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三週目~四週目
34話 手料理
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今週の土曜日は午前中の間に買い物に出かけた。というのも、雪が積もっている外を見た綾目がテンション上がっちゃって、外に出たいと大騒ぎしたからだ。猫って寒いところいやなんじゃないの?ああ、猫じゃないんだった。
「花雫見てー!!雪玉を作ったよ!!」
道端のまだ踏まれていない雪を丸め、綾目が私に見せに来た。ひぃぃっ…素手で雪掴んでつめたそぉ…。
「冷たいけど気にならないよ!」
「それならいいんだけど…」
「雪玉みてよ!」
「うん。かわいい。雪玉作ってる綾目が」
「僕じゃなくて雪玉を見てよぉ!!」
だめだ。ほっぺた膨らませてる綾目かわいすぎる。膨れた頬をつつくと、綾目は「もぉぉっ」と雪を私に投げつけた。
「ぎゃー!!づめ”だい”ッ!!!」
「あははは!花雫のコート雪まみれ!」
「やったなあー!?」
私は車の上に積もっている雪を掴み、綾目に投げた。それだけで指先が死んだ。綾目は雪が当たって楽し気に笑っている。子どもって元気だなあ。
薄雪はというと、少し離れた場所で私たちをまったり眺めていたり、雪が乗っている植物を指でなぞったりしている。そんな彼におそるおそる雪玉を投げてみると、ペシャ、と白い着物に雪が当たり砕けた。薄雪はにっこり笑い、こう言った。
「花雫の嗜虐心が満たされるのであれば、いくらでもどうぞ」
「なんで!?雪遊びしたつもりだったのに罪悪感がすごい!!!」
「薄雪さまに雪を投げつけるなんて…。それはないよ花雫…」
「三人で楽しく遊びただけだったのに一瞬で裁判所みたいな雰囲気になるのやめて!!」
「冗談ですよ。さあ、そろそろスーパーへ行きましょう。花雫の指が真っ赤になっていますから」
◇◇◇
今日も山盛りの食材を買って帰ってきた。早速お昼ご飯を作る準備を始める。
「今日は贅沢ですよ!えへへー、給料日だったから奮発しちゃった!」
「おお。高級食材ですか。楽しみです」
「なんだろうー!おなかすいた!!」
「ふっふっふ。それは…これです!!」
私はスーパーの袋から明太子を取り出した。半額シールがついているそれを見て、薄雪と綾目が身を乗り出している。
「それは…?」
「わ!もしかして何かの内臓?!僕内臓だいすきー!」
「綾目!?ちょいちょいこわい発言しないで!!これはですね、魚の卵です!!」
「卵」
「えーっと、なんの卵だったっけ。たらこだし、たら?」
「たらの子ですか」
「そうです(たぶん)!これをぐちゅぐちゅにすり潰して…マヨネーズと生おろしにんにくをたっぷり入れます」
私は実家からパクってきたすりこぎ棒で、ぐりぐり明太子、マヨネーズ、生おろしにんにくを混ぜ合わせた。真っ赤だった明太子がかわいいピンク色になる。これだけでも映えるよね。女子力上がりそう。
「そしてこれをごはんの上にぶっかけます!!」
白いごはんにピンク色の明太マヨ!!オシャレダー!!
その上に刻みのりをかけたら完成!
「これが私の、たまご料理に次ぐ得意料理です!!」
「これはまた美味しそうな」
「早く食べたい!!」
薄雪と綾目はそわそわとお箸を握った。私が「いただきます!」と合図すると、二人もいただきますと言って明太マヨ丼を口に運んだ。
「!」
「これは…!」
「おいしいですね…!」
「でしょーーー!!これを思いついた時は、あ、わたし天才だ…って思った!!」
「これは天才かもしれないよ、花雫!!」
「ええ。近年稀にみる才能かもしれませんよ」
「あやかしって…最高ですね…」
普段花の蜜とか木の実しか食べていなかったあやかしにとっては、この手抜きにもほどがあるごはんも美味しいご馳走だったようだ。
口に入れるたびに、まるでレストランの高級料理を食べたときみたいにとろけそうな顔で「おいしい」と言ってくれる。今までおいしいと言われたことがなかった私の手料理が、ここに来て今までの分も合わせて褒めてもらえている気分。
今まで手料理を振舞うのが億劫で仕方がなかったけど、最近は早く振舞いたくてしょうがない。だって彼らは、どんな料理でも心からおいしいと言ってくれるから。(本気で失敗した時は無言で食べてるけど)
「私、料理を人に出すのが怖かったんです」
「そうですね。はじめの方、あなたはいつも怖がっていました」
「まずいって思われるのがこわいんです。一度、留学先で手料理を振舞って…大惨事になったことがあって…」
ホームステイ先の三人の子どもが阿鼻叫喚。一人の子どもはえずいていたし、他の子たちにも「これたべたくない…好きじゃない…」って言われちゃって。
親も夜にこっそり私の手料理をゴミ箱に捨ててたのを見てしまった。実際たしかにまずかった。海外に昆布つゆがないことを知らなかった私が悪かった。
だからホームステイ先の人たちはなにも悪くない。でも、それから私は手料理を振舞うのが怖くなった。
「あなたたちのおかげで、最近はごはんを振舞うことが楽しいです。こんな料理しか出せないけど…。よかったらこれからも、私の手料理を食べてください」
薄雪と綾目は微笑んだ。
「もちろん食べるよ!だって僕、花雫の手料理だいすきだもん!」
「ええ。私も好きですよ。いつもおいしい料理、ありがとうございます」
「う…薄雪…綾目ぇ~…!」
「わぶっ!」
