聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花

文字の大きさ
10 / 16

まさかの⑩

しおりを挟む
「できそうにない? どうしてですか?! メリリース様がこんな扱いをされるなんて、許せません!」

 まさかの返答に、私はメリリース様の顔をまじまじと見る。メリリース様は困ったように目を伏せた。

「……ところで、仕事のあてはあるのかしら?」

 メリリース様が変えた話題に、私は苦笑するしかない。メリリース様でも、こんな弱気なことってあるのね。

「知識だけはあるので……薬師になろうかと思っているんですが……この国では、勝手に薬師をしてもいいものでしょうか?」

 私が身に着けてきた知識を役立てようと思うと、それが一番実用的で、生活していけるような気がしている。
 ただ、前世の日本では、資格がないと薬剤師の仕事はできなかったけど、この国がどんなシステムなのかはまだ、わからないから。

「薬師……それは、国の試験を受けなければならないのよ。しかも、指定された学校に通う必要があるし、貴族の推薦が必要なの」
「指定された学校?! ……それに、貴族の推薦……ですか……」

 そっちの学校に行くためには、ノーフォーク家に連絡入れないといけない、よね?
 貴族の推薦は……、ハワード先生に頼めば何とかなるかもしれないけど……ハワード先生はどこに今いるんだろう? ノーフォーク家の人たちが、違う学校に行くことを許可してくれる気は全然しないし、他に貴族の宛はないし……。

「難しそうかしら?」

 メリリース様の言葉に、私は頷く。少なくとも、オールコック王国は学校にわざわざ行く必要はなくて、許可さえ得られれば薬師としての仕事ができたんだけど……。

「そう……ですね。別の学校に入ることに、許しを得られないと思いますし……」
「他に、仕事になりそうな特技とかは、ないかしら?」
「……色々と身には着けましたが……薬草の知識は豊富ですし、薬師が一番生活が安定しそうかと思って……」

 特技……。
 ……そういえば、忘れてたけど、今年の終わりくらいには、聖女認定されるイベントが起こるはずなんだよね……。
 聖女って、特技?
 いや、でも聖女になれば、この国の貴族の後ろ盾がついて、そういう学校にも行けるかも?

「あの、メリリース様、この国では、聖女の伝説などはありますか?」
 
 オールコック王国では、聖女の伝説があって、だからこそ、私は皇太子の婚約者になれたようなものだ。
 ディル王国で、そんな伝説がなければ、聖女認定されるイベントがあっても、騒ぎにしかならない可能性もあるし……。
 色々本は漁ってみてたけど、そこは調べきれなかったな……。
 
 メリリース様が不思議そうに首をかしげる。

「聖女の伝説? ある、けれど? ……それが、今の話とどうつながるのかしら?」

 よし!
 それなら行けるかも!

「ちなみに、どんな伝説なんですか?」

 その内容によって、メリリース様への説明も変わってくるかもしれないし!

「あまりいい話ではないのよ」

 メリリース様の声は、戸惑った声だった。
 あれ?

「いい話、ではない?」
「ええ。神託を受けた聖女が、愚かな人間たちを見限り、この世界を終わらせたって伝説なの。そんな内容だから、記録には残さないようにされているんだけど、口伝えでは伝わっているのよ?」

 ……ある意味、正確な伝説!
 多分じゃなくて、その伝説間違いないと思う!
 ……いや、これって、まずい?
 ディル王国に留学してきたの、間違ってた?!
 それこそ、ざまぁに一直線?
 ……それこそ、神様の思うつぼ?

「あの……もし聖女が出現したとしたら、この国では、忌み嫌われてしまったりします?」

 私がおずおずと尋ねると、メリリース様がハッとした表情になる。

「もしかして……キャサリン様は、聖女、なの?」
 
 正解です!
 ……なんて、今の話聞いて、言えるわけないし!

「え、いや……違います……」

 私はメリリース様から目をそらす。

「キャサリン様、私の目を見て下さる?」
 
 がしり、と力強くメリリース様から肩をつかまれて、私はおずおずとメリリース様に視線を向けた。

「……違います」

 今は、まだ。
 嘘は、ついてない。

「キャサリン様、私って、信頼できないかしら?」
 
 ぐっ。
 メリリース様、それは、ずるいです……。

「……いえ、信頼してます……」
「それなら、話してくださらない?」

 ……メリリース様に嫌われるとか、嫌だな……。
 私はうつむく。

「さっき、キャサリン様は言ってくださったでしょう? 私がどんな人間でもいつも一緒にいてくれると。私も、その言葉をお返しするわ。キャサリン様が、どんな人でも、私はあなたのそばにいるわ。たとえ、聖女だったとしても」

