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エピローグ
終戦のあと:アーサーとモニカ
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国王となったアーサーは、毎日王城で大忙しだ。貴族からの挨拶を謁見の王座に座って応対するだけでも日が暮れる。しかしそれ以上に、国王(というよりヴィクス)がぐちゃぐちゃにした国を建て直すための国務でしっちゃかめっちゃかな日々を過ごしていた。
「ちょっとモニカァ! モニカも手伝ってよぉぉぉ~!」
「手伝ってるじゃないのぉ! ハンコをいっぱい押してるの! 私も忙しいのー!」
モニカは当然ずっとアーサーの傍にいた。といっても頭を使う仕事をしているとすぐ居眠りをするので、モニカには単純な仕事しか任せられない。それでもアーサーにとっては、モニカが傍にいるだけでも心が休まるので嬉しかった。
「んあぁぁん! この服動きにくいぃぃぃっ! いつもの服着たぁい!」
「ほんとにそれ……。ジャラジャラして重いよぉ……」
アーサーとモニカは、王族らしく飾り立てた衣装を身につけなければならなかった。モニカは毎日ドレスが着られて始めは喜んでいたが、一週間も経つとげっそりしながら丈の長いドレスを引きずっていた。
双子が執務室で虚ろな目で仕事をしていると、軽いノックのあとにドアが開いた。顔を出したのはサンプソンとカトリナだ。
「アーサー、モニカ。仕事は順調かい?」
「ふふ、遊びに来ちゃったわァ」
「「サンプソンとカトリナ~~!!」」
サンプソンとカトリナは、よくこうして王城を訪れてくれる。二人は仕事を手伝ってくれたり的確なアドバイスをくれるので、双子にとっての救世主だ。
続いて、ノックもせずに部屋に入ってきた人たちがいた。
「おーっす! お前ら、あたしが来たぞーーーー!!」
「おお~。今日も今日とて書類まみれだなあ」
「「リアーナ、カミーユぅぅぅう!」
二人の顔を見るなり、双子は仕事を放り投げて飛びついた。カミーユとリアーナもちょくちょく王城に遊びに来てくれる。しかし彼らは、たまに仕事を手伝ってくれるときもあるが、本当に〝遊びに来る〟だけのときがある。そういうときは双子が全く機能しなくなるので、その分次の日は地獄になる。
戦いのあと、カミーユとリアーナ、そしてマデリアは、アーサーの力を使ってギルド本部の長老たちを追い出した。なんでも、利益と権力ばかり気にする彼らのせいで、冒険者ギルドが上手く機能していなかったらしい。冒険者の死亡率が高いのも、S級冒険者の誓約が厳しすぎるのも、すべて長老たちの仕業なのだという。
そんな腐りかけた冒険者ギルドを建て直すため、カミーユとリアーナ、マデリアは本部のトップとなり、冒険者ギルドを動かす立場となった。
モニカは興味津々で尋ねた。
「カミーユ! 今は何を頑張ってるのー?」
「あー、冒険者を教育する場……訓練所だな。それを作るために動いてる。とりあえず各地区に一カ所ずつ設置して、暇そうなA級を雇う。G級は全員訓練所で一年の訓練を受けて、上級冒険者付きの合同クエストに連れて行って慣れさせていく感じだな」
「あとは武器と防具の支給だ! 貧しいやつらはちゃんとしたモン買えねえだろー? こうしてちょっとずつ生存率上げてく!」
「それとこまめなダンジョン掃討をしてもらうために、ダンジョン内に宝箱とか設置したらおもしれえかなーなんて考えてるんだ。見つけた宝箱に入ってるもんは、報酬と別にくれてやる。そしたら冒険者だってノリノリでダンジョン行くと思わねえか? どうだ、いい考えだろ?」
カミーユとリアーナの話を聞いてるだけで、アーサーとモニカは冒険に行きたくなってソワソワした。
「すっごく楽しそうー! 僕たちも行きたい!!」
「行きたい行きたい~! 宝箱開けたい!!」
「ダンジョンに潜らなくたって、お前ら用の宝箱持ってきてやったぜ」
カミーユはニッと笑ってアイテムボックスから箱を取り出した。そこからホカホカの甘い匂いが漂ってくる。
「あーっと? チャド……だったか? お前の友だち。あいつの町で焼き菓子買ってきてやった」
「きゃーーーー! カミーユ大好きぃ~!」
「おう。今積みあがってる仕事が終わったら食わせてやるよ」
「えぇぇーー! カミーユのケチィ!」
「なんとでも言えー。いらねえのなら俺らが食う」
「ま、まってぇ! アーサー! 早く終わらせよ!」
「うん! 本気出しちゃうよ~!!」
