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魔女編:ポントワーブでの休息
【90話】おしゃれ
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トロワから帰ってきた翌朝、モニカが先に目を覚まし起き上がった。うーん、と伸びをしてからベッドから出て服を着替える。今日は黒のコットと黒のスカートを選んだ。淡い色を身に付けるよりも少し大人っぽく見える。そんな自分を鏡に映して「なかなかいいじゃない!」と満足げに呟いた。ネックレスのトパーズが良く映える。
しばらくしてアーサーが目覚めた。モニカが兄にコットとスカートを渡す。
「モニカ、今日からアーサーだよ。ズボンと男用のコットを出して」
「えー、もうアビー終わり?」
「アビーはまた2か月後ね。それよりモニカ、今日は大人っぽいね」
「でしょぉ?黒もなかなかいいわね。ねえアーサー、髪を結ってくれる?」
「いいよ。リボンは何色にするの?」
「うーん、黒か赤にしようかなあ」
「赤がいいなあ。差し色があった方が可愛いと思うよ」
「うん!じゃあそうする」
モニカが鏡台の前へ座り、彼女の髪をアーサーがブラシで梳く。
「髪が伸びたねえ、モニカ」
「うん!伸ばしてるの!長い髪の方が女の子っぽくて好きだから」
「僕も長い髪のモニカ好きだよ。それにモニカの髪はつやつやさらさらですてき」
「えへへ。ありがと。自慢の髪を褒めてもらえてうれしいなあ」
お喋りをしながら、アーサーがモニカの髪を高い位置でポニーテールにした。
「痛くない?」
「大丈夫。わー、いいかんじ」
「お化粧もしてあげようか?」
「助かる!私よりもアーサーの方がお化粧上手なんだもん。ほんとなんでもできちゃうんだから。悔しいわ」
「何言ってるんだよ。僕は魔法を全くつかえないんだから」
「それだけじゃないの」
「あはは。モニカ、目を瞑ってね」
「ん」
モニカの肌に白粉を軽く叩き、頬と唇に紅を塗る。眉を整えてアイラインを薄く引いた。
「はい、できたよ」
「わぁー!かわいい~!!ありがとうアーサー!」
「どういたしまして」
モニカの服に合わせて、アーサーも黒のコットと黒のズボンを身に付けた。モニカの希望のもと、髪を少し固めて前髪を上げた。耳にトパーズのピアスを付けて、「どうかな?」とモニカに尋ねる。
「アーサーかっこいいよお!!今日のわたしたち、なんだか大人っぽいわ!」
「何もない日なのにちょっとおしゃれしすぎちゃった気がする!」
「楽しいからいいじゃない!」
二人は1階に降りてパンと果物を食べてから、ずっとサボっていたエリクサー作りに励んだ。モニカが魔力のコントロールをできるようになったため、1日に4500本のエリクサーを作ることができるはずだ。450体のスライムをアイテムボックスから取り出し、回復液を黙々と作った。
4500本分の薬素材を調合しなければいけないアーサーはたまったものじゃない。900本しか作れなかったときでさえ、手首がちぎれそうなほど重労働だったのだ。必死に素材をすり潰すが終わりが見えない。
「…モニカ、4500本分の薬素材をすり潰すのは、無理だ」
「そうねえ…。さすがに厳しいわよね」
「僕一人で作るとしたら、半日で1000本分が限界だ。他にもしたいことあるし、これ以上は増やしたくない」
「だったら、エリクサーは1日1000本までにしましょう」
「うん。ごめんね」
「いいの!じゃあ私はアーサーが薬を調合してる間、スライムに回復魔法を重ね掛けしてくるわ」
「うん、いってらっしゃい」
調合に勤しんでいるアーサーを残して、モニカは庭へ出た。アイテムボックスからスライムを取り出し繁殖場へ移す。エリクサー作りをさぼっていた間に増えたスライムを間引きして、残ったスライムに回復魔法を重ね掛けしていく。モニカが歌を歌っていると、大きな荷物を持った郵便屋さんが庭へ入ってきた。
「モニカー!届け物だぞー。…お?なんだか今日はいつもと雰囲気が違うなあ」
「大人っぽいでしょ!」
「ああ、本当に。こりゃあ将来はどえれえ美人になるなあモニカは!」
「今も美人だもん!」
「あはは!そうですねマドモアゼル。こちらどうぞ。ルアンからの贈り物でございます」
おどけた郵便屋がうやうやしくモニカに荷物を差し出した。モニカはそれを大事に抱えて家に運び、ダイニングで封を開けた。中には、1枚の絵画と10種類の顔料、2本の筆、2枚の小さなキャンバス、そして手紙が入っていた。
-----------------
アーサー、モニカへ
元気にしているかい?