 涙があふれる。
 前世から生きてきた中で、一番うれしい言葉だ。
 見上げたメリリース様の瞳は、真剣だった。
 ……言おう。
 
「……私は、あと1年もすれば、聖女としての神託を受けるのです。ですから、まだ聖女ではなくて……メリリース様に嘘はついていないんです」
「あと、1年? どうして、そんな未来のことがわかるのです?」

 メリリース様の表情が戸惑う。
 ……そうだよね。聖女なんだ、じゃなくて、聖女になるんだ、って告白されるとか、思わないよね。

「私の話を、聞いてくださいますか?」

 全部、メリリース様に聞いてもらおう。
 ……信じてくれるだろうか?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

そんな世界なら滅んでしまえ

キマイラ
恋愛
魔王を倒す勇者パーティーの聖女に選ばれた私は前世の記憶を取り戻した。貞操観念の厳しいこの世界でパーティーの全員と交合せよだなんてありえないことを言われてしまったが絶対お断りである。私が役目をほうきしたくらいで滅ぶ世界なら滅んでしまえばよいのでは? そんなわけで私は魔王に庇護を求めるべく魔界へと旅立った。

運命の番より真実の愛が欲しい

サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。 ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。 しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。 運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。 それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。

噂の聖女と国王陛下 ―婚約破棄を願った令嬢は、溺愛される

柴田はつみ
恋愛
幼い頃から共に育った国王アランは、私にとって憧れであり、唯一の婚約者だった。 だが、最近になって「陛下は聖女殿と親しいらしい」という噂が宮廷中に広まる。 聖女は誰もが認める美しい女性で、陛下の隣に立つ姿は絵のようにお似合い――私など必要ないのではないか。 胸を締め付ける不安に耐えかねた私は、ついにアランへ婚約破棄を申し出る。 「……私では、陛下の隣に立つ資格がありません」 けれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。 「お前は俺の妻になる。誰が何と言おうと、それは変わらない」 噂の裏に隠された真実、幼馴染が密かに抱き続けていた深い愛情―― 一度手放そうとした運命の絆は、より強く絡み合い、私を逃がさなくなる。

醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした

きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。 顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。 しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

最低の屑になる予定だったけど隣国王子と好き放題するわ

福留しゅん
恋愛
傲慢で横暴で尊大な絶世の美女だった公爵令嬢ギゼラは聖女に婚約者の皇太子を奪われて嫉妬に駆られ、悪意の罰として火刑という最後を遂げましたとさ、ざまぁ! めでたしめでたし。 ……なんて地獄の未来から舞い戻ったギゼラことあたしは、隣国に逃げることにした。役目とか知るかバーカ。好き放題させてもらうわ。なんなら意気投合した隣国王子と一緒にな! ※小説家になろう様にも投稿してます。

婚約破棄は了承済みですので、慰謝料だけ置いていってください

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢アナスタシア・オルステッドは、第三王子アレンの婚約者だった。 しかし、アレンは没落貴族の令嬢カリーナと密かに関係を持っていたことが発覚し、彼女を愛していると宣言。アナスタシアとの婚約破棄を告げるが── 「わかりました。でも、それには及びません。すでに婚約は破棄されております」 なんとアナスタシアは、事前に国王へ婚約破棄を申し出ており、すでに了承されていたのだ。 さらに、慰謝料もしっかりと請求済み。 「どうぞご自由に、カリーナ様とご婚約なさってください。でも、慰謝料のお支払いはお忘れなく」 驚愕するアレンを後にし、悠々と去るアナスタシア。 ところが数カ月後、生活に困窮したアレンが、再び彼女のもとへ婚約のやり直しを申し出る。 「呆れたお方ですね。そんな都合のいい話、お受けするわけがないでしょう?」 かつての婚約者の末路に興味もなく、アナスタシアは公爵家の跡取りとして堂々と日々を過ごす。 しかし、王国には彼女を取り巻く新たな陰謀の影が忍び寄っていた。 暗躍する謎の勢力、消える手紙、そして不審な襲撃──。 そんな中、王国軍の若きエリート将校ガブリエルと出会い、アナスタシアは自らの運命に立ち向かう決意を固める。 「私はもう、誰かに振り回されるつもりはありません。この王国の未来も、私自身の未来も、私の手で切り拓きます」 婚約破棄を経て、さらに強く、賢くなった公爵令嬢の痛快ざまぁストーリー! 自らの誇りを貫き、王国を揺るがす陰謀を暴く彼女の華麗なる活躍をお楽しみください。

処理中です...