たまらなくなって、私は綾目を抱きしめた。息苦しそうにしている彼を、薄雪がムスっとした目で眺めている。
あたたかい食卓。今までずっと一人で良いって思ってた。でも、家庭というものがこんなふうにあたたかいものなのだとしたら、ちょっと良いかもしれないなと思ってしまうほど、彼らとの生活は居心地が良かった。
「花雫見てー!!雪玉を作ったよ!!」
道端のまだ踏まれていない雪を丸め、綾目が私に見せに来た。ひぃぃっ…素手で雪掴んでつめたそぉ…。
「冷たいけど気にならないよ!」
「それならいいんだけど…」
「雪玉みてよ!」
「うん。かわいい。雪玉作ってる綾目が」
「僕じゃなくて雪玉を見てよぉ!!」
だめだ。ほっぺた膨らませてる綾目かわいすぎる。膨れた頬をつつくと、綾目は「もぉぉっ」と雪を私に投げつけた。
「ぎゃー!!づめ”だい”ッ!!!」
「あははは!花雫のコート雪まみれ!」
「やったなあー!?」
私は車の上に積もっている雪を掴み、綾目に投げた。それだけで指先が死んだ。綾目は雪が当たって楽し気に笑っている。子どもって元気だなあ。
薄雪はというと、少し離れた場所で私たちをまったり眺めていたり、雪が乗っている植物を指でなぞったりしている。そんな彼におそるおそる雪玉を投げてみると、ペシャ、と白い着物に雪が当たり砕けた。薄雪はにっこり笑い、こう言った。
「花雫の嗜虐心が満たされるのであれば、いくらでもどうぞ」
「なんで!?雪遊びしたつもりだったのに罪悪感がすごい!!!」
「薄雪さまに雪を投げつけるなんて…。それはないよ花雫…」
「三人で楽しく遊びただけだったのに一瞬で裁判所みたいな雰囲気になるのやめて!!」
「冗談ですよ。さあ、そろそろスーパーへ行きましょう。花雫の指が真っ赤になっていますから」
◇◇◇
今日も山盛りの食材を買って帰ってきた。早速お昼ご飯を作る準備を始める。
「今日は贅沢ですよ!えへへー、給料日だったから奮発しちゃった!」
「おお。高級食材ですか。楽しみです」
「なんだろうー!おなかすいた!!」
「ふっふっふ。それは…これです!!」
私はスーパーの袋から明太子を取り出した。半額シールがついているそれを見て、薄雪と綾目が身を乗り出している。
「それは…?」
「わ!もしかして何かの内臓?!僕内臓だいすきー!」
「綾目!?ちょいちょいこわい発言しないで!!これはですね、魚の卵です!!」
「卵」
「えーっと、なんの卵だったっけ。たらこだし、たら?」
「たらの子ですか」
「そうです(たぶん)!これをぐちゅぐちゅにすり潰して…マヨネーズと生おろしにんにくをたっぷり入れます」
私は実家からパクってきたすりこぎ棒で、ぐりぐり明太子、マヨネーズ、生おろしにんにくを混ぜ合わせた。真っ赤だった明太子がかわいいピンク色になる。これだけでも映えるよね。女子力上がりそう。
「そしてこれをごはんの上にぶっかけます!!」
白いごはんにピンク色の明太マヨ!!オシャレダー!!
その上に刻みのりをかけたら完成!
「これが私の、たまご料理に次ぐ得意料理です!!」
「これはまた美味しそうな」
「早く食べたい!!」
薄雪と綾目はそわそわとお箸を握った。私が「いただきます!」と合図すると、二人もいただきますと言って明太マヨ丼を口に運んだ。
「!」
「これは…!」
「おいしいですね…!」
「でしょーーー!!これを思いついた時は、あ、わたし天才だ…って思った!!」
「これは天才かもしれないよ、花雫!!」
「ええ。近年稀にみる才能かもしれませんよ」
「あやかしって…最高ですね…」
普段花の蜜とか木の実しか食べていなかったあやかしにとっては、この手抜きにもほどがあるごはんも美味しいご馳走だったようだ。
口に入れるたびに、まるでレストランの高級料理を食べたときみたいにとろけそうな顔で「おいしい」と言ってくれる。今までおいしいと言われたことがなかった私の手料理が、ここに来て今までの分も合わせて褒めてもらえている気分。
今まで手料理を振舞うのが億劫で仕方がなかったけど、最近は早く振舞いたくてしょうがない。だって彼らは、どんな料理でも心からおいしいと言ってくれるから。(本気で失敗した時は無言で食べてるけど)
「私、料理を人に出すのが怖かったんです」
「そうですね。はじめの方、あなたはいつも怖がっていました」
「まずいって思われるのがこわいんです。一度、留学先で手料理を振舞って…大惨事になったことがあって…」
ホームステイ先の三人の子どもが阿鼻叫喚。一人の子どもはえずいていたし、他の子たちにも「これたべたくない…好きじゃない…」って言われちゃって。
親も夜にこっそり私の手料理をゴミ箱に捨ててたのを見てしまった。実際たしかにまずかった。海外に昆布つゆがないことを知らなかった私が悪かった。
だからホームステイ先の人たちはなにも悪くない。でも、それから私は手料理を振舞うのが怖くなった。
「あなたたちのおかげで、最近はごはんを振舞うことが楽しいです。こんな料理しか出せないけど…。よかったらこれからも、私の手料理を食べてください」
薄雪と綾目は微笑んだ。
「もちろん食べるよ!だって僕、花雫の手料理だいすきだもん!」
「ええ。私も好きですよ。いつもおいしい料理、ありがとうございます」
「う…薄雪…綾目ぇ~…!」
「わぶっ!」
たまらなくなって、私は綾目を抱きしめた。息苦しそうにしている彼を、薄雪がムスっとした目で眺めている。
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