードを振り回すことなく静かに話を聞いてくれた。それがなによりもありがたかった。
喋り疲れて眠くなってきた私がそのまま布団に潜ろうとしたら、綾目が歯ブラシを持ってきた。適当に磨いて終わりにしようとしたのに、気に入らなかったのか綾目が歯までしっかり磨いてくれた。なんだこの猫は。至れり尽くせりじゃないですか…。
そして今晩もひとつの布団で三人で寝る。薄雪と綾目から微かに香る花の香りに、私はすぐに眠りに落ちた。
帰るやいなや、私は薄雪に詰め寄りコンビニ袋をぐいぐいと押し付けた。襖にもたれかかって目を瞑っていた彼は、突然大声でウザ絡みされてポカンとした表情で私を見上げる。でもすぐに微笑んでゆっくりと立ち上がった。
「いいですよ。飲みましょうか」
「ひゅーーー!!」
「なんですか今日の花雫は。やけに賑やかですね」
「人生!!めんどくさい!!」
「おお。ヤケになっているのですか」
「花雫!お酒飲むのはいいけどその前にシャワー浴びよう!」
「えー、めんどくさい…。一杯飲んでから」
「絶対一杯じゃ終わらない!いつも化粧も落とさずに寝るし…」
「案外いけるよ?化粧落とさなくても」
「僕、花雫の老後が心配」
今日も私は綾目に引きずられて浴室へ放り込まれる。
「やだぁぁぁっ!!!お風呂入りたくないぃぃぃっ!!!頭洗うのいやぁぁぁっ!!」
お風呂に入りたくなさ過ぎて喚き散らしてると、綾目が大きなため息をついた。
「はぁぁぁ…っ。分かったよ。頭は僕が洗ってあげるから…」
「えっ」
「髪も僕が乾かしてあげるから!だから入って!ほら!」
無理矢理服を脱がされて浴室に連れて行かれた私の頭にシャワーをぶっかける綾目。それからシャンプーとトリートメントを丁寧にしてくれる。その間私は、自分の体をシャコシャコ洗っただけだった。
お風呂から出ると、浴室の前にはちゃんと寝間着が置かれてあった。薄雪が用意してくれたみたい。服を着てテーブルの前に座る。お酒を飲んでる間、綾目が髪を乾かしてくれた。
「え…なにこれ。なんだこれ。幸せすぎないか」
「体を清めるとさっぱりして気持ちがいいでしょ。花雫はそれよりめんどくささの方が勝っちゃって忘れがちだけど」
「うん…気持ちいいです。さっぱりしました…。体の疲れもマシになった気がする…」
「本当はゆっくりお湯に浸かった方がいいんだろうけどね。明日はお湯ためておいてあげるよ」
「綾目ぇぇっ…!!」
「ふぎゅっ」
私は綾目を思いっきり抱きしめた。綾目の心遣いや優しさが疲れた体に沁みる。仕事から持ち帰ってきたやるせない気持ちがこみ上げてきて、思わず涙がこぼれてしまった。
「うう~~…」
「…ん?花雫泣いてるの?」
「ううう…」
「おや。シゴトで心労を抱えて帰ってきたから。今までは吐き出せずにいたものが溢れてしまったようですね。よしよし」
薄雪が泣いてる私の頭を撫でる。綾目も背中をさすってくれた。理由も聞かず(心読んで知ってるからだろうけど)、ただ慰めてくれる二人。とても、あたたかい。
「花雫。カスミソウもあなたを慰めたいと」
薄雪はそう言って、私の鼻にカスミソウを近づけた。ふんわりと花の香りが私を包む。やわらかくて優しい香り。二人と一本は、私が泣き止むまでそっと慰め続けてくれた。
泣き止んだ私に、薄雪がグラスを差し出した。
「花雫。飲みましょう。疲れ、枯れた体は好きなもので満たさねば」
「…うん」
私は赤くなった目で笑った。注いでもらったビールを一気飲みして、昨日の残りのごはんを食べる。くだらない愚痴を薄雪と綾目に聞いてもらったおかげですっきりした。二人はヒトの難しい人間関係や複雑な感情は理解できないようだったけど、正論ソードを振り回すことなく静かに話を聞いてくれた。それがなによりもありがたかった。
喋り疲れて眠くなってきた私がそのまま布団に潜ろうとしたら、綾目が歯ブラシを持ってきた。適当に磨いて終わりにしようとしたのに、気に入らなかったのか綾目が歯までしっかり磨いてくれた。なんだこの猫は。至れり尽くせりじゃないですか…。
そして今晩もひとつの布団で三人で寝る。薄雪と綾目から微かに香る花の香りに、私はすぐに眠りに落ちた。
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