毎日てんてこまいの毎日。王城に缶詰。書類の山に囲まれた窮屈な毎日。
それでもアーサーとモニカは、こうして訪れてくれるS級冒険者と、ときたま届く兄弟からの手紙のおかげで楽しく過ごしていた。
「ちょっとモニカァ! モニカも手伝ってよぉぉぉ~!」
「手伝ってるじゃないのぉ! ハンコをいっぱい押してるの! 私も忙しいのー!」
モニカは当然ずっとアーサーの傍にいた。といっても頭を使う仕事をしているとすぐ居眠りをするので、モニカには単純な仕事しか任せられない。それでもアーサーにとっては、モニカが傍にいるだけでも心が休まるので嬉しかった。
「んあぁぁん! この服動きにくいぃぃぃっ! いつもの服着たぁい!」
「ほんとにそれ……。ジャラジャラして重いよぉ……」
アーサーとモニカは、王族らしく飾り立てた衣装を身につけなければならなかった。モニカは毎日ドレスが着られて始めは喜んでいたが、一週間も経つとげっそりしながら丈の長いドレスを引きずっていた。
双子が執務室で虚ろな目で仕事をしていると、軽いノックのあとにドアが開いた。顔を出したのはサンプソンとカトリナだ。
「アーサー、モニカ。仕事は順調かい?」
「ふふ、遊びに来ちゃったわァ」
「「サンプソンとカトリナ~~!!」」
サンプソンとカトリナは、よくこうして王城を訪れてくれる。二人は仕事を手伝ってくれたり的確なアドバイスをくれるので、双子にとっての救世主だ。
続いて、ノックもせずに部屋に入ってきた人たちがいた。
「おーっす! お前ら、あたしが来たぞーーーー!!」
「おお~。今日も今日とて書類まみれだなあ」
「「リアーナ、カミーユぅぅぅう!」
二人の顔を見るなり、双子は仕事を放り投げて飛びついた。カミーユとリアーナもちょくちょく王城に遊びに来てくれる。しかし彼らは、たまに仕事を手伝ってくれるときもあるが、本当に〝遊びに来る〟だけのときがある。そういうときは双子が全く機能しなくなるので、その分次の日は地獄になる。
戦いのあと、カミーユとリアーナ、そしてマデリアは、アーサーの力を使ってギルド本部の長老たちを追い出した。なんでも、利益と権力ばかり気にする彼らのせいで、冒険者ギルドが上手く機能していなかったらしい。冒険者の死亡率が高いのも、S級冒険者の誓約が厳しすぎるのも、すべて長老たちの仕業なのだという。
そんな腐りかけた冒険者ギルドを建て直すため、カミーユとリアーナ、マデリアは本部のトップとなり、冒険者ギルドを動かす立場となった。
モニカは興味津々で尋ねた。
「カミーユ! 今は何を頑張ってるのー?」
「あー、冒険者を教育する場……訓練所だな。それを作るために動いてる。とりあえず各地区に一カ所ずつ設置して、暇そうなA級を雇う。G級は全員訓練所で一年の訓練を受けて、上級冒険者付きの合同クエストに連れて行って慣れさせていく感じだな」
「あとは武器と防具の支給だ! 貧しいやつらはちゃんとしたモン買えねえだろー? こうしてちょっとずつ生存率上げてく!」
「それとこまめなダンジョン掃討をしてもらうために、ダンジョン内に宝箱とか設置したらおもしれえかなーなんて考えてるんだ。見つけた宝箱に入ってるもんは、報酬と別にくれてやる。そしたら冒険者だってノリノリでダンジョン行くと思わねえか? どうだ、いい考えだろ?」
カミーユとリアーナの話を聞いてるだけで、アーサーとモニカは冒険に行きたくなってソワソワした。
「すっごく楽しそうー! 僕たちも行きたい!!」
「行きたい行きたい~! 宝箱開けたい!!」
「ダンジョンに潜らなくたって、お前ら用の宝箱持ってきてやったぜ」
カミーユはニッと笑ってアイテムボックスから箱を取り出した。そこからホカホカの甘い匂いが漂ってくる。
「あーっと? チャド……だったか? お前の友だち。あいつの町で焼き菓子買ってきてやった」
「きゃーーーー! カミーユ大好きぃ~!」
「おう。今積みあがってる仕事が終わったら食わせてやるよ」
「えぇぇーー! カミーユのケチィ!」
「なんとでも言えー。いらねえのなら俺らが食う」
「ま、まってぇ! アーサー! 早く終わらせよ!」
「うん! 本気出しちゃうよ~!!」
毎日てんてこまいの毎日。王城に缶詰。書類の山に囲まれた窮屈な毎日。
それでもアーサーとモニカは、こうして訪れてくれるS級冒険者と、ときたま届く兄弟からの手紙のおかげで楽しく過ごしていた。
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