【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

文字の大きさ
709 / 718
エピローグ

終戦のあと:ダフとアデーレ、カトリナとサンプソン

しおりを挟む
 全てが終わったあと、ダフの元にアデーレが駆け寄ってきた。

「ダフ……!! ああ、生きてたのね……! あなたが死にかけたって聞いて……」
「はい! というかほぼ死にましたね!! 俺にしがみついている殿下を俯瞰で見ていました!」
「どうして死にかけたのに嬉しそうなの……。ああ、びっくりした……」

 ダフはニカッと笑った。

「ワンワン泣いてる殿下を見れたんですよ? それも、俺に死んでほしくなくてです!! そんなの嬉しすぎます!」
「そう……前向きもいきすぎると心配になるわね」
「それに、こうしてアデーレ姉さんが心配して駆け寄ってきてくれたんですよ? それもまた嬉しすぎます!」
「はあ……。なんだかあなたといると疲れるわ……」
「ええ!? そんなこと言わずに!」

 ダフは大袈裟に慌てふためき、ガシッとアデーレの手を握った。

「そんなこと言わずに、俺と結婚してください!!」
「……え?」

 ダフのプロポーズが戦場に響き渡る。
 冒険者や兵たちは二人に釘付けになった。
 アデーレはみんなの視線を感じて頭から湯気を出している。

 ダフはさらに叫んだ。

「アデーレ姉さーん! 俺とー! 結婚してくださーい!!」
「ちょっとダフ!? どうしてそんな大声出すの!?」
「溢れんばかりの気持ちを込めてみました!!」
「ヤメテ!?」
「それで! 返事はどっちですか!?」
「~~……」

 アデーレはダフから顔を背けて、小さく何度も頷いた。
 それを見たダフ、冒険者たち、兵たちは、終戦したときと同じくらいの歓声を上げた。

 ダフとアデーレはその後三人の子宝に恵まれた。
 二人は子どもが小さいうちから剣を教えた。

 大人になった子どもたちは、長男は騎士に、次女は冒険者になった。
 そして一番年上の長女は、幼い頃に一目惚れした男の子を追いかけ回すことに青春を費やすことになる。彼女は適齢期になると、さっさと剣を放り投げて結婚した。

◇◇◇

 戦いを終え――
 カトリナとサンプソンは馬車に乗っていた。行先はオーヴェルニュ家の屋敷だ。

 馬車の中で、サンプソンがカトリナの前に跪く。

「カトリナ。僕と結婚してください」
「まあ……。こんなロマンティックじゃない場所でプロポーズ?」
「本当は春まで待とうと思っていたんだけど……。我慢できなかった」
「ダフのプロポーズに刺激されちゃったの?」
「そうかもね」
「ふふ」

 カトリナが手を伸ばすと、大きな手にそっと包まれる。カトリナは少し震えていた。

「私は目が見えないわ。それでもいいの?」
「だからこそ君をこれからも支えたい」
「私の顔には毒の痕が残っているでしょう? きっと美しくないわ」
「今の君も眩しいほどに美しい。それはきっと、十年後も五十年後も変わらない」
「……あなたにはもっと素敵な女性がいるわ。私のことは気にしなくていいから――」
「カトリナ。僕は今まで数えきれないほどの女性と会ってきた。それでも君を忘れられなかったんだよ」
「……」

 カトリナは目尻を指で拭い、両腕を広げた。
 サンプソンが彼女を抱きしめると、子どもっぽい泣き声が聞こえた。

「ほ、本当に私でいいの……?」
「君がいいんだよ」
「ありがとう……」

 オーヴェルニュ家に到着したサンプソンは、早速侯爵と夫人に話をした。
 サンプソンの頬に侯爵の拳が飛んでくる。

「今さら何を言っているんだこの若造がぁぁぁっ! カトリナを一度捨てておいてぇぇぇぇっ!」
「何度っ! 殴られても……グボォッ……結婚を許してもらえるまで……ッ! 僕は帰りませんッ……!」

 散々殴られ顔面がボコボコになったサンプソンを、侯爵は泣きながら抱きしめた。

「サンプソン……ありがとう……ッ」

 サンプソンとカトリナの結婚式は、オーヴェルニュ家の庭でおこなわれた。
 もちろんS級冒険者や双子、シャナとユーリも参列した。

 誓いのキスは……ジルのお墓の前で。

「あはは。なんだか妙な光景だ」
「でも……私たちの結婚を一番待ち望んでいたのはジルなんだもの。見せてあげないと可哀想だわァ」
「ああ、そうだね」

 サンプソンはお墓の前で跪き、誓う。

「ジル。カトリナを一生幸せにすると約束する。もう二度と離さないから」
しおりを挟む
感想 494

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。