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大切なモノ
60話 花の雫
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「それで、花雫なのだが」
喜代春がそう言うと、薄雪は頷いた。
「ありがとうございます。彼女のことも清めてくれたんだね」
「ああ。今は深い眠りについているが、数日したら目を覚ますだろう」
「ヌシサマの大吉夢を受け継いだユメクイが見せる夢を、長年与えられてたおかげで花雫は守られた」
「彼女の体にしっかり君の妖力も沁み込んでいたしね。…それに」
「ヌシサマの涙も花雫を守った」
「涙…ああ、そういえば彼女を失うことを恐れて涙を落としましたね。ですが私の涙がなぜ」
薄雪の問いかけに喜代春がふっと笑った。
「君の涙。花のあやかしの涙の雫。…花の雫」
「あ…」
「ヒトの名とは不思議なモノだ」
喜代春の言葉に、蓮華と蕣が続く。
「主を守りたかった名と」
「名と同じモノが共鳴して」
「清めの力が生まれた」
喜代春が頷く。
「実は、私がコチラ側に来たときにはもう花雫はほとんど浄化されていたんだ」
「そうですか…」
「花雫を守ったのは君だよ、薄雪」
「……」
薄雪が花雫の手を握る。いつもよりずっと冷たい手。失ってしまうかと思った。花雫が死んでしまうと考えると涙が零れた。助かってよかった。生きてくれて良かった。
「ただひとつ、目を除いて、だが」
「……」
喜代春の言葉に薄雪がゆっくりと顔を上げた。喜代春たちの空気が重い。花雫に目を戻し、瞼をこする。するとぼやっとあの痕が浮き出てきた。
「…これは」
「その痣は消せなかった。私の力でも、朝霧の力でも」
「妖力で隠してるだけ」
「ウメの一番強い願いと呪い」
「消えなかった」
「……」
震える指で彼女の瞼を上げた。覗いた瞳は黄色く、瞳孔が猫のように細かった。
「これは…」
薄雪は顔を真っ青にして綾目を見た。綾目は震え、彼の視界から隠れようと身を縮めている。
「どういうことだい?これは…綾目の瞳じゃないか」
喜代春がそう言うと、薄雪は頷いた。
「ありがとうございます。彼女のことも清めてくれたんだね」
「ああ。今は深い眠りについているが、数日したら目を覚ますだろう」
「ヌシサマの大吉夢を受け継いだユメクイが見せる夢を、長年与えられてたおかげで花雫は守られた」
「彼女の体にしっかり君の妖力も沁み込んでいたしね。…それに」
「ヌシサマの涙も花雫を守った」
「涙…ああ、そういえば彼女を失うことを恐れて涙を落としましたね。ですが私の涙がなぜ」
薄雪の問いかけに喜代春がふっと笑った。
「君の涙。花のあやかしの涙の雫。…花の雫」
「あ…」
「ヒトの名とは不思議なモノだ」
喜代春の言葉に、蓮華と蕣が続く。
「主を守りたかった名と」
「名と同じモノが共鳴して」
「清めの力が生まれた」
喜代春が頷く。
「実は、私がコチラ側に来たときにはもう花雫はほとんど浄化されていたんだ」
「そうですか…」
「花雫を守ったのは君だよ、薄雪」
「……」
薄雪が花雫の手を握る。いつもよりずっと冷たい手。失ってしまうかと思った。花雫が死んでしまうと考えると涙が零れた。助かってよかった。生きてくれて良かった。
「ただひとつ、目を除いて、だが」
「……」
喜代春の言葉に薄雪がゆっくりと顔を上げた。喜代春たちの空気が重い。花雫に目を戻し、瞼をこする。するとぼやっとあの痕が浮き出てきた。
「…これは」
「その痣は消せなかった。私の力でも、朝霧の力でも」
「妖力で隠してるだけ」
「ウメの一番強い願いと呪い」
「消えなかった」
「……」
震える指で彼女の瞼を上げた。覗いた瞳は黄色く、瞳孔が猫のように細かった。
「これは…」
薄雪は顔を真っ青にして綾目を見た。綾目は震え、彼の視界から隠れようと身を縮めている。
「どういうことだい?これは…綾目の瞳じゃないか」
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