インターネットで異世界無双!?

kryuaga

文字の大きさ
45 / 92

#44

しおりを挟む
 食事を終えて一息ついた所で、トラバントが自身の抱えた事情について語り始めた。



 クーデターへと至ったその理由を。



「ここ数年かな? 枢機卿たちの権力が大きくなり、僕ら王族との間に微妙な溝が出来ていたのは確かなんだ。とはいえ、その事は父上も気付いていたし、対処にも動いていたから、大事にはなっていなかったんだ。それが……」



 ここ1ヶ月程の間に、突然前触れなく状況が大きく変化したらしい。

 枢機卿たちが、王族に対し次々と無理難題を投げかけてきたのだ。

 本来ならば、不敬罪として厳しく処断すべきだったのだろう。

 だが、国が割れる事を恐れた国王は、なあなあな対応に終始してしまう。

 そうして振り回されているうちに、裏で彼らの思惑は動いており、先日、遂にクーデターが発生し、王族が捕えられる事態になったそうだ。



「僕は枢機卿たちの態度の急変を、初めから怪しんでいたからね。勿論、その事は父上にも進言したんだけど、聞き入れて貰えなくてね……」



「だとしても、良く一人でここまで逃げてこれたもんだな」



 エイミーの話を聞く限り、王都の警戒網はかなりの厳重なようだ。

 王族のおぼっちゃまが、良く一人で抜けれたモノだと感心する。



「教国の第2皇子といえば、優れた魔法剣士として有名だものね。同時に数少ない治癒魔法の使い手としても……」



 エイミーが補足するような形で、そう説明してくれる。

 言われてみれば、トラバントの服はボロボロだったが、肉体には傷一つ無かった。

 今になって思い返せば、魔法で傷を癒したのだと分かる。



 治癒魔法は、確かに難易度の高い魔法だ。

 魔力制御が困難になっている今の俺にもほとんど扱えない。

 とはいえ、そこまで使い手が少ないほどに難しい魔法かと言われると少々疑問が残るが。



「僕一人が多少強くても、数の力の前には無力という訳だよ。こうして生き恥を晒してここまで逃げて来たのはいいけど、これからどうするか……」



「枢機卿たちの動きがどうも怪しいわね。いくら彼らが権力を持っていても、最高権力者である国王を出し抜いて、そんな大掛かりな事やれるものかしら? 何か裏がある気がするわね」



「……裏って、まさか、ルーシェリア帝国か?」



「ええ、いくら何でもタイミングが良すぎるもの。ハッキリとした根拠は無いけど、多分間違いないと思うわ。私が調査で得た帝国の情報とも合致するしね」



「……どうしてここでルーシェリア帝国の名前が出てくるんだい?」



 俺とエイミーは何となく分かりあっていたが、事情を知らないトラバントは話についてこれなかったようだ。



「魔王国としても、今、教国に無くなられるのは困るわ。コウヤ、まずは彼の事を助けましょうか」



「はぁ……。やっぱりそうなるのか」



 話がだんだん大きくかつ、面倒になって来ているように感じる。



 これもう、勇者連中を俺が暗殺した方が手っ取り早いんじゃないか?

 人殺しはあまり気乗りしないが、それで平穏な日々が戻るなら、まあそれもいいかなという気分になりつつある。

 

 ……いやいや、流石にそれは投げやり過ぎだ。こういうところは俺の悪い癖だな。



「……話がイマイチ見えてこないね。悪いが僕にも分かるように説明してくれないかな?」



「そうね、あなたにも無関係な話じゃないしね」



 それからエイミーは、少し前に俺と話しあった件について、トラバントへと説明をする。

 俺が女神ステラシオンに派遣された勇者だという事も含めて、情報共有を行った。



「なるほどね。エイミー嬢はヴァンパイアなのか。……ヴァンパイアとは皆、かくも美しい姿をしているものなのかい?」



 いや、知らないよ。俺もヴァンパイアを見たのは、エイミーが初めてだし。

 てか重要なのは、そこじゃないだろ?



