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1章
第8話 はじめての合奏
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翌日、一年生にコンクール曲――課題曲と自由曲の二曲――の楽譜が配られた。段原先輩は楽譜を一年生に配りながら担当楽器を告げた。
一年生の中で一番上手な優紀は、スネアやグロッケン(鉄琴のひとつ)など、目立つ楽器も割り当てられていた。
しかし海茅は、バスドラム(大太鼓)やクラッシュシンバルなど、パッとしないものばかりだったので思わずため息が出た。
海茅たちは早速練習に取りかかる。楽譜をもらったばかりと言うのに、パート練習をしたあとに合奏練習があるそうだ。優紀や他の目立つ楽器を担当することになった一年生は、ひぃひぃ言いながら必死に練習していた。
海茅はサラッとバスドラムの楽譜をさらってからクラッシュシンバルの練習をした。始めは情けない空気の音しかしなかったが、一時間ほど練習するとちゃんと音が鳴るようになった。
これで大丈夫だ、と海茅はホッとしたが、それから何を練習すれば良いのか分からず手持無沙汰になってしまった。彼女は何度か担当楽器の練習をして、合奏まで時間を潰した。
合奏十分前、外で練習していた管楽器の部員が音楽室に戻って来た。
海茅が立っている近くの席に、フルート教室に通っている部員、如月明日香が腰かけた。
練習し始めた明日香のフルートの音色に、海茅は拳を握る。
悔しいけど、すごく上手い。
(私ももっとフルートの練習をしていれば、そこに座れてたのかもしれないのに……)
時間ちょうどに顧問が音楽室に入ってきた。
顧問は何も言わずに指揮棒を持ち、振る。
強面の顔からは想像できないたおやかな指揮に、海茅の目は釘付けになった。
顧問が指揮棒を振ると、糸で引かれるように、楽器から音色が流れ出る。
しかし――
(指揮が滑らかすぎて拍が取りにくい……! 今どこぉ!?)
指揮者の元で演奏することが初めてだった海茅にとっては、顧問の指揮が分かりづらく、早々に譜面を見失っていた。
他の一年部員にもそういった人たちがいたが、先輩たちが顧問と意思疎通できているおかげで、一応曲にはなっていた。
どこを演奏しているのか分からなくなった海茅が困っていると、段原先輩が小声で教えてくれた。
「いまここね。海茅ちゃんはもうすぐクラッシュシンバル。頑張って」
「あ、ありがとうございます!」
海茅は急いでクラッシュシンバルのところまで行き、スタンドからシンバルを持ち上げた。
(いち、に、さん、よん、……今!)
勢いよく叩かれたクラッシュシンバルは、パフッと空気の音だけ鳴らして静かになった。
大失敗だ。
海茅がおそるおそる窺い見ると、顧問は肩をすくめただけですぐに他の楽器の方を向いた。
そんな顧問が明日香のフルートのソロを聴き、「まあいいんじゃないか?」というような満足げな表情をしていたので、余計に海茅は落ち込んだ。
合奏が終わったあと、顧問は合奏の振り返しをした。パートごとにアドバイスをしていた彼が、ふと海茅の方を向く。
「もっと練習しなさい。良い音を奏でられるように」
「……はい」
返事をしたものの、海茅は「シンバルなんかに良い音もクソもあるか」と内心毒づいた。
一年生の中で一番上手な優紀は、スネアやグロッケン(鉄琴のひとつ)など、目立つ楽器も割り当てられていた。
しかし海茅は、バスドラム(大太鼓)やクラッシュシンバルなど、パッとしないものばかりだったので思わずため息が出た。
海茅たちは早速練習に取りかかる。楽譜をもらったばかりと言うのに、パート練習をしたあとに合奏練習があるそうだ。優紀や他の目立つ楽器を担当することになった一年生は、ひぃひぃ言いながら必死に練習していた。
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合奏十分前、外で練習していた管楽器の部員が音楽室に戻って来た。
海茅が立っている近くの席に、フルート教室に通っている部員、如月明日香が腰かけた。
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悔しいけど、すごく上手い。
(私ももっとフルートの練習をしていれば、そこに座れてたのかもしれないのに……)
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顧問が指揮棒を振ると、糸で引かれるように、楽器から音色が流れ出る。
しかし――
(指揮が滑らかすぎて拍が取りにくい……! 今どこぉ!?)
指揮者の元で演奏することが初めてだった海茅にとっては、顧問の指揮が分かりづらく、早々に譜面を見失っていた。
他の一年部員にもそういった人たちがいたが、先輩たちが顧問と意思疎通できているおかげで、一応曲にはなっていた。
どこを演奏しているのか分からなくなった海茅が困っていると、段原先輩が小声で教えてくれた。
「いまここね。海茅ちゃんはもうすぐクラッシュシンバル。頑張って」
「あ、ありがとうございます!」
海茅は急いでクラッシュシンバルのところまで行き、スタンドからシンバルを持ち上げた。
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合奏が終わったあと、顧問は合奏の振り返しをした。パートごとにアドバイスをしていた彼が、ふと海茅の方を向く。
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