俺やほかの仲間は相変わらず絵を描く毎日を過ごしているよ。
君たちに出会ってから、みんな前以上にはりきって絵を描くようになった。
きっと君たちが絵を買ってくれたのが嬉しかったんだと思う。
まあ、一番嬉しかったのは俺なんだけどね。
この前ルアンで洪水があってね。
僕と友人のシスルは急いでそこへ行って絵を描いたよ。
非日常の景色を描けて大満足さ。
かなりいい出来に仕上がったから君たちに贈るね。
家に飾ってもらえると嬉しいな。
ついでに顔料と筆を送るね。
(もちろんヴァジーのお金で買った)
良かったら君たちも絵を描いて俺に贈ってほしい。
俺もヴァジーも、君たちの絵が大好きなんだ。
ルアンへ来たときはまた会いに来てくれよな。
俺たちはだいたいカフェにいる。
君たちが恋しいよ。
クロネ
クロネが勝手に僕の金を持ち出したから何事かと思ったけど、君たちに画材を贈るためだったなら文句なしだ。これでたくさん絵を描いてくれーーヴァジー
アーサー、モニカ、元気か?!たまにはルアンにも遊びに来てくれよな。君たちが恋しいよーーリュノ
寒い季節だから風邪を引かないように気を付けるんだよ。あたたかいスープを飲むといいーーヴィサロ
また絵を見に来い。--エドガ
-----------------
「わー!クロネたちからだ!!アーサー!!」
絵画と手紙を持ってモニカは調合室へ飛び込んだ。無心で調合していたアーサーが驚いて奇妙な声を上げてモニカを見た。
「ひょぁっ!!な、なにモニカ!びっくりするじゃないか!」
「アーサー!クロネたちから手紙と絵が届いたよ!」
「え!本当に?!見せて!!」
アーサーは手紙を食い入るように読み、次に送られてきた絵画をのぞき込んだ。水に沈んだ風景。水の描写が美しいクロネにとって、格好の景色だっただろう。意気揚々と描き上げる姿が目に浮かぶ。
「綺麗な絵だねえ」
「うん。どこに飾ろうかなあ」
「客室に飾るのはどう?」
「いいわね!」
「顔料と筆まで送ってくれたんだ!嬉しいなあ。雪の景色、描いてみようよモニカ」
「うん!アーサーの調合が終わったら絵を描きましょう」
「う…がんばって終わらせます…」
しばらくしてアーサーが目覚めた。モニカが兄にコットとスカートを渡す。
「モニカ、今日からアーサーだよ。ズボンと男用のコットを出して」
「えー、もうアビー終わり?」
「アビーはまた2か月後ね。それよりモニカ、今日は大人っぽいね」
「でしょぉ?黒もなかなかいいわね。ねえアーサー、髪を結ってくれる?」
「いいよ。リボンは何色にするの?」
「うーん、黒か赤にしようかなあ」
「赤がいいなあ。差し色があった方が可愛いと思うよ」
「うん!じゃあそうする」
モニカが鏡台の前へ座り、彼女の髪をアーサーがブラシで梳く。
「髪が伸びたねえ、モニカ」
「うん!伸ばしてるの!長い髪の方が女の子っぽくて好きだから」
「僕も長い髪のモニカ好きだよ。それにモニカの髪はつやつやさらさらですてき」
「えへへ。ありがと。自慢の髪を褒めてもらえてうれしいなあ」
お喋りをしながら、アーサーがモニカの髪を高い位置でポニーテールにした。
「痛くない?」
「大丈夫。わー、いいかんじ」
「お化粧もしてあげようか?」
「助かる!私よりもアーサーの方がお化粧上手なんだもん。ほんとなんでもできちゃうんだから。悔しいわ」
「何言ってるんだよ。僕は魔法を全くつかえないんだから」
「それだけじゃないの」
「あはは。モニカ、目を瞑ってね」
「ん」
モニカの肌に白粉を軽く叩き、頬と唇に紅を塗る。眉を整えてアイラインを薄く引いた。
「はい、できたよ」
「わぁー!かわいい~!!ありがとうアーサー!」
「どういたしまして」
モニカの服に合わせて、アーサーも黒のコットと黒のズボンを身に付けた。モニカの希望のもと、髪を少し固めて前髪を上げた。耳にトパーズのピアスを付けて、「どうかな?」とモニカに尋ねる。
「アーサーかっこいいよお!!今日のわたしたち、なんだか大人っぽいわ!」
「何もない日なのにちょっとおしゃれしすぎちゃった気がする!」
「楽しいからいいじゃない!」
二人は1階に降りてパンと果物を食べてから、ずっとサボっていたエリクサー作りに励んだ。モニカが魔力のコントロールをできるようになったため、1日に4500本のエリクサーを作ることができるはずだ。450体のスライムをアイテムボックスから取り出し、回復液を黙々と作った。