「私の考えとしては、教国をトラバント皇子に纏めてもらって帝国に対抗して、その隙にコウヤに勇者を倒して貰おうと思うのだけれど」



「なぁ、魔王国は動いてくれないのか? 一応、帝国とも国境を接しているんだろう?」



 魔王国ビフレストは、その北西の一部の領土でルーシェリア帝国と接している。

 もっとも山脈で区切られている為、直接戦力を送り込むのは難しいのかもしれないが、それでもやれることはいくらでもあるだろう。



「そうしたいのは山々なんだけどね。あの国の戦力は、訳あって迂闊に動かせないのよ。……せめて先代様がいてくれたら違ったんだけどね」



「ルーシェリア帝国をほっといたら、大陸全体が不味いんだろ? それよりもヤバい事があるのか?」



「……ええ、そうなのよ。だから、余程のマズイ状況にならない限り、なるべく教国の戦力だけで対処して欲しいのよ」



 その理由を聞きたかったのだが、それを尋ねる前に話が次へと移ってしまう。



「教国を纏めると言っても、今現在、確実に味方と言える貴族は数少ない。何か宛てはあるのかな、エイミー嬢?」



「ええ、この街の領主ならきっとあなたの力になってくれるわ」



「そう言い切る根拠はなんだ?」



 クーデターが起こり王族が捕えられた今、各地の領主が王族と枢機卿たち、そのどちらに付くかの判断は非常に難しい所だ。

 下手な相手に頼れば、そのまま枢機卿たちへと身柄を売られかねない。



「この街の領主であるアルストロメリア家は、先代魔王様の子孫に当たる一族で、今も魔王国と深いパイプを持っているわ。そんな彼らがルーシェリア帝国の浸透を受けている可能性はかなり低いと見ていいわ。私自身も一応現領主とは面識があるし……」



「それは初耳な話だね。しかし、だとすると王族とアルストロメリア家は縁戚関係にある訳か……」



「そういう事になるわね」



 どうやら教国の王族もまた、魔王国の先代魔王の血を引いているらしい。

 もっともその事実は、王家の秘匿事項の一つらしいが。

 既に知っていたらしいエイミーはともかく、俺に聞かせていいのかそんな話?



「……他の貴族達を頼るよりは、まだ安心出来そうだね。では、早速この街の領主の元へと出向くとしようか」



「待って。ここの領主そのものは信用できるとは思っているけれど、その周りまでが全部そうとは限らないわ。接触には慎重を期した方がいいと思うのよ」



「なるほど。エイミー嬢の仰る事ももっともだね。だが、ならばどうしようか?」



 2人が思案顔となる。



「……それなら、俺の知り合いの商人に相談してみるか? アイツなら色々と物知りだし、顔も広いから何かいい案があるかもしれない」



 俺の脳裏にアルの顔が浮かぶ。

 アイツならまず間違いなく領主とのコネも持っているはずだと俺は確信している。



「その商人は本当に信用出来るの?」



「ああ。利益に聡い奴だし、俺が皇子様に付くと知れば、まず味方してくれると思う」



 実の所、この一件について俺は、面倒だなとは思っていても危機感は特に感じていなかった。

 ルーシェリア帝国の3人の勇者とやらが、どんな能力を貰っていようとも、正直、俺と同じ世界からの召喚者相手に負ける気など微塵も無かった。

 俺は馬鹿で、考えなしの人間かもしれないが、こと戦闘に関しては絶対に近い自信がある。

 元々の実力に加え、女神様からギフトを大量に分捕った事で、もはや俺に対抗できる存在など、一人を除いて思い浮かばない。



 そして、そんな俺の戦闘能力の高さについては、アルも大体把握しているはずだ。

 少なくとも冒険者ギルドで聞いた限りの話については、全部知っていると見るべきだろう。

 それに、アルとの付き合いももう短くは無い。なので、戦闘以外の俺の能力についても、色々と知って来ているはずだ。

 

 そんな事情とアルの性格を鑑みれば、まず彼が俺と敵対するような道を、選ぶ事はないと判断出来る。

 

「……コウヤは僕の味方に付いてくれるのかい?」



 若干不思議そうに、トラバントが首を傾げてそう尋ねてくる。



「あー、まあな。そっちのが収まりが良さそうだしな」



 聞いた話を総合すれば、トラバントに教国を纏めさせて、帝国に対抗させるのが、一番面倒が少ないように思える。

 それに、見た感じそう悪い奴でも無さそうだし、拾ったのも何かの縁だろう。

 ……それにここで手を貸さなくても、どうせ近い将来に巻き込まれるのは、目に見えている。

 だったら、積極的に動いて、さっさと事態を収拾すべきだと俺は判断した。



「そうか。君程の実力者が味方になってくれるなら、心強いよ」



 トラバントの前では、まだ実力は見せていない筈だが、優秀な魔導師だと言ってたし、多分魔力量から察しているんだろうな。



「じゃあ早速、その商人に話をつけてくるから、その間は2人はここでゆっくりしておいてくれ」



「ああ、分かった。コウヤ、頼んだよ」



 そう言って俺が建物の外へ出ると、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。



「コウヤ様! こ、この子が敷地に倒れて……」



 またか……。本日3度目の出来事に、いい加減呪われているんじゃないかと、溜息一つ吐いてから俺はフィナの元へと向かった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...