母が田舎の実家に戻りますので、私もついて行くことになりました―鎮魂歌(レクイエム)は誰の為に―

吉野屋

文字の大きさ
11 / 46
第二章

1.中三の夏休み

しおりを挟む
 
 中三の夏休みを迎えた。高校は今の中学の近くにある、公立高校に入るつもりでいる。

 夏休みはお母さんに塾に行きなさいと言われた。もう受講料は支払いすませてあると言われ、ついでに、お金の事は心配いらないと言われてしまった。顔に出ていた様だ。

「麻美はね、もうお金の心配はしなくて大丈夫。お母さんこっちに帰って来たし、家から通ってるから前みたいにお金もかからないのよ。おじいちゃんだっているし、普通の家位は稼ぎがあるんだからね」

「うん。おかあさんありがとう」

 そういうと、お母さんは私の頭を小さい子にするように、よしよしと撫でてくれた。

 なんか、田舎に帰っていろんな事でほっとする。それにお母さんが幸せそうなのが一番いい。

 良かったねお母さん。断捨離出来て・・・。


 週二回、水・金で午後二時から50分を二枠(ふたわく)だ。机と机の間に仕切りがあり、教室には生徒が何人もいるけど、勉強は先生対個人でやるというスタイルで自分の進み具合に合わせて勉強する。

 学校の勉強は真面目にやっているので、成績は悪くない。でもせっかくお母さんが申し込んでくれたので、しっかり勉強することにした。

 お昼ご飯を家で食べてから、おじいちゃんに道の駅まで送ってもらい、そこからバスに乗る。

 おじいちゃんは今でもシルバーの仕事をしていて、時々私に小遣いをくれる。遠慮すると、『孫に小遣いをやるのはワシの楽しみじゃけな、まさかいらんとは言わんよな?』と威圧を効かせてくるので、ありがたく貰っている。

 お昼を食べたばかりなので、バスが来るまでいつものベンチで座って小説を読んでいた。

 あのパン屋で働くお兄さんがいるのが見えた。何とはなしに見ていると、この辺ではあまり見ない様な小綺麗な恰好のおばさんがお兄さんのいるパン屋さんの所に歩いて行き、パンを買うのじゃなくて、お兄さんに声をかけた。

「春くん・・・」

「!ババア、何しに来やがった」

「春くん、もうそろそろ・・・」

「くんなって言ってっだろ!次、来たら家には二度と戻らないからな!」

「ごめんなさい、でもね、」

「次はないからなっ!帰れっ!」

 お兄さんはそこにあったカレーパンをおばさんに投げつけた。

「きゃっ」

 バフッとおばさんの顔に当たった。おばさんは周りを気にして見回し、私と目が合った。慌てて顔を押さえて駐車場の車まで走り、車に乗り、急いで道の駅から出て行った。

 車は、おベンツ様だった。おばさんは顔にカレーパン投げられて恥ずかしかったのかな。

 お兄さんはカレーパンを拾ってビニール袋に入れて、自分のエプロンのポケットに入れていた。

 投げたパンの代金は後で自分が払うんだろうなと勝手に思った。

 あの人、お母さんなのかな?子供のバイト先に現れて嫌われるパターンかな?

 でもいい年して親がバイト先に来たら恥ずかしいよね。

 それにしても、あのおばさんの周りには黒いモヤモヤが憑いている。あれは、良くないモヤモヤだ。

 そこまで、考えていた所で、バスが来たので乗って塾に向かった。

 ああ、でも気にしてもしょうがない。頭を切り替えた。ああいうモノの事を気にするのは良くない事だ。

 関係ないのだから知らんふりしているのが一番良い。

 

「よう、塙宝(はなたから)」

 バスに乗ると、ほとんど乗っていない乗客のうち、一人が百家くんだった。

「百家くん。どっかに行くの?」

「ああ、尾根山と待ち合わせしてる。お前は?」

「そうなんだ。私は塾」

「塾ってあのスーパーの横のとこの?」

 田舎なので、そんなに沢山塾はないので、近くならそこしかない。

「そうそう。二時から二枠とってる」

「ふーん。真面目だな」

「知ってると思うけど、家、シングルで母が1人で働いてお金出してくれてるから、そういうの無駄にはしたくないんだよ」

「そうか、偉いな」

「・・・」

 何か面と向かって偉いなっていわれると、恥ずかしくなった。思わず黙ってしまった。

「ん?」

「いや、照れるからやめてよ」

「なんだ、お前意外に可愛いとこあるな」

「いや、可愛くないから」

「即答かよ」

 うん、ほんっとイケメン男子だ。この人が持って居る、純粋な日本人では持ちえない薄い色素の瞳や、顔が小さくて手足の長いルックスが、芸能人の様な特別な感じがして女の子は憧れるんだろう。顔も綺麗だ。

 一般人とは異質なものを恐れるのではなく、憧れに変えて見るような現代は、逆に生きやすいかもね?

 一昔前じゃ、『外人』呼ばわりされて、虐められたりしてたかもしれない。

「なんだよ、お前、その『観察』すんのやめてくんない?」

 つい、ジロジロ観察していたのが気に障ったらしい。やばいやばい、そういうの気を付けないと嫌う人多いから。

「え、分かる?ごめんね」

「分かるに決まってんだろ。明らかに他の女子と視線が違うからな」

 やはり、バレていた様だ。みんな百家くんを見る女子の目はハートマークだから。そりゃ私とは違うわ。

「バレバレだったか。そっちは尾根山くんと図書館にでも行くの?」

「そう、エアコン効いてるからな」

「いいよね、図書館。私も好き。本がいっぱいあるから」

「いつも本読んでるもんな」

「うん。本読んでるのが一番好きかな」

「そっか。好きな事があるのは良いよな・・・」

 その後は、駅までお互い外をぼーっと見て過ごした。

「・・・そう言えば、東神のオバサンが道の駅にいたな」

「えっ?」

「ほら、ベンツ乗ってたオバサンだよ。あれ東神の奥様だよ」

「・・・へえ。そうなんだ」

 じゃあ、あのお兄さんは、もしかしておじいちゃんが言ってた、ヒキニクって奴?

「いっぱい変なの憑けてたろ?」

「・・・うん」

 そうだった、百家くんは視える人だった。えーっ。





 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...