4500本分の薬素材を調合しなければいけないアーサーはたまったものじゃない。900本しか作れなかったときでさえ、手首がちぎれそうなほど重労働だったのだ。必死に素材をすり潰すが終わりが見えない。
「…モニカ、4500本分の薬素材をすり潰すのは、無理だ」
「そうねえ…。さすがに厳しいわよね」
「僕一人で作るとしたら、半日で1000本分が限界だ。他にもしたいことあるし、これ以上は増やしたくない」
「だったら、エリクサーは1日1000本までにしましょう」
「うん。ごめんね」
「いいの!じゃあ私はアーサーが薬を調合してる間、スライムに回復魔法を重ね掛けしてくるわ」
「うん、いってらっしゃい」
調合に勤しんでいるアーサーを残して、モニカは庭へ出た。アイテムボックスからスライムを取り出し繁殖場へ移す。エリクサー作りをさぼっていた間に増えたスライムを間引きして、残ったスライムに回復魔法を重ね掛けしていく。モニカが歌を歌っていると、大きな荷物を持った郵便屋さんが庭へ入ってきた。
「モニカー!届け物だぞー。…お?なんだか今日はいつもと雰囲気が違うなあ」
「大人っぽいでしょ!」
「ああ、本当に。こりゃあ将来はどえれえ美人になるなあモニカは!」
「今も美人だもん!」
「あはは!そうですねマドモアゼル。こちらどうぞ。ルアンからの贈り物でございます」
おどけた郵便屋がうやうやしくモニカに荷物を差し出した。モニカはそれを大事に抱えて家に運び、ダイニングで封を開けた。中には、1枚の絵画と10種類の顔料、2本の筆、2枚の小さなキャンバス、そして手紙が入っていた。
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アーサー、モニカへ
元気にしているかい?
俺やほかの仲間は相変わらず絵を描く毎日を過ごしているよ。
君たちに出会ってから、みんな前以上にはりきって絵を描くようになった。
きっと君たちが絵を買ってくれたのが嬉しかったんだと思う。
まあ、一番嬉しかったのは俺なんだけどね。
この前ルアンで洪水があってね。
僕と友人のシスルは急いでそこへ行って絵を描いたよ。
非日常の景色を描けて大満足さ。
かなりいい出来に仕上がったから君たちに贈るね。
家に飾ってもらえると嬉しいな。
ついでに顔料と筆を送るね。
(もちろんヴァジーのお金で買った)
良かったら君たちも絵を描いて俺に贈ってほしい。
俺もヴァジーも、君たちの絵が大好きなんだ。
ルアンへ来たときはまた会いに来てくれよな。
俺たちはだいたいカフェにいる。
君たちが恋しいよ。
クロネ
クロネが勝手に僕の金を持ち出したから何事かと思ったけど、君たちに画材を贈るためだったなら文句なしだ。これでたくさん絵を描いてくれーーヴァジー
アーサー、モニカ、元気か?!たまにはルアンにも遊びに来てくれよな。君たちが恋しいよーーリュノ
寒い季節だから風邪を引かないように気を付けるんだよ。あたたかいスープを飲むといいーーヴィサロ
また絵を見に来い。--エドガ
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「わー!クロネたちからだ!!アーサー!!」
絵画と手紙を持ってモニカは調合室へ飛び込んだ。無心で調合していたアーサーが驚いて奇妙な声を上げてモニカを見た。
「ひょぁっ!!な、なにモニカ!びっくりするじゃないか!」
「アーサー!クロネたちから手紙と絵が届いたよ!」
「え!本当に?!見せて!!」
アーサーは手紙を食い入るように読み、次に送られてきた絵画をのぞき込んだ。水に沈んだ風景。水の描写が美しいクロネにとって、格好の景色だっただろう。意気揚々と描き上げる姿が目に浮かぶ。
「綺麗な絵だねえ」
「うん。どこに飾ろうかなあ」
「客室に飾るのはどう?」
「いいわね!」
「顔料と筆まで送ってくれたんだ!嬉しいなあ。雪の景色、描いてみようよモニカ」
「うん!アーサーの調合が終わったら絵を描きましょう」
「う…がんばって終わらせます…」
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