12 / 46
第二章
2.ドーナツに釣られた私
しおりを挟む
塾が終わると、出入の履歴が残るカードを押して、スリッパを下駄箱に入れた。
ビルの二階にある塾なので、階段を下りて出口に向かう。ガラスの押戸を押して外に出ると、
「よう。待ってたぞ」
「・・・何で?」
思わず眉をしかめてしまった。
そこには、バスを降りて分かれた筈の百家くんと、もう一人、尾根山くんがいた。
「わーホントに淡泊な反応、端宝って面白いなあ。百家を相手にこんな態度を取れる女子がいるんだね」
と、尾根山くん。尾根山くんは学級委員長をしている。もちろん個人的には何の付き合いも無い。
その尾根山くんの目の下にはなんかクマがある。ちょっと顔が疲れた感じ。
「ハア?」
なんでこの二人がいるのか分からない。
「ごめん。ちょっと用事があったんだ」
今度は百家くんがそう言った。
立ち止まっていると、後ろからドアを開けられた。次々帰る生徒が降りて来るはずだ。邪魔になるので出口からどいて、スーパーを指差した。
「暑いし、スーパーの中に入ろうよ」
一体なんなんだ、私は早く帰って、夕方のアニメが見たかったのに・・・。
「そうだな。フードコートに行こうか。ミス・ドーナツ驕るよ」
その言葉に、不機嫌だった私は、急に元気になった。
「ホント?じゃフレンチクルーラーがいい!」
「ぷっ。分かった」
頭使ったら、甘い物が食べたくなったんだ。フレンチクルーラーは買った時に食べないと砂糖のコーティングが時間が経つと溶けてしまい、がっかりするのだ。ハニーチュロスも同じだ。食べるなら、今はアレを食べたい。
フードコートの丸いテーブルには椅子が四席ある。空いている所に座ると、百家くんと、尾根山くんが二人でドーナツを買いに行ってくれた。
オレンジジュースの代金を渡すと、それも払うと言われたが、どっちにしても塾が終わったら飲み物を飲んで帰るつもりだったから自分で出すと言って渡した。
あ、でも前に百家くんの白狐にコロッケ食べられたんだった。なんてセコイ事を思い出す。
あの狐、コロッケ美味しかったのかなあなんて、思った。
ドーナツを買う為に並んでいる百家くんを女の子だけじゃなく、彼の容姿の良さに気付いたその辺りの人が見ている。そうそう、観賞用にぴったりだよね。目の保養って奴。
こそこそ、カッコイイとか芸能人みたいとか言ってるのが聞こえる。ハイハイそうだよね。
こういう目立つ人と、なるべくならご一緒したくないっつーの。人が多い所では尚更だ。
けど、目立つのは百家くんのせいではないのだ。そこは分かっている。
二人がドーナツを買って来てくれたので、ご相伴にあずかる。
「うーん、おいっしい」
砂糖でコーティングされた外側がサックリと、中はちょっと残念にも結構空洞があるんだけど、ふんわりともっちりが共存した生地が何とも言えず旨い。うん、これが食べたかったんだよお。
ちなみに、尾根山くんはエンゼルクリームで、百家くんはオールドファッションだった。
実はわたしもオールドファッションが好きだったりする。あの素朴なほっくり感がいいんだよね。中も詰まってるし・・・。
もう一個たべちゃおうかなとか思ってると、百家くんが声を潜めて話を始めたので、オレンジジュースをゴキュゴキュと吸い上げる。
飲み物だけど、男子二人はメロンソーダにしていた。
「尾根山の家の話をさせてくれ。最近、尾根山の家族は中古の家を買ってマンションから引っ越したんだよ」
「・・・ふーん」
だから何とは言わずに、一応だまって聞いておく。
「そしたらさ、夜中にカリカリ音がするらしいんだ。その相談だ」
「その相談だ、じゃないよ。だいたいそれ、ネズミとかじゃなくて?」
「違うよ、そんなんじゃないんだ」
今度は尾根山くんが参加してきた。
「あのさ、一応言っておくけど、私には視えてもなんも出来ないよ」
嫌な感じの話の流れなので、けん制しておく。多分そういう話なのだろう。
「うん、ごめん。本当に困っててさ、思わず百家くんの家が神社だって聞いていたから相談したんだよ、そしたら、君にも聞いてもらえって言われたんだ」
「そうなんだ」
ジロリと百家くんの顔を見ると、ニッコリされた。なるほど、己の顔面の使い方をよく心得ているらしい。
だが、無駄だ。私には効かない。知らんふりしてやった。
「専門的には君の方だろ」
「ハア?」
「いや、だから怒んなって、もう一つフレンチクルーラー食べる?それともオールドファッション?」
「・・・オールドファッション」
「あ、じゃあ僕が買って来るよ、先に話してて」
そう言って、尾根山くんはミス・ドーナツに走って行った。
く、うかつにも、オールドファッションという言葉に反応してしまった。
「春休み頃にさ、中古物件を売り出していたのを見に行った尾根山の両親がその家を気に入って買ったんだよ。川向うのH町。川のすぐ近くなんだそうだ。それで、壁紙とか張り替えたり、外装を塗り替えたりしてさ、夏休み前にマンションからその家に移ったらしい。その家では彼の両親は一階で寝ていて、尾根山は一人っ子で、二階に一人で寝てる。すると引っ越したその日から夜中に必ず窓の外からカリカリ音がするらしい。最初は野生動物か何かが音をさせてるのかなとも思ったそうだが、必ず夜一時になるとカリカリ音がし始める。カーテンを開けて見ても何も居ない。それで両親に言っても取り合ってくれなかったそうだ。実際、父親に一緒に部屋で寝てもらった日には、音はしなかったそうだけど、一人で眠ると決まって夜にカリカリ音がするらしい」
「それって、本当に野生動物じゃないの?」
そうなのだ、けっこう鴉が屋根を歩いたりする音が響いたり、屋根裏に入り込んだ野生動物が大きな音をさせる事は田舎ではよくある。
「違うんだ。その後も続いて、気味が悪いから夜中も電気をつけっぱなしで寝ていたそうなんだ。すると暫くはカリカリ音がしなくなったんだけど、夜中にトイレに行った時に出たんだそうだ」
「何が?」
「だから、幽霊だよ。トイレから出たら前に立っていて、腰抜かして叫び声をあげたら親が起きて来たそうだ。その時には幽霊は消えていたんだけど、廊下に水溜まりがあったって」
「ふーん。それだけじゃわからないよ」
「だろう?尾根山の親も寝ぼけていたんだとか、漏らしたんだとか言ったらしくてさ。俺はちょっと専門外だから、端宝に手伝ってもらおうと思ったんだ」
「あのさ、私、べつにそういうの専門にしてませんから」
なんだソレ。むっとしてそう言った。すると丁度、尾根山くんが戻って来た。
「お待たせ、ちょっと混んでて遅くなっちゃった。話、聞いてくれた?」
トレイに載せられたオールドファッションを前に置かれ、しぶしぶ頷く。
すると、いい笑顔で百家くんが言った。
「今日はもう夕方だから、明日、端宝の用事がなかったら、尾根山んちに一緒に行こう」
「ごめんね、忙しいのにこんな事頼んで。でも僕も怖くてさ。今度から一階で親と一緒に寝る事にしたよ。来てもらうバス代とかは僕の小遣いから出すから頼むよ。お願いします」
まあ、ここまで言われて、その上、ドーナツまで食べてしまっては行かないわけにもいくまい。
そんな感じで、私の夏休みが始まったのだ。
ビルの二階にある塾なので、階段を下りて出口に向かう。ガラスの押戸を押して外に出ると、
「よう。待ってたぞ」
「・・・何で?」
思わず眉をしかめてしまった。
そこには、バスを降りて分かれた筈の百家くんと、もう一人、尾根山くんがいた。
「わーホントに淡泊な反応、端宝って面白いなあ。百家を相手にこんな態度を取れる女子がいるんだね」
と、尾根山くん。尾根山くんは学級委員長をしている。もちろん個人的には何の付き合いも無い。
その尾根山くんの目の下にはなんかクマがある。ちょっと顔が疲れた感じ。
「ハア?」
なんでこの二人がいるのか分からない。
「ごめん。ちょっと用事があったんだ」
今度は百家くんがそう言った。
立ち止まっていると、後ろからドアを開けられた。次々帰る生徒が降りて来るはずだ。邪魔になるので出口からどいて、スーパーを指差した。
「暑いし、スーパーの中に入ろうよ」
一体なんなんだ、私は早く帰って、夕方のアニメが見たかったのに・・・。
「そうだな。フードコートに行こうか。ミス・ドーナツ驕るよ」
その言葉に、不機嫌だった私は、急に元気になった。
「ホント?じゃフレンチクルーラーがいい!」
「ぷっ。分かった」
頭使ったら、甘い物が食べたくなったんだ。フレンチクルーラーは買った時に食べないと砂糖のコーティングが時間が経つと溶けてしまい、がっかりするのだ。ハニーチュロスも同じだ。食べるなら、今はアレを食べたい。
フードコートの丸いテーブルには椅子が四席ある。空いている所に座ると、百家くんと、尾根山くんが二人でドーナツを買いに行ってくれた。
オレンジジュースの代金を渡すと、それも払うと言われたが、どっちにしても塾が終わったら飲み物を飲んで帰るつもりだったから自分で出すと言って渡した。
あ、でも前に百家くんの白狐にコロッケ食べられたんだった。なんてセコイ事を思い出す。
あの狐、コロッケ美味しかったのかなあなんて、思った。
ドーナツを買う為に並んでいる百家くんを女の子だけじゃなく、彼の容姿の良さに気付いたその辺りの人が見ている。そうそう、観賞用にぴったりだよね。目の保養って奴。
こそこそ、カッコイイとか芸能人みたいとか言ってるのが聞こえる。ハイハイそうだよね。
こういう目立つ人と、なるべくならご一緒したくないっつーの。人が多い所では尚更だ。
けど、目立つのは百家くんのせいではないのだ。そこは分かっている。
二人がドーナツを買って来てくれたので、ご相伴にあずかる。
「うーん、おいっしい」
砂糖でコーティングされた外側がサックリと、中はちょっと残念にも結構空洞があるんだけど、ふんわりともっちりが共存した生地が何とも言えず旨い。うん、これが食べたかったんだよお。
ちなみに、尾根山くんはエンゼルクリームで、百家くんはオールドファッションだった。
実はわたしもオールドファッションが好きだったりする。あの素朴なほっくり感がいいんだよね。中も詰まってるし・・・。
もう一個たべちゃおうかなとか思ってると、百家くんが声を潜めて話を始めたので、オレンジジュースをゴキュゴキュと吸い上げる。
飲み物だけど、男子二人はメロンソーダにしていた。
「尾根山の家の話をさせてくれ。最近、尾根山の家族は中古の家を買ってマンションから引っ越したんだよ」
「・・・ふーん」
だから何とは言わずに、一応だまって聞いておく。
「そしたらさ、夜中にカリカリ音がするらしいんだ。その相談だ」
「その相談だ、じゃないよ。だいたいそれ、ネズミとかじゃなくて?」
「違うよ、そんなんじゃないんだ」
今度は尾根山くんが参加してきた。
「あのさ、一応言っておくけど、私には視えてもなんも出来ないよ」
嫌な感じの話の流れなので、けん制しておく。多分そういう話なのだろう。
「うん、ごめん。本当に困っててさ、思わず百家くんの家が神社だって聞いていたから相談したんだよ、そしたら、君にも聞いてもらえって言われたんだ」
「そうなんだ」
ジロリと百家くんの顔を見ると、ニッコリされた。なるほど、己の顔面の使い方をよく心得ているらしい。
だが、無駄だ。私には効かない。知らんふりしてやった。
「専門的には君の方だろ」
「ハア?」
「いや、だから怒んなって、もう一つフレンチクルーラー食べる?それともオールドファッション?」
「・・・オールドファッション」
「あ、じゃあ僕が買って来るよ、先に話してて」
そう言って、尾根山くんはミス・ドーナツに走って行った。
く、うかつにも、オールドファッションという言葉に反応してしまった。
「春休み頃にさ、中古物件を売り出していたのを見に行った尾根山の両親がその家を気に入って買ったんだよ。川向うのH町。川のすぐ近くなんだそうだ。それで、壁紙とか張り替えたり、外装を塗り替えたりしてさ、夏休み前にマンションからその家に移ったらしい。その家では彼の両親は一階で寝ていて、尾根山は一人っ子で、二階に一人で寝てる。すると引っ越したその日から夜中に必ず窓の外からカリカリ音がするらしい。最初は野生動物か何かが音をさせてるのかなとも思ったそうだが、必ず夜一時になるとカリカリ音がし始める。カーテンを開けて見ても何も居ない。それで両親に言っても取り合ってくれなかったそうだ。実際、父親に一緒に部屋で寝てもらった日には、音はしなかったそうだけど、一人で眠ると決まって夜にカリカリ音がするらしい」
「それって、本当に野生動物じゃないの?」
そうなのだ、けっこう鴉が屋根を歩いたりする音が響いたり、屋根裏に入り込んだ野生動物が大きな音をさせる事は田舎ではよくある。
「違うんだ。その後も続いて、気味が悪いから夜中も電気をつけっぱなしで寝ていたそうなんだ。すると暫くはカリカリ音がしなくなったんだけど、夜中にトイレに行った時に出たんだそうだ」
「何が?」
「だから、幽霊だよ。トイレから出たら前に立っていて、腰抜かして叫び声をあげたら親が起きて来たそうだ。その時には幽霊は消えていたんだけど、廊下に水溜まりがあったって」
「ふーん。それだけじゃわからないよ」
「だろう?尾根山の親も寝ぼけていたんだとか、漏らしたんだとか言ったらしくてさ。俺はちょっと専門外だから、端宝に手伝ってもらおうと思ったんだ」
「あのさ、私、べつにそういうの専門にしてませんから」
なんだソレ。むっとしてそう言った。すると丁度、尾根山くんが戻って来た。
「お待たせ、ちょっと混んでて遅くなっちゃった。話、聞いてくれた?」
トレイに載せられたオールドファッションを前に置かれ、しぶしぶ頷く。
すると、いい笑顔で百家くんが言った。
「今日はもう夕方だから、明日、端宝の用事がなかったら、尾根山んちに一緒に行こう」
「ごめんね、忙しいのにこんな事頼んで。でも僕も怖くてさ。今度から一階で親と一緒に寝る事にしたよ。来てもらうバス代とかは僕の小遣いから出すから頼むよ。お願いします」
まあ、ここまで言われて、その上、ドーナツまで食べてしまっては行かないわけにもいくまい。
そんな感じで、私の夏休みが始まったのだ。
13
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
幼馴染の許嫁